グレイロード

未月 七日

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第二章 〜家族のカタチ

38話 『5th・エレメント』

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 セナに向かって駆け出す3人。
「サンライズ・フラッシュ!」
 先手を打ったのはハルミ。頭上に光属性のオーラを集中させた核を飛ばし、炸裂。フラッシュを焚く。
 ピカーーーーン!!!
「それは、さっき見た!」
 セナは腕を大きく振るい、かろうじて見えたハルミに対して、炎龍を操り差し向ける。
 ガァァァア!!!!!!
「光剣・十字架の印フォトンクロス
 刀で十字を描くように炎龍の額を切り裂くシュウ。その数秒後に炎龍の額が炸裂、破裂し炎が飛び散る。
 炎龍がやられた直後、天龍、地龍を操りハルミとシュウを狙うセナ。
「エンチャント・スピードアップ!」
 地を駆け回るハルミには、リリアンが加速の魔法を付与させ、ものすごいスピードで天龍の攻撃を避けるハルミ。そして、地龍とシュウの間にはグレイが割って入り、地龍の頭突きに対してナックルナイフを取り出し、正面から突き刺し、脚にめいいっぱいの力を込め、踏ん張るグレイ。
「フンッギィィィイイ!!」
「そのまま止めていてくれ!」
ーー光剣・一閃光!
 グレイを避けるように地龍の顔の横を切り裂くシュウ。
 そのままシュウはグレイを回収して後退する。
「助かったよグレイ。」
「ハイ!」
 セナ自体に攻撃を決めたわけではないにしろ、天地雷炎を少しずつ攻略し始める一同。創成も、操作も、再生も、全てがセナのマナで行われているなら、時間稼ぎをすればいずれマナ切れで勝敗がつくと考えてた一同は、とことん天地雷炎の攻略に取り掛かる。
「また、元通りになってるね、あの炎の龍」
「まだまだマナは底をつかなそうだ」
「仲間からマナを吸収したみたいですしね…」
 天龍、地龍、雷龍、炎龍、4体の攻撃を避け続け、1発、2発と細やかにダメージを蓄積させていくシュウ、ハルミ、ソウヤの3人。そして、危険そうな魔法攻撃にはグレイとリリアンが対応し、対処していく。

「いくぞ!ソウヤは炎龍、シュウは天龍、僕がアシストをする!」
「「了解!」」
「ライトバレット!」
 ハルミは光属性のオーラを細かく分解し、放つ。
「援護します!」
 グレイも腰に隠していたマジックガンで応戦。球数を増やす。
「出力を上げます!ストレングス・アップ・ライトバレット!」
 ハルミ、グレイ、リリアンの混合遠距離攻撃が、4体の龍の動きを抑制させる。
「光剣・十字架の印!」
「水星剣・流水花!」
 龍の動きを抑制させると同時に切り裂く剣士組。天龍、炎龍を共に倒すシュウとソウヤ。
「他の2体を近づけさせるな!撃ちまくれ!」
 球数でゴリ押すように、地龍と雷龍の動きを抑制させ続け、シュウとソウヤに近づけさせないようにするハルミたち。しかし、龍だけに気を取られていると、本命が動き出していることに気づけない。
『グレイ!敵が!』
「?!」
 いち早くセナの動きを察知したハルト。しかし、その言葉がシュウとソウヤに届くことはなかった。
「泥属性魔法・泥牢デイロウ!」
 シュウに飛ばされた泥の弾、それに対し、切り付けようとした途端、切先に触れる寸前で泥は形を変え、シュウを覆い尽くすように広がり、格子状の牢獄へと変貌する。不意を突かれたにしろシュウはいとも簡単に泥牢に囚われてしまう。
「光剣・一閃光!」
 泥牢に向かって、一太刀入れるも、泥牢は形を変えながら一閃光を避け、元の牢獄の形に戻る。
「水星剣・水月!」
「待て!セナだ!」
 牢獄に囚われたシュウを助けるべく刀を振おうとしたソウヤの背後を取るセナ。
「?!…しまった、」

