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第2話
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人混み避けて、大将さんを探す。
…あ!いた!またピクリと体を震わせてバッと後ろを向くが私はおそらく見えてない。
『……。』
そのまま歩き始めた。
そして一軒の店に着く。
…大きなお店だなぁ。
「おっ、大将おかえり!」
『…なんだ、ケンジか。悪いが後にしてくれ、客がいる。』
「は?客?どこに?」
『…お前でも見えないか。…ふむ、特殊な奴が来たものだ。ほら、お前がいると客が入れないからどけ。』
「……」
無言で扉の前をどく男の人。
足を少し出して引っ掛けようとしている。引っかからないが。
「大将…幻覚でも見だした?誰もいないし…疲れてるんじゃ…」
『黙れ、そして帰れ。武器は手に入っただろう。』
「まあ、そうだけど…」
『…。』
「うっ。わかったよ。」
大将さんのジト目は最強のようです。
プレイヤーさんはお帰りになられました。
『さて、そろそろ姿を現してくれないか?』
…話すのは縛ったから、紙に書く。
[こんにちは、トーメイと言います。大将さんは鍛冶屋の店長さんなんですか?]
と書いて、机に置き机をコンコンと叩く。
『…ん?…紙?……ほう。話せないのか?』
[話すことをせずにやっていこうと思ってまして…]
『…ロールプレイというやつか。姿を隠しているのはスキルか?』
[いえ、違います。いわゆる透明人間です。]
アイテムとかはスキルで消せるけど、アバターは設定したからだし…
『…!……装備は?』
[装備したら透明になります。自作で、自分のために作ったものも透明になります。自作ではなかった場合は外せば見えますけど。]
『…そういう固有スキル持ってるという感じか。』
[そうですね。]
『………お前は女か?』
[はい。]
『そうか。…ふむ。』
少し、考え込みだした大将さん。
『まあ、いい。属性素材を見せてもらえないか?』
[構いません。毛皮と爪と牙があります。全部出しましょうか?]
『頼む。』
アイテム袋からアイテムを取り出し、手を離す。
『…!ほう、手が離れれば見えるようになるのだな。……トーメイと言ったな。…女なのに適当すぎないか名前。』
[ふふ、そうですね。適当すぎたこと後悔してます。]
『なら、メイと呼んでもいいか?その方がしっくりくるだろう?』
[お好きにどうぞ。]
『じゃ、メイ。これはダークネスウルフだよな?1人で倒したのか?』
[はい。彼らは私を見ることができないようで。]
『…そうか。これを防具や武器に作り変えてやろうか?』
作り変えてもらうのはありだ。でも、鍛冶について学ぶチャンスかもしれない。溶鉱炉も使えるかも…
[いえ、自分で作り変えたいのです。…でも、やり方とやる道具がなくて…教えてもらえないでしょうか?]
『フッ!もちろん教えてやる。遠慮はせんでいい。それと、メイは他にも生産系スキルを持っているのか?』
[はい、鍛治、料理、調薬、裁縫です。]
『それなら確かにソロでもいける構成だな。毛皮は裁縫でやるつもりか?』
[はい。]
『じゃ、それを自分装備のためではなく、売るつもりで作って見てくれないか?そうすれば俺も見えるのだろう?』
[わかりました。]
では早速、作っていこう。
頭の部分はフードみたいにかぶれるようにして…
……よし
ダークネスウルフの装備一式
○ダークネスウルフの毛皮を使用したため、俊敏力、防御力が格段に上がっている。軽いが頑丈でフードを被ると敵を威圧できる。闇属性の効果、暗視スキルなしでも、夜や暗い場所が明るく見える。
黒い狼になり切れる装備だなぁ。
コスプレのようだ。
お気に入り。
『ほう、なかなかやるな。スキルを確認してみろ、属性素材をもとにするとスキルの熟練度が上がりやすいんだ。』
スキル
剣☆9 鍛治☆0 調薬☆2 料理☆2 裁縫☆7 釣り☆0 軽業☆0 鑑定☆4 植物知識☆1 鉱物知識☆0
おぉ!本当だ!
