グレイロード

未月 七日

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第二章 〜家族のカタチ

40話 『光剣隊』

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 グレイらの活躍によりグリムデーモンの復活を目論む組織・靱のリーダー、ならびに幹部たちを撃破し、安堵する各々。
 ミヅキとリリアンが目覚めぬ今、重傷なグレイを処置するか治癒魔法を施せる者がいる場所に連れて行かなければならない。
「グレイは俺が持ちます。」
「ウゥッ!」
「すまない…」
 些細な振動でさえ傷に響くグレイをカイトは慎重に担ぎ、深淵窟を後にしようとする。
「彼女たちも運ばなければな…」
 マタタビらは命の恩人であるミヅキたちの元へ向かいハルミがリリアンを、マタタビがミヅキと倒れていたドセアニア兵士1人を担ぐ。
「シュウ…彼女は…」
「名も知らぬ靱の幹部だ。セナにマナを吸われ気絶してる。」
「連れていくのか?」
「あぁ。放ってはおけないだろ」
 敵であるカガチを担ぐシュウ。それが善意からくるものか、損得勘定を見据えた厚意なのか、それとも他の感情か。何はともあれカガチを連れ出そうとするシュウを止められないハルミ。

「それじゃあ…手が空いてるのは僕だけですかね…」
 嫌々か、面倒くさそうな表情で靱のもう1人の幹部であるナギを背負うソウヤ。自分よりもタッパのあるナギを重たそうな顔して背負うソウヤを見て思わず笑ってしまうハルミ。
「代わってやろうか?」
「いいの?」
「無理~、ハッハッハッ!」
「なんだよ!!」
 いつも通りの日常。仲睦まじいハルミとソウヤを見て、一同は全ての事態が収集、落ち着いたことを改めて理解する。
 全員でダイドウ深淵窟を後にしようと前へ進むなか、1人だけ振り返り戻る人物がいた。
「どこ行くんです、ゼクシードさん」
 ソウヤの一言に全員が振り向く。
 ゼクシードは塞がりかけのお腹の傷を押さえながら、無理に足を動かしセナの元へ向かう。
「セナが…まだあそこにいるんだ…」
「正気ですか?あいつは、貴方を殺そうとした!幾度も罵った。命を取らないだけ譲歩でしょ。それに貴方だって2人に治療してもらったとはいえ、まだまだ重症の部類ですよ!運び出せるわけない」
 一応出血は止まっているとはいえ、内臓はぐちゃぐちゃのはず。血も大量に失って貧血気味なゼクシード。それでもセナを連れていくために戻る。
「僕も…何度かセナを殺そうと思った…どんな手を尽くしても、彼を止めるんだと、刺し違える覚悟で挑んだ。でも、僕には彼を見捨てることができないんだ…サザン鉱山で、初めて僕に手を差し伸べてくれた命の恩人だから…人は、過ちを犯してしまう生き物だ。僕もそうだ。それでも、そんな僕を許し、信頼してくれた少年がいたように。セナには、そういう人がいなかっただけなんだ。だから、今度は僕が…セナを許し、寄り添ってあげなきゃならないんだ…それが僕の罪滅ぼしなんだ…」
 横たわるセナの前で両膝をつき、脱力した構えで、セナに寄り添うゼクシード。
「今までずっと1人にしてしまって…本当にすまなかった…セナ…」
「ゼク…シード…」
「?!…あぁ、いるよ、ここに…」
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!
「「「「「?!」」」」」
「なんだ?!」
「地震かな…」
「何で急に」
「いや…待つんだ、あれを見ろ」
 ボーディアンが指を差した先、巨大な紫と青の崩石に包まれし、グリムデーモンが揺れ動き始める。
「どうして…何でグリムデーモンが!!」
「わからない、でもここにいちゃ危険だ!すぐに深淵窟を出ろ!」
「ボーディアン!彼らを連れてきなさい!」
 マタタビの指示でゼクシードたちの元へ向かうボーディアン。
「おい!ゼクシード!こっちへ来い!」
「でも、セナが!」
「2人を抱えるのは無理だ!」
「ならセナを!セナを頼むよ!!…」
「バカ言うな!!」
 セナの服に掴みかかるゼクシードを無理やり剥がし、ゼクシードを担ぎ上げ連れ去るボーディアン。
「セナ!!セナ!目を覚ましてくれ!!そこにいたら!!セナ!!セナ!セナァァァァァ!!!!」
 ゼクシードの悲痛な叫びが深淵窟に木霊する。一同は、セナと10人ほどの靱構成員を置いて、深淵窟を後にしようとする。

