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第二章 〜家族のカタチ
31話 『ナナシの正体』
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ロドクル家指揮官・ナーフ=ロドクルを中心に第二次ドセアニア侵攻を想定した作戦会議がドセアニア王国の大堂で行われる。
「まずは星界の使徒の存在についてだが、王国外壁の守護の任についていた兵士たちからそれらしい風貌の一団を目撃したという情報が寄せられた。」
「だろうな…」
正直、確信があったヒュートン陣営は下手に驚きはしない。星界の使徒と繋がりがあるのなら、グリムデーモンの封印解除にも十中八九ミヅキを利用してくることが予想される。できればヒュートン陣営、とくにグレイらやソウヤはグリムデーモンの封印場所を押さえたいところ。
「アルベルトさんよ、できればウチから何人かグリムデーモンの封印場所を押さえておきたいんだけどダメかね?」
ベルモンドはアルベルト=ヒュートンに小声で打診する。
「敵の目的はグリムデーモンの復活にある。だからそこを先に押さえるんだよ」
「わかった」
「ナーフ殿、我らヒュートン家陣営から何人かグリムデーモンの封印場所に向かわせ警護の任に着かせたい!いかがかな?」
「国王様のお言葉を借りるわけではないが、明確な根拠を提示していただきたい。」
「それは先ほど言ったはずだ。互いの戦力差と星界の使徒の目的、グリムデーモンの封印解除には色々合点がいくからだ」
「我々の調べでは、靭の1番の目的は奴隷解放にある。それにグリムデーモンの封印解除は特殊な方法でなければ無理だ。心配することはない」
ロドクル家陣営の指揮官・ナーフ=ロドクルは自身ありげにグリムデーモン復活の線を否定する。
「そもそも国王だってグリムデーモン復活の線で話を進めろと言っていたはずだ!」
会話がヒートアップしていくベルモンドとナーフ=ロドクル。
「総指揮権を一任されているのはこの私だ!それにグリムデーモンはアレス王子を含めた5人の多重層封印術によって深い深い眠りについておるのだ!それを解くにはアレス王子含めた5人を消す以外に方法はない!従って、我々の取るべき対策はアレス王子とその配下の護衛だ。」
ナーフ=ロドクルの自信の正体は、この多重層封印術であった。それはボーディアンの予想していた通りのもので基本5属性を媒介とした五重の結界封印。暗黒魔神王・ゼノンの封印術と構造は同じであった。しかし、巫女・ミヅキの存在は完全なる抜け道であった。彼女の力は一度、闇属性魔法の拘束を解いている。その応用で、いかなる魔法をも無力化してしまうという神級の力を有していた。今その存在を公にすれば話は一気にグリムデーモン警備に傾くだろう。しかし、ベルモンドたちはそのカードを切れない。
「では、大多数の戦力をアレス王子の護衛とドセアニア王国外壁警護、そして奴隷監視の任に振り当てた後、残ったものでドセアニア周辺に捜査網を拡大し、敵アジトの探索と大まかの侵攻方角の確認で異論はないかな?」
まずいことになったグレイたち。このままではミヅキを救出するどころかドセアニア国民にまで多大な被害が出てしまう。なによりグリムデーモンの脅威は、カイトが身をもって味わっている。たった一夜にしていくつもの都市を壊滅させるベイダー兵器。それがノース大陸最大国家に解き放たれたらノース大陸の人口は大幅に減少する。
「ダメだ…あんなバケモノ2度と動かしちゃいけない…」
「落ち着けカイト。お前は黙っていろ。」
小声でカイトを宥めるハルミ。
「本当にダメなんだ。あのバケモノだけは…あれだけは」
カイトの脳裏に、3年前のフラナを襲った悲劇がフラッシュバックし軽い発作を起こし始める。
「あれは…あれは…」
「落ち着け、落ち着くんだ」
