グレイロード

未月 七日

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第二章 〜家族のカタチ

30話 『ドセアニア勢力』

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 大型魔動車に乗り、ドセアニアを目指すグレイら一行。距離にして340kmほど。このまま40キロ走行を続けていれば着くのは2日後。

「フラナ行きのつもりが大事になってしまいましたねカイトさん」
「どの口が言ってんだグレイ~」
 カイトはグレイの頬をつまみビヨーンと引っ張り戯れ合う。
「でも、事態が落ち着けばゆっくりお墓参りできますよ」
「そうだね」

「見て!リリアン!ほらっ!ほらっ!」
「おぉ~すごいですね!」
 大型魔動車の中で騒ぐミヅキとリリアン。その内容はミヅキがほんの少しの間だけ水の玉を生成、形を維持することができたというもの。
「やりましたねマタタビさん!」
「あぁ…良いことだな」
 ミヅキは、グレイ同様に魔法の適性が低いタイプの人間なのかもしれないと心配していたマタタビにとってはこの結果は望ましいものであった。歌魔法以外での魔法。自分自身を守る術が身につきつつある。

「シュウとやら。先の戦い、真剣の使用を許可してほしい」
 ボーディアンは、シュウに裏切りの可能性があるとされ常に監視されている状況にあり、真剣の所持を固く禁じられていた。
「…。」
「次の相手はウェアウルフなんかとは訳が違う!木剣では命を落とす」
「こんな数日共にしただけじゃお前が信用にたる人間か俺には判断できない。お宅のリーダーに聞いてくれ」
「「「それって…」」」
 ミヅキやカイト、それにマタタビはグレイの方向を見る。
「??」
 頭にハテナを思い浮かべるグレイにボーディアンが真剣を持つほどに信用に足か否かをグレイに判断してもらう。
「僕はいいと思いますよ!ボーディアンさんは仲間ですから」
「…そうか。と言う訳だシュウ」
「リリアン、転送魔法陣を開けろ。予備の俺の刀を一本渡してやれ」
「わかりました。開け、オプションゲート!」
 無属性魔法・オプションゲート。
 生物の転送以外の事象なら全てに応用できる簡易ゲート魔法。リリアンは武器や備蓄などの貯蔵に使用し、いつでも転送することができるようにしていた。
「どれにします?雨風・天善フウウ・テンゼン跋扈天蘭バッコテンラン染井時雨ソメイシグレ、どれでも好きなのを」
「なんで名刀なんだよ!何か、その、テキトーなやつあるだろ!」
「凄いな…」
「何が凄いんですか?」
 リリアンの口に出す3本の名刀に驚くソウヤに対して、グレイは聞いてみる。
「風雨・天善、跋扈天蘭、染井時雨、全て日本刀って呼ばれる部類の刀で、それには4つのランクがあるんだけど…その中でも大業物っていう上から2番目の凄い部類に分けられる刀たちなんだ。」
「大業物??」
「そう。最上大業物、大業物、良業物、業物。そもそも日本刀なだけあって頑丈さや切れ味、品質に関しては業物であっても一級品なのにその2つ上のランクが今ここに3本もあるんだ、凄いことだよ。何せ大業物は世界で30本しか打たれてないとか」
 新たな大業物も産まれたことで、正確な現在の大業物の数は34本。シュウが携帯している永宗光彦エイソウミツヒコを合わせて、計4本の大業物を所持しているシュウ。その額、金貨3600枚はくだらない。
「き、き、き、き、金貨3600枚?!」
 その巨額さに目を回して倒れるグレイ。
「なら、染井時雨を頼む」
「なんでよ!話聞いてたか!」
「…いや、聞いていない」
「聞けよ!」
「なんかこの光景見たことある気がする、ははは…」
 いつもツッコミ担当に回っていたカイトは、そのやりとり思い当たる節があり呆れ返る。
 レオネード・ハーツもそのやりとりに参加し、ベルモンドとタツマキはシュウの腕と足を拘束し、リリアンに染井時雨を出させる。
「おい、待て!待つんだリリアン!」
 リリアンによって染井時雨を手渡されたボーディアンはそれを腰に添えてシュウに頭を下げる。
「かたじけない…」
「武士道ねーくせに形だけの礼をすんな!てか返せ!この!」
「まぁまぁ良いじゃないですか、沢山持ってるんですから」
「なんなら俺にも一本くれよ」
「はぁ?!ふざけんな」
 流れでボケるベルモンドに対してブチギレるシュウをみて笑い転げる一同。
「おいボーディアン!テメェ死んでもその刀返せよ」
「死んだら返せないだろ」
「ボケじゃねーよ!」
「「「「「ハッハッハッ!」」」」」
 これから戦争地帯に足を踏み入れる一団とは思えないほどに活気があった。

