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 チャイムが鳴り終わる頃、俺は教室へ滑り込むようにして入った。

「菊田、遅いぞ、どこへ行っていたんだ」

早くも教卓へ立っている先生が俺に尋ねた。

「えー…図書室っす」

「と、図書室!?」

先生は目を見開いて驚いている。

まあ俺が図書室にいるなんて聞いたら、まあそういう反応になるだろう。

「菊田、テスト期待してるぞー」

「えっそれは」

何故か先生へ謎の期待をされてしまった。

そうして俺はチャイムが鳴った数秒後、ギリギリアウトで着席した。

「なあやばい…!先輩図書室にいた…、死にそう…!」

朝のホームルームが始まってしまったものの、俺は席に着いた矢先、真っ先に小声で港人へ報告をした。

今はとても落ち着いてはいられない。

「マジかよ!?やっぱ俺の予想当たってた」

「本当にありがとう…港人愛してる…!」

「はい菊田、告白してないで号令かけろー」

そうして、朝のHRが終わり、面倒くさい一時間目も、何とか無事に終了した。

「あー疲れた…月曜日ダルいな」

一時間目の授業後の休み時間、港人が伸びをしながら、俺に言った。

「な。つーか腹減った。食お」

俺は鞄から弁当を取り出した。

「いや飯食うの早すぎんだろ。早弁にも程があるわ」

「ちょっとつまむだけ。つーか朝から消費カロリーヤバくて今日はやけに朝から腹減ってる笑」

俺はそんな変な理由をつけて、空腹を満たすように弁当のおかずを口へと放り込む。

「まさかマジでお前の好きな先輩と会えるなんてな…!?雅が、先輩が本好きって言ってたって言うから、適当に図書室行けば会えるんじゃないかと思って提案したんだけど」

「まじ天才だよお前…!朝も言ったけど、本当にありがとう港人…泣 クラスも聞けたし」

「え、クラスまで聞いたのか!?すげぇなお前…!いつでも会いにいけるじゃん」

俺のこの馬鹿な性格が役に立つこともある。

その時の状況で行けそうなら行くし、行けなそうなら行かない。

「次の時間会いに行こっかな」

そういい俺は卵焼きを口に放り込む。

「菊田!」

「ん?」

俺が弁当を頬張っている最中、クラスメイトの男が俺を呼んだ。

「廊下で、二年が呼んでる」

(二年の…?!え、空先輩?でも俺クラス教えてな…)

「…おう、分かった、サンキュ!」

俺は確かめるべく、ダッシュで廊下へ出た。

廊下へ出ると、一人立っている先輩の姿があった。

「…雅」

「先輩!!?どうしたんすか」

「いや…俺はお前にクラス教えたけど、俺が聞いてなかったと思って。探した」

「探したって…俺を、すか?」

「うん」

胸がドキンと音を立てた。

目の前に好きな人がいる、という状況ですら胸が高鳴るのに、そんなこと言われたら更に胸が高鳴ってしまう。

「…お前はいつもウロウロしてるから、廊下にいるかなって思ってた」

「ああ…腹減ってて、教室で飯食ってました」

「…早」

先輩はふふ、と微笑んでそう言った。

「たまたまこの教室覗いたら居たから」

俺を探しにわざわざ来てくれたことがまず嬉しい。

「先輩、昼そっちの教室行っていいすか!」

「いいよ」

「よっしゃ!約束っすよ」

「うん」

俺は昼休み、先輩と約束をした。

中学時代もたまにではあったが、空と零先輩と昼ご飯を食べたことがあったから、あの時のようにまた食べれたらな…と思った。

心の隅では迷惑かな…とも思ったけど、先輩は受け入れてくれるだろうという謎の確信があったから、言う事が出来た。

「雅の元気で素直なとこ、何も変わってないね」

「っえ」

先輩は俺の目を見てゆっくりとそう言った。

俺は顔全体が熱く火照るのを感じた。

中学の時から、たまに先輩はずるい時がある。

「…顔赤」

「誰のせいっすか!!」

先輩はたまに意地悪を言う。

本当にたまに。

そのたまにが出た時は恥ずかしさもあるけど、嬉しくなる。

「…また昼ね」

「はい!」

俺はそんなたまにずるい先輩と別れ、教室へ戻った。

「おかえり、先輩だったのか!?」

港人が聞いてきた。

「うん。一緒に昼食えることになったわ。お前も来るか」

「は?!俺はいいよ、邪魔だろ」

「えー」

「えーってなんだよ!…あ、でも雅が好きって言うその空先輩はどんな感じの人なのか見てみたいからちょっと見に行くわ」

港人は一緒に昼ご飯を食べる訳では無いが、先輩を見に教室へ行くと言った。

「港人、空に惚れんなよ」

「どうかなー笑」

「やめて!!」

そうして午前の授業を片付けていく内、俺に遂に昼の時間が巡ってきたのだった。
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