大所帯の後ろで小さく発作を起こすカイトを宥めるハルミ。小声のため周りに発作が起きていることはバレてないにしろ、このままでは危険な状態になるかもしれない。
「俺が星界の使徒の内通者だからだ…」
「「「「「「「「「「「「?!」」」」」」」」」」」」
一同驚愕。ボーディアンの一言に場が静まり返る。
「星界の使徒には、特別な方法を駆使して多重層封印術を解く術がある。条件が揃っていないために暗黒魔神王・ゼノンの復活が難航しているだけで、今回はその条件が揃っている。それに所詮はベイダーの中でも中位の悪魔をかろうじて封じ込めてるだけのチンケな多重層だろ?暗黒魔神王を封じ込めている多重層の比ではない。このままだと、ドセアニア国民全員死ぬぞ?」
ボーディアンは畳み掛けるようにドセアニアの三臣家を脅す。自分は星界の使徒出身であり、グリムデーモンの封印を解く準備はできていると言う。情報源が敵なら信憑性は高いだろうと踏む三臣家たち。
「ボーディアン…」
「落ち着いたかカイト?」
「…あぁ。すいません、取り乱して」
ボーディアンの機転で何とか発作を抑えたカイトだったが、勿論ヘイトが集中するのはボーディアンだった。
「いやいやいや、待てよ!なぜ敵の関係者がここにいるんだ!この神聖なドセアニアの地にテロリスト組織を踏み入れるでないぞ!」
相当怒り心頭なナーフ=ロドクル。
「そやつは信用に値するのか?!どうなんだね!ヒュートン卿!」
「ひやぁ、えぇーと、あっ、おい!ベルモンド!どういうことだ?何故、星界の使徒の仲間がいるんだ!」
「彼も言った通り内通者ですよ。星界の使徒の裏切り者。安心してください。こちらの仲間です」
「だ、大丈夫だそうだ!この情報はあてにしていい」
アルベルト=ヒュートンは所詮言われるがまま。ベルモンドから聞いた通りにただ伝えるだけ。
「グリムデーモンの封印を解くという、特別な方法とは何だね?!」
「それは言えない。」
「どいうことだ貴様!」
ボーディアンにも先の流れの全てを読み切ることは出来なかったか。ミヅキの存在を伏せながら話を進めるにはさすがに無理がある。特別な方法と濁してはみたもののやはりそこは突かれる。
「あなたがたが俺を信用できないように、俺もそっちを信用していない。もし、アレス=ドセアニア、ならびに配下数名の命を奪う以外にグリムデーモンの封印解除の方法があるとすれば、それを悪用し出す輩が出てこないとも考えられないだろ。戦争大好きのドセアニア国民ならな」
「貴様!ドセアニアを愚弄するか!!えぇい、お前たち!やつを捕まえて独房に閉じ込めろ!」
完全に糸が切れたナーフ=ロドクルは、シルバーズ騎士団を動かしボーディアンを捕えようとする。
ボーディアンはドセアニア国民を煽ることで話を逸らすことに成功。
「どおでもいい!!そんなこと!」
意見を言わずずっと怒りを我慢していたグレイが噴火する。
「敵は靭と星界の使徒だ!ここにいる人たちじゃない!こんな緊急事態でどうして仲間割れするんだ!」
「彼の言う通りだ。もっと有益な話をした方がいいと私も思うぞ」
マタタビは感情的なグレイの発言を補足するように話す。
「敵の数や能力、具体的なアジトの突き止め方法、敵の目的を洗い出した上でどこに重きを置くか、論じなきゃいけないことは沢山あるだろう」
「ぐぬぬ…」
マタタビの最もな意見に口をつぐむ三臣家とその配下たち。
ロドクル家陣営のシルバーズ騎士団も話のわかる者たちで、マタタビの意見に賛同し、靭と星界の使徒の幹部および構成員の中で能力が割れている者たちについて情報を共有する。そこにヒュートン家陣営、ヒューストンヌも加わり作戦会議は有益で濃密な話し合いとなっていく。
「アルベルトさん…お話があります」
「なんだね?」
グレイは怒りを噴き出していた先ほどとは打って変わって、可愛らしい少年のような瞳でアルベルト=ヒュートンを見つめ小声で相談事をする。