「㵢属性魔法・ 高電腺ライトニング・ボルテックス!」
「うぁぁぁああああああああ!!!!」
 数十ボルトの危険な電圧がソウヤの体を駆け回る。そのまま煙を纏い落ちていくソウヤ。
「ソウヤさーーーーん!!!」

「リリアン、僕を飛ばせ」
「ハルミさん…」
「早く!!!!」
「は、はい!ウィンド・アップ!」
 ハルミの足元に風属性のジャンプ台魔法を展開するリリアン。そのまま、セナに向かって飛んでいくハルミ。
「サンライズ・ショット!」
 ピュン!ピュン!ピュン!ピュン!
 両手を合わせ、細かな光属性の弾をセナに向けて発射するハルミ。
「ウォーターベール!」
 水の壁を展開し、サンライズ・ショットの弾速を低下、無力化させるセナ。それでも構わず加速し、ウォーターベールに突き進んでいくハルミ。ルクス・アルケミスで数メートルの長い槍を生成し、ウォーターベールを貫かんと突撃する。
 水圧に押し返されながらも、光の槍を押し込むハルミ。互いの魔法の押し合い。勝つのはセナか、ハルミか。
「ウィークネス・ダウン!・ウォーターベール!」
「?!」
 シスター・リリアンの無属性魔法・ウィークネス・ダウン。対象の魔法の出力を下げるデバフ魔法。
「クッ!…本当に邪魔な女だ」
 デバフを付与されたセナのウォーターベールの出力が弱まり、槍が少しずつ、前へ前へ水の壁を打ち破らんとしていた。
 ウォーターベールの操作権を放棄し、瞬時に後退するセナだったが、判断を誤る。ウォーターベールが消滅し、そのままハルミの生成した光の槍がセナの横腹を切り裂く。本日2度目のまともな攻撃がセナに入る。
「レオネード・ハーツを舐めるなよ?」
「?!…まさか」
 瞬時に傷口に目を落とすセナ。ハルミの光の槍に切り裂かれた傷口に、何やら神々しい光の粒が付着していた。
光の代行者・改ネオ・ルクス・アジェンティス
 よくよく目を凝らしてみれば、その光粒は小さな小さな蜘蛛のような形をしており、光の蜘蛛は傷口からセナの体内に侵入。そのまま、セナの体の中で炸裂する。
「ホワイトアウト!」
 ピカン!
 ハルミの合図に呼応するように蜘蛛は炸裂に全身でフラッシュが焚かれるのを感じ、毛穴やヘソ、耳、鼻、目、など全身の穴という穴から光が漏れ出す。内部から直接視神経を刺激されたセナはよろめきだす。
「何が…起きてるんだ…」
「ここだ!!」
 この機を逃してはならないと、ゼクシードは走り出し、ポケットからアルビニウムの入ったガラスケースを取り出し、セナに投げ込む。
「これで終わってくれ!!セナーー!!」
「「「「「「?!」」」」」」
 宙で佇み、ふらつくセナに向かって飛んでいくアルビニウム入りのガラスケース。そのままセナの体にぶつかり、少しの衝撃で割れ中身が漏れ出すと、アルビニウムは酸素と反応し、ものすごい勢いで白炎を舞い上がらせる。
 ボボボボボボボボボボ!!!!!
「うぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」
 今まで聞いたこともない靱リーダー・セナの叫び声がダイドウ深淵窟に木霊する。
 温度およそ6500度。その白炎がセナの体を包み込み、燃やし尽くさんとしていた。


「ぅぁぁぁ!!、ぁぁあ!!うぁぁぁあ!!、」
 セナは頭を抑え、全身で悶え苦しむ。まるで、サザン鉱山で薬品を持ち出そうとしてバレて、鞭打ちの刑に処された時のように、セナは大声をあげて苦しんでいた。
 
 そんなセナに呼応するように天地雷炎も体を左右に振り暴れ回っていた。深淵窟の壁に体を打ち付け、辺りの岩壁をぶち壊し、岩を崩落させる。そして、泥牢を維持できなくなったかシュウも解放される。そして、足元に横たわっていたソウヤを背負い、その場を離脱するシュウ。
「まずくないか、もしかしたら深淵窟がもたないぞ、」
 ハルミは深淵窟の心配をし、離脱を促すがシュウは賛同できない。
「でもこの機を逃したらアイツを倒せないかもしれない!畳み掛けなきゃ」
 担いでいたソウヤを降ろし、攻撃の構えを見せるシュウ。
「これが、ゼクシードさんの言ってアルビニウム…」
「なんて火力でしょうか…」