「ハハハ、面白いね」
「「「「「「「「「「「「?!」」」」」」」」」」」」

 何やら聞き馴染みのない声に全員が大型魔動車の後方に目を移す。そこにはフードを深くまで被った黒マントの人物が座っていた。
「誰だお前!」
「いつからそこにいた!」
 大型魔動車内で立ち上がり臨戦態勢に入るベルモンドとハルミ。遅れてカイトやシュウも立ち上がり援護する姿勢。
 しかし、カイトはその人物に何やら心当たりがある様子。
「あなた…もしかしてナナシさん?」
「ナナシ?」
「…?!。まさか紅白海賊王祭りの?」
 ベルモンドとハルミが聞き返すとフードを深く被った人物は黒いマントから腕を出し、人差し指と親指で輪っかをつくり、ピンポーンッと答える。
「なんでこんなところにいんだオメェ」
「乗ってきたのは君たちの方さ。俺は最初っからここにいたよ。」
「なんだって?!」
 レンタルの手続きをしたのもベルモンド、最初に乗車したのもベルモンド。しかし、ナナシの存在は確認していない。最初からいたなんて嘘だろうとベルモンドは言う。
「本当さ。君たちがこの30人乗りの大型魔動車に乗るのはわかっていたからね」
「どういう意味だ?まるで最初から待ち伏せしてたみたいな言い草だな」
「そう言ってるからね」
「何だと!」
 会話の中から全く目的が見えてこないナナシ。どうしてグレイたちがこの大型魔動車を利用すると思ったのか。そして、なぜこちらを待ち伏せしていたのか。疑問に疑問が上書きされる。
「何故かは知らないが、君たちはある団体に足止めを喰らわされた。その団体は、何やらグレイ君たちと関係があるときたもんだ。そうなると、必然的に避けるか、全員で行動するかの2択になるが、そこは共に行動することに賭けた」
「賭けだと?そもそもお前の狙いは何だ!何故待ち伏せてた!」
「フッ……水縛鎖スイバクサ。」
 唐突にナナシは、全員の椅子に仕掛けていた水属性の拘束魔法を展開する。
「くっそ!トラップか!」
 椅子から離れていたベルモンドやハルミも伸びる水の鎖で容赦なく拘束され、椅子に固定される。
「狙い?っだたかな…それは君の捕縛連行だよ。ミス・ミヅキ」
 ナナシはミヅキに近寄り、顎をあげ瞳を覗き込む。
「お前もか!ナナシ!」
「貴様も星界の使徒の関係者か!」
 カイトとボーディアンは無理矢理にでも抵抗し一矢報いようとするが、水縛鎖はそう簡単には解けない。
 ジュワァァァァァァ~。
「?!」
 ナナシは一瞬でミヅキを強固なシャボン玉で覆い、ミヅキに拘束していた水縛鎖を解き連行。そして、マタタビから距離を取る。
 マタタビを警戒するナナシ。そのマタタビからは水を蒸発させ、水蒸気を上げていたのだ。
「水縛鎖を火の熱で攻略しようとしているのか?!」
「さすがマタタビさんだぜ!ミヒャお前も!」
「もうやってる…それに…」
 ミヒャ大型魔動車の床を強く踏みつけ、緑色の植物の鞭を生成し、ナナシに向かって伸ばす。
「それは確か発火性の植物だったか?ウォーターベール」
 ミヒャの得意属性を網羅しているナナシは水の壁を展開。一切近寄らせない気であった。
「それじゃあ用事があるからお先にね」
「逃がすものか!」
 水縛鎖に熱を与えて拘束を解いたマタタビは、風属性魔法を練り上げ放とうとする。しかし、それをハルミが止める。
「待ってください!マタタビさん!魔動車の操縦席が壊れる!」
「?!」
 ハルミに止められマタタビは魔力を抑えてしまった。
「それじゃあ」
 ウォーターベール越しに見えた2人の姿は、次第に透明化し、姿を消した。
「消えた?!」
「そんな…瞬間移動か」
「いや水属性にそんな力はないはずだ」
 バンッ!
 唐突に前方で大きな音が鳴ったかと思えば、大型魔動車のドアが蹴破られた音であった。
「まだ入り口にいるぞ!」
 そう叫び、マタタビはドアの方へ走る。続いてミヒャも駆け寄るが、2人の姿は全く確認できない。
「透明化…透明化されたのか」
「分からない…ブロッサムエリア!」
 ミヒャは大型魔動車を中心に半径5mほどの発火性の特性を持つ花畑を展開させる。しかし、花が踏まれる様子や足音は一切しない。透明化であってももう地上の5m付近には存在しないことになる。
 パチンッ!ボゥ!
 一応でブロッサムエリア全域を燃やし尽くすも反応は無し。ミヅキを連れたナナシに完全に逃げられてしまった。
「クソォォォォオオオ!」
 マタタビは激怒する。師弟と呼ぶにはあまりにも浅い関係値。しかし、一度は魔法を教えた身であり、グレイが仲間と慕う者を連れ去られてしまった。人生で2度目の弟子・仲間を連れ攫われるという失態に、怒りを隠しきれない。それはナナシにであるものと、自分にであるもの。