「僕たちはもともとアルベルトさんに雇われていない身です。レオネード・ハーツの皆さんはアルベルトさんの指示に全てお任せしますが、僕たちを、どうか、どうかグリムデーモンの封印場所に配属してください!仲間が連れ攫われたんです」
「なんと?!それで君たちはグリムデーモンに固執していたのか。…ん?待てよ…君たちの仲間は現在敵と…?!まさか」
何となく察しがついたアルベルト=ヒュートン。
「まさか君たちの連れ攫われた仲間が封印を解く鍵なのかい?!」
「はい…」
「それは大変だ!よし!君たちはグリムデーモンの封印場所に配属する!約束するよ!あとで詳しく作戦を煮詰めよう!」
「はい!お願いします!」
「おーーい!ヒュートン卿、何をコソコソやっておる!話に加わらんか!」
「あぁ…今行きます、今行きますよ!」
ロドクル家陣営、アサダ家陣営、ヒュートン家陣営は協力し、作戦を盤石なものにするため煮詰める。
---------------------
ミヅキの身柄を確保したナナシもまたグレイらと同じく2日たらずでドセアニア西部にある靭アジトの1つに到着していた。
「リーダーのお帰りだ!」
「「「セーーナ!」」」
「「「セーーナ!」」」
「「「セーーナ!」」」
セナコールの絶えない靭アジト内部。
ミヅキを水属性魔法で拘束しながらアジトへ運び込んだナナシは祭壇の上にミヅキを落とし、深く被っていたフードを脱ぐと、そこからは水色味が混じる白く長い長髪が姿を現した。その男は手首に潜っていた髪留めを口に挟み、長髪を高い位置でまとめて、髪留めで一本に結び、大きくなびかせる。そう、その男の正体、ナナシの真の姿こそ、靭のリーダー・セナ=ジークフリートであった。
造船都市・エヴァンにて紅白海賊王祭りに参加し、今回のドセアニア侵攻作戦に関わってくるであろう独立ギルドの偵察を兼ねてレオネード・ハーツとホーリー・シンフォ、その他の独立ギルドや冒険者たちの力量をある程度調べていた。そしてホーリー・シンフォにはあらかじめ嘘の予定を交えた依頼内容を文で送り、案の定協力関係を持ったレオネード・ハーツたちの足止めを図っていた。何よりセナを喜ばせたニュースがミヅキの存在であった。グレイの件で大会後に騒動が勃発し、ミヅキの存在が公となったことで、狙う標的が増え、無事確保に成功。これでアレス=ドセアニアとその配下の計5名を抹殺するという遠回しな作戦を決行しなくとも1人の存在でグリムデーモンの封印を解くことができるようになってしまった。あとは、ミヅキに協力してもらうか無理矢理にでも魔法式を抽出するかのどちらか。もうすでに、絶望の一歩手前まで計画は進んでいた。
「静粛に!!…今ここに神級の力を秘めし巫女がいる!彼女の存在こそ、我らが長年探し求めてきたグリムデーモン復活の鍵だ!これで我らは憎きドセアニアに復讐することができる!我らを奴隷として扱い!物として扱い!人権を剥奪して痛みと苦しみを味合わせてきたドセアニアに!!!今こそ同じ痛みを味合わせてやろう!!」
「「「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」」」」
「「「「「靭ばんざい!」」」」」
「「「「「靭ばんざい!」」」」」
靭構成員たちは、ドセアニアへの復讐心で満ちていた。非力な自分達を救しセナとグリムデーモン。強大な2つの力に彼らは魅了されていた。
「グリムデーモン復活…」
「いよいよか…」
盛り上がる構成員たちを他所に不穏な感情を秘めた2人がいた。
「まさか靭が巫女を手に入れたか…」
それとは別に、巫女の存在に驚くアルカイドと星界の使徒構成員たちがいた。
「セナ!グリムデーモンの封印を解除する方法って?」
「あの巫女と呼ばれる少女の力は、全ての魔法式を消滅させることができる。もしくは無力化と言うべきか」
「何でそんなこと知ってるのよ?」
「俺たちと同じように長年巫女の力を追い求めていた組織があってな。そのうちの1人から情報提供をしてもらった」
「その組織って」