[上がってるのを確認しました。]
『そうか、じゃ、メインの鍛冶だな。牙と爪どちらも使うか?』
[よくわからないので、お任せします。]
『んじゃ、爪だけでやろう。メイの使う武器はなんだ?』
[剣です。今はロングソード使ってます。]
『そうか、じゃあ、片手剣だな。他の武器にしたいとかあるか?』
[今のところはないです。]
『じゃ、始めるぞ…まず…』
大将さんは丁寧にやり方を教えてくれました。…ふむふむ。
これが基本となるやり方か。
できたものはこちら、
ダークウルフソード
○闇属性の効果付きの剣。光属性の魔物に多大なるダメージを与える。暗器にもなり得る剣。
[ありがとうございました。]
『いや、メイは飲み込みが早いな。……よし、メイ、ちょっと知り合いを助けてやってくれないか?』
[知り合いの方ですか?どのような方でしょう。]
『調薬した薬を売ってるばあちゃんでな。第二陣とやらがきてからてんてこまいで、大変なんだそうだ。傷薬とか作れるだろ?納品してやってくれ。』
[構いませんが…怖がられないでしょうか。]
『あのばあちゃんは肝が座ってるから大丈夫だ。』
[…それなら、行って見ます。どこのお店ですか?]
『俺が案内するさ。紹介してやるから…ちょっと待ってな。……ほい、これを渡しておく。』
大将さんからは小さな鈴手渡しされました。
[これは?]
『ここに来たらそれをならせ。そうすればお前が来たのがわかるようにしておく。奥の溶鉱炉を一つ使っていい。』
[いいんですか?!]
『おう!だが、お前用に作るんじゃなく売ること前提に作って、作ったものは見せてくれ。剣以外を作って、もしいいのができたらここに並ばせて代わりに売ってやってもいい。もちろん売れたら金はお前のものだ。』
[いたせりつくせりな気がしますが。本当によろしいのですか?]
『おう!多分ばあちゃんも似たようなこと言ってくるぞ?』
?なぜ?
『ま、いくか。こっちだ。』
理由を聞く前に店を出ていく大将さん。
慌てて追いかける。
しばらく歩くと、人がいっぱい並んだお店が一軒あった。
『ありゃヤバイな。急ぐぞ。』
『補充しても補充しても追いつかんっ!人手が足りん!!待っておれといっとるじゃろ!』
『ばあちゃん!人手連れて来てやったぜ!傷薬と解毒薬と解痺薬は作れるやつだ!』
『大将か!ありがたい!素材は奥にある!作らせてくれ!!接客はわしがやる!』
『よし、メイ出番だぞ。』
[わかった。素材が尽きたら言う。]
急いで店の奥に行き作りまくる。
『…おい、大将!どこにいるんじゃさっさと奥に…』
『落ち着け、もう奥に入って作り出してる!』
『……はあ?ここは誰も通っとらんぞ!』
『いいから…おい!そこ!順番守らねぇと売らねぇぞ!』
『……何が起きとる。補充されとるじゃと。しかもこのスピード…!』
『…そんなに早いのか?』
『……早すぎるわい。10個単位で作りよるな。』
『…素材足りるか?』
『大丈夫じゃ、また取りに行けばいいしの。』
『メイはすげぇな。』
『ん?メイというのか?』
『本名は違うが、メイと呼んでいる。そろそろ終わりだな。』
材料なくなっちゃった。店に出てみよう。
[大将さん、材料なくなったよ。]
『なんじゃ?!紙が急に!』
『お!終わったか。よくやったな。』
『……おい、一体どういうことじゃ。説明しろ大将。』
『怒んなよ。助かったんだろ?』
『助かったのは助かった。…で?どこにおるんじゃ、助っ人は。』
[えっと、すみません。自己紹介遅れました。透明人間で冒険しているトーメイと言います。メイとお呼びください。]
『……透明人間じゃと?!』
『そういうこった。』
[透明人間でソロで楽しみたかったので、生産系スキルは揃えてます。]
『………大将と一緒だったってことは、鍛冶も持っとるんじゃな。調薬と…他は?』
『料理と裁縫だってよ。』
『ほう。』
『こいつには鈴をもたせたから、おれの店に来た場合は鳴らすように言ってある。ばあちゃんもそうしたらどうだ?』
『そうだねぇ。店の近くに寄ったり、忙しそうにしてたら手伝ってもらいたいねぇ。』
[では、鈴を鳴らして来たことをお知らせしましょうか?]
