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十六話 緊急事態(ジェット視点)
しおりを挟む同じくらいの幼体の魔物達とは思ったより早く溶け込みそうだ。このリーフィのこともあり、同じ種のリーフィは最優先で保護する魔物になっている。ハンターは続々と捕まっていたりする。リーフィ専門のハンターを倒しているのはあの悪魔の人族だと聞く。なかなかやるではないかと感心も少し。
挨拶も終わり、中庭に戻ろうとしたら、リーフィは魔法を使いたいという意思を伝えたかっただけなのだろう。本人もそれが自分に対する攻撃だとは思っていない様子でそれにツルを向けていた。
すぐに叫び、庇おうと動くも、リーフィは俺ごと守るように土の山を作り上げた。
攻撃とわかった瞬間怯えと俺に対する守りたいという意思が感じられた。
それにしても、なかなかいい対応だった。
……炎は魔法ではなく、ブレスだ。
ブレスを使える魔物は限られており、リーフィに敵対心を持つ魔物も二体に限られる。
すぐにあのガキどもだとわかった。
怒りのままに動く前に、力が抜けたように座り込み、ツルが投げ出されている状態のリーフィに怪我の有無を確認する。
いつも返事の時はツルで綺麗な形を作るのに、その時はツル自体にも身体自体にも力があまり入っておらず。ガクガクと極度に震えながら歪なバツをつくる。
怪我はないと返すも顔色が悪く、酷い疲労がリーフィを襲っているようだ。
わずかな緊張が一日中付きまとい、さらに少しほぐれた後でこの事件だ。
恐怖が後になって襲ってきたのだろう。疲労により今にも眠りそうだ。
背中に乗れるかと聞くと、力があまり入らない状態のせいでツルで体を支えるのが不安定で、ふらふら揺れながら最後には落ちるように背中に乗った。
これ以上無理をさせないために眠るように伝える。中庭に着いたら起こすとはいうが、この状態では起きることもできないかもしれない。
小さく返事をし、気を失うように眠った。いつもならツルに丸まって眠るというのに、ツルを収納することもせずだらしなく地面に垂れたままだ。
穴の中に眠らせるのは不可能だと考え、医務施設に向かうこととした。医務施設に行く前に、講堂にいるであろう主人に報告と罰を下す許可をもらうこととしよう。
『主人』
『どうし…どうしたの?!』
『静かにしてくれ、先程許しがたい事件があり、疲労で気を失うように眠りについたところだ。』
『…許しがたい事件?なぁに?その面白くなさそうな話。』
『卒業組、皇種の龍二体が居たな。アレだ。ちょっとテドーに連れてきてもらってくれ。俺は医務施設に運んで状態を検査してもらってくる。』
『わかったわ。どこでオハナシする?』
『ハナシ?やることは仕置だけだ。慈悲のないな』
『アルトも呼んでおくわ。ふふふ…』
館内放送が流れ、テドーが呼び出されているのを聞きながら、医務施設に向かう。
医務施設に入り受付にいる主人が一緒の契約獣、妖精種のセリカに声をかける。
基本的に契約獣の立場の俺たちは人との会話もできるスキルを持ち合わせている。まあ、アルトもだがあいつも俺と同様滅多に使わない。
妖精種のセリカは医務施設で、休んでいる魔物達の様子を見ていたり小さな怪我をした魔物の治療をしてくれたりする。今は何もすることがないのか俺がきたことに気づき飛んで近づいてきた。おっとりとした性格だがいろんな魔物の知識も併せ持っている。
『あらジェット、どうしたの~?』
『セリカ、様子を見て欲しい奴がいる。怪我はしてないが、気絶するように眠ったのだ。一応検査を頼む。』
『ん~?…あ~!リーフィだ~この種族はね~ストレスを受けやすいの~。幼体は~特に~。ツルも萎びてきてる~…早く癒しの泉に寝かして~。』
『っ!そんなに危ないのか!どこが空いてる!』
『こっち~!この子~親がいないのだっけ~?この種はね~、親がいることで安心感と自信を得るの~。それがないと~怖がりですぐに疲労に倒れてしまうの~。同じ種であれば~親が違ってもリーフィの親は保護欲が強いから~助けてくれるよ~。他のリーフィ種の親クラスが来ない限り~起きないかも~…』
『な、なんだと?!…くっ!主人に報告してくる!意識がもし戻ったら遠念を飛ばせ!』
『わかった~』
まさかこんな事態にまで悪化しているとは!仕置なんてしてる場合ではない!主人に緊急依頼を出してもらわなくては!
帰還の魔法で主人の元に向かい、主人にセリカからの話を報告する。
『なんですって?!そんなに酷いの!!わかったわ!すぐに緊急依頼を申請してくる!セリカ以外の契約獣、ならびに教会本部の職員にも招集をかけます!テドー!その二体はとりあえずいいわ!リーフィちゃんの方が最優先よ!』
『リーフィの意識は戻っておらんのか!』
『意識が戻ったらセリカには知らせるように伝えた。今は、リーフィ種の確保が最優先だ!』
『わかった!私も行こう!』
緊急依頼が出され、プレイヤー達やNPC冒険者達がその依頼内容を見て騒ぎ出す。
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