「星界の使徒だ」
「?!」
何ということか。セナは、ハナたちがアルカイドと協力関係になるずっと前から星界の使徒とコンタクトを取っていたのだ。
「嘘?!星界の使徒って言ったら、今アジトにいる…」
「あぁ、知っているよ。彼らがドセアニアに来るだろうという話も事前に聞いている。火の魔女書だろ?」
「え、えぇ。そうよ」
セナには全てのことが見透かされている様だった。星界の使徒の接触も、火の魔女書についても、巫女のノース大陸到着も、独立ギルドの動きも、何もかもが見透かされている。まるでここにいる全ての人間が彼の掌の上で転がされている様にさえ思えた。
「まさか、これから先のドセアニアの動きも分かるの?」
「大体はね。ドセアニアの主軸である三臣家はきっと、ドセアニア王国外壁とアレス=ドセアニア、そして奴隷収容施設に勢力を集中させるはずだ。俺らの目的がそこに集中していると考えているからだ。ただ、独立ギルドの連中が巫女の存在について伝えていればグリムデーモンの封印場所に勢力が集まる可能性もある。」
巫女についての事情を除けば、ドセアニアが考え抜いていたほぼ全ての作戦を言い当ててしまった。
ハナはセナの解答に驚きつつも、1つの懸念を抱えていた。それは戦力差であった。今回は初っ端から王城内部に侵入し奇襲をかけることに成功したが次同じ作戦が決まる保証はないし、セナのいう独立ギルドの精鋭たちが合流してしまった以上、さらに層は厚くなる。たとえ3箇所か4箇所に戦力を分断したとしても台頭に渡り合えるかどうかは終わってみてからでないと分からない。
「どこから攻めるの?」
「もちろんグリムデーモンだ。あの存在さえ解き放ってしまえば指を咥えてるだけでドセアニアは地図上から姿を消すだろう」
「さっきセナはグリムデーモンの封印場所に戦力が集中するかもって言ってた」
「あぁ。だから、戦力を分断させるために星界の使徒を利用する。この混乱の最中、王城内部の宝庫はきっと警備がいつもより手薄だ。星界の使徒も必ずそこを狙ってくる。それなら王城内で好きなだけ暴れさせてやればいい。国が無くなるか、労働力が死ぬか、資産が無くなるか、ドセアニアを潰す方法なんて別に1つじゃない。星界の使徒を宝庫に仕向ければ、必ず勢力は分断されるだろう」
つまりセナの作戦は靭がグリムデーモンの封印場所に向かい、星界の使徒には予定通り火の魔女書を狙わせ宝庫に向かわせる。これで、戦力は割れるという。
セナは靭の幹部を集め第二次ドセアニア侵攻についての指示を与える。その集まりにゼクシードは含まれていなかった。
「セナ、ゼクシードはいいの?」
気を遣ってかハナはゼクシードが出席にしていないことに触れるとセナは必要ないと切り捨てた。
「どちらにせよゼクシードには筒抜けだろうからね…」
ニヤリとトールに向かって笑みを見せる。トールがゼクシードと組んで何やら画策していることはセナにはお見通しであった。
「単刀直入にいうが、第二次ドセアニア侵攻では、俺たちは真っ先にグリムデーモンの封印解除に向かう。」
全員が予定通りであるといった顔。はなからグリムデーモン復活を計画に入れてのものだったため、むしろグリムデーモンの復活を阻止されればドセアニアの軍事規模に一組織が太刀打ちできるわけがない。
「その際、いくつか仕掛けをする。トール、お前はこのアジトに残り、敵の主戦力を引き止めろ。」
「どういうことだ?アジトに…招くのか?敵を」
「あぁ。このアジトの存在をわざとバラして敵を誘き寄せる。そこには必ず敵の主戦力が投入されるはずだ。そいつら相手をしろ」
「囮ってわけか…了解」
トールは義足をつけているため俊敏な動きはできない。適材適所というべきか、致し方なくというべきか、アジトに取り残され、囮役に任命された。そしてきっとゼクシードもグリムデーモン復活の作戦には同行させない。つまりゼクシードもアジトに取り残され自動的に囮役として使われる。