 そして、グリムデーモンを封印していた5本の鎖が一本ずつ引きちぎれていく。
 ギギギギギッ………バキン!!
「急げ!!ゴンドラまで走れ!」
 ゴンドラまで200メートルほど。怪我人を担ぎながら深淵窟内を駆け抜ける一同。
 深淵窟内は地響きに耐えきれず、少しずつ大岩が崩落していく。
 ギギギギギッ………バキン!!
 ゴロゴロ、ズドン!ズドン!ガシャン!
 大きな物音を立てながら崩壊し始めるダイドウ深淵窟。何とかゴンドラまでつき、全員で乗り込み上へ駆け上る。

「セナ…セナ…どうしてこんなことに…」
 自分の無力さに打ちひしがれるゼクシード。

「にしても、どうしてグリムデーモンが動き出したんだ?」
 事態を冷静に受け止め、意見を出し合おうとするハルミ。
「ミヅキさんは無事ですし、敵に封印を解くような素振りは見られなかったですよね…」
「そもそもあれは本当に封印が解ける前兆なのか?」
「間違いなかろう…多重層封印術である鎖がはち切れていた。」
「それなら、まさか」
 ハルミたちの予感は的中していた。
 ゴンドラで地上に上がって1発目に目に入った景色は、数キロ先に見えたドセアニア王国が大火災で煙をあげていた光景であった。
「王国が…燃えてる…」
「ドセアニア王国にはタッツーさんたちが向かってます…」
「それじゃあ…ヒナさんたちは…」
 同じギルドメンバーのタツマキたちの安否がわからず、絶望の顔に染まるハルミとソウヤ。
「確かめにいくしかないだろう。グレイも医師に見せなければならない。」
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
 再び襲いかかる地震。地下にいるグリムデーモンが暴れ出したのである。
 キシキシキシ!!!
「全員離れろ!地割れだ!」
 ダイドウ深淵窟へ繋がる穴の周囲に少しずつ地割れが確認され距離を置く一同。完全に天変地異、グリムデーモン復活の前兆であった。
 十中八九、ドセアニア王国で何かが起こり、グリムデーモンを封印するための多重層封印術を組んだアレス=ドセアニアとその配下たちの5名が殺害されたのだろう。
 セナと死闘を繰り広げ、ボロボロな体で、ベイダー兵器であるグリムデーモンと対峙しなければならなくなった一同。そして、今も状況が掴めないドセアニア王国にいる仲間たち。多くの問題を抱えながらマタタビらはグリムデーモンを止める術を模索する。


---------------------


 靱リーダー・セナとグレイらが対峙する数十分前。ドセアニア王国にて。
 
 靱幹部、ハナ、デモンズ、並びに70名あまりの構成員による第二次ドセアニア侵攻作戦の最中、ドセアニア王国に1発の巨大な隕石を引き寄せた星界の使徒の七星・アルカイド。度重なる陽動に乗じてドセアニア王国王城に侵入し、真っ直ぐ宝庫を目指す。
 程なくして、巨大な隕石は、レオネード・ハーツのタツマキ、ミヒャ、靱幹部・ハナ、そして多くのドセアニア王国兵士の協力により、全てを迎撃、粉砕し、ドセアニア王国は歓喜の渦で湧き上がっていた。
 そのため、いとも簡単に王城内部に星界の使徒を入れ、宝庫まで数少ない警護を無力化させ侵入される。
「どうやら陽動がうまくいったみたいですね…」
「誤算はあれど、概ね予定通りだ。あとは、この先にある、火の魔女書を手に入れて退散するのみだ」
「開けます」
 星界の使徒構成員は、うまくピッキング作業を行いものの数十秒で宝庫の施錠を2つ攻略し、宝庫の扉を開ける。

