無邪気なわんこはぺろぺろ懐く

椎那こころ

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 俺は落ち着かない心のまま、学校へ到着し、教室へ足を踏み入れ、自分の席の元へ向かう。

「雅、うっすー」

俺が自分の机に鞄を置くと同時に声を掛けてくれたのは、進学して初めて出来た唯一の友達の、新井田港人にいだみなと

今日の日直は俺と港人の二人だ。

今はまあまあ早い時間だ。教室には俺と港人しかいない。

港人は俺より早く教室へ着いていたようだ。

「…はよ」

「あれ、雅疲れてんのか?元気ないじゃん」

「…まあ、うん」

数分前に起きた出来事が今でも信じられなくて、ついいつもとは違う俺になってしまう。

「あーまさか恋の悩みかー?笑 失恋でもしたのか?笑」

「っ!?!?」

俺は恋、そして失恋という言葉に過敏に反応してしまい、前の席でこっちを向いて跨って座る港人の顔をバッと見た。

「な、何だよ…!?ビックリした…!もしかしてマジ…?」

「別に失恋…はしてない。まだ好き…。っあ」

「待っておま、何…?!」

心に閉じ込めていたはずの言葉はいつの間にか表へ出ていて、気付いた頃にはその言葉は港人の耳に入っていた。

言うつもりなどなかったのに、頭の中でつい考えすぎてついポロリと言ってしまった。

俺は恥ずかしさのあまり机に顔を伏せた。

「うう…俺は何て失態を…」

「ガチか…!?てかいいだろ別に。お前すぐ顔に出るタイプだし、いずれわかる事だったし。ほらだから言ってみろって」

顔を伏せて顔を赤らめる俺に、港人は優しくそう言った。

俺は直感的に、こいつには全部を話せそう、

こう思った。

「…うん」

そうして俺は中学時代の空先輩との出会いから、数分前に起きた奇跡と偶然が混合した出来事まで、港人へ包み隠さず話した。

語彙力のない馬鹿な俺の話を、港人は顔色一つ変えずに聞いてくれた。

「…ってことがあった」

「うーむ、そうか…好きな先輩と同じ学校なんてマジの奇跡だな」

「てか港人は…俺が同性の先輩好きだって聞いて、驚かないのかよ…?」

正直、驚かれると思った。

このカミングアウトが一番怖いことだから。

「別に?好きになった人が男だったってだけだろ。立派な恋だろ」

港人はサラリとそう言った。

「港人…!!」

俺はつい港人の両手をガシッと握る。

「うおっ!?」

「お前に言ってよかった…!今後も俺をよろしく頼む…!」

「いや自分でも頑張れよ」

俺はこいつに言ってよかったと心から思った。

直感は間違っていなかった。

しょうこの複雑な恋愛を受け入れて貰える友達は、限られていると思う。

「…ところで雅、その空先輩の好きな物は何か分かるか」

そして突然、港人は俺の顔を見て言った。

「え?えー…本…?」

「本…か」

「う、うん」

「じゃあ雅、今から図書室行け」

「は?!何で」

「いいから」

港人はいきなり口を開いてはそう言い、俺の背中を押した。

俺は押されるまま、廊下へと出た。

「てか!日直って朝職員室に日誌取りにいかないといけないだろ…!」

廊下へ出た時、俺はふと日直の朝の仕事があることを思い出した。

「んなもん俺がやっとくわ。早くお前行け」

日直の朝の仕事も港人がやってくれるようだ。

そんなに俺に図書室に行ってほしいのか…?

(な、何でだよ…!?先輩が本好きなだけで俺は本好きじゃねえよ…勘違いしてんのか?)

その後、俺は港人に背中を押され、俺は目的を知らないまま、校内にある小さな図書室へ向かうこととなった。
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