「ハナ、カガチ、お前らにもしっかり働いてもらうぞ」
靭もまた第二次ドセアニア侵攻の作戦を煮詰めていく。
ドセアニア、対、靭の第二戦が始まろうとしていた。
「まずは星界の使徒の存在についてだが、王国外壁の守護の任についていた兵士たちからそれらしい風貌の一団を目撃したという情報が寄せられた。」
「だろうな…」
正直、確信があったヒュートン陣営は下手に驚きはしない。星界の使徒と繋がりがあるのなら、グリムデーモンの封印解除にも十中八九ミヅキを利用してくることが予想される。できればヒュートン陣営、とくにグレイらやソウヤはグリムデーモンの封印場所を押さえたいところ。
「アルベルトさんよ、できればウチから何人かグリムデーモンの封印場所を押さえておきたいんだけどダメかね?」
ベルモンドはアルベルト=ヒュートンに小声で打診する。
「敵の目的はグリムデーモンの復活にある。だからそこを先に押さえるんだよ」
「わかった」
「ナーフ殿、我らヒュートン家陣営から何人かグリムデーモンの封印場所に向かわせ警護の任に着かせたい!いかがかな?」
「国王様のお言葉を借りるわけではないが、明確な根拠を提示していただきたい。」
「それは先ほど言ったはずだ。互いの戦力差と星界の使徒の目的、グリムデーモンの封印解除には色々合点がいくからだ」
「我々の調べでは、靭の1番の目的は奴隷解放にある。それにグリムデーモンの封印解除は特殊な方法でなければ無理だ。心配することはない」
ロドクル家陣営の指揮官・ナーフ=ロドクルは自身ありげにグリムデーモン復活の線を否定する。
「そもそも国王だってグリムデーモン復活の線で話を進めろと言っていたはずだ!」
会話がヒートアップしていくベルモンドとナーフ=ロドクル。
「総指揮権を一任されているのはこの私だ!それにグリムデーモンはアレス王子を含めた5人の多重層封印術によって深い深い眠りについておるのだ!それを解くにはアレス王子含めた5人を消す以外に方法はない!従って、我々の取るべき対策はアレス王子とその配下の護衛だ。」
ナーフ=ロドクルの自信の正体は、この多重層封印術であった。それはボーディアンの予想していた通りのもので基本5属性を媒介とした五重の結界封印。暗黒魔神王・ゼノンの封印術と構造は同じであった。しかし、巫女・ミヅキの存在は完全なる抜け道であった。彼女の力は一度、闇属性魔法の拘束を解いている。その応用で、いかなる魔法をも無力化してしまうという神級の力を有していた。今その存在を公にすれば話は一気にグリムデーモン警備に傾くだろう。しかし、ベルモンドたちはそのカードを切れない。
「では、大多数の戦力をアレス王子の護衛とドセアニア王国外壁警護、そして奴隷監視の任に振り当てた後、残ったものでドセアニア周辺に捜査網を拡大し、敵アジトの探索と大まかの侵攻方角の確認で異論はないかな?」
まずいことになったグレイたち。このままではミヅキを救出するどころかドセアニア国民にまで多大な被害が出てしまう。なによりグリムデーモンの脅威は、カイトが身をもって味わっている。たった一夜にしていくつもの都市を壊滅させるベイダー兵器。それがノース大陸最大国家に解き放たれたらノース大陸の人口は大幅に減少する。
「ダメだ…あんなバケモノ2度と動かしちゃいけない…」
「落ち着けカイト。お前は黙っていろ。」
小声でカイトを宥めるハルミ。
「本当にダメなんだ。あのバケモノだけは…あれだけは」
カイトの脳裏に、3年前のフラナを襲った悲劇がフラッシュバックし軽い発作を起こし始める。
「あれは…あれは…」
「落ち着け、落ち着くんだ」
大所帯の後ろで小さく発作を起こすカイトを宥めるハルミ。小声のため周りに発作が起きていることはバレてないにしろ、このままでは危険な状態になるかもしれない。
「俺が星界の使徒の内通者だからだ…」
「「「「「「「「「「「「?!」」」」」」」」」」」」
一同驚愕。ボーディアンの一言に場が静まり返る。
