グレイロード

未月 七日

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第三章 〜新たなる冒険

46話 『月光和熊』

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 ノース大陸にて新生・ドセアニア連合王国が建国され、マタタビらと別れてから2年11ヶ月後の8月15日。昼前。

「4991…4992…4993…4994…ハァ、ハァ、4995…」
 ノース大陸南岸部、造船都市・エヴァンの少し東に位置する森林の奥地、餓鬼洞山ガキドウザンにて修行を積んでいた14歳に成長したグレイ。
「5000!!!」
 ダズの指示で腹筋、腕立て、指立て、スクワット、を毎日5千回こなした後、大木を拳や蹴りで倒し、資材を規定の数量造船都市・エヴァンに運搬した後、餓鬼洞山を根城とする山の主と対峙するという修行を約2年11ヶ月こなしているグレイ。
「おらぁあ!!!おらぁ!!」
 次々とオークの大木を伐採していき、エヴァンで船大工をしているタドマ=リカートンが経営するリカートン造船所へ資材を運ぶグレイ。

「よいしょっと!ハァハァ、これで今何キロですか?」
「えぇーっと、182キロだな」
「じゃあ、あと一往復すれば200キロですね!ちょっと待っててください」
「あぁ~いいよいいよグレイ君!いつも世話になっとるから。それに、もうそろそろウチも長期休暇に入るかんね。あんまり資材抱えてても仕方ないんよ」
「ハァハァ…もうそんな時期ですか、」
 船大工のタドマは、長期休暇やいつものお礼として、少し少ない資材をグレイから受け取り、金貨1枚と銀貨5枚を手渡す。
「今更だけどよくやるわぁ。こんな破格の賃金で毎日毎日木材運んでもらっちゃって。生活できてるん?」
「大丈夫ですよ!宿は師匠の海賊船ですし、飯代と少し貯金できればそれでいいので。それに、仕事兼修行ですから!お給金頂けるなんて嬉しい限りです」
「ほんとに出来た子やな~ウチのバカ息子も見習ってほしいわ!ガッハッハッハッ!」
 グレイと世間話をしつつ、息子に目をやると急に態度を変え怒鳴りつけるタドマ。
「おい!カズマ!そっちじゃないっちゅうねん!何べん言うたら分かんのや!」
「うっさいねんボケ親父!俺は俺でやるって言うてるやろ!邪魔せんといてくれや!」
 カズマ=リカートン(16)と父タドマの親子喧嘩はリカートン造船所の恒例行事であり、他の船大工たちも大いに笑い転げていた。
「「「いいぞいいぞ!!」」」
「「カズマおもしれーなー」」

「ハハハ~仲、良さそう…かな?」
 気まずい空気の中、グレイは隙を見てリカートン造船所を後にしようとする。
「それじゃあ、まだ最後の修行が残ってますので、失礼します!」
 グレイは礼儀よくリカートン造船所のみんなに深く頭を下げ、再び餓鬼洞山へ戻る。


 餓鬼洞山へ戻り、最後の修行、餓鬼洞山のヌシと対峙する準備をする。
「遅かったじゃねーか。逃げたかと思ったぞ」
「今更逃げるわけないでしょ!やりましょ」
 ダズが餓鬼洞山の頂上にて、広域の電線網でヌシが逃げられないように包囲しているため、グレイはいつでも好きな時に餓鬼洞山のヌシと戦うことができる。

「今日こそ仕留めろよグレイ。もうすぐ3年が経っちまうからな」
「そうですね。そろそろ、勝ち越したいっすね!」
 2人は餓鬼洞山を登り、目的の地へ向かう。
 約10分ほど山を登ると、広域な電線網が広がるエリアが見えてくる。そこでダズは大きなサケをエリアへ投げ込みヌシを起こす。
「起きろーーー!!飯だぞ飯!!」
 ギロッ!
 餓鬼洞山の頂上にある広域電線網の中に閉じ込められている山のヌシとは、巨大な月光和熊ゲッコウワグマであった。
 本来生息は、4大陸の中央にある島国、日出る国・ニホン国だが、5年以上も前に単身海を渡り造船都市・エヴァンに着いてすぐに多くの人々を襲い、そのままエヴァンの東にあるこの餓鬼洞山に潜伏していた。
 冒険者ギルドでもAランク討伐依頼として依頼書が発行され張り出されていたが、ダズがその依頼を独り占めして、グレイの修行相手に利用していたのだ。
 報酬金は金貨35枚。Aランクにしてはボチボチと言った額。