『グレイ!あの位置じゃ兄さんたちが危ない!』
 光の球、ハルトの指摘で、龍たちが暴れたことで激化する暴走とそれに伴う崩落がカイトたちに降り注いでくることを危惧するハルト。それを理解し、グレイはカイトたちの元へ駆け寄る。
「みなさん!カイトさんたちを連れて行かなきゃ、」
 グレイの声に呼応して、ミヅキ、リリアン、ゼクシードはカイトたちの元へ走る。
「シュウ!僕たちはあの龍をなんとかしなくては」
「あぁ、制御できてない今がチャンスだ!」
 光属性のオーラを集中させ、龍たちを迎撃しようとするハルミ。それに合わせるシュウ。
 そして倒れた者たちの救助に向かった4人は、リリアンの防壁魔法を駆使して落石を止めつつ、3人を背負い、離脱しようとする。グレイはカイトを、ゼクシードはボーディアンを、ミヅキとリリアンはマタタビを引っ張り、半ば無理矢理にでも移動させる。

「ゼク、シーーーード!!!!!」
「?!」
 アルビニウムの白炎に心身を焼き尽くされたセナはゼクシードに対し、怒りを露わにしながら、かろうじて水属性魔法を展開し、全身の熱を抑える。
「ハァハァ…ハァハァハァハァ…クハァ…ハァハァ。ゼクシード、貴様…」
 まさかの誤算。数十秒もの間肉体を6500度の炎に焼き尽くされていたというのに、セナはそれを耐え抜いてみせたのだ。
「足を引っ張るだけの出来損ないのくせに…魔力適性を持たない劣等種のくせに…ガハッガハッ…クソが…クソガァァァァァァ!!!!」

「奴を守れ!突撃してくるぞ!」
 ハルミの咄嗟の判断。激昂した相手が次の取る行動など容易に想像がつく。
 プシューーーーーー!!!!
 セナは高圧放水を両足に展開し、この状況を作り出したゼクシードに向かって、ものすごいスピードで急接近してくる。
 しかし、それさえ想定済みのゼクシードは、もう1つアルビニウム入りのケースをポケットから取り出す。1度や2度当てたくらいでは倒せない、もしくは外すことを想定して、アルビニウムを6つ生産・常備していた。1つは今使った物。1つはトールに渡してある物。そして、残るは4つ。あと4つで勝負を決める。
 そのうちの1つはセナを誘い出し、ゼロ距離で決める。
「ゼクシードォォ!!!!!!」
「セナァァァァァ!!!!!!」
 自分に突っ込んでくるセナの前に腕を伸ばし、アルビニウム入りのケースを握りつぶすゼクシード。2人の間に再び白い炎が舞い上がる。さっきはセナに対してのみ有効だった白炎が今度は自分にも牙を向けてくる。
 
 2人の間で燃え盛り、周囲の酸素を取り込んで肥大化していく白炎。しかし、2度目は無いぞと言わんばかりに、水属性魔法を展開・放出するセナ。ゼロ距離爆炎を抑え込み、ゼクシードの首を左手で鷲掴みにするセナ。
「クハァ!!」
「ゼクシード!!いくら知恵を絞ったって所詮は劣等種のお前には何もできやしない!一生強者の顔色を伺いながら奴隷のような苦痛を味わい続けていろ!」
「アッ…!!カッ…クァ、」
 咄嗟のことで口呼吸に集中してしまうゼクシード。必死に酸素を吸い込もうとしてもうまく吸えず、悶え苦しみだす。
 それでも抵抗しようとセナの腕を両手で掴み暴れるも非力な力はセナに及ばない。
「抵抗するのか?…なら、いっそ楽になれよ」
 ズサッ!!
「?!」
 瞳孔を見開き、体から一気に力が抜けるゼクシード。
 セナは左手でゼクシードの首を鷲掴みにしたまま、右手で腹を突き破ったのである。
「グハァァ…」
 血液が逆流し、口から一気に吐き出すゼクシード。熱さが身体中を襲い、意識が朦朧とし出す。完全に出血多量による症状であった。