「星界の使徒には、特別な方法を駆使して多重層封印術を解く術がある。条件が揃っていないために暗黒魔神王・ゼノンの復活が難航しているだけで、今回はその条件が揃っている。それに所詮はベイダーの中でも中位の悪魔をかろうじて封じ込めてるだけのチンケな多重層だろ?暗黒魔神王を封じ込めている多重層の比ではない。このままだと、ドセアニア国民全員死ぬぞ?」
ボーディアンは畳み掛けるようにドセアニアの三臣家を脅す。自分は星界の使徒出身であり、グリムデーモンの封印を解く準備はできていると言う。情報源が敵なら信憑性は高いだろうと踏む三臣家たち。
「ボーディアン…」
「落ち着いたかカイト?」
「…あぁ。すいません、取り乱して」
ボーディアンの機転で何とか発作を抑えたカイトだったが、勿論ヘイトが集中するのはボーディアンだった。
「いやいやいや、待てよ!なぜ敵の関係者がここにいるんだ!この神聖なドセアニアの地にテロリスト組織を踏み入れるでないぞ!」
相当怒り心頭なナーフ=ロドクル。
「そやつは信用に値するのか?!どうなんだね!ヒュートン卿!」
「ひやぁ、えぇーと、あっ、おい!ベルモンド!どういうことだ?何故、星界の使徒の仲間がいるんだ!」
「彼も言った通り内通者ですよ。星界の使徒の裏切り者。安心してください。こちらの仲間です」
「だ、大丈夫だそうだ!この情報はあてにしていい」
アルベルト=ヒュートンは所詮言われるがまま。ベルモンドから聞いた通りにただ伝えるだけ。
「グリムデーモンの封印を解くという、特別な方法とは何だね?!」
「それは言えない。」
「どいうことだ貴様!」
ボーディアンにも先の流れの全てを読み切ることは出来なかったか。ミヅキの存在を伏せながら話を進めるにはさすがに無理がある。特別な方法と濁してはみたもののやはりそこは突かれる。
「あなたがたが俺を信用できないように、俺もそっちを信用していない。もし、アレス=ドセアニア、ならびに配下数名の命を奪う以外にグリムデーモンの封印解除の方法があるとすれば、それを悪用し出す輩が出てこないとも考えられないだろ。戦争大好きのドセアニア国民ならな」
「貴様!ドセアニアを愚弄するか!!えぇい、お前たち!やつを捕まえて独房に閉じ込めろ!」
完全に糸が切れたナーフ=ロドクルは、シルバーズ騎士団を動かしボーディアンを捕えようとする。
ボーディアンはドセアニア国民を煽ることで話を逸らすことに成功。
「どおでもいい!!そんなこと!」
意見を言わずずっと怒りを我慢していたグレイが噴火する。
「敵は靭と星界の使徒だ!ここにいる人たちじゃない!こんな緊急事態でどうして仲間割れするんだ!」
「彼の言う通りだ。もっと有益な話をした方がいいと私も思うぞ」
マタタビは感情的なグレイの発言を補足するように話す。
「敵の数や能力、具体的なアジトの突き止め方法、敵の目的を洗い出した上でどこに重きを置くか、論じなきゃいけないことは沢山あるだろう」
「ぐぬぬ…」
マタタビの最もな意見に口をつぐむ三臣家とその配下たち。
ロドクル家陣営のシルバーズ騎士団も話のわかる者たちで、マタタビの意見に賛同し、靭と星界の使徒の幹部および構成員の中で能力が割れている者たちについて情報を共有する。そこにヒュートン家陣営、ヒューストンヌも加わり作戦会議は有益で濃密な話し合いとなっていく。
「アルベルトさん…お話があります」
「なんだね?」
グレイは怒りを噴き出していた先ほどとは打って変わって、可愛らしい少年のような瞳でアルベルト=ヒュートンを見つめ小声で相談事をする。
「僕たちはもともとアルベルトさんに雇われていない身です。レオネード・ハーツの皆さんはアルベルトさんの指示に全てお任せしますが、僕たちを、どうか、どうかグリムデーモンの封印場所に配属してください!仲間が連れ攫われたんです」
「なんと?!それで君たちはグリムデーモンに固執していたのか。…ん?待てよ…君たちの仲間は現在敵と…?!まさか」
