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第二章 〜家族のカタチ
17話 『魂の一発』
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タツマキの活躍によりダズの左腕に相当なダメージを与える事ができた白チーム。ベルモンドの渇により、一気に盛り返そうとする白チームは全員でダズを畳み掛ける。
木剣を構えて一斉に切り掛かる白チーム。それらに応戦しようとするダズだったが、ミヒャの生成させる植物での妨害をくらい自由に動く事ができない。
「くそ!またこのツタかよ。身体中に絡みついてきやがって、邪魔くせーな」
ミヒャの生成物は指パッチンで簡単に発火してしまう。放置していいような魔法ではないが、それよりも厄介なのは動きを制限された状態で、他の戦士たちと戦わなければならないこと。
ダズの身体中に絡みつくツタはミチミチと悲鳴をあげるもの、ダズをしっかりと拘束しようと頑張る。それに応えるために、戦士たちはマナを注ぎ込んだ木剣でダズを何度も切り付ける。魔導士たちも黙ってるはずもなく、ベルモンドは土属性魔法で、シスター・リリアンは無属性魔法で、他の元たちもゴム製のライフルやマジックガンを駆使して畳み掛ける。
ほぼ抵抗できないダズを一方的にタコ殴りにする白チーム。
「サシでやれなくて悪りぃな!それだけアンタの強さは突出してやがるんだ!アンタは本当に最強の男だよダズ!だがな!こっちはマッキーのためにも負けらんねーんだよ!」
両手両足を土属性魔法で硬化させ、ダズに突っ込んでいくベルモンドだったが、ミヒャの展開していた拘束魔法の強度を見誤ってしまう。
ミチミチミチミチ!
船体から伸び、ダズの体に巻きつき、動きを制限させていたミヒャのツタは悲鳴をあげ、引きちぎられそうになる。
「ベルモンド!もうもたない!燃やす!」
「?!」
どちらにせよあと数秒しかもたない拘束魔法。それならば少しでもダメージをと考え、発火させるミヒャ。残りほんの数秒の拘束か、発火させての微々たる蓄積ダメージか、このミヒャの行動は吉と出るか凶と出るか。
ツタを燃やし尽くし、ダズは再び自由の身となる。
それに対して、今更引き返すことのできないベルモンド。ダズ対ベルモンドの肉弾戦が始まる。一発に相当なパワーを込めるダズに対して、フットワーク重視の乱打戦を仕掛けるベルモンド。ダズの右ストレート一発を避けきれないまでも、左腕でガードしながら懐へ入りこみ右ストレート、からのジャンピングキックを決め込む。ただの打撃ならまだしも、土属性魔法で硬化させた打撃は、相当重たいはず。強靭な肉体を持つダズであっても、無傷ではいられないはず。
案の定、ダズは少しフラつきを見せたが、その隙を見逃さなかったベルモンド。船体に両手をつき、土属性魔法展開の構えをみせる。
「下か?!」
足場を生やしてまた空へ打ち上げるか、それとも岩の人体生成でアッパーなりストレートなりが飛んでくるか。一瞬のフラつきに合わせて魔法展開の構えを取っただけで、膨大な量の情報をダズに与えるベルモンド。下、横、上、正面、後ろか。ベルモンドのこれまでの戦闘を振り返るに土属性魔法しか扱ってなかったため、飛んでくるのは土属性魔法で間違いない。あとはどういう系統の魔法か。
「本能で動いてたやつが、考えたらそりゃ鈍んだろ」
「正解は…」
光だぜ。
「フラーーーシュッ!」
ピカーーーン!
「まぶっ…し」
ーーしまった。光属性魔法の小僧はハルミのやつと抗戦していると思ってたんだがな。してやられたな。
ソウヤらと共に隣の海賊船でハルミと戦っていたはずのカイトがいつのまにかこちらに移っていた。それもそのはず。白チーム、赤チーム、互いに援軍が追いつき、乱戦状態になっていたために、個人同士で戦っていた者たちは、それぞれ新たな敵の対処に追われてしまったからである。
何よりレオネード・ハーツの主力を一人失ってしまったことで、隣の海賊船の均衡が崩れると悟ったカイトは、しっかりとタツマキのいなくなった穴を埋めるためカバーに入っていた。
カイトの展開したフラッシュにタイミングを合わせて目を閉じ、ダズに攻撃を当てられる間合いまで詰め、一人視界がクリアな状態で、ダズに猛攻をかけるベルモンド。
硬化した両手で乱打!乱打!乱打!
顎に、頬に、何十発もぶち込むラッシュの嵐。
「オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!」
しかし、一方的にやられるダズではなく、相手の喰らわしてくる拳の位置から距離感、しっかりベルモンドの位置を読み、わざとよろけて、勢いそのままカウンターの一発を決め込む。
「ギシッ!」
「ブハァ!!」
まだだ!
一発食らっただけでは倒れないベルモンド。気をしっかり保ち、ダズとの乱打勝負を続ける。そもそも体格が違いすぎる2人。ダズの拳は常人の2、3倍の大きさをしており、その分だけ攻撃時の接地面積が大きい。避けるのも難しく、一発もデカい。逆に体格が良すぎるせいで、多くの攻撃を受けやすい。スピードのある硬化の拳の乱打ならダズの一発に相等するダメージを与えられる。つまり、互いにイーブンな状態。先に心が折れた方の負けとも言える。
これが一対一の勝負だったら…。
「オーバーヒール!」
ベルモンドに付与される治癒魔法。シスター・リリアンはベルモンドの回復に徹する。
「フレアバレット!」
瞬時にダズの最後から火属性魔法を放ち、援護するカイト。
周りもベルモンドに当たらないように足元や下半身を中心に、ライフルやマジックガン、遠距離魔法を当てていく。
バコン!ズドン!ピュンピュン!ボボボボ!
ダズを襲う無数の攻撃の嵐。
本当はサシでやりたかったであろうベルモンド、その力量の差にしっかりと割り切ってチーム戦を選ぶ。1人では勝てないと分かりきっているからこそ、今回はチームで戦う。それでも…。
「また機会があったら、その時はサシでやりてーぜ!ダズ!」
「お前のような割り切れる男は嫌いじゃないぞ!精一杯足掻け!」
「「うおおおおおおお!!!!」」
「メテオインパクト!!!」
「本気のパンチ!!!!」
漢ダズと漢ベルモンドの勝負は…
ベルモンドに軍配が上がった。
ダズの一撃をかろうじて避け、ダズの頬に決め込むメテオインパクト。ダズは両足を浮かせ、海の彼方へ飛ばされた。
ズボーーーーーーン!