 ゼクシード救出のため、動き出すシュウとハルミ。2人が魔法を展開しながら攻めてきたため、セナはゼクシードから右腕を引っこ抜き、後退して距離を取る。
「ゼクシードさん!」
「グレイ…君…やっぱり…僕には無理だった…みたいだ」
「リリアンさん!ミヅキさん!助けてください…ゼクシードさんが死んじゃう!」
 ゼクシードに駆け寄り治癒魔法を展開するリリアンとその協力をするミヅキ。
「これが…治癒魔法…。なんて、暖かいんだ…」
 治癒魔法、それは若き日のゼクシードたちが追い求めていたもの。1人の仲間の足を治すために、何日も、何週間も、何ヶ月も苦労して魔法の鍛錬を積んでも辿り着けなかった境地。
 その偉大なる治癒魔法の暖かさに、ゼクシードは包まれていく。

「どうしてだい?グレイ。そいつは靱の諜報員だった男だぞ?多くの人を殺める協力をした人間だ。自分の手は汚すことなく、情報という武器を駆使して幾度の殺人行為に加担してきた。サザンも、イリスも、アセトニアも、ミリオストも、そして今回のドセアニアも、そいつの集めた情報で作戦を立てた部分はある!君たち独立ギルドや冒険者たちのも全部だ!君たちを殺すための情報を提供して良い顔振り撒いてるくせに、簡単に組織を裏切って、今回みたいに色々と画策し、俺の命を狙ってきた。どうしようもないクズなんだよそいつは。君たちのことも平気な顔して裏切ってくるぞ?救ってやる価値なんかない。俺と同じ悪人だ」
「もう満足か?…」
「ナニィ?」
「それで言いたいことは全部か!!」
「?!」

「グレイ…」
「グレイ君…」
「グレイ…」
「グレイさん…」

「ゼクシードさんも、ゼクシードを信頼するトールさんも、話してくれました。7年前のことも、自分たちが犯してきた罪のことも、そして貴方に対しての罪滅ぼしがしたいことも」
「罪滅ぼし?何の話だ」
「貴方には、2人の気持ちは分からない!どれだけ長い間、貴方に縛られ続けてきたのか。自らの手を悪で染めたとしても、貴方に償うため、そして止めるために、2人は奮闘したんだ!そんなゼクシードさんたちは、決してなんかと同じじゃない!」
 

「グレイ君…これを…受け取ってくれないかい?」
 ゼクシードは、グレイに残り3つのアルビニウムを渡そうとする。
「それは…」
「何なのこれ?」
 少し遠目であったため、そのガラスケースが何なのか理解していないミヅキに説明するリリアン。
「これは、先ほどの白炎の正体です…」
「アレの?!それをグレイに渡してどうするのよ!」
「元々魔力耐性という特異体質のグレイさんに使用してもらう予定だった物なんです…」
 倒れるマタタビやカイト、ボーディアン、ソウヤ、そしてゼクシードに目をやるグレイ。この惨状を起こした元凶に抗う術、アルビニウム。自分の特異体質がその力を最大限に引き出せるのなら…。
「わかりました。僕が、ゼクシードさんの思いも乗せて、戦います!」
「ありがとう…」