『あぁ、頼めるかい?』
[はい、構いません。]
『じゃ、これ。今日手伝ってくれたお礼だよ。』
3000ガルドとポーション(飲み薬)、傷薬を各10個ずつとポーション(飲み薬)のレシピを渡されました。
[…!レシピまで?!]
『作り方覚えて、次から作ってもらえると嬉しいね。』
[わかりました!よろしくお願いします!]
さて、これからどうしましょう。
『……なあ?メイちゃんは料理はどのくらいできるんだい?』
[料理は…レシピがわかれば、作れると思います。サンドイッチ1つ作ってあるのですが試食しますか?]
『お!いいね!おれにもくれ。』
『じゃお願いしようかね。』
サンドイッチ2つだして、机に置く。
『あら、美味しそうじゃないか!いただくよ。』
『うめぇ!!すげぇうめぇぞ!』
[お口にあってよかったです。]
『……メイちゃんや、とある食堂で助っ人として働いてやってくれんか?昼の少しの間だけでいい。』
『あ。アマンサのとこか!』
[食堂があるのですか。行ってみたいです。]
『よし、じゃあ、おばあちゃんが案内してあげよう。』
[すみません、今更なのですが、おばあちゃんの名前を聞いても?それと大将さんも…]
『悪りぃ、言ってなかったな。おれはラズールだ。大将さんでいいけどな。』
『私はカランだよ。私もおばあちゃんでいいよ。』
すごくいい人だなー。こんな出会いがあるなんて、透明人間でよかった。
[改めてよろしくお願いします。]
『『……。』』
?どうかしたのだろうか?
『律儀だ。』
『いい子だねぇ。』
[…?挨拶することは普通では?]
『うんそうなんだけどねぇ。』
『それができないのが…たくさんいるんだよ。』
そうなのか、他のプレイヤーはいいやつ少ないのか。気をつけよう。
『ま、異界人にいいのもいるが…おいおいな。』
[あ、私は目立つのが嫌いなので、有名な人とは交流したくないです。…まあ、交流するとしたら、アイテムを売るときぐらいですかね。]
『店を出したいのか?』
[はい、生産系スキルを揃えたから作ったものを売ってみたいというのはあります。異界人が店を出すときは無人店舗でも売れるとありましたから、それをやってみたいです。]
『ほう…作れるものはなんでも売る感じか?』
[はい、素材はこの辺なら簡単ですので。]
『確かにな。無人店舗の場合、10万ガルドが必要になるぞ?持ってるか?』
お!あるある!