「来たか…」
 バキューーン!!!
 宝庫の扉が開かれ、足を踏み入れるアルカイド。その瞬間、正面から発砲される。
 不意打ちでアルカイドは、ライフルの弾丸を左横腹に喰らう。
「クァ!!…いったぁ、、!まさか…中にいるのかよ」
 二重で施錠をかけられた宝庫の中には、三臣家、アサダ家陣営直属護衛隊の光剣隊5名と数人の兵士が待ち構えていた。
「おいおいおい、ここ鍵閉まってたぞ、普通中で待ってるとかありえないでしょ…」
「だから刺さったんだろ?作戦成功だぁ」
 光剣隊を指揮する隊長・リッパー=ホーリン(25)はアルカイドを煽る。
「僕のおかげですけどね…」
 ライフルを構え、不意打ちの初撃を確実に当ててみせた光剣隊の戦闘員・ハルイチ=タチバナ(19)。若くしてドセアニア1、2争うほどの射撃の名手であり、本作戦の軸となった人物。
「あとはいつも通り削り合いですかね!隊長」
 大盾に長剣を構える光剣隊の戦闘員にして元冒険者の戦士上がり・ランドロス=ポルカ(29)。そのゴツい肉体で重たい大盾と長剣を振り回す。
 そして、光剣隊随一の剣の使い手にして最年少戦闘員・リリー・セルナーク(16)。女性であるが故の体重の軽さを活かした高速移動と高速斬撃を得意とする雷属性を駆使する剣士。
「そろそろ暴れさせろよ!乾きまくって仕方ねーんだ」
 最後に短剣の二刀流スタイルの戦闘員・シュナイダー=ジャックス(27)。元は海賊をしており、数年前にドセアニアにスカウトされた荒くれ者で、剣も性格も相当切れ味が良いらしい。
 この5名に加えて数人のドセアニア兵士を警護の任につかせていた三臣家アサダ家。

「落ち着けシュナイダー、先手は打ってんだぁ。あとは、削るだけだぁ」
 シュナイダーは短剣を2本抜き、逆手で持つ。
「あーー、ダメだ、この渇きは止められねぇーーー!!」
 ブンッ!!!
 抑えきれない衝動に体が反応してしまうシュナイダーは、地を強く蹴り、アルカイドに向かって突撃していく。
「お前らやれ!」
 アルカイドは、長剣持ちの構成員を前へ出し、シュナイダーの相手をさせる。
「オラオラオラオラオラ!」
 キン!キン!キン!キン!キン!キン!
 シュナイダーの素早い二刀流のラッシュを受け太刀する構成員。攻撃速度とは裏腹に、一撃一撃はとても軽い。軽いはずなのに、受け太刀する構成員の刀は数発攻撃を受けただけで刃こぼれし、刃に亀裂が入る。
「なぜだ!なぜ私の剣が?!」
「オラオラオラオラオラ!!受けてるだけじゃ勝てねぇーぞ!!オラァ!!」
 パキン!!!
 構成員の構えていた長剣は、シュナイダーによっていとも簡単に折られてしまう。
 剣を折られた構成員は、そのままシュナイダーの二刀流に抗えず、胸を切り裂かれてしまう。
「まず1人目ーーー!!」
「グハァーーー!!!」
 次々と剣士を無力化していくシュナイダー相手に、いよいよ痺れを切らしたアルカイドは、宝庫の出入り口に向かって火属性魔法を放つ。
「そこをどけ!セント・フレア!」
 出入り口を占領していた星界の使徒にとって宝庫内部を守る光剣隊など籠の中の鳥と変わらない。逃げ場のない状況でただ焼き尽くされるだけの光剣隊。
「ランドロスゥゥウウ!!!」
「あいさぁ!!」
 ランドロスは、持っていた大盾を地に突き刺し、全員を背に炎から守る。宝庫全体を焼き尽くさんとしていた炎は、飛散せず、まるでランドロスに引き寄せられるかのように集中していく。
「?!」
「アルカイド様の炎が…」
 決してアルカイドの魔力操作ではなく、ランドロスの能力に違いない。
 敵の魔法を引き寄せる奴と、敵の武器をいとも簡単に壊してしまう奴。光剣隊、一筋縄では行かなそうだ。

「さすがにここじゃぁ~狭すぎるよなぁ~リリー。」
 光剣隊隊長リッパーが剣を抜く。
「裂け!ライトニング・グラディウス!!」
 ピュゥーーン!!ズババババババ!!!!!
 雷属性を纏いし大剣から放たれる光線が宝庫の入り口をさらに広く突き破り、王城の壁面まで風穴をぶち開ける。
 その光景を外から目視する王国中の兵士、並びに三臣家、タツマキやミヒャたち。外の者たちは騒ぎ出し、三臣家たちは自体の確認を急ぐ。
 