「それじゃあ、後は頼みます、ミヅキさん」
 受け継がれる意志。アルビニウムを握りしめ、ゼクシードの思いを胸に立ち上がるグレイ。

「ハルミさん…シュウさん…力を貸してください」
「了解だ、ボス」
「任せろ…!」
 前髪をかきあげ、サングラスをかけ直すハルミと、刀の鍔に指をかけるシュウ。

「行きます!」
「「「了解!」」
 タイミングを合わせ、同時に駆け出す3人。それに合わせるようにセナも遠距離攻撃で迎撃する。
「フレア・バレット!、ウォーター・ショット!」
 2属性同時発動。火と水の無数の弾丸が3人に襲いかかる。
 ハルミは一歩後ろに下がり、ライトバレットで迎撃。弾丸同士をうまく当てて数を減らす。そして、グレイはハルミの正面に入り、体の前で腕を交わらせ撃ち落とせなかった残りの弾からハルミを守る。シュウは単独で広く展開し、血を這い、岩壁を走り、弾丸の攻撃範囲を散らす。
「熱属性魔法・熱風周波!」
 ブワァァァァァ!!!!
 セナを中心に広がり続ける熱風。殺傷能力が低い代わりに範囲内にいる者全てに必中効果をもたらす熱属性魔法。
「あ、つっ!」
「火口の近くにいるみたいな熱さだ…」
「んぅ…」
 全身に灼熱の風を当て続けられる感覚。発汗症状が見られ、全身がひりつき出す。しかし、今引いては、せっかく詰めた距離が無駄になってしまう。
 それでも、この熱さ、この攻撃範囲、放出時間、体が悲鳴をあげ、今にも倒れそうになってしまう。
 そんな時に聞こえてくる、透き通るような甘い声。全てを平等に癒し、清める歌。そんな神秘的な讃美歌が心の奥底に響いてくる。

「Amazing grace! How sweet the sound~」

 その美しい歌声は、熱を消し去り、心身を癒し、勇気を与えてくれる。

「これは…」
「アメイジング…グレイス…」

「That saved a wretch like me~
I once was lost, but now I am found, Was blind, but now I see.」

 その歌声の主は他でもない、ミヅキであった。彼女の、巫女としての力は日を跨ぐごとに進化し、本来の姿へと覚醒していく。

 その歌声には、熱耐性、マナ回復、身体回復、そして勇気付けるためのドーピング作用まで付与されていた。
 バフ効果の全てが完全なものではないにしても、目で見てわかるほどに深い傷は塞がり、出血も止まる。前の3人も、隣に横たわる致命傷のゼクシードさえもその恩恵に預かっていた。しかし、それら全ての効果が必ずしも良い方向にだけ傾くわけではなく、それを耳にしたセナもまたその恩恵に預かる。
「フッ、フッハッハッハッハッ!!これが巫女の力か…素晴らしい!まさに神級の力だ。」

「僕らはともかく、あいつまで元気になってるよ…」
「これは、やってしまったかミヅキちゃん」
「いえ、これでいいです」
「「?!」」
 ゾロゾロゾロゾロ…。
「?!…まさか…貴様ら」
 グレイたちの方を見て絶望に染まるセナの顔。その理由は、グレイたちのさらに奥、一度倒した者たちが息を吹き返していたからである。
 振り返り状況を確認するシュウとハルミ。自分たちの後ろで腕に力を込め、立ち上がるマタタビ、カイト、ボーディアン、ソウヤの4人。

「そういうことか」
「グレイ君…君のパーティーは、とことん最高だよ!」

「グレイ…この場に来てしまったか…」

「みなさん!あの人を倒す手段があります!少しの間でいいので、止めて欲しいです!」
「?!」
ーー危険な場所から離れてほしい。星界の使徒との一件があったというのに、紅白海賊王祭りでソウヤ君を身を挺して守ったり、テロリスト集団のリーダーに真っ向から挑んだり、常に危険の渦中に身を置き、1番危険な役回りを進んで演じてしまう。それでも、何故かグレイに希望を抱いてしまう。あの子なら、きっとこの状況を一変させてしまうのではないかと。そんなことを考えてしまう自分が…呆れてしまう。

「マタタビさん、グレイならきっとやってくれますよ!」
「カイト…」
「あいつは、立派な戦士ですから」
「あぁ…そうだね」
ーーグレイがセナを倒す算段があるというのなら、私たちの使命は、グレイを守ることだけだ!。

 セナは大量のマナを注ぎ込み、4属性を含む、シャボン玉を生成。破裂させると同時に、4種の龍を創生させる。
「何人束になっても、回復した俺には敵わないぞ!絶望しろ!天地雷炎!」
 再誕せし、天地雷炎を司る4体の龍。
「奴らを全員食いちぎれ!!」
 ガァァァァァァ!!!!
 ガァァァァァァ!!!!
 ガァァァァァァ!!!!
 ガァァァァァァ!!!!