[あります!ボスウルフを狩って貯めました。]
『なら大丈夫だね。いい店舗場所を教えてあげよう。先に食堂に行こうね。』
[店舗場所、教えてくれるのですか!?ありがとうございます!そろそろお昼ですし、忙しくなってそうです。]
『そうだね、急ごう。』
『おう!』
おばあちゃんと大将さんの後を追うように食堂に向かって歩きます。
ここもまた、戦争のようだ。
『1番席のまだなの?!』
『料理人が不足してるわ!誰かいないっ?!』
『料理人ならいるぜ!アマンサ!一通りのメニューのレシピを貸せ!』
『大将!ナイスタイミングよ!レシピはこれ!作りながら余裕があったら皿も洗ってほしいわ!』
『よっしゃ!メイ頼んだ!』
大将さん人使い荒い…
アマンサさんは美人なお姉さんだ。
レシピを速読して、頭に入れて作り始める。
『…1番の料理は!……あるわね。味もよし。運んで!』
紙で、どこのテーブルの料理かわかりやすくして並べとこう。さて次は…
『…早い。しかもわかりやすく並べてあるし!大将!後でメイちゃんのこと紹介して!!』
『あいよ。』
『アマンサ、3番オーダーじゃぞ。』
『あ!ありがとっ!カランおばあちゃん!はいはーい!今いきまーす!』
…ふぅ。疲れた。
なんとか、乗り切った。
椅子に座って手で仰いでいると…
『メイちゃーん!こっちにきてくれるー?』
お呼ばれしたので、ホールに向かう。
向かっているとキッチンまで顔をのぞかせるようにキョロキョロと見渡すアマンサさん。
『あれ?メイちゃん??』
[あ、ここにいます。]
すれ違う前に、紙を壁に貼り付ける。
『…へ?』
[えっと…]
『き…ふぐぅぅうー!!』
『馬鹿、叫ぶな。人の目が集まるだろうが。メイは目立つのが嫌いなんだよ。手、離すぞ?叫ぶなよ?わかったか?』
『(コクコクコク)ぷはっ。…で?どういうこと?ってか、朝、心霊現象が!とか騒ぎがあったけど、まさかメイちゃんのこと??』
『そんな騒ぎあったのか。』
[知らなかったです。]
『……で、姿消すスキルでも使ってるの?』
[いえ、透明なだけです。]
『へ?』
『だーかーら、スキルじゃないのっ。だから姿見せろって言われても見せれないの。』
『……声も出せないの?』
[透明だから喋らないでやろうかと思ってます。]
『ロールプレイ…ね。…でも、私声聞きたいな?』
[例外はなしです。]
『ちぇ。』
『でだ、今日みたいにこの昼の時間帯、手伝ってもらったらどうだ?お前は助かるだろ?メイも料理スキルの熟練度が上がるからwin-winな関係だろ?ちなみに、メイには鈴をもたせてある。来たらすぐに鳴らして貰えばいい。俺の店に来たときも同じようにするように言ってあるからな。』
『それは助かるわ!是非お願い!!あと、小さな鈴の音じゃ聞こえないかもしれないから、ここに呼び鈴置いとくから、これを5回鳴らして?それならわかると思うわ!』
[わかりました。]
次は店舗場所ですね。
…あ!いた!またピクリと体を震わせてバッと後ろを向くが私はおそらく見えてない。
『……。』
そのまま歩き始めた。
そして一軒の店に着く。
…大きなお店だなぁ。
「おっ、大将おかえり!」
『…なんだ、ケンジか。悪いが後にしてくれ、客がいる。』
「は?客?どこに?」
『…お前でも見えないか。…ふむ、特殊な奴が来たものだ。ほら、お前がいると客が入れないからどけ。』
「……」
無言で扉の前をどく男の人。
足を少し出して引っ掛けようとしている。引っかからないが。
「大将…幻覚でも見だした?誰もいないし…疲れてるんじゃ…」
『黙れ、そして帰れ。武器は手に入っただろう。』
「まあ、そうだけど…」
『…。』
「うっ。わかったよ。」
大将さんのジト目は最強のようです。
プレイヤーさんはお帰りになられました。
『さて、そろそろ姿を現してくれないか?』
…話すのは縛ったから、紙に書く。
[こんにちは、トーメイと言います。大将さんは鍛冶屋の店長さんなんですか?]
と書いて、机に置き机をコンコンと叩く。
『…ん?…紙?……ほう。話せないのか?』
[話すことをせずにやっていこうと思ってまして…]
『…ロールプレイというやつか。姿を隠しているのはスキルか?』
[いえ、違います。いわゆる透明人間です。]
アイテムとかはスキルで消せるけど、アバターは設定したからだし…
『…!……装備は?』
[装備したら透明になります。自作で、自分のために作ったものも透明になります。自作ではなかった場合は外せば見えますけど。]
『…そういう固有スキル持ってるという感じか。』
[そうですね。]
『………お前は女か?』
[はい。]
『そうか。…ふむ。』
少し、考え込みだした大将さん。
『まあ、いい。属性素材を見せてもらえないか?』
[構いません。毛皮と爪と牙があります。全部出しましょうか?]