「私が隣についていながら、ミヅキさんを…」
 マタタビだけではない。リリアンもまた自分を責める。ミヅキの1番近くにいながらミヅキを攫われたこと。そしてミスミスナナシを逃したこと。

「おいレオネード・ハーツ」
「なんだよ…」
「確か靭って組織の目的の1つには、グリムデーモンの復活とかいうのがあったな?」
「あぁ…それがどうした」
「似てないか。星界の使徒の目的と…」
「「「「「「「「「「「「?!」」」」」」」」」」」」
 ボーディアンの考察。それはナナシが靭関係者ではないかということ。ミヅキの力を暗黒魔神王・ゼノンの復活に利用しようとしていた星界の使徒と同じように、靭もまたグリムデーモンの復活に利用しようとしてるのではないかという考察であった。
「あり得る…。それだ」
 ベルモンドも納得。
「だとしたら、ナナシは今、ドセアニアに向かってる?!」
「確実ではない。が、星界の使徒の存在にも薄々触れていた部分はある。なによりミヅキ誘拐の理由は限られている。こちらも…賭けてみる価値はある」
「行きましょう!ドセアニアに!」
 グレイもまた怒りに満ちていた。
 ミヅキ救出のため、ミヅキがドセアニアに連れて行かれたことに賭ける一行は再びドセアニアに向け走り出す。