 そもそも冒険者ギルドで発行される依頼書にはクエストランクというものがあり、それぞれ、
・SSSランク「討伐不可」
・SSランク「複数国家レベルでの討伐を推奨」
・Sランク「1国単位での討伐を推奨」

・Aランク「優秀なギルド魔導士および複数パーティーでの討伐推奨」
・Bランク「魔導士およびパーティーでの討伐推奨」
・Cランク「個人および単一パーティー可」
・Dランク「駆け出し冒険者用、優先依頼」
・Eランク「雑務」
と区分されている。3年ほど前にグレイらがエヴァンの冒険者ギルドで受けた害獣・ホーンラビットの討伐依頼は一応Cランクに分類されており、単一の強さだけでなく、数や実害の内容によってもクエストランクは変わってくる。

 今回の月光和熊も推定はBランクほどだが、人を2人殺め、11人の重症者を出していることからランクを引き上げAランクとされている。 
 しかし、ここ2年半はダズのおかげで実害の報告が上がっていないため、クエストランクの見直しと少しずつ報酬金額が下がり続けているため、ダズにしてみればもうそろそろグレイに討伐してもらいたいところ。

「優秀な魔導士および複数パーティーでの討伐推奨…フゥーーー。行きます!」
「スイッチ、オン!」
 ダズは一時的に電線網の高電圧を止め、グレイを中に入れたのに高電圧を起動する。
「いつも言ってるが…死ぬ気でかかれよ」
「はい!」
 グレイは腰を低くし、構えて、駆け出す。
 自分に駆け寄ってくるグレイを見て、飯どころではなくなる月光和熊は、咆哮を放ち、グレイを威嚇する。
 ガァァァァァァ!!!!!!
 月光和熊が上を向き咆哮している隙に、グレイは正面から右足で蹴りかかる素振りを見せる。しかし、それを読んでか、月光和熊は両手両足に力を込め、後方へ跳び、グレイの蹴りの間合いから離れる。が、これを読んでるグレイ。
「お前とは(約)3年も対峙してんだぞ!分かってるっつーの!」
 ズバッ!!
 右足蹴りをフェイクに、左足に力を込めて地を蹴り月光和熊へ距離を詰めるグレイ。
 バシンッ!!
 グレイは月光和熊の右頬へ、左ストレートを打ち込む。そのまま畳み掛けるように、左足で地を蹴り、右飛び蹴りを喰らわせる。
 ズバンッ!!ドスンッ!!
 画面に2発を喰らう月光和熊は、少しよろけるも、地に爪を突き立て、何とか踏ん張りをみせる。
 ガゥ!!ガァ!!!
「効かねーよ!ってか…こんにゃろう!」
 この2年10ヶ月で獣人語とエルフ語を2級相当までマスターしたグレイ。他にもいくつかの言語を習得しているグレイにとって、獣人に精通した獣の言葉は何となくだが意味合いは理解できている。

 一度距離をとったグレイは、再び助走に入り月光和熊へ近づいていく。
 それに合わせ、月光和熊も爪を剥き出しに右手を振り上げる。
 月光和熊に突っ込むと見せかけてのフルブレーキ。右手が振り下ろされるのを待ってからの緩急をつけた0から100の動き出しは月光和熊を惑わせ、意表をついての右アッパーを顎にクリーンヒットさせる。そのまま、体重を乗せ、一撃、二撃とどんどんラッシュを決めていくグレイだったが、月光和熊の妙な無抵抗さに嫌な予感を覚える。途端、グレイの左右のラッシュの間隔を掴んだ月光和熊が、右拳が自分に届く前にグレイの意表をつく右手の引っ掻き攻撃を繰り出す。
「やっ…ぱり!」
 間一髪グレイは後方へ跳び攻撃を避ける。いや、胸に月光和熊の親指を抜いた4本の爪による引っ掻き傷がつけられていた。
「クッ…ちょっと詰めすぎたかな…」
 瞬時に距離をとったことで引っ掻き傷は浅く済んだものの、少しずつ服に血が染み込んでいく。
 グヘァ!!
「ク~~笑ってんじゃねーよこのやろう~」
 獣人語を学んだが故に獣の言葉や感情が大体ではあるが手に取るように分かってしまう。今完全に月光和熊は出し抜いてやったグレイを馬鹿にしている。
「今に見てろよ!!月光和熊!!」
 自分を舐め腐った月光和熊に再び真っ向から勝負を挑んでいくグレイ。