…。
「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」」」」」
「「「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」
大歓声湧き上がる白チーム。そして、沖合ステージ観客席。
「なんとここで、生きる伝説!大海賊ダズ=バッハトルテ、ノックアウトォォォ!!!!!!」
今祭り、No. 1ともいわれたダズ=バッハトルテは、白チーム全勢力をあげて倒すことに成功。多くの犠牲を払ったが、それでもダズを倒せた功績はとても大きい。残る障害はレオネード・ハーツの若きエース、ハルミのみ。そのハルミもグレイに自粛させられてか、同じギルドメンバーのソウヤに本調子が出せない模様。初っ端こそ劣勢思えたソウヤだったが、その後はしっかりと1人でハルミを抑えてみせる。
主力を抑えられた赤チーム。なすすべなく負けてしまうかに思えたが、ホーリー・シンフォのシュウ=オバナは黙っていない。
「出遅れ分はしっかり働かなければな」
スパパパパパパパパッ!!!
腰に添えた、木製の細剣に手をかけるシュウ。その剣撃の速さはまるで閃光。抜いたことさえ気づかずに倒れ込む白チームの戦士たち。
「閃光のシュウ!今度はホーリー・シンフォのエース級がくるぞ!」
「ベルモンドさん立てますか?」
「悪りぃ、ダズを倒した余韻で力が抜けちまったぜ。俺は良いからみんなの援護を頼むぜシスター」
「分かりました!」
白チームもなんだかんだでタツマキやベルモンドが戦闘不能になってしまい、ソウヤはハルミと対峙している。今動けるのはカイト、ミヒャ、シスター・リリアンとその他たち。果たしてこの閃光のシュウを止める事ができるのか。
「まずは、シスター、あなたが1番邪魔だ。ところ構わず回復して回られても困るのでな」
まずは標的をシスター・リリアンに定めるシュウ。細剣を抜き、シスター・リリアンへ猛スピードで向かっていく。
「シスター、ルクスアル…」
「させねーぜ!」
「おりゃ!」
シスター・リリアンを援護しようとするカイトだったが、赤チームの戦士たちに邪魔されてしまう。木剣の太刀筋を見切り、2人同時対峙でも軽々避けて見せるカイト。
「どけ!よぉ…ら!!」
二撃避けての、ジャンプキックで2人を倒す。
「ルクス・アルケミス!光剣!」
掌印を組み、光属性魔法で光の剣を生成するカイト。シスター・リリアンが防御魔法で時間稼ぎをしている間にシュウの下へ到着するカイト。剣の達人であるシュウ相手に、まさかの剣術で勝負する。
キン!キン!キン!キン!キン!
船体上で響き渡る剣撃の音。
以外にも剣の扱いになれていたカイトに驚きを見せるシュウ。
「お前、剣術もいける口か。なかなか器用だな」
「それは、どうも!」
シュウの一太刀をしっかりと防ぐカイト。シュウが手を抜いているのか、小手調べか、それとも全力なのか。剣の腕は互角にも見える。そうなれば、主力の多い白チームが優勢になるのは当たり前。
「エンチャント・スピードアップ!」
シスター・リリアンは、カイトに対してスピードアップの無属性魔法を付与する。
瞬間的に移動速度を上げる事で、認識とのギャップが生まれ、シュウはカイト攻撃に反応しきれず、一太刀受けてしまう。
「エンチャント・パワーアップ!」
続け様に、次は筋力を増幅させる無属性魔法を付与した。
筋力が底上げされたカイトの攻撃を受け続けるシュウの細剣は、少しずつ刃こぼれし始めて、十数撃目を受けた瞬間折れてしまう。
「しまっ…た」
「おらぁ!!!」
光の剣を逆手に持ちかえ、峰打ちで思いきり一撃を喰らわすカイト。
シスター・リリアンのアシストがあったにせよ、独立ギルドホーリー・シンフォのエース級戦士を倒すことに成功したカイト。紅白海賊王祭りにて、終始奮闘し続けた若き青年に、沖合ステージは湧き立っていた。
「いいぞ!!!光のやつ!!」
「やるじゃねーか!!」
「無所属であれだけできるのはすげぇーな」
「なんで今まで無名だったんだ?!」
ほぼほぼ主力を失った赤チームは白チームの進行を止められず、次々に動き出してしまう白チーム海賊船。ハルミは終始ソウヤに足止めを喰らってしまい、なかなか動き出せない。乱戦状態の中で、トップに躍り出る白チーム海賊船。2着にも白チーム。それ以降は少しずつ進み出すもほぼ膠着状態の赤チームと白チームがそれぞれ数隻ずつ。
スタート地点には独走していた赤チームの海賊船一隻を簡単に大破させてしまったナナシという戦士もいる。正直この布陣を崩せる戦士は今の赤チームには存在しない。勝利は確実か、白チーム。赤チームの妨害を掻い潜り、ホットアイランドを旋回。そのまま折り返していく白チームの海賊船。
残り5000m。4000m。3000m。なんの妨害もされない海賊船は最高速度のままどんどんゴールへ向かって突き進む。
「いよいよ紅白海賊王祭りも大詰めです!先頭走る白チーム海賊船はいよいよゴール地点、この沖合ステージ横、コロッセオに到着するぞー!!!」
ズドン!
最高速度のままコロッセオに突っ込む海賊船。そのままズカズカと海賊船から身を出す白チーム戦士たち。
「さあ見えてきた白チームの戦士たち!勝利は確定してはいるもののその宝箱に1番最初に触れるのはどこの誰か!!ーーーーっと?!1番前を走っているのは、グ、グ、グ、グレイ選手?!?!?!な、な、な、何ということか!この白チームの戦士たちの中に1人小柄の冒険者が混じっているぞ!!まさかの先頭を走る白チームの海賊船に単身乗り込んでいたというのか!!!ミスミス敵チームを先頭まで連れてきてしまった白チーム!!この紅白海賊王祭りの行く末はどうなるのか!!!!」
誰だ!白か!赤か!白チームの誰かが触れるか!それともグレイか!1000金貨の入った宝箱は誰の手に!
宝箱に一斉に飛びつく戦士たち!!!
「紅白海賊王祭り、ここに決着!!!!!第14回紅白海賊王祭り、優勝チームは………」
ドゥルルルルルルルルル…バン!