何となく察しがついたアルベルト=ヒュートン。
「まさか君たちの連れ攫われた仲間が封印を解く鍵なのかい?!」
「はい…」
「それは大変だ!よし!君たちはグリムデーモンの封印場所に配属する!約束するよ!あとで詳しく作戦を煮詰めよう!」
「はい!お願いします!」
「おーーい!ヒュートン卿、何をコソコソやっておる!話に加わらんか!」
「あぁ…今行きます、今行きますよ!」
ロドクル家陣営、アサダ家陣営、ヒュートン家陣営は協力し、作戦を盤石なものにするため煮詰める。
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ミヅキの身柄を確保したナナシもまたグレイらと同じく2日たらずでドセアニア西部にある靭アジトの1つに到着していた。
「リーダーのお帰りだ!」
「「「セーーナ!」」」
「「「セーーナ!」」」
「「「セーーナ!」」」
セナコールの絶えない靭アジト内部。
ミヅキを水属性魔法で拘束しながらアジトへ運び込んだナナシは祭壇の上にミヅキを落とし、深く被っていたフードを脱ぐと、そこからは水色味が混じる白く長い長髪が姿を現した。その男は手首に潜っていた髪留めを口に挟み、長髪を高い位置でまとめて、髪留めで一本に結び、大きくなびかせる。そう、その男の正体、ナナシの真の姿こそ、靭のリーダー・セナ=ジークフリートであった。
造船都市・エヴァンにて紅白海賊王祭りに参加し、今回のドセアニア侵攻作戦に関わってくるであろう独立ギルドの偵察を兼ねてレオネード・ハーツとホーリー・シンフォ、その他の独立ギルドや冒険者たちの力量をある程度調べていた。そしてホーリー・シンフォにはあらかじめ嘘の予定を交えた依頼内容を文で送り、案の定協力関係を持ったレオネード・ハーツたちの足止めを図っていた。何よりセナを喜ばせたニュースがミヅキの存在であった。グレイの件で大会後に騒動が勃発し、ミヅキの存在が公となったことで、狙う標的が増え、無事確保に成功。これでアレス=ドセアニアとその配下の計5名を抹殺するという遠回しな作戦を決行しなくとも1人の存在でグリムデーモンの封印を解くことができるようになってしまった。あとは、ミヅキに協力してもらうか無理矢理にでも魔法式を抽出するかのどちらか。もうすでに、絶望の一歩手前まで計画は進んでいた。
「静粛に!!…今ここに神級の力を秘めし巫女がいる!彼女の存在こそ、我らが長年探し求めてきたグリムデーモン復活の鍵だ!これで我らは憎きドセアニアに復讐することができる!我らを奴隷として扱い!物として扱い!人権を剥奪して痛みと苦しみを味合わせてきたドセアニアに!!!今こそ同じ痛みを味合わせてやろう!!」
「「「「「「おおおおおおおおお!!!!」」」」」」
「「「「「靭ばんざい!」」」」」
「「「「「靭ばんざい!」」」」」
靭構成員たちは、ドセアニアへの復讐心で満ちていた。非力な自分達を救しセナとグリムデーモン。強大な2つの力に彼らは魅了されていた。
「グリムデーモン復活…」
「いよいよか…」
盛り上がる構成員たちを他所に不穏な感情を秘めた2人がいた。
「まさか靭が巫女を手に入れたか…」
それとは別に、巫女の存在に驚くアルカイドと星界の使徒構成員たちがいた。
「セナ!グリムデーモンの封印を解除する方法って?」
「あの巫女と呼ばれる少女の力は、全ての魔法式を消滅させることができる。もしくは無力化と言うべきか」
「何でそんなこと知ってるのよ?」
「俺たちと同じように長年巫女の力を追い求めていた組織があってな。そのうちの1人から情報提供をしてもらった」
「その組織って」
「星界の使徒だ」
「?!」
何ということか。セナは、ハナたちがアルカイドと協力関係になるずっと前から星界の使徒とコンタクトを取っていたのだ。
「嘘?!星界の使徒って言ったら、今アジトにいる…」
「あぁ、知っているよ。彼らがドセアニアに来るだろうという話も事前に聞いている。火の魔女書だろ?」