「ナナシの透明化はどう思う?」
 ベルモンドは全員に問いかけ、意見を交換する。
「終始、水属性魔法を使用していたところを見るに、水属性に関連したものではないでしょうか?」
「霧や霞の類ではなく、完全に体を消すようなものだったな」
「んーーーーー、ミヅキちゃんも消えたよね?」
 ナナシの透明化の謎は深まるばかり。この問題を難しくしている点は、ナナシ単体だけではなく、ミヅキまで透明化の対象になっているところにあった。
「マタタビさんは何かわかりませんか?」
 長年の冒険者としての経験や知識を頼りにハルミが意見を貰おうとすると、マタタビは困った顔をする。
「分からない…水属性と仮定した場合での人体を消す、もしくは透明化させる魔法なんて聞いたことがない」
「なら、他の属性魔法ならどうですか?」
「んーー…さっぱりだ。光属性魔法には無いのか?」
 あくまでハルミは光属性魔法の発現条件について深く調べていた人物のため、光属性魔法の技については広く知り得ていなかった。
「すいません。わかりません」
「困ったな。仮にナナシを見つけたとしても同じ手で逃げられればイタチごっこになるぞ」
 
「とりあえずまだ2日はドセアニアにつかねー。なんか気づいたことがあれば逐一報告する。今はそれで行こうか」
 謎が深まるナナシの透明化魔法に悩まされる一同。時間は残り2日。この謎の答えを見つけることができるの





 ドセアニアまでの途中にある街、タルタニア、モスアニアの2箇所を無視して進み続けること2日、一行はようやくドセアニア領土・小都市ズマッチに着いた。
 まだ少し遠いがかろうじて小さく見えたドセアニア王国の王城からは煙が立ち上っていた。この2日の間に、何があったというのか。
「もうすぐドセアニア王国に着く、気を引き締めていけお前ら」
 集中する者、気合を入れる者、仲間のことを常に思う者。全員が戦いに備える。
「グレイ君、すまなかった。啖呵を切っておいてミヅキさんを…」
「ソウヤさん!一緒に必ず助け出しましょう」
 ミヅキが連れ去られたことに強い責任を感じていたソウヤに対して励ましの言葉をかけるグレイ。しかし、その瞳には怒りがこもっていた。
ーーナナシ。許さない。

 程なくしてドセアニア王国国内に大型魔動車を侵入させ、王城へ向かう一行。そこにあった光景は見ると無惨なものであった。家屋の壁は血に染まり、崩落もしていた。倒れる人に寄り添う人。泣き喚く少年。まさに戦時中の国といったような有様であった。
 それらを他所に、王城前につき、兵士たちに止められる大型魔動車。ベルモンドとハルミが降りて事情を話に行く。
「お疲れ様です。レオネード・ハーツの者です。ヒュートン家から依頼を受け来ました。俺はベルモンド、こっちはハルミ。中には他10名の独立ギルド所属の冒険者兼魔導士が乗ってる」
「中を確認する」
「どうぞ」
 ドセアニア王国兵士は大型魔動車内を確認し、10人全員の身元を洗う。その間外では、ベルモンドが他の兵士に軽く事情を聞いていた。
「一体何があったんだ?」
「靭がこちらが予想していた期間よりも早く攻めてきて、どういうわけか王城内にすでに潜伏していたか、瞬間移動をされてな。王城内に侵入されてからは複数本の柱は壊され、このように一部は半壊。何とか三臣家が協力して一時的に靭を撃退することに成功したが、途中国中にも爪痕を残して帰っていきやがったんだ。現状確認できてるだけでも死者は40人、重軽傷者は100人超えてる」
「そうですか。」
 死者40人、重軽傷者100人以上、大惨事ではないか。それに初手で王城を攻めるあたりも用意周到で練られた計画的犯行。改めてベルモンドたちは殺人を平気でやってのける集団と対峙する覚悟を決めた。
「いいぞ!中に入れ。」

 大型魔動車を王城内の隅に止め、グレイら12人は王城に入る。
「すごいボロボロですね」
「聞いた話だと、上層を支えてる柱の何本かが、爆破されて一部半壊してるらしい。どこが玉座か知らないけどな、王は無事かね…」

「おい、カイト。お前は復讐心を抑えろよ。」
「はい…分かってます!」
「本当に分かってんのかよ」
 終始辺りを見回し、アレス=ドセアニアを探しているかのような仕草を見せるカイトに注意喚起をするハルミ。
「今は仲間が連れ去られてるんだ。もしドセアニアが協力的なら利用しない手はない。ミヅキを助け出した後は知らない」
 ミヅキを助け出しす。その目的のために復讐の標的であるドセアニアであったとしても利用する姿勢を見せるカイト。その目的があるおかげでかカイトは平常を保てていた。