「白チーーーームだぁぁぁああああ!!」
「「「「「「「うおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」」
ヒューーーユ!ヒューーーーーユ!
パッパラパー!
ドン!ドン!ドン!
白チーム優勝を盛大に讃える楽団たち。そして、沖合ステージにて観戦していた観客たち。
全員ほぼ同時に宝箱に飛びついたが、あと一歩のところで、大人相手に体格の差で負けてしまったグレイ。もう数十センチ身長が高ければ。腕が、指が長ければ。あと少しで負けてしまったグレイはさぞかし悔しいだろう。
少しずつ観客の方へ流れていく戦士ならびに選手たち。
「よく頑張ったぞ!!!」
「お疲れ様!!」
「ナイスだ白チーム!!」
「赤もよく頑張ったぜ!!」
選手たちの奮闘を讃える観客たち。
「グレェエエエエエエエエイ!!!あんたはよく頑張ったわ!!もっと自信もちなさい!」
遠くから聞こえてくる透き通った、それでも力強さを残した女性の声。
「ミジュキィさぁーーーーーん(泣)」
号泣しながら観客の間をすり抜けながらミヅキたちに駆け寄っていくグレイ。そのままミヅキの懐に収まり、全力で泣きじゃくるグレイ。
「勝ちたかったよーーーー!!みんなのために勝ちたかったよーーー!!!優勝賞金欲しかったよーーー!カイトさんの故郷に行けないよーーーー!明日のご飯や宿がないよーーーー!マタタビさんのために、ボーディアンさんのために、カイトさんのために、ミヅキさんのために、一生懸命頑張ったんだよーーーー(泣)なのに、なのに、うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
たった11歳の少年が、このパーティの今後の方針のこと、そしてメンバー全員のこれからのこと、それらをこの小さい体に背負い込んでいたことに驚かされる一同。ただお祭りを楽しんでいるだけかと思っていたが、まさか、みんなのことを1番に考えていたなんて。
「すごいよ!200人中の2番目よ!誰が何と言おうと、アンタは2番目にゴールについた選手なのよ!誇りなさい!それにアタシたちが讃えるわ!グレイ!よく頑張ったね」
「…お前はよくやった。少しは見直したぞ」
照れくさそうに励ますボーディアン。
「グレイ、お前を弟子にもてたこと、誇りに思うよ。お疲れ様。」
グレイが喜ぶ言葉をしっかり理解しているマタタビ。
そして、1番にグレイのことを思い、涙する彼を優しく撫でるミヅキ。
マタタビ一同はそれで良かったかもしれない。しかし、周りの観客は黙ってはいなかった。
「「「「ミヅキ?!ミヅキってあの?!」」」」
「「「えっ?!トップアイドルのミヅキ?」」」
「「顔似てね?」」
「「「いや本人だろ!絶対そうだって」」」
今をときめくNo. 1アイドルのミヅキが出没していることにざわめき出す沖合ステージ。まさかまさかのスペシャルゲストが観客席にいるなんて。
「「「「「No. 1アイドルのミヅキだぞ!!」」」」」
「あのーサインを!」
「俺が先だ!あの、握手して下さい」
「ミヅキさん!」
「ミヅキちゃーーーん」
「おい、一旦引くぞ!」
瞬時に不穏な空気を察するボーディアン。軽々とグレイを抱え上げ、マタタビと2人で観客たちをどかして、沖合ステージを後にしようとする一同。カイトが合流できていないものの、ここにいてはミヅキの安否に関わる事態になってしまうと判断し、街中で土属性魔法の壁をいくつも展開してこの場を切り抜け宿へ戻る一同。
それから数時間後、瞬く間に、造船都市・エヴァン中に、"No. 1アイドルミヅキ出没"の号外が出回った。
少し前に行方不明の号外が出回ってしまっただけに事件性を問う内容が記されていた。
「今の今までバレなかっただけに油断したな」
「ごめんなさい。僕のせいで…」
まあ、はっきり違うとは言えない。あれだけ大声で名前を叫んで、振り向けばNo. 1アイドルと顔が瓜二つときたもんだから、100パーセントグレイのせいといえばグレイのせいである。
「まあ仕方ないわよ。変装具とか買える余裕なかったし、バレるべくしてバレた感じよ。それよりも…」
「問題は星界の使徒の動きと、私たちの動向についてだな。」
「ええ。グレイとミヅキ、そして我々が関係者だということは、エヴァンの人々にはバレてしまった。巫女に対して行方不明、誘拐、拉致監禁、どんな号外がでてるか知らないが良いものではないのは事実。事情を知らない連中からしてみたら我々がその主犯格と疑われても仕方がない。近いうち巫女の事務所経由で傭兵団や独立ギルドが動き出すぞ」
「ただちにエヴァンを出るべきだな」
「すぐにフラナへ向かうってことね」
宿では、カイト抜きで話し合いが進められていた。その数分後にカイトは宿へ帰宅。状況を全て話してもらい理解する。しかし、カイトもまたみんなに話があった。
「実は、みんなに会いたがっている人たちがいるんだ。それが、レオネード・ハーツの方々で、もしよかったら打ち上げでもどうかって誘われたんだけど」
打ち上げ。今回の紅白海賊祭りのだろうが、今エヴァンで行動するのはまずいだろう。
「ミヅキの存在が公になってしまった以上、街へ足を運ぶのはさけたいな」
ーーそれなら、、、。
「来ちゃいました~~~!お疲れ~カイト君!お疲れ様、グレイ君~///」
マタタビら一行が取っていた宿に1番最初に足を踏み入れたのはベロベロに酔っていたタツマキであった。顔や体のいたるところに包帯やガーゼをつけている割には相当元気であった。
「飲み癖悪いですよヒナさん。二次会会場じゃないんだから謹んでください」
「タッツーさん恥ずかしい…」
「キンキンうるせーなー!傷に響くんだよマッキー」
「タツマキ、うるさい」
ベロベロに酔い、周りに迷惑をかけていると思っているレオネード・ハーツの仲間たち。全員が全員、タツマキの振る舞いに恥ずかしさを覚えていた。
そしてなぜだか知らないが、レオネード・ハーツの影に隠れるようにして、入ってきたホーリー・シンフォのシュウとリリアン。2人はお菓子や飲み物など、簡単につまめるものを4袋ほど買い集めて持ってきてくれていた。
そして、1番謎なのは、全く隠れていない巨体の男。ダズ=バッハトルテも邪魔しに来ていたということ。
「凄い大所帯ですね。こんなにいるとは聞いてないですよ」
「まあ色々あってね。みんな君やグレイ君にそそられるものがあって来たんだよ。ねぇダズさん?」
「おおよハルミ!!俺はな、この小僧に助けられた身だ。まずは感謝をしなければならんと思ってな!そこの小僧もそうだろ?レオネード・ハーツの…」
「ソウヤです。そうですね。グレイ君には命を助けて貰いました。敵ながら感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとう」