「え、えぇ。そうよ」
セナには全てのことが見透かされている様だった。星界の使徒の接触も、火の魔女書についても、巫女のノース大陸到着も、独立ギルドの動きも、何もかもが見透かされている。まるでここにいる全ての人間が彼の掌の上で転がされている様にさえ思えた。
「まさか、これから先のドセアニアの動きも分かるの?」
「大体はね。ドセアニアの主軸である三臣家はきっと、ドセアニア王国外壁とアレス=ドセアニア、そして奴隷収容施設に勢力を集中させるはずだ。俺らの目的がそこに集中していると考えているからだ。ただ、独立ギルドの連中が巫女の存在について伝えていればグリムデーモンの封印場所に勢力が集まる可能性もある。」
巫女についての事情を除けば、ドセアニアが考え抜いていたほぼ全ての作戦を言い当ててしまった。
ハナはセナの解答に驚きつつも、1つの懸念を抱えていた。それは戦力差であった。今回は初っ端から王城内部に侵入し奇襲をかけることに成功したが次同じ作戦が決まる保証はないし、セナのいう独立ギルドの精鋭たちが合流してしまった以上、さらに層は厚くなる。たとえ3箇所か4箇所に戦力を分断したとしても台頭に渡り合えるかどうかは終わってみてからでないと分からない。
「どこから攻めるの?」
「もちろんグリムデーモンだ。あの存在さえ解き放ってしまえば指を咥えてるだけでドセアニアは地図上から姿を消すだろう」
「さっきセナはグリムデーモンの封印場所に戦力が集中するかもって言ってた」
「あぁ。だから、戦力を分断させるために星界の使徒を利用する。この混乱の最中、王城内部の宝庫はきっと警備がいつもより手薄だ。星界の使徒も必ずそこを狙ってくる。それなら王城内で好きなだけ暴れさせてやればいい。国が無くなるか、労働力が死ぬか、資産が無くなるか、ドセアニアを潰す方法なんて別に1つじゃない。星界の使徒を宝庫に仕向ければ、必ず勢力は分断されるだろう」
つまりセナの作戦は靭がグリムデーモンの封印場所に向かい、星界の使徒には予定通り火の魔女書を狙わせ宝庫に向かわせる。これで、戦力は割れるという。
セナは靭の幹部を集め第二次ドセアニア侵攻についての指示を与える。その集まりにゼクシードは含まれていなかった。
「セナ、ゼクシードはいいの?」
気を遣ってかハナはゼクシードが出席にしていないことに触れるとセナは必要ないと切り捨てた。
「どちらにせよゼクシードには筒抜けだろうからね…」
ニヤリとトールに向かって笑みを見せる。トールがゼクシードと組んで何やら画策していることはセナにはお見通しであった。
「単刀直入にいうが、第二次ドセアニア侵攻では、俺たちは真っ先にグリムデーモンの封印解除に向かう。」
全員が予定通りであるといった顔。はなからグリムデーモン復活を計画に入れてのものだったため、むしろグリムデーモンの復活を阻止されればドセアニアの軍事規模に一組織が太刀打ちできるわけがない。
「その際、いくつか仕掛けをする。トール、お前はこのアジトに残り、敵の主戦力を引き止めろ。」
「どういうことだ?アジトに…招くのか?敵を」
「あぁ。このアジトの存在をわざとバラして敵を誘き寄せる。そこには必ず敵の主戦力が投入されるはずだ。そいつら相手をしろ」
「囮ってわけか…了解」
トールは義足をつけているため俊敏な動きはできない。適材適所というべきか、致し方なくというべきか、アジトに取り残され、囮役に任命された。そしてきっとゼクシードもグリムデーモン復活の作戦には同行させない。つまりゼクシードもアジトに取り残され自動的に囮役として使われる。
「ハナ、カガチ、お前らにもしっかり働いてもらうぞ」
靭もまた第二次ドセアニア侵攻の作戦を煮詰めていく。
ドセアニア、対、靭の第二戦が始まろうとしていた。
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