『頼む。』
アイテム袋からアイテムを取り出し、手を離す。
『…!ほう、手が離れれば見えるようになるのだな。……トーメイと言ったな。…女なのに適当すぎないか名前。』
[ふふ、そうですね。適当すぎたこと後悔してます。]
『なら、メイと呼んでもいいか?その方がしっくりくるだろう?』
[お好きにどうぞ。]
『じゃ、メイ。これはダークネスウルフだよな?1人で倒したのか?』
[はい。彼らは私を見ることができないようで。]
『…そうか。これを防具や武器に作り変えてやろうか?』
作り変えてもらうのはありだ。でも、鍛冶について学ぶチャンスかもしれない。溶鉱炉も使えるかも…
[いえ、自分で作り変えたいのです。…でも、やり方とやる道具がなくて…教えてもらえないでしょうか?]
『フッ!もちろん教えてやる。遠慮はせんでいい。それと、メイは他にも生産系スキルを持っているのか?』
[はい、鍛治、料理、調薬、裁縫です。]
『それなら確かにソロでもいける構成だな。毛皮は裁縫でやるつもりか?』
[はい。]
『じゃ、それを自分装備のためではなく、売るつもりで作って見てくれないか?そうすれば俺も見えるのだろう?』
[わかりました。]
では早速、作っていこう。
頭の部分はフードみたいにかぶれるようにして…
……よし
ダークネスウルフの装備一式
○ダークネスウルフの毛皮を使用したため、俊敏力、防御力が格段に上がっている。軽いが頑丈でフードを被ると敵を威圧できる。闇属性の効果、暗視スキルなしでも、夜や暗い場所が明るく見える。
黒い狼になり切れる装備だなぁ。
コスプレのようだ。
お気に入り。
『ほう、なかなかやるな。スキルを確認してみろ、属性素材をもとにするとスキルの熟練度が上がりやすいんだ。』
スキル
剣☆9 鍛治☆0 調薬☆2 料理☆2 裁縫☆7 釣り☆0 軽業☆0 鑑定☆4 植物知識☆1 鉱物知識☆0
おぉ!本当だ!
[上がってるのを確認しました。]
『そうか、じゃ、メインの鍛冶だな。牙と爪どちらも使うか?』
[よくわからないので、お任せします。]
『んじゃ、爪だけでやろう。メイの使う武器はなんだ?』
[剣です。今はロングソード使ってます。]
『そうか、じゃあ、片手剣だな。他の武器にしたいとかあるか?』
[今のところはないです。]
『じゃ、始めるぞ…まず…』
大将さんは丁寧にやり方を教えてくれました。…ふむふむ。
これが基本となるやり方か。
できたものはこちら、
ダークウルフソード
○闇属性の効果付きの剣。光属性の魔物に多大なるダメージを与える。暗器にもなり得る剣。
[ありがとうございました。]
『いや、メイは飲み込みが早いな。……よし、メイ、ちょっと知り合いを助けてやってくれないか?』
[知り合いの方ですか?どのような方でしょう。]
『調薬した薬を売ってるばあちゃんでな。第二陣とやらがきてからてんてこまいで、大変なんだそうだ。傷薬とか作れるだろ?納品してやってくれ。』
[構いませんが…怖がられないでしょうか。]
『あのばあちゃんは肝が座ってるから大丈夫だ。』
[…それなら、行って見ます。どこのお店ですか?]
『俺が案内するさ。紹介してやるから…ちょっと待ってな。……ほい、これを渡しておく。』
大将さんからは小さな鈴手渡しされました。
[これは?]
『ここに来たらそれをならせ。そうすればお前が来たのがわかるようにしておく。奥の溶鉱炉を一つ使っていい。』
[いいんですか?!]
『おう!だが、お前用に作るんじゃなく売ること前提に作って、作ったものは見せてくれ。剣以外を作って、もしいいのができたらここに並ばせて代わりに売ってやってもいい。もちろん売れたら金はお前のものだ。』
[いたせりつくせりな気がしますが。本当によろしいのですか?]
『おう!多分ばあちゃんも似たようなこと言ってくるぞ?』
?なぜ?