「いつも通りやってますね…」
「おぉ、ゼクシードか。用事は済んだのか?」
「えぇ、舗装路の発達でドセアニアまで深夜魔動車一本で行けるようになりましたからね。便利なもんですよ。」
 UMN『国際魔導連合』が拠点を置くノース大陸では、この約3年の間に舗装事業が進歩し、多くの舗装路が敷かれたことで、大型魔動車の運行や馬車などの交通機関を駆使した事業は広く展開され、移動の面でも流通の面でも大きく発展したと言える。
「そういや、もうすぐ3年が経つのか。1人目の仲間が出所する頃か」
「はい」
 ちょうど3年前に懲役3年の実刑判決を受けた元靱の幹部、ハナ=ヒートハルトがあとひと月で出所するのであった。
「あっ、」
「ん?…あぁ~また負けか」
ーーグランド・プッシャー!!
 2人の視線の先では、またしてもグレイが月光和熊に吹き飛ばされ、ダズたちの目の前で今まさに食い殺されようとしていたため、ダズが土属性魔法を展開し、地面からまるで生きた生物かのように自由自在に動き回る岩が月光和熊に纏わりついていき、顔以外の全てを岩で押し潰して、一時的に動きを抑制させる。
「今日は終わりだグレイ!戻ってこい!」
「クッソ~~今日もダメだったか~」
 グレイは立ち上がり、月光和熊が拘束を解く前に電線網の外へ出る。
「途中までは悪くなかったんだがなぁ…一芝居食わされたな」
「ですね。あそこで挑発されて、一気に崩れちゃいました…」
「意外と分析できてるんだね…意外」
「なんで2回言った?!」
 グレイは、ゼクシードに少し揶揄われながら、3人で下山していく。
「そういえば昼食はこれからだろう?良かったら一緒にどお?」
「いいですね。ダズさんも行きますか?」
「肉か?」
「パンですよ」
「パンみたいです!」
「アホか!肉を食え、肉を」
「じゃあ別行動ってことで…」

 ゼクシードとグレイは一度ダズと別れ、エヴァンの街にあるフードコートや珈琲店と併設されたパン屋に足を運ぶ。
 パン屋の名前は『セシリーヌ』。店主であるセシリールさんの名前を文字ってつけられたらしい。そうゼクシードが語っていた。できたのはもう10数年も前のことで何度かリフォームを重ねて今の形にあるという、そこそこの老舗だ。
「やけに詳しいね」
「まぁ、常連…みたいなもんだからね。店主のアルバートさんも気さくに話しかけてくれるしね」
 グレイはゼクシードの話を聞きながら、好物の野菜、レタスやトマトが挟まったサンドウィッチを口一杯に頬張る。
「んん~美味い!ここのサンドウィッチ。レタスはシャキシャキだし、トマトは水々しい!」
「レベルの高い食レポどーも。」
「それに~、なんですかね…甘いような、酸っぱいような~蜜?みたいな」
「舌が冴えてるね。それはベリーローズだ」
「ベリーローズ?花ですか?」
「あぁ。赤色が特徴の綺麗な花だ」
 サンドウィッチにかけられていたのはベリーローズといくつかの果物をミキサーでブレンドさせたソースで、素材本来の美味しさをより際立たせるためにほのかに甘く、決して邪魔しない程度の甘みと酸味を秘めたソースがかけられていたのだ。
「これは神レベルだ!本当に」
「後でこれを作ってる奥さんに告げるといいよ。きっと喜んでくれる。」
「そうだね!」
 グレイはベリーソース入りのサンドウィッチをムシャムシャとよく噛んで食べ、満面の笑顔を見せていた。そして、手を合わせて「ごちそうさま」と口にした後に、ペーパーで口を拭き、ゼクシードに真剣な表情で対峙する。
「それで、何か話があるんでしょ?」
「ん?あぁ…まぁそうだけど、なんで分かるの」
「珍しいじゃん。いつも1人のゼクシードが飯に誘ってくるなんて」
「そんなことないだろ。」
 勿論のこと、2年11ヶ月の間、常に一緒にいたわけではないが、半分ほどは時間を共にしているグレイとゼクシード。それでも一緒に外食をしたのは数えられる程度で、ゼクシードは基本的に1人で食事を済ませているか、テイクアウトで買ってきてくれるかのどっちかであるため、こうやって誘い出す時は決まって何か相談や企み事がある時だけなのだ。
「それで…何なんですか?」
「…。実はあと1ヶ月もしたらハナが出所するんだ」
「ハナさんって…元靱の…」
「そうそう、赤毛の女性。ハナ=ガーネット。今は確か…母親の姓・ヒートハルトを名乗ってたかな~」
「それがどうしたんですか?」
「僕ら靱の構成員が全員奴隷だったことは知ってるよね?」
「はい」
 3年前に対峙した靱という組織は、セナという人間を筆頭に『奴隷解放宣言』なるものを謳い、多くの大国や都市を襲撃し、多くの奴隷を解放させ回っていたのだ。その幹部も元奴隷であり、元奴隷が奴隷たちを集め、社会に革命を起こそうとしていた。そんな組織が靱であり、ゼクシードもハナもそこに属してた。