ーーミヅキちゃんに感謝と言うべきか、さすがに不謹慎だったかな。

「ハルミ、別行動したい…いいかな?」
 ソウヤはハルミに別行動してミヅキの捜索をいち早く進めたい旨を伝える。
「いい加減にしてくれお前も。まだカイトの方が聞き分け良かったぞ。」
「でも今こうしているうちにもミヅキさんは!」
「ちょっと考えてみろ!ナナシの魔法が瞬間移動の類じゃないなら俺らより先にドセアニアに着くのは無理だ!風か?雷か?火か?魔法を駆使してどんだけ速く移動できたとしても着くのはまだ数日後だ!それにミヅキちゃんを攫った目的はボーディアンが何となくだが言ってただろ?グリムデーモンの復活の可能性だ。どちらにせよこっちは待ち構える側だ!お前のすべきことは、これから始まる作戦会議に参加して、グリムデーモンの封印場所を聞き出して、そこで待つ。それしかねーんだよ!冷静さを欠いて周りに迷惑かけようとしてんじゃねーよ」
「2人とも…熱くなりすぎよ!ただソウヤは感情だけで動きすぎね。そんなに好きで大切なら肌身離さず守っときなさいよバカが。」
 タツマキは言い争うソウヤとハルミを止める。
「ちゃんと助け出して、今度はしっかり守ってやんなよ王子様」
「?!」
 場の空気を和ませるためあえてソウヤを茶化すタツマキだったが効果覿面か、ソウヤは冷静さを戻し、作戦会議に出る意思を固める。
「それじゃあ行くぞ。ドセアニア国王と三臣家へのご対面だ。」
 中央階段を登り、国王接玉座の間の大扉を3ノックするベルモンド。中にいる兵士たちが大扉を開き、グレイら一同は国王接玉座の間に足を踏み入れる。
「レオネード・ハーツ、ならびにホーリー・シンフォ、冒険者ギルドから5名を迎えた計12名、ただいま現着しました。」
「ホーリー・シンフォ?!それに冒険者ギルドだと?!」
 ベルモンドの発言に耳を疑う三臣家・ヒュートン家当主、アルベルト=ヒュートン(42)はすぐにベルモンドに駆け寄り小声で事情を聞き出す。
「どうなっているレオネード・ハーツ!他の独立ギルドや冒険者がいるなど聞いてないぞ!まさか報酬額を跳ね上げるつもりじゃないだろうな!」
「いえいえ、提示された金額で結構。彼らは訳あって私たちに協力してくれたに過ぎませんよ、ヒュートン卿。」
「どうした、ヒュートン。彼らは誰だ?」
 アルベルト=ヒュートンの慌てふためき様に国王・ベッシモン=ドセアニア(65)が問いかける。
「いえいえ、彼らは私目が雇った独立ギルドの皆様です」
「そうか。12人もか?対応が早いな、褒めて遣わす」
「ははぁ。ありがたき幸せ」
 ホーリー・シンフォやグレイたちを引き入れたことが功を奏したのか。ベルモンドの機転は良い方向に働く。
「と言っても、1人足りなそうな気がするが、気のせいかな?」
「ええ。今1人は、敵の主戦力と対峙しています」

