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4.そろそろ出ようか
しおりを挟む一体なんだろう?
「そうですね…あそこで今お代わりした騎士の名は?」
「へ?…えっと、サイさんですかね。」
「じゃあ今レイファの後ろに立っている2人の名は?」
話があると隣に座って、ご飯を食べながら聞かれる事に応えていると突然、名前当てクイズが始まったんだが…これは何事??
「えーっと、エイスさんとマゼルさん。」
「次に薪割り作業に入ってる2人は?」
「メイルさんとゼラさん」
「テントの中から出てきたのは?」
「ノーマさん」
「では僕らの背後に立ってる人は?」
「背後?!」
びっくりした…誰かいるのかと思った…
いや気配察知で探知できない存在とかいるのかと…
「誰もいないじゃないですか…なんなんですかもぅ…」
「騎士の名前を覚えたんですね。」
「え?嗚呼はい。質問して答えてくれたり動き方のコツとか聞いたりした時に名前聞いたので関わった人は名前覚えてます。」
出席取れと言われたら、流石に間違えるかもしれませんけど…数人程度なら記憶力はいい方ですから任せてくださいなっ。
「そうですか…それで聞きたいのはそれではなくてですね。」
違うのかよ。なんだったんだ今のクイズ大会は…
「それで本題に入りますが、訓練を真面目に受けていませんね?」
おや??
「はい?」
「勉強熱心なのはいいですが、君はなぜ訓練で演技をしているんですか?」
「……」
あっはっは…流石に強い人の目はごまかせないな。
「それで、君がサボっていたのは最初からですよね?」
「……そんなことはないんですけどね~」
「周りの動きをよく見て、周りの動きに合わせて動いていましたよね?本当は疲れていないのに疲れているふりをしたり。たくさん挙げれますよ?それは何故ですか?」
わぁ。めっちゃ疑われとる。というか、もう確信に近いよな…シルバさんが疑っているということは他にもそういう目で見ている騎士が何人かいそうだ。
「…この間聞きましたね。この国に残らないかと。それはすぐに断った。それは元いた世界とはまるで違う世界です。だから、旅に出たいからだろうとはその時考えました。でも、それと訓練をサボるのは関係ないはずですよね?むしろ矛盾している。」
「……」
「教えてください。我々はまだ信頼できませんか?あなたとカイトくん以外からは信頼してもらってるようなんですがね…」
レイファ様の位置はカイトの隣だ。つまりあっちはあっちで聞かれてることだろう。
しかしなぁ、クラスを明かすわけにはいかない。隠してることを明かすわけにはいかない。
勇者くんのパーティには入りたくない。なんせ敵なのだから。こういう時に便利な言葉は一つしか思いつかない。
「……黙秘します」
「…ほう。その言葉は信頼してないということでいいですね?」
これだけでは逃げきれないからそれとない言葉を伝えるしかないかな。
「皆さんが悪い人たちではないかもしれない。でもまだ私はこの国を信じきれていないのは事実です。騎士団は信頼しています。ですが貴族や王族、一度も顔を出していないのになぜ信じられるのですか?」
急に貴族や王族の話を出した事に、シルバさんは目を見開いた。相手は子供で、そんなことを考えるようには思えなかったからだろう。
「…そちらの考えはわかります。そちらも私たちを信じきれていない。だから、危険かもしれないから会わせられないのですよね。貴方方が守ってるのは国でありその主人の王なのですから。」
私のそれらしい言葉は彼にとって予想外ながらも顔色を曇らせるところを見せてくる。弁解するような言葉を呟くのを見ながら、視線を外して賑やかに笑うクラスメイトに視線を逃す。
「……いや、僕らは…」
「サボるなと言われてしまっては真面目に学んでいくしかないんですが、あのメニュー結構退屈なんですよね…。私はそろそろ、騎士からの訓練ではなく冒険者としての動き方とかやっちゃぁいけないことを知りたいです。下街にも行ってみたいですね。お金の使い方とか現実的なことが学びたいです。勇者くんのパーティには入る気はないことは伝えたはずです。暮らしについての勉強がこれからは増えて欲しいですね。」
言い切った後に、空になった器を持って立ち上がる。その動きをじっとみられながら問いかけられた。
「……どこに行くんだい。」
「おかわりをしに」
「……」
薄味の豚汁みたいで美味しいのですよ。これが。カイトもこっちに来たので話しかける。
「カイトくんや、逆ナンとは楽しそうですなぁ」
「はぁ?ちげーわ。…お前こそナンパされてたんじゃねーの?」
心底嫌そうな顔をして否定してくるのでレイファさんの魅了魔法は無効化してるようだ。
ナンパ返しをしてきたカイトに正直に問われたことを答えると。納得顔になる。
「訓練適当にしてたら怒られただけですよーだ。」
「…お前もだったか」
おかわりを注いだら、とりあえず場所は変えて2人で木の下に座る。
「一応ごまかして、お金の勉強したいなーってほののめかしたかな。そろそろ自立を考えなくてはなりませぬ。」
「…お前さ、そろそろ教えてくれよ。ヒトか?」