「元々、ドセアニアやその同盟国にあたるサザンなんかは、戦争大国で、戦争に勝利して国土を広げていった国なんだ。だから、僕も、そしてハナも戦争に巻き込まれ、戦争孤児としてサザンの奴隷になった。だから、両親や兄妹なんかは、収容所に一緒に送られたものだと思ってたし、そこにいないってことは、イコール『死』を意味してた。」
「…。」
「でもこの2年半の間に元靱のメンバーだった人達の家族を何人か見つけたんだ。」
「そんなことしてたの、ゼクシード」
「皆んなを、犯罪に巻き込んでしまった僕なりの償いさ」
 靱結成も、その後のすべての事象・事件も、全てにおいて自分とトールが原因であると、一切の姿勢を崩さなかったゼクシード。その自分なりの償いとして、ゼクシードは仲間たちの家族を探していたのだ。
「その1人が、そのサンドウィッチを作った店主の奥さん…」
「え…?!」
「リオナ=セシリール。旧姓・リオナ=ガーネット。ハナの実母だ。」
 多くの姓が飛び交い困惑するグレイ。
「少し困惑しているかな。もう少し噛み砕いて話そうか。時は約11年前。サザン王国と、それに敵対するミスリル王国。その丁度中間にあった村がハナの故郷であるキース村だ。でもそこは、サザン王国とミスリル王国の戦争に巻き込まれ、一夜で崩壊してしまった。その時の詳しい話は…まぁ結構酷いもので、ハナに昔聞いた時は絶句するようなものだった。正直、ハナ視点の話しか知らなかったから、ご家族は生きていないものだと思ってたんだけど、このセシリーヌというパン屋で、ハナの実母と同姓同名の女性を見つけたんだ。そして、その女性は、6年前にアルバート=セシリールと結婚し、1人の子供にも恵まれていた。」
「…?!」
 これらがゼクシードの話す『セシリール』、『ガーネット』、『ヒートハルト』の3種の姓の秘密であった。
「正直、元の劣悪な家庭環境や戦争による後遺症なんかで、深く傷つけられたリオナさんにとって、今の幸せな時間を壊すのは良くないと思ったんだけど…実は、リオナさんに昔の記憶が無いんだ…」
「記憶が…」
 復唱するグレイにゼクシードは頷く。リオナ=セシリールには、10年前の、キース村で住んでいたことや、元旦那のアンドリュー=ガーネットのこと、そして、実の娘であるハナのことを一切忘れていたのだ。つまり、辛かった過去を全て忘れ去り、何もかもが順風満帆な今のリオナに、ハナを会わせるべきなのか否かをグレイに相談したかったというわけだ。
「もうハナさんのことは完全に忘れてるの?」
「実は『ハナ』という言葉は覚えているらしいんだ。ただそれが人物の名前なのか、それとも植物の花か、人体の鼻か、全くわからないって…。自分の名前の他に唯一覚えている『ハナ』の名前。それ以外を全て忘れ、途方に暮れていたリオナさんをアルバートさんが助け、セシリーヌで雇い、一緒に過ごす時間が増えて結ばれたらしい。」
 話を聞く限りでは、とても良い話で、唯一覚えている『ハナ』という言葉から何かハナについて携わっていたのかもしれないと語り、『セシリーヌ』の裏手でベリーローズを栽培して『ハナ』の存在を忘れないようにしていた。ただ、昔の記憶が一切ない中で、その女性と触れ合い妻に娶ったアルバートは、世間一般からしてみたら、もしかしたら見え方は悪いのかもしれない。それでもリオナという1人の女性にとっては、現状最愛の夫であり自分を救ってくれた恩人でもある。そして、そんな2人の間には今や1人の息子・リーファ(5)がいる。新たな家庭を築いているリオナをそっとしてやるのが、ゼクシードの最善手ではないのかとグレイは思ってしまう。
「リオナさん自身のこともあるとは思うけど、ハナさんの気持ちもあるでしょう。一度ハナさんに聞いてみるのはどう?」
「…そうだね。まずはそこからだったかもしれない」
 そう言ってゼクシードは重たい腰をあげ、賞味期限的に長持ちしそうなパンを選び、購入。そして、箱にいくつかのパンを詰めてもらい、それを持ってグレイと店を出る。
「またドセアニアの収容所へ面会しにいくよ。ハナの気持ちを聞きにね」
「吉報、待ってる」
「グレイも、修行頑張れよ。次こそは月光和熊を倒せるようにね」


