上 下
17 / 20

十七話 悪夢から目覚め

しおりを挟む


      
先日、保護したリーフィ種が極度のストレス状態となり、瀕死状態。同じ種のリーフィ(ファミリー)の保護を緊急要請。

【依頼主】
魔物保護協会局長 メーデル

【報酬】
親クラスを一体保護してくださった冒険者様には特殊スキル用スロットルコインを1枚贈呈。

【終了条件】
ファミリーが5組教会に引き渡した時点で終了。


この緊急依頼(イベント)はプレイヤーのみに発行され、進行された。
このイベントに即座に参加し、業績を上げたのは悪魔種族のケージだった。


「メーデルさん!連れてきた!!リーフィちゃんは?!」
『君が第1号よ!!保護したリーフィ達に事情説明して、すぐに医務施設に向かわせて、ジェット!』
『分かっている!!』

アルトがまず保護されたリーフィファミリーの親格に説明を行い助けを求める。

『ーというわけで、助けて欲しいのだ!』
『勿論です。我々を助けてくださった人種様にお聞きしました。ハンターのせいでその子は1人で辛い思いをしたのですね。今は不安で苦しんでいるはずです。私がお力になれることが嬉しい。すぐに合わせてください!』


~~悪夢の冥丘~~

暗闇です。目が覚めても暗闇です。
炎に追いかけられる夢です。
イベントなんだろうなってわかるんですが、この悪夢イベはいつ終わるんでしょう。きっかけがわかりません。
炎は寝る前のアレなのはわかりますが…。
長いです。ひたすらに長いです……

しかし、ようやくそのイベントも終わってくれるようです。

長い長い暗闇空間から離脱できたのは、何がきっかけなのか、私が何か条件を満たしたからなのか定かではありません。ですが、ようやく解放され、眩しい世界に目覚めた事は現実味がありました。

そして、目が覚めると…とっても不思議なことに私がいました。
「フィー…?」
『初めまして、私はあなたと同じ種のリーフィ種です。あなたを助けにきました。』

同じ種というのはわかりましたけど、まだ体が重いです。もう少し眠らせてください。夢の中という設定とかそういう状況下だったのかもしれませんけど二度寝したくなるような状況と似てます。

「フィ……」
『疲れているのですね。でも起きて、あなたのことを心配している人たちがたくさんいます。あなたの親御さんのことは聞きました。もう、大丈夫ですよ。』

見た目少し大きなリーフィは私をツルで覆い始めます。なんでしょう。とても暖かくて落ち着きます。体が軋んでいるような痛みもあったのにそれも無くなります。治癒魔法の一種でしょうか。太陽のように暖かい光です。

『さ、次は声を出す練習ですよ。あなたの意思を皆さんにお伝えしてください。貴方は生まれる前に名前を授かっているはずです。教えてください。』

ツルには枝分かれした大きな葉があり、それが手のように頰を優しく撫でます。

名前を強く念じる。
それだけでいいと言われて自分のプレイヤーネームを絞り出すように思い込むと久しぶりに口笛ではない私の声が小さく響いた。

『……リ、リア』
『…っ!とても可愛らしいお名前です。よく頑張りましたね…もう大丈夫ですよ。』
『ねむ…』
『そうですね、眠って良いですよ。ゆっくりお休みなさい。』

二度寝の誘惑というのには負けてしまい、そのまま眠りに落ちる。

(プレイヤーを起点としたイベントって初めてしたけど結構いいわね。またやろうと提案しましょっ。)

急遽発行されたイベントの対応に当たっていたのは運営の人間であった。不遇に見舞われたプレイヤーに対するイベントは発生する予定ではあったものの先にAIが判断して依頼を上げようとした事に対応するためのNPCの準備だったりが間に合わず運営の人間が動くことになったのである。

念話を覚え、疲労回復のための眠りについたことを心配そうに
『…念話を覚えたのか?』
『えぇ、これで意思疎通の問題もありません。疲労回復のための魔法も使いました。この子の家となる場所はどこなのでしょう?』
『……リーフィの普通を我々は知らんのだが、普段はどうなのだろうか。』
『住処ですか?まあ、地面があればどこでも…日当たりがよければ良いですね。緑の多い場所で擬態して眠るのが普通ですが…』
『そいつは地中で眠っていてな…』
『え?地中で?……どこか案内をお願いしても?そこに私のファミリーも移動します。』
『わかった』

中庭に案内されて、緑も少しはあることを確認。緑を増やしてもらえそうかお願いしておく。
ジェットが離れていくのを見守った後どこにあるのかと探してみるも入口らしき場所は見当たらない。辛うじて地中に空間があることが察知スキルで分かったくらいであった。


『ここの地中…』
『マザー、地中に空間あるよ』
『マザーて呼ぶのやめてキモい』
『お母ちゃま』
「NPCは居ないんだから、普通にしてクビにするわよ」
「ラジャ」
「班長、俺ら掘るスキル持ってませんけど。」
「サーチでなんとなくわかるくらい。」
「この子が特殊スキル持ってるのはわかったけど、あまり深く関わるのダメて言われてますし…」
「……バレなきゃいいのよ」
「録音しました。」
「班長のせいにします」
「……連帯責任よ」
「「「えー」」」

にしても、地中にお邪魔させてもらいたいわね。気になるわ。
ちょっと裏技使いましょう。ログは後で消せばいいわ。

『念話に戻して、プレイヤーを起こすわ』
『何する気…』

すぐ耳元で1番うるさいと言われるアラーム音が響く。その音に誰でも目覚めるだろう。
運営特権をフルで使用する彼らはこうして二度寝姫のリリアを叩き起こした。

『ふぇ?!』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

トーメイさんは生産者

yukami
ファンタジー
幼馴染から譲られたVRゲームを第2陣から始める主人公。目立たず、ひっそりとソロで楽しみたいというスキル構成で、その思惑が外れるようにストーリーは進み始める。 過保護なNPC達や戦闘スタイルを呆れられながら仲のいいメンバーに囲まれて、ゲームを楽しみます。

処理中です...