『ま、いくか。こっちだ。』
理由を聞く前に店を出ていく大将さん。
慌てて追いかける。
しばらく歩くと、人がいっぱい並んだお店が一軒あった。
『ありゃヤバイな。急ぐぞ。』
『補充しても補充しても追いつかんっ!人手が足りん!!待っておれといっとるじゃろ!』
『ばあちゃん!人手連れて来てやったぜ!傷薬と解毒薬と解痺薬は作れるやつだ!』
『大将か!ありがたい!素材は奥にある!作らせてくれ!!接客はわしがやる!』
『よし、メイ出番だぞ。』
[わかった。素材が尽きたら言う。]
急いで店の奥に行き作りまくる。
『…おい、大将!どこにいるんじゃさっさと奥に…』
『落ち着け、もう奥に入って作り出してる!』
『……はあ?ここは誰も通っとらんぞ!』
『いいから…おい!そこ!順番守らねぇと売らねぇぞ!』
『……何が起きとる。補充されとるじゃと。しかもこのスピード…!』
『…そんなに早いのか?』
『……早すぎるわい。10個単位で作りよるな。』
『…素材足りるか?』
『大丈夫じゃ、また取りに行けばいいしの。』
『メイはすげぇな。』
『ん?メイというのか?』
『本名は違うが、メイと呼んでいる。そろそろ終わりだな。』
材料なくなっちゃった。店に出てみよう。
[大将さん、材料なくなったよ。]
『なんじゃ?!紙が急に!』
『お!終わったか。よくやったな。』
『……おい、一体どういうことじゃ。説明しろ大将。』
『怒んなよ。助かったんだろ?』
『助かったのは助かった。…で?どこにおるんじゃ、助っ人は。』
[えっと、すみません。自己紹介遅れました。透明人間で冒険しているトーメイと言います。メイとお呼びください。]
『……透明人間じゃと?!』
『そういうこった。』
[透明人間でソロで楽しみたかったので、生産系スキルは揃えてます。]
『………大将と一緒だったってことは、鍛冶も持っとるんじゃな。調薬と…他は?』
『料理と裁縫だってよ。』
『ほう。』
『こいつには鈴をもたせたから、おれの店に来た場合は鳴らすように言ってある。ばあちゃんもそうしたらどうだ?』
『そうだねぇ。店の近くに寄ったり、忙しそうにしてたら手伝ってもらいたいねぇ。』
[では、鈴を鳴らして来たことをお知らせしましょうか?]
『あぁ、頼めるかい?』
[はい、構いません。]
『じゃ、これ。今日手伝ってくれたお礼だよ。』
3000ガルドとポーション(飲み薬)、傷薬を各10個ずつとポーション(飲み薬)のレシピを渡されました。
[…!レシピまで?!]
『作り方覚えて、次から作ってもらえると嬉しいね。』
[わかりました!よろしくお願いします!]
さて、これからどうしましょう。
『……なあ?メイちゃんは料理はどのくらいできるんだい?』
[料理は…レシピがわかれば、作れると思います。サンドイッチ1つ作ってあるのですが試食しますか?]
『お!いいね!おれにもくれ。』
『じゃお願いしようかね。』
サンドイッチ2つだして、机に置く。
『あら、美味しそうじゃないか!いただくよ。』
『うめぇ!!すげぇうめぇぞ!』
[お口にあってよかったです。]
『……メイちゃんや、とある食堂で助っ人として働いてやってくれんか?昼の少しの間だけでいい。』
『あ。アマンサのとこか!』
[食堂があるのですか。行ってみたいです。]
『よし、じゃあ、おばあちゃんが案内してあげよう。』
[すみません、今更なのですが、おばあちゃんの名前を聞いても?それと大将さんも…]
『悪りぃ、言ってなかったな。おれはラズールだ。大将さんでいいけどな。』
『私はカランだよ。私もおばあちゃんでいいよ。』
すごくいい人だなー。こんな出会いがあるなんて、透明人間でよかった。
[改めてよろしくお願いします。]
『『……。』』
?どうかしたのだろうか?
『律儀だ。』
『いい子だねぇ。』
[…?挨拶することは普通では?]