「さぁ!!広くなったぞ!!暴れろオメェらぁぁぁ!!!」
 宝庫の正面側の壁を全てぶち破り、通路まで通したリッパー。そして、その合図に呼応するように星界の使徒構成員へ飛びつく光剣隊たち。
 若き剣の達人・リリーとシュナイダーが剣で構成員たちをバッタバッタと薙ぎ倒していく。
「アルカイド様!このままでは全滅してしまいます!!」
 残り10数人余りとなってしまった構成員たちは光剣隊の強さに圧倒されていく。
「これは、あんまり使いたくなかったんだけど、出し惜しみしてる場合じゃないかな…」
 アルカイドは、火属性のオーラと土属性のオーラを複合させ溶属性魔法を生み出す。
「おっと!…なんかやばそうなのくるぜ?少し引け、リリー」
「あれは何だ?…マグマ?」
 グツグツと煮えたぎる高温の液状化した物質。赤く染まり、粘性の性質を持つその正体はマグマであった。
 木造建築である王城の床は、マグマが触れることで引火していく。
「アルカイド様!溶属性では、火の魔女書を溶かしてしまいかねます!」
「でも、手加減して勝てるような相手じゃないでしょ…」
「ほほぉ~お前らの狙いは火の魔女書か!!このコソ泥がぁ」
 リッパーを含む光剣隊は、敵の目的を掴み、全力で死守する構えを見せる。
「フフッ!それじゃあ…全力で守ってくれよ!!!火の魔女書を!!紅蓮の牙!」
 溶属性魔法・紅蓮の牙。まるで狼の如き生物を模したマグマが光剣隊たちに向かって襲いかかる。
「ランドロス!!」
「さすがにマグマは無理でしょう!!オラァ!」
 光剣隊の隊員たちはランドロスの背後に身を隠すも、紅蓮の牙はランドロスの構えた大盾と真っ向から勝負し、その熱量で大盾を溶かしていく。
「うぅーーわ?!こりゃダメだ!離れろーー」
 ズバン!!
 溶け始める大盾を地に突き刺し、左右に一斉に飛び移る一同。大盾はそのまま後方に弾かれ、アルカイドから真っ直ぐに道を燃やし尽くす紅蓮の牙。
「まだまだこれからだぞ、隊長さん!紅蓮の牙!!」
「クソッ!俺がやる!双水星剣・雨天万丈!」
 2本の短剣に水属性のオーラを集中させ、自身を高速回転させ、紅蓮の牙へ向かっていくシュナイダー。
「今のうちだ!ハルイチ!撃てぇ!」
 ライフルを構えて、攻撃モーションにあるアルカイドを狙うハルイチ。そのまま発砲すると、構成員たちがアルカイドを身を呈して守る。
 バキュン!
「ガハァ…!」
 心臓を撃ち抜かれる構成員はそのまま息を引き取る。
「ダメだ…仲間を盾にしてる。あと10発は止められるよ」
「人聞きの悪いこというなよ、全員の総意だろ!」
「?!」
 アルカイドは、特異点である地属性魔法の引力の力を使い遠くから邪魔するハルイチを自分へ引き寄せる。
「か、体が、引っ張りれる!」
ピューーーン!!
 そのままアルカイドに引き寄せられたハルイチは、左手に集中する溶属性オーラに殴られ、顔面を溶かされてしまう。
「な、なんてこったぁ…ハルイチが…」
「引力を操るだと…聞いたこともないぞ…」
 アルカイドの特別な力に恐れるリッパーとランドロス。
 そして、引力とは別に、溶属性魔法の紅蓮の牙を対処していたシュナイダーも短剣を2本溶かされ打つ手なしの状況。
「マジかよ、こいつは妖刀だぞ…ふざけんなよ」

「妖刀??あぁ、それでか~」
 シュナイダーの溶かされた2本の短剣は、妖刀に属する部類の剣で、妖気を帯びた特殊な刀であり、それぞれに固有の能力が備わっている特別な剣。しかし、所持者に不幸をもたらすことでも有名で、強者以外には忌み嫌われる存在となってしまった剣である。

ーー他人の武器を簡単に壊してしまう力も、本人の技量じゃなく武器の性能。期待して損した。本当に…小手先だけど雑魚連中だ。
「1人ずつ引き寄せて終わりさ」
 次にアルカイドの標的にされたのは、武器を失ったシュナイダー。
「グァ!!まずい、体が引っ張られる!!」
「リリー!!援護しろ!」
「わかってる!」