「何と?!」
「それは本当か?!」

 ベルモンドの限りなく嘘に近い発言に驚くロドクル家当主・ナーフ=ロドクル(46)、アサダ家当主・タドロフ=アサダ(49)。
「敵の主戦力の場所がわかるのか?!」
「その者に発信機や通信機は持たせているのか?!」
「落ち着いてくださいよロドクル卿、アサダ卿。そんな物は持たせていない。しかし、敵の目的ははっきりしている。最短でも明日から敵はグリムデーモンに接触してくるはずだ。敵は我々がドセアニアに向かっていることも、協力関係にあることも事前に知っていた節がある。我々が現着したことで戦況は大きく逆転すると見越しているだろう。それを一転できるのはおそらくグリムデーモンだけだ。」
「しかし、あれは何層にも渡って封印術が施されている。並大抵の解呪法では意味をなさない。」
「敵は確実に封印を解く術を持ち合わせている。」
 そう、巫女の力を。
「なんだと?!」
「その話、どこまでが真実だ?」
「?!」
 ベッシモン=ドセアニア国王に詰め寄られ驚きを見せるベルモンド。
「それは…」
 今ミヅキの存在をバラせば最初の嘘が印象を悪くしてしまう。かといって信憑性のない回答をすれば、グリムデーモンの復活の線薄いとされ、1番可能性のある場所に人員を割けない可能性が生まれる。どうすれば…。
「靭が星界の使徒と協力関係にあるからだ…」
 端から口を挟むボーディアン。
「星界の使徒?それはなんだ?」
「ベイダー全盛の時代に猛威を振るった暗黒魔神王・ゼノンの復活を企てる組織だ。」
「関わっていると言うその根拠は?」
「我々がここに来る途中、星界の使徒構成員の足止めを喰らったことが挙げられる。一般的には変装をしているが、作成遂行時は、白マントに仮面をつけている。ドセアニア襲撃時に見た記憶はないか?」
「白マントに仮面…王城に攻めて来た者にその様な風貌の者はいませんでしたな」
 王城を守護していた三臣家は全員が星界の使徒を目にしてないと言う。しかし、星界の使徒が一枚噛んでいることは確実であるとボーディアンはいう。
「らちがあかんな。ロドクル、」
「ハッ!」
「すぐに対策チームを作れ。その星界の使徒とやらの情報も全兵士に共有しろ。言質が取れ次第グリムデーモン復活の線で話を進めるたまえ。他の場合はお主が策を論じ展開しろ。以上、これで解散とす。我は休養を取るゆえ邪魔をするな」
「「「ハッ!」」」


 国王の命令の元、三臣家を中心とした靭対策チームが結成される。
 主戦力。
『ロドクル家陣営』
 指揮官・ナーフ=ロドクル。
 シルバーズ騎士団。先の侵攻で数名の死者を出し、現在15名の老トル騎士団であり、平均年齢は55歳。
 小規模独立ギルド、メドリック・ガーデンから3名の魔道士。
 そして、ロドクルの息がかかった、十数名の一般兵。
『アサダ家陣営』
 指揮官・タドロフ=アサダ。
 光剣隊。ドセアニア随一の剣士5名で構成されたアサダ家自慢の騎士団。第一次ドセアニア侵攻の際も、彼らの活躍が大きく靭を撤退に追い込んだ凄腕である。
 ドセアニアの槍とドセアニアの盾の2つの固有騎士団を管理、第一次侵攻で数を減らし、現在の人数、槍部隊・11名。盾部隊13名。ヘカスト王国の槍と盾の元となったモデルの騎士団である。
 独立ギルド、カトリックヒーラーから5名。こちらは医療関連特化の独立ギルドであり、主に後方治療部隊の主軸である。
『ヒュートン家陣営』
 指揮官・アルベルト=ヒュートン。
 固有騎士団・ヒューストンヌ。ヒュートン家が経営する国立中高学院卒のエリート魔導騎士団。先の侵攻で命を落とす者もおり、現在の人数は18名。それでも第一次侵攻で大きな活躍を見せる。
 独立ギルド、レオネード・ハーツから5名。
 独立ギルド、ホーリー・シンフォから2名。
 冒険者ギルドからの参加という体で、グレイら4名。
 
 第一次侵攻で命を落とした者や重症を負った者は多いがそれでも未だ盤石の武人と言って過言はない。この上記のメンバーを中心に靭、ならびに星界の使徒と対峙していく。

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