改めてグレイに対して深々と礼をするソウヤとダズ。名実ともに知れ渡る大物たちに頭を下げられて戸惑うグレイ。
「あわわわわ、えぇーと、ど、どうすれば」
「こういうときは"どういたしまして"でいいのよグレイ」
常識的なことに対して、無知なグレイにやさしく教えてあげるミヅキ。
「どどどどどどどど…」
呂律がうまく回らず、どういたしましての言えないグレイ。そのままただ「ど」を連呼するだけの機械になってしまい宿中大笑いしてしまう。
「君もしかして酔ってんの?!ウケる(笑)」
「良いところなんだから、マッキーはちょっと黙ってろ!」
タツマキの体を引っ張り端の方へおいやるベルモンドとミヒャ。
「やだやだ!やめてよーー」
「「「「「ははは(笑)」」」」」
宿中が終始賑やかな空気に包まれ、互いに心を開きあっていく。みんな宿中を自由に徘徊し、それぞれ話したい相手の語り合っていた。
そして、ソウヤとハルミはグレイのもと足を運ぶ。
「改めて今回はお疲れ様。話は聞いたよ。あと少しの差で惜しくも負けてしまったみたいだね」
「はい…白チームはおめでとうございます」
「その後の号泣会見は凄かったらしいな!お姉ちゃんに抱きついてワーワー泣いたみたいで」
「チ、チガイマスヨ!!////」
少し意地悪をしてグレイを煽るハルミだったが口調を少し変えながら、グレイの前に一つの袋を差し出す。
「これは、今回の優勝賞金の金貨10枚だ。元の持ち主は、そこのソウヤだ。もし君が、観客たちの前で放ったように、今後の旅や仲間のことを真に思っているのなら受け取ってやってくれないか?ソウヤの感謝の気持ちだ」
「ソウヤさん…」
「お金で解決なんて、すごくいやらしい気もするんだけど…何か…その…目に見える形で恩返しがしたいんだ。も、もちろん、嫌なら収めるよ…変な気持ちにさせてしまってごめん」
「そうですね…お金…ですか…」
受け取るか正直迷うグレイ。金貨10枚。今のグレイパーティの金銭面はカツカツで喉から手が出るほど欲しい。それに今回の一件でミヅキのことが公になってしまった。気休め程度だが、ミヅキの変装道具は今後のためにも買い揃えた方がいいに決まっている。それにフラナへの旅路は約1週間超のものになると予想される。金貨10枚でも1週間分の食事代や衣類、旅の道具を買え揃えるには足りるかどうか。カイトのものと合わせて余裕を持たせたい。それでも、お金という存在はソウヤのいうように、無償ですごく気持ちよく貰えるものじゃない。
「お気持ちは嬉しいのですが…そのお金は…」
「ならさ!」
グレイが断りを遮るように言葉を被せるハルミ。
「君んとこのお姉さんにさ、ファンサ頼めない?」
「フ・ァ・ン・サ?」
頭の上をハテナが埋め尽くすグレイ。
「実は、うちのソウヤさ、ミヅキちゃんの大ファンなんだよね。最近行方不明のニュースが出回ってたし、シングルの発売とか活動全般ぱったり止まってたでしょ?もう気が気でなかったんだよね。まあ本人の安否を確認できたし、せっかくこんな近くにいるなら、握手とかサインの一つや二つお願いできないかな?それの代わりとして受け取ってくれよ。CD代とかと一緒一緒」
「それなら…!」
そういってミヅキのもとへ走っていくグレイ。遠くでごにょごにょ話す2人。途中ミヅキのツンとした吊り目がソウヤの方をちらちら見ているのを感じて、隅の方に縮こまるソウヤ。
「お前さぁ…本当にインキャだよなー。好きな相手がすぐそこにいんのにウジウジしやがってよー」
「ハルミには分からないよ!この気持ちは。心臓バクバクするんだ!酸素が薄くなるんだ。視界がぼんやりするんだ。」
「それ命に関わる話だろ!手繋いだら死ぬんじゃね」
「そうかも~」
「おいおい、ダメだろ…」
何やら交渉成立か。グレイに引っ張られてハルミたちに近寄ってくるミヅキ。
「私のファンの方って、お兄さん?」
「へ?!」
まさかのグレイでさえ、ミヅキの豹変ぶりに恐怖の目を向けてしまう。
ーーボ、ボ、ボ、ボ、ボクの知らないミヅキさんがいる…。だ、だれですかこの人。
「僕じゃなくて、あっちの小さいの」
もはや部屋の隙間のホコリレベルで縮こまっていたソウヤに歩み寄るミヅキ。
ソウヤの背後に立ち、そのまま膝を曲げて、しゃがみ込み目線の高さを合わせるミヅキ。
「お名前なんていうんですか?」
透き通る綺麗な声が耳元を撫でるのを感じて、少し振り返るソウヤ。ゼロ距離に推しのアイドルの瞳を見つけ、石にでもなったかのように固まってしまう。
「ソ、ソウヤです/////」
「あいつの目、焦点あってなくね?」
「目だけは泳いでますね」
しっかりとソウヤを観察するハルミとグレイ。顔はミヅキの方を向いているはずなのに、目を泳ぎまくり、心ここに在らずといった状況。
「ちゃんと見て!」
そういってソウヤの頬を両手でガッチリ抑えるミヅキ。本当にゼロ距離で見つめ合う2人。
「これからも応援よろしくね」
見つめ合ったまま笑顔を振りまき、軽くウィンクをしてソウヤのもとを離れていくミヅキ。その頬は少し紅潮していて照れているようにもみえた。まさに天使。
「すごいなあの子。」
「僕も初めて見ました、フ・ァ・ン・サ?」
「そうそう。ファンサービスね。まあお互いウィンウィンだし、それでうまいもんでも食いなよ」
「ではこれは、ミヅキさんの買い物に当てます!ソウヤさんもありがとうございます!」
「hahlyo~~」
「もうヘロヘロだなこいつ。今ので魂抜かれちまったわ」
ミヅキの協力もあり、金貨10枚を手にすることができたグレイだった。
木剣を構えて一斉に切り掛かる白チーム。それらに応戦しようとするダズだったが、ミヒャの生成させる植物での妨害をくらい自由に動く事ができない。
「くそ!またこのツタかよ。身体中に絡みついてきやがって、邪魔くせーな」
ミヒャの生成物は指パッチンで簡単に発火してしまう。放置していいような魔法ではないが、それよりも厄介なのは動きを制限された状態で、他の戦士たちと戦わなければならないこと。
ダズの身体中に絡みつくツタはミチミチと悲鳴をあげるもの、ダズをしっかりと拘束しようと頑張る。それに応えるために、戦士たちはマナを注ぎ込んだ木剣でダズを何度も切り付ける。魔導士たちも黙ってるはずもなく、ベルモンドは土属性魔法で、シスター・リリアンは無属性魔法で、他の元たちもゴム製のライフルやマジックガンを駆使して畳み掛ける。
ほぼ抵抗できないダズを一方的にタコ殴りにする白チーム。
「サシでやれなくて悪りぃな!それだけアンタの強さは突出してやがるんだ!アンタは本当に最強の男だよダズ!だがな!こっちはマッキーのためにも負けらんねーんだよ!」
両手両足を土属性魔法で硬化させ、ダズに突っ込んでいくベルモンドだったが、ミヒャの展開していた拘束魔法の強度を見誤ってしまう。
ミチミチミチミチ!