「あっ、あとコレ。渡しそびれるところだった…」
 ゼクシードはグレイの方へ向き直り、何やらポケットから横長い透明のケースを出し、それをグレイに渡したのである。
 透明のケースは真ん中に壁を挟み、2種類に分けられており、一つは約3年前にみた白い悪魔アルビニウムに似た液体が入った立方体のプラケースで、もう一つは何やら青白い液体が入ったプラケースであった。
「これってもしかして以前話してた…」
「そう。一つは、アルビニウムの改良版。色々と熱に強い物質や緩和剤になる花の成分とかを混ぜ合わせて出力を抑え、人体への影響を少なくさせたアルビニウム。もう一つは、アルビニウムの水属性版。」
「水属性版?!それって炎だけじゃなく、水も操れるようになるってこと?!」
「ごめん、言い方が悪かった。早とちりさせたね。アルビニウムの水属性版は語弊だ。これは、衝撃に反応して水属性魔法を噴出させる、現代でいうところの巻物やマジックポッドの代替品だ。それらとの差別点は自分のマナを使用しないこと。」
 マジックポッドとは、事前に展開・生成させた魔法を魔法耐性の強いポッドに封印し、自分のマナを封印解除のトリガーとして用いり、自分の得意でない、もしくは使用できないレベルの魔法であっても少ないマナで展開することができるという利点があった。巻物も一緒であり、魔法を文字に変換させて、封印したもの。
 しかし、今回ゼクシードが作ったものは、巻物やマジックポッドとは違い、自分のマナを流し込まなくとも、衝撃だけで魔法を展開させれるというものであり、魔力適性の全くないグレイやゼクシードでも魔法を使用することができる代物であった。
「それは一応、アルビニウムを使用した際に、どうしても対処できない引火や火傷を消化させるものだと思ってくれ。だから数もアルビニウム改良版と同じ3個ずつしか無いから、上手く使ってくれ。」
「ありがとう!」
「アルビニウム改良版については、使ったら感想も頼むよ。不満な点とかがあったらその都度言ってくれ」
「了解!」
「それじゃ…お先」
 ゼクシードはこの約3年間で、元靱の構成員だった人達の大切な家族を探し、同時進行でグレイのためになるアルビニウム改良版や、魔道具の生産など、多くのサポートをしてくれた。そんなゼクシードにグレイは感謝してもし切れないのであった。
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