 グレイたちに真っ直ぐ襲いかかる龍たちに、こちらも真っ向から立ち向かう。
 マタタビ、ソウヤ、ボーディアン、カイトが前へ踏み出す。
「やりますよ皆さん!」
「仕事は…する」
「グレイ君を守る!それがもう一度チャンスを与えられた僕らの役目!」
「あぁ、グレイを死んでも守れ!!」

「「「「「おぉ!!」」」」」

太陽光の熱射撃サンライズ・ブラスト!!
 ハルミの太陽光術を盗み、それを自分の技として応用、昇華させるカイト。ここに来て自分の光属性魔法を進化させる。
「フッ、やればできるじゃない…」
 太陽光の神々しいエネルギー砲が雷龍と正面衝突する。
「バーニング・フレイム!!!」
 己の持てる最高の火属性魔法を天龍に放出するボーディアン。
「水星剣・奥義、鮫牙会心撃コウガカイシンゲキ!」
 刀を逆手に持ち後ろに構えて、炎龍に向かい駆け出すソウヤ。そして、ゼロ距離で腕を思いっきり振り下ろし炎龍と衝突する。その姿はまるでサメの背びれのように見えることからこの名がつけられる。
「ウィンド・バスター!!」
 残る地龍を相手取るマタタビは、渾身の風属性魔法で地龍の全身を引き裂いていく。
 
 4人の魔法と4体の龍が正面衝突する中を躊躇なく駆け抜けていくグレイ。それを追うシュウとハルミ。

ーー龍は、必ずみんなが倒してくれる!怖がらず、突き進め!
ーーここぞという時の判断力は、やはりずば抜けてるな。

 ドガーーーーン!!!
 3人の後方では大きな爆発音が鳴り響く。それは、唯一出力負けしていたボーディアンが相手していた天龍がボーディアンを突き飛ばしたのである。
「?!」
「決して振り返るんじゃない!!!」
 仲間第一のグレイは、後ろが心配になってしまうが、マタタビの怒鳴り声がグレイの胸を刺激する。
「この龍は私たちがやるぞ!」
「はい!」
「わかりました!」
 マタタビ、ソウヤ、カイトはボーディアンの削った天龍を相手取る。

「まさか、天地雷炎の3体が…」
 すぐそこまで接近してくるグレイたちに気圧されるセナ。
ーー巫女の力で、こいつらに熱はもう効かない。
「それなら、㵢神拳!」
 水属性と雷属性の複合属性魔法、㵢属性のオーラを両手を纏い、3人を迎え打つセナ。
「㵢咆哮!」
 両手から放たれる㵢のイカヅチが広がる。
「プロテクト・シールド!」
3人の正面に大きな六角形の透明なバリアが展開される。
「これは?!」
「シスターだ!」
「フッ、リリアンめ…余計なことを」
 遠くから遠隔でシールドを展開させるシスター・リリアン。そのシールドは一時的に㵢咆哮から3人を守る。
「クッソ!リリアン!…ウィンド・アップ!」
 地上戦はまずいと見るや風属性魔法を駆使して空へ飛ぶセナ。
「ハルミ!」
「わかってる!サンライズ・バレット!」
 スター・バレットの進化版。太陽光の弾丸が空を駆けるセナに襲いかかる。
「ウォーターベール!」
 サンライズ・バレットを止めるべく水を壁を展開するセナだったが、スター・バレットよりも出力が増していることに気づかず、ウォーターベールを貫く太陽光の弾丸に撃ち抜かれてしまう。
「何?!」
「とっておきってのは最後まで隠しておくもんなんだよ」
 サンライズ・バレットを腹や足などにもろに喰らったセナはよろめき落ちてくる。
「まずい…このままでは、グレイにあの薬品を使われる…」
ーー5th・エレメント。
 両手で5つのシャボン玉を生成し、複合させる。火、水、雷、土、風、基本5属性全てを融合させる5th・エレメント。セナの手の中にドス黒い魔力が生み出される。
「5th・エレメント、デス・クライシス」
 ピカン。ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド。
 一縷の光が一瞬見えたかと思えば、ドス黒いオーラが炸裂し、その場にある全てのものを飲み込むように爆発していく。
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