船体から伸び、ダズの体に巻きつき、動きを制限させていたミヒャのツタは悲鳴をあげ、引きちぎられそうになる。
「ベルモンド!もうもたない!燃やす!」
「?!」
どちらにせよあと数秒しかもたない拘束魔法。それならば少しでもダメージをと考え、発火させるミヒャ。残りほんの数秒の拘束か、発火させての微々たる蓄積ダメージか、このミヒャの行動は吉と出るか凶と出るか。
ツタを燃やし尽くし、ダズは再び自由の身となる。
それに対して、今更引き返すことのできないベルモンド。ダズ対ベルモンドの肉弾戦が始まる。一発に相当なパワーを込めるダズに対して、フットワーク重視の乱打戦を仕掛けるベルモンド。ダズの右ストレート一発を避けきれないまでも、左腕でガードしながら懐へ入りこみ右ストレート、からのジャンピングキックを決め込む。ただの打撃ならまだしも、土属性魔法で硬化させた打撃は、相当重たいはず。強靭な肉体を持つダズであっても、無傷ではいられないはず。
案の定、ダズは少しフラつきを見せたが、その隙を見逃さなかったベルモンド。船体に両手をつき、土属性魔法展開の構えをみせる。
「下か?!」
足場を生やしてまた空へ打ち上げるか、それとも岩の人体生成でアッパーなりストレートなりが飛んでくるか。一瞬のフラつきに合わせて魔法展開の構えを取っただけで、膨大な量の情報をダズに与えるベルモンド。下、横、上、正面、後ろか。ベルモンドのこれまでの戦闘を振り返るに土属性魔法しか扱ってなかったため、飛んでくるのは土属性魔法で間違いない。あとはどういう系統の魔法か。
「本能で動いてたやつが、考えたらそりゃ鈍んだろ」
「正解は…」
光だぜ。
「フラーーーシュッ!」
ピカーーーン!
「まぶっ…し」
ーーしまった。光属性魔法の小僧はハルミのやつと抗戦していると思ってたんだがな。してやられたな。
ソウヤらと共に隣の海賊船でハルミと戦っていたはずのカイトがいつのまにかこちらに移っていた。それもそのはず。白チーム、赤チーム、互いに援軍が追いつき、乱戦状態になっていたために、個人同士で戦っていた者たちは、それぞれ新たな敵の対処に追われてしまったからである。
何よりレオネード・ハーツの主力を一人失ってしまったことで、隣の海賊船の均衡が崩れると悟ったカイトは、しっかりとタツマキのいなくなった穴を埋めるためカバーに入っていた。
カイトの展開したフラッシュにタイミングを合わせて目を閉じ、ダズに攻撃を当てられる間合いまで詰め、一人視界がクリアな状態で、ダズに猛攻をかけるベルモンド。
硬化した両手で乱打!乱打!乱打!
顎に、頬に、何十発もぶち込むラッシュの嵐。
「オラ!オラ!オラ!オラ!オラ!」
しかし、一方的にやられるダズではなく、相手の喰らわしてくる拳の位置から距離感、しっかりベルモンドの位置を読み、わざとよろけて、勢いそのままカウンターの一発を決め込む。
「ギシッ!」
「ブハァ!!」
まだだ!
一発食らっただけでは倒れないベルモンド。気をしっかり保ち、ダズとの乱打勝負を続ける。そもそも体格が違いすぎる2人。ダズの拳は常人の2、3倍の大きさをしており、その分だけ攻撃時の接地面積が大きい。避けるのも難しく、一発もデカい。逆に体格が良すぎるせいで、多くの攻撃を受けやすい。スピードのある硬化の拳の乱打ならダズの一発に相等するダメージを与えられる。つまり、互いにイーブンな状態。先に心が折れた方の負けとも言える。
これが一対一の勝負だったら…。
「オーバーヒール!」
ベルモンドに付与される治癒魔法。シスター・リリアンはベルモンドの回復に徹する。
「フレアバレット!」
瞬時にダズの最後から火属性魔法を放ち、援護するカイト。
周りもベルモンドに当たらないように足元や下半身を中心に、ライフルやマジックガン、遠距離魔法を当てていく。
バコン!ズドン!ピュンピュン!ボボボボ!
ダズを襲う無数の攻撃の嵐。
本当はサシでやりたかったであろうベルモンド、その力量の差にしっかりと割り切ってチーム戦を選ぶ。1人では勝てないと分かりきっているからこそ、今回はチームで戦う。それでも…。
「また機会があったら、その時はサシでやりてーぜ!ダズ!」
「お前のような割り切れる男は嫌いじゃないぞ!精一杯足掻け!」
「「うおおおおおおお!!!!」」
「メテオインパクト!!!」
「本気のパンチ!!!!」
漢ダズと漢ベルモンドの勝負は…
ベルモンドに軍配が上がった。
ダズの一撃をかろうじて避け、ダズの頬に決め込むメテオインパクト。ダズは両足を浮かせ、海の彼方へ飛ばされた。
ズボーーーーーーン!