『うんそうなんだけどねぇ。』
『それができないのが…たくさんいるんだよ。』
そうなのか、他のプレイヤーはいいやつ少ないのか。気をつけよう。
『ま、異界人にいいのもいるが…おいおいな。』
[あ、私は目立つのが嫌いなので、有名な人とは交流したくないです。…まあ、交流するとしたら、アイテムを売るときぐらいですかね。]
『店を出したいのか?』
[はい、生産系スキルを揃えたから作ったものを売ってみたいというのはあります。異界人が店を出すときは無人店舗でも売れるとありましたから、それをやってみたいです。]
『ほう…作れるものはなんでも売る感じか?』
[はい、素材はこの辺なら簡単ですので。]
『確かにな。無人店舗の場合、10万ガルドが必要になるぞ?持ってるか?』
お!あるある!
[あります!ボスウルフを狩って貯めました。]
『なら大丈夫だね。いい店舗場所を教えてあげよう。先に食堂に行こうね。』
[店舗場所、教えてくれるのですか!?ありがとうございます!そろそろお昼ですし、忙しくなってそうです。]
『そうだね、急ごう。』
『おう!』
おばあちゃんと大将さんの後を追うように食堂に向かって歩きます。
ここもまた、戦争のようだ。
『1番席のまだなの?!』
『料理人が不足してるわ!誰かいないっ?!』
『料理人ならいるぜ!アマンサ!一通りのメニューのレシピを貸せ!』
『大将!ナイスタイミングよ!レシピはこれ!作りながら余裕があったら皿も洗ってほしいわ!』
『よっしゃ!メイ頼んだ!』
大将さん人使い荒い…
アマンサさんは美人なお姉さんだ。
レシピを速読して、頭に入れて作り始める。
『…1番の料理は!……あるわね。味もよし。運んで!』
紙で、どこのテーブルの料理かわかりやすくして並べとこう。さて次は…
『…早い。しかもわかりやすく並べてあるし!大将!後でメイちゃんのこと紹介して!!』
『あいよ。』
『アマンサ、3番オーダーじゃぞ。』
『あ!ありがとっ!カランおばあちゃん!はいはーい!今いきまーす!』
…ふぅ。疲れた。
なんとか、乗り切った。
椅子に座って手で仰いでいると…
『メイちゃーん!こっちにきてくれるー?』
お呼ばれしたので、ホールに向かう。
向かっているとキッチンまで顔をのぞかせるようにキョロキョロと見渡すアマンサさん。
『あれ?メイちゃん??』
[あ、ここにいます。]
すれ違う前に、紙を壁に貼り付ける。
『…へ?』
[えっと…]
『き…ふぐぅぅうー!!』
『馬鹿、叫ぶな。人の目が集まるだろうが。メイは目立つのが嫌いなんだよ。手、離すぞ?叫ぶなよ?わかったか?』
『(コクコクコク)ぷはっ。…で?どういうこと?ってか、朝、心霊現象が!とか騒ぎがあったけど、まさかメイちゃんのこと??』
『そんな騒ぎあったのか。』
[知らなかったです。]
『……で、姿消すスキルでも使ってるの?』
[いえ、透明なだけです。]
『へ?』
『だーかーら、スキルじゃないのっ。だから姿見せろって言われても見せれないの。』
『……声も出せないの?』
[透明だから喋らないでやろうかと思ってます。]
『ロールプレイ…ね。…でも、私声聞きたいな?』
[例外はなしです。]
『ちぇ。』
『でだ、今日みたいにこの昼の時間帯、手伝ってもらったらどうだ?お前は助かるだろ?メイも料理スキルの熟練度が上がるからwin-winな関係だろ?ちなみに、メイには鈴をもたせてある。来たらすぐに鳴らして貰えばいい。俺の店に来たときも同じようにするように言ってあるからな。』
『それは助かるわ!是非お願い!!あと、小さな鈴の音じゃ聞こえないかもしれないから、ここに呼び鈴置いとくから、これを5回鳴らして?それならわかると思うわ!』
[わかりました。]
次は店舗場所ですね。
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しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
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