「?!体が…弾かれる!」
 ズバン!!
 太刀を抜き、アルカイドへ急接近するリリー。右手でシュナイダーを引き寄せ、リリーに対しては左手で斥力を操り、吹き飛ばす。そのままリリーは宝庫の奥の壁に頭を打ち、気を失ってしまう。
 そして、引き寄せた武器のない無抵抗なシュナイダーを左拳で殴りつけ地面にめり込ませる。
 バコンッ!!!!
「思いがけず2乙かな~」

「ハァ…ァァ…ランドロス…逃げろ…逃げろ!!!!」
「?!…」
「もうおせーよ」
「ぁぁあああ!!!体が体が勝手に!!」
「ランドロスゥウ!!!!」

 アルカイドによってランドロスまでもが殺されかけようとしていた。
「裂け!!!ライトニング・グラディウスゥ…ゥア…待っ?!」
 アルカイドは、リッパーが先ほどの大技を繰り出そうとしているのを察知し、右手で操っていた引力を途中で解除し、右手の斥力の力でランドロスをリッパー目掛けて飛ばす。
 アルカイドの咄嗟の切り返しに対応できなかったリッパーは攻撃の手を止められず、自分の大技、ライトニング・グラディウスで味方のランドロスを貫いてしまう。
「隊ちょ…」
 ピュゥーーン!!!ズババババババン!!!

 そして、リッパーの放ったライトニング・グラディウスは、アルカイドに届くことはなく、斥力の力でアルカイドに押し返されるように弾かれ、ランドロスの体は前後のライトニング・グラディウスによってすり潰され、粉微塵にされてしまう。
 眩しい光が落ち着いた頃には、ランドロスは塵となり空を舞っていた。
「そんなぁ…ランドロス…」
「絶望したか?自分の手で、部下を殺めてしまったことに」
「お前のせいだ…お前のせいだろ!!」
「責任転嫁はやめなよ~君がやったんだ、フフッ」
 アルカイドは、最後に残ったリッパーに歩み寄り、斥力の力で右後方へ吹き飛ばす。
 ズバンッ!!
「たくっ、弱いくせに手こずらせやがって。腹も痛いしな…」
 最初に喰らった不意打ちの1発が未だに効いていたアルカイドだったが、痛みを我慢し、今は火の魔女書確保に向かう。
 宝庫の台座、その上に置かれたガラスケースの中に厳重に保管されていた火の魔女書。ガラスケースを破壊し、アルカイドは火の魔女書に触れる。
「これがファクダの欲しがってた物か?ただの本にしか見えないけどな~」
 そういってアルカイドは火の魔女書の中を開こうとすると、火の魔女書はアルカイドを拒絶し、強い衝波を放つ。
 パシュンッ!!!!
「?!」
「アルカイド様!ご無事ですか?」
「あぁ、少し弾かれただけだ。中身を見ようとしたら、何か魔法が飛び出してきたみたいで…んん、選ばれし者しか読めない系かな~これ。まっ、いいや!とりあえず退散しようか、目的は果たしたし、ちょっと派手に騒ぎすぎたな」
 光剣隊との戦闘に勝利し火の魔女書を手に入れた星界の使徒。しかし、リッパーのライトニング・グラディウスや、斥力を多用した戦い方は、派手な音を出し過ぎたせいで次期に兵士が集まってくると悟るアルカイド。
「外にいる奴と連絡をとって簡易ゲートを開けさせろ」
「了解」
 構成員の1人は西門で待ち構える他の構成員と連絡を取り、メラクの闇属性魔法を媒介とした簡易ゲートを展開させ、宝庫から離脱を図る。
「ゲート解放!」
 ビリビリビリビリ!!ギュワン!
「ゲート開通しました!いつでも西門に向かえます!」
「わかった。にしても、計画ではもうそろそろグリムデーモンがドセアニア王国に進撃してきてもいい頃なんだけどなぁ~彼ら失敗したかな?フフッ。まぁ火の魔女書を手に入れられたのも半分は靱のおかげだしね。成功報酬ってことで、運が良ければアレスとその配下を殺して、復活させてやろうか、グリムデーモンを」
 アルカイドは、撤退する瞬間に、ドセアニア王国王城の中央で空目掛けて両手を広げ、引力の力をフル稼働させ、無数の隕石を引き寄せる。
「これが感謝の終焉フィニス・ムンディだ!」
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