…。
「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」」」」」
「「「「「「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」」
大歓声湧き上がる白チーム。そして、沖合ステージ観客席。
「なんとここで、生きる伝説!大海賊ダズ=バッハトルテ、ノックアウトォォォ!!!!!!」
今祭り、No. 1ともいわれたダズ=バッハトルテは、白チーム全勢力をあげて倒すことに成功。多くの犠牲を払ったが、それでもダズを倒せた功績はとても大きい。残る障害はレオネード・ハーツの若きエース、ハルミのみ。そのハルミもグレイに自粛させられてか、同じギルドメンバーのソウヤに本調子が出せない模様。初っ端こそ劣勢思えたソウヤだったが、その後はしっかりと1人でハルミを抑えてみせる。
主力を抑えられた赤チーム。なすすべなく負けてしまうかに思えたが、ホーリー・シンフォのシュウ=オバナは黙っていない。
「出遅れ分はしっかり働かなければな」
スパパパパパパパパッ!!!
腰に添えた、木製の細剣に手をかけるシュウ。その剣撃の速さはまるで閃光。抜いたことさえ気づかずに倒れ込む白チームの戦士たち。
「閃光のシュウ!今度はホーリー・シンフォのエース級がくるぞ!」
「ベルモンドさん立てますか?」
「悪りぃ、ダズを倒した余韻で力が抜けちまったぜ。俺は良いからみんなの援護を頼むぜシスター」
「分かりました!」
白チームもなんだかんだでタツマキやベルモンドが戦闘不能になってしまい、ソウヤはハルミと対峙している。今動けるのはカイト、ミヒャ、シスター・リリアンとその他たち。果たしてこの閃光のシュウを止める事ができるのか。
「まずは、シスター、あなたが1番邪魔だ。ところ構わず回復して回られても困るのでな」
まずは標的をシスター・リリアンに定めるシュウ。細剣を抜き、シスター・リリアンへ猛スピードで向かっていく。
「シスター、ルクスアル…」
「させねーぜ!」
「おりゃ!」
シスター・リリアンを援護しようとするカイトだったが、赤チームの戦士たちに邪魔されてしまう。木剣の太刀筋を見切り、2人同時対峙でも軽々避けて見せるカイト。
「どけ!よぉ…ら!!」
二撃避けての、ジャンプキックで2人を倒す。
「ルクス・アルケミス!光剣!」
掌印を組み、光属性魔法で光の剣を生成するカイト。シスター・リリアンが防御魔法で時間稼ぎをしている間にシュウの下へ到着するカイト。剣の達人であるシュウ相手に、まさかの剣術で勝負する。
キン!キン!キン!キン!キン!
船体上で響き渡る剣撃の音。
以外にも剣の扱いになれていたカイトに驚きを見せるシュウ。
「お前、剣術もいける口か。なかなか器用だな」
「それは、どうも!」
シュウの一太刀をしっかりと防ぐカイト。シュウが手を抜いているのか、小手調べか、それとも全力なのか。剣の腕は互角にも見える。そうなれば、主力の多い白チームが優勢になるのは当たり前。
「エンチャント・スピードアップ!」
シスター・リリアンは、カイトに対してスピードアップの無属性魔法を付与する。
瞬間的に移動速度を上げる事で、認識とのギャップが生まれ、シュウはカイト攻撃に反応しきれず、一太刀受けてしまう。
「エンチャント・パワーアップ!」
続け様に、次は筋力を増幅させる無属性魔法を付与した。
筋力が底上げされたカイトの攻撃を受け続けるシュウの細剣は、少しずつ刃こぼれし始めて、十数撃目を受けた瞬間折れてしまう。
「しまっ…た」
「おらぁ!!!」
光の剣を逆手に持ちかえ、峰打ちで思いきり一撃を喰らわすカイト。
シスター・リリアンのアシストがあったにせよ、独立ギルドホーリー・シンフォのエース級戦士を倒すことに成功したカイト。紅白海賊王祭りにて、終始奮闘し続けた若き青年に、沖合ステージは湧き立っていた。
「いいぞ!!!光のやつ!!」
「やるじゃねーか!!」
「無所属であれだけできるのはすげぇーな」
「なんで今まで無名だったんだ?!」
ほぼほぼ主力を失った赤チームは白チームの進行を止められず、次々に動き出してしまう白チーム海賊船。ハルミは終始ソウヤに足止めを喰らってしまい、なかなか動き出せない。乱戦状態の中で、トップに躍り出る白チーム海賊船。2着にも白チーム。それ以降は少しずつ進み出すもほぼ膠着状態の赤チームと白チームがそれぞれ数隻ずつ。
スタート地点には独走していた赤チームの海賊船一隻を簡単に大破させてしまったナナシという戦士もいる。正直この布陣を崩せる戦士は今の赤チームには存在しない。勝利は確実か、白チーム。赤チームの妨害を掻い潜り、ホットアイランドを旋回。そのまま折り返していく白チームの海賊船。
残り5000m。4000m。3000m。なんの妨害もされない海賊船は最高速度のままどんどんゴールへ向かって突き進む。
「いよいよ紅白海賊王祭りも大詰めです!先頭走る白チーム海賊船はいよいよゴール地点、この沖合ステージ横、コロッセオに到着するぞー!!!」
ズドン!
最高速度のままコロッセオに突っ込む海賊船。そのままズカズカと海賊船から身を出す白チーム戦士たち。
「さあ見えてきた白チームの戦士たち!勝利は確定してはいるもののその宝箱に1番最初に触れるのはどこの誰か!!ーーーーっと?!1番前を走っているのは、グ、グ、グ、グレイ選手?!?!?!な、な、な、何ということか!この白チームの戦士たちの中に1人小柄の冒険者が混じっているぞ!!まさかの先頭を走る白チームの海賊船に単身乗り込んでいたというのか!!!ミスミス敵チームを先頭まで連れてきてしまった白チーム!!この紅白海賊王祭りの行く末はどうなるのか!!!!」
誰だ!白か!赤か!白チームの誰かが触れるか!それともグレイか!1000金貨の入った宝箱は誰の手に!
宝箱に一斉に飛びつく戦士たち!!!
「紅白海賊王祭り、ここに決着!!!!!第14回紅白海賊王祭り、優勝チームは………」
ドゥルルルルルルルルル…バン!
「白チーーーームだぁぁぁああああ!!」
「「「「「「「うおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」」
ヒューーーユ!ヒューーーーーユ!
パッパラパー!