「モグモグ食べながらとは器用な。口元は隠してくださいよ?ま、一応音遮断用の魔法使ってるから聞こえてないだろうけどね。」
「…いつのまに…」
「言ったでしょ?私は君より強いのだ。それと、ステータス内容だけどお勉強が終わったらと、出ていく準備ができたら教えてあげるさ。」
「ネタ引っ張るなよ…」
「我慢できない男はモテないぞー」
「クッソ」
悔しげに悪態をつくカイトに笑いかけながら、話を続ける。
「これから訓練は手を抜かないでいくとは言い切ってないからもう我流で行きますということにするよ。だから走り込みとか本当にサボる。これ以上鍛えても誰も幸せにならないからね。」
「……お前…」
「そろそろ寝ようかな。あ、それと」
「……?」
「Sおめでとう」
「?!」
「じゃぁのー」
シルバ様とレイファ様の授業をサボりにサボり続けた。夜に抜け出して街に行って情報収集したり、冒険者登録しちゃったり。登録するときはカイトも一緒に行った。
荷造りも終えた。準備もできた。
カイトには明日の夜決行と伝えて部屋に戻った。すると部屋の前にレイファ様。
「また抜け出しておられたようで…」
「あはは。」
「…貴女に会いたいという人がおられます。ついてきなさい。」
おられますという敬語。貴族、大臣それか…
「お?カイトだ」
「なんだお前もか」
「2人に会ってもらうのはこの国の王です。」
「「おー」」
今まで会う気がないかのような存在が急に存在を知らしめに来た?何か企みでもあるのだろうか。しかし、この2人が悪い道に誘う遣いの人には見えない。
「ですが体調がかなり悪くとこに伏せております。挨拶が終えたらすぐに出てくるように。」
「…え?レイファ様達は?」
「私たちが入る許可は得ていません。」
おやおや?許可がいるほど重症か、それかそれほど何かを隠したいのか。どちらだろうか?
「わかりました。」
「失礼します」
中に入ると一見、誰もいなかった。いやベットはあるし、居るのは確かだ。その隣に静かに執事のような人が立っていた。通訳だろうか?
少し体を起こしていて、目も少しだけ開いている。…これではギリギリ生きているくらいだな。話すらできそうにない。
鑑定を使って確認してみる。
名前:マーベリックLv128
種族:人族
ジョブ:王
身体レベルA
スキル:非表示
称号
召喚者
状態
魔力枯渇(瀕死)
瀕死と書かれているのだからそうなのだろう。生きているのも不思議なくらいな痩せ細り方だ。
「…お初にお目にかかります。異世界から来たカイトと言います。」
「…フウカです」
「ーー」
声にならない声で何か言うが聞き取ることは私達にはできそうにない。すぐにそばにいる執事が口元に耳を近づけさせようやく会話ができるようだ。
「こちらにおわす方はマーベリック王。この国の王で、あなた方を召喚した者となります。」
「…王様は、何かご病気なのですか?」
カイトが状態について探り始める。
「病ではありません。魔力が枯渇状態となっております。そのため、体が不調なのです。」
「魔力枯渇となると死に至ると学びました。」
「えぇ、ですが王には後継の息子様もまだお小さい。だから死ぬことはできません。延命の魔法をかけなんとか生きておられます。」
「……」
挨拶を終えたらすぐに出るように聞かされていたことを言い一礼して退室した。
出た先でこの状況を知っている大臣は極小数で、騎士も全員が把握しているわけでないことを告げられる。王がこんな状態なのだ。国民が知ったら混乱を招くだけじゃないだろう。
「どうにもならないのでしょうか」
「…勇者の試練の先にある癒しの泉。その水を飲むことで魔力が回復するという言い伝えがあります。ですが、場所がわからない。我々は王を守るために離れられませんし、勇者まだあんな状態です。試練をすぐに受けて欲しいですが、まだ難しいでしょう。なので、王の死は逃れられないでしょう。」
その話の内容を聞いて素っ気なく感想を言う。
「……人は必ずいつか死ぬ。それが彼の場合もうすぐってだけだよ。」
「フウカ!」
カイトが怒ったような声音で私の名を呼ぶ。
それを諌めるようにシルバさんが制した。
「…いえその通りです。人の寿命は決まっている。貴方達のいく先に何があるかはわからない。でも、この国の王は貴方2人を信頼すべきだと言いました。私たちはそれに従いますし、言われずとも貴方達のことは信頼している。だから、もう少しいてくださりませんか。」
「……私の予定は変更しません。明日の夜中出ます。…………カイトは残りたいなら好きにするといい。無理は言わない」
「……」
お昼、執事さんが王の寝室から出たのを見て忍び込む。
「……」
目がうっすらと開いていた。が意識があるのかは怪しい。
寝息が聞こえるので眠っているのだろう。
執事さんが戻ってくる前にことを済ませることにした。
少し開いた口に最初は一滴垂らしてみる。見る見るうちに顔色が少し良くなった。効いていることを確認したところで、飲み水の中にそれを数滴溶かし混ぜていく。
もう1つの瓶はすぐに口に注いだ。
「………」
目を見開き、目を覚ました元気そうな王様。
顔の肉付きがまだ悪いが、それはこれから回復していく事になるだろう。
声はまだかすれていて出ていない。これ以