ドン!ドン!ドン!
白チーム優勝を盛大に讃える楽団たち。そして、沖合ステージにて観戦していた観客たち。
全員ほぼ同時に宝箱に飛びついたが、あと一歩のところで、大人相手に体格の差で負けてしまったグレイ。もう数十センチ身長が高ければ。腕が、指が長ければ。あと少しで負けてしまったグレイはさぞかし悔しいだろう。
少しずつ観客の方へ流れていく戦士ならびに選手たち。
「よく頑張ったぞ!!!」
「お疲れ様!!」
「ナイスだ白チーム!!」
「赤もよく頑張ったぜ!!」
選手たちの奮闘を讃える観客たち。
「グレェエエエエエエエエイ!!!あんたはよく頑張ったわ!!もっと自信もちなさい!」
遠くから聞こえてくる透き通った、それでも力強さを残した女性の声。
「ミジュキィさぁーーーーーん(泣)」
号泣しながら観客の間をすり抜けながらミヅキたちに駆け寄っていくグレイ。そのままミヅキの懐に収まり、全力で泣きじゃくるグレイ。
「勝ちたかったよーーーー!!みんなのために勝ちたかったよーーー!!!優勝賞金欲しかったよーーー!カイトさんの故郷に行けないよーーーー!明日のご飯や宿がないよーーーー!マタタビさんのために、ボーディアンさんのために、カイトさんのために、ミヅキさんのために、一生懸命頑張ったんだよーーーー(泣)なのに、なのに、うわぁぁぁぁぁぁぁん!」
たった11歳の少年が、このパーティの今後の方針のこと、そしてメンバー全員のこれからのこと、それらをこの小さい体に背負い込んでいたことに驚かされる一同。ただお祭りを楽しんでいるだけかと思っていたが、まさか、みんなのことを1番に考えていたなんて。
「すごいよ!200人中の2番目よ!誰が何と言おうと、アンタは2番目にゴールについた選手なのよ!誇りなさい!それにアタシたちが讃えるわ!グレイ!よく頑張ったね」
「…お前はよくやった。少しは見直したぞ」
照れくさそうに励ますボーディアン。
「グレイ、お前を弟子にもてたこと、誇りに思うよ。お疲れ様。」
グレイが喜ぶ言葉をしっかり理解しているマタタビ。
そして、1番にグレイのことを思い、涙する彼を優しく撫でるミヅキ。
マタタビ一同はそれで良かったかもしれない。しかし、周りの観客は黙ってはいなかった。
「「「「ミヅキ?!ミヅキってあの?!」」」」
「「「えっ?!トップアイドルのミヅキ?」」」
「「顔似てね?」」
「「「いや本人だろ!絶対そうだって」」」
今をときめくNo. 1アイドルのミヅキが出没していることにざわめき出す沖合ステージ。まさかまさかのスペシャルゲストが観客席にいるなんて。
「「「「「No. 1アイドルのミヅキだぞ!!」」」」」
「あのーサインを!」
「俺が先だ!あの、握手して下さい」
「ミヅキさん!」
「ミヅキちゃーーーん」
「おい、一旦引くぞ!」
瞬時に不穏な空気を察するボーディアン。軽々とグレイを抱え上げ、マタタビと2人で観客たちをどかして、沖合ステージを後にしようとする一同。カイトが合流できていないものの、ここにいてはミヅキの安否に関わる事態になってしまうと判断し、街中で土属性魔法の壁をいくつも展開してこの場を切り抜け宿へ戻る一同。
それから数時間後、瞬く間に、造船都市・エヴァン中に、"No. 1アイドルミヅキ出没"の号外が出回った。
少し前に行方不明の号外が出回ってしまっただけに事件性を問う内容が記されていた。
「今の今までバレなかっただけに油断したな」
「ごめんなさい。僕のせいで…」
まあ、はっきり違うとは言えない。あれだけ大声で名前を叫んで、振り向けばNo. 1アイドルと顔が瓜二つときたもんだから、100パーセントグレイのせいといえばグレイのせいである。
「まあ仕方ないわよ。変装具とか買える余裕なかったし、バレるべくしてバレた感じよ。それよりも…」
「問題は星界の使徒の動きと、私たちの動向についてだな。」
「ええ。グレイとミヅキ、そして我々が関係者だということは、エヴァンの人々にはバレてしまった。巫女に対して行方不明、誘拐、拉致監禁、どんな号外がでてるか知らないが良いものではないのは事実。事情を知らない連中からしてみたら我々がその主犯格と疑われても仕方がない。近いうち巫女の事務所経由で傭兵団や独立ギルドが動き出すぞ」
「ただちにエヴァンを出るべきだな」
「すぐにフラナへ向かうってことね」
宿では、カイト抜きで話し合いが進められていた。その数分後にカイトは宿へ帰宅。状況を全て話してもらい理解する。しかし、カイトもまたみんなに話があった。
「実は、みんなに会いたがっている人たちがいるんだ。それが、レオネード・ハーツの方々で、もしよかったら打ち上げでもどうかって誘われたんだけど」
打ち上げ。今回の紅白海賊祭りのだろうが、今エヴァンで行動するのはまずいだろう。
「ミヅキの存在が公になってしまった以上、街へ足を運ぶのはさけたいな」
ーーそれなら、、、。
「来ちゃいました~~~!お疲れ~カイト君!お疲れ様、グレイ君~///」
マタタビら一行が取っていた宿に1番最初に足を踏み入れたのはベロベロに酔っていたタツマキであった。顔や体のいたるところに包帯やガーゼをつけている割には相当元気であった。
「飲み癖悪いですよヒナさん。二次会会場じゃないんだから謹んでください」
「タッツーさん恥ずかしい…」
「キンキンうるせーなー!傷に響くんだよマッキー」
「タツマキ、うるさい」
ベロベロに酔い、周りに迷惑をかけていると思っているレオネード・ハーツの仲間たち。全員が全員、タツマキの振る舞いに恥ずかしさを覚えていた。
そしてなぜだか知らないが、レオネード・ハーツの影に隠れるようにして、入ってきたホーリー・シンフォのシュウとリリアン。2人はお菓子や飲み物など、簡単につまめるものを4袋ほど買い集めて持ってきてくれていた。
そして、1番謎なのは、全く隠れていない巨体の男。ダズ=バッハトルテも邪魔しに来ていたということ。
「凄い大所帯ですね。こんなにいるとは聞いてないですよ」
「まあ色々あってね。みんな君やグレイ君にそそられるものがあって来たんだよ。ねぇダズさん?」
「おおよハルミ!!俺はな、この小僧に助けられた身だ。まずは感謝をしなければならんと思ってな!そこの小僧もそうだろ?レオネード・ハーツの…」
「ソウヤです。そうですね。グレイ君には命を助けて貰いました。敵ながら感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとう」
改めてグレイに対して深々と礼をするソウヤとダズ。名実ともに知れ渡る大物たちに頭を下げられて戸惑うグレイ。
「あわわわわ、えぇーと、ど、どうすれば」
「こういうときは"どういたしまして"でいいのよグレイ」
常識的なことに対して、無知なグレイにやさしく教えてあげるミヅキ。
「どどどどどどどど…」
呂律がうまく回らず、どういたしましての言えないグレイ。そのままただ「ど」を連呼するだけの機械になってしまい宿中大笑いしてしまう。
「君もしかして酔ってんの?!ウケる(笑)」
「良いところなんだから、マッキーはちょっと黙ってろ!」
タツマキの体を引っ張り端の方へおいやるベルモンドとミヒャ。
「やだやだ!やめてよーー」
「「「「「ははは(笑)」」」」」
宿中が終始賑やかな空気に包まれ、互いに心を開きあっていく。みんな宿中を自由に徘徊し、それぞれ話したい相手の語り合っていた。
そして、ソウヤとハルミはグレイのもと足を運ぶ。
「改めて今回はお疲れ様。話は聞いたよ。あと少しの差で惜しくも負けてしまったみたいだね」
「はい…白チームはおめでとうございます」
「その後の号泣会見は凄かったらしいな!お姉ちゃんに抱きついてワーワー泣いたみたいで」
「チ、チガイマスヨ!!////」
少し意地悪をしてグレイを煽るハルミだったが口調を少し変えながら、グレイの前に一つの袋を差し出す。
「これは、今回の優勝賞金の金貨10枚だ。元の持ち主は、そこのソウヤだ。もし君が、観客たちの前で放ったように、今後の旅や仲間のことを真に思っているのなら受け取ってやってくれないか?ソウヤの感謝の気持ちだ」
「ソウヤさん…」
「お金で解決なんて、すごくいやらしい気もするんだけど…何か…その…目に見える形で恩返しがしたいんだ。も、もちろん、嫌なら収めるよ…変な気持ちにさせてしまってごめん」
「そうですね…お金…ですか…」
受け取るか正直迷うグレイ。金貨10枚。今のグレイパーティの金銭面はカツカツで喉から手が出るほど欲しい。それに今回の一件でミヅキのことが公になってしまった。気休め程度だが、ミヅキの変装道具は今後のためにも買い揃えた方がいいに決まっている。それにフラナへの旅路は約1週間超のものになると予想される。金貨10枚でも1週間分の食事代や衣類、旅の道具を買え揃えるには足りるかどうか。カイトのものと合わせて余裕を持たせたい。それでも、お金という存在はソウヤのいうように、無償ですごく気持ちよく貰えるものじゃない。
「お気持ちは嬉しいのですが…そのお金は…」
「ならさ!」
グレイが断りを遮るように言葉を被せるハルミ。
「君んとこのお姉さんにさ、ファンサ頼めない?」
「フ・ァ・ン・サ?」
頭の上をハテナが埋め尽くすグレイ。
「実は、うちのソウヤさ、ミヅキちゃんの大ファンなんだよね。最近行方不明のニュースが出回ってたし、シングルの発売とか活動全般ぱったり止まってたでしょ?もう気が気でなかったんだよね。まあ本人の安否を確認できたし、せっかくこんな近くにいるなら、握手とかサインの一つや二つお願いできないかな?それの代わりとして受け取ってくれよ。CD代とかと一緒一緒」
「それなら…!」
そういってミヅキのもとへ走っていくグレイ。遠くでごにょごにょ話す2人。途中ミヅキのツンとした吊り目がソウヤの方をちらちら見ているのを感じて、隅の方に縮こまるソウヤ。
「お前さぁ…本当にインキャだよなー。好きな相手がすぐそこにいんのにウジウジしやがってよー」
「ハルミには分からないよ!この気持ちは。心臓バクバクするんだ!酸素が薄くなるんだ。視界がぼんやりするんだ。」
「それ命に関わる話だろ!手繋いだら死ぬんじゃね」
「そうかも~」
「おいおい、ダメだろ…」
何やら交渉成立か。グレイに引っ張られてハルミたちに近寄ってくるミヅキ。
「私のファンの方って、お兄さん?」
「へ?!」
まさかのグレイでさえ、ミヅキの豹変ぶりに恐怖の目を向けてしまう。
ーーボ、ボ、ボ、ボ、ボクの知らないミヅキさんがいる…。だ、だれですかこの人。
「僕じゃなくて、あっちの小さいの」
もはや部屋の隙間のホコリレベルで縮こまっていたソウヤに歩み寄るミヅキ。
ソウヤの背後に立ち、そのまま膝を曲げて、しゃがみ込み目線の高さを合わせるミヅキ。
「お名前なんていうんですか?」
透き通る綺麗な声が耳元を撫でるのを感じて、少し振り返るソウヤ。ゼロ距離に推しのアイドルの瞳を見つけ、石にでもなったかのように固まってしまう。
「ソ、ソウヤです/////」
「あいつの目、焦点あってなくね?」
「目だけは泳いでますね」
しっかりとソウヤを観察するハルミとグレイ。顔はミヅキの方を向いているはずなのに、目を泳ぎまくり、心ここに在らずといった状況。
「ちゃんと見て!」
そういってソウヤの頬を両手でガッチリ抑えるミヅキ。本当にゼロ距離で見つめ合う2人。
「これからも応援よろしくね」
見つめ合ったまま笑顔を振りまき、軽くウィンクをしてソウヤのもとを離れていくミヅキ。その頬は少し紅潮していて照れているようにもみえた。まさに天使。
「すごいなあの子。」
「僕も初めて見ました、フ・ァ・ン・サ?」
「そうそう。ファンサービスね。まあお互いウィンウィンだし、それでうまいもんでも食いなよ」
「ではこれは、ミヅキさんの買い物に当てます!ソウヤさんもありがとうございます!」
「hahlyo~~」
「もうヘロヘロだなこいつ。今ので魂抜かれちまったわ」
ミヅキの協力もあり、金貨10枚を手にすることができたグレイだった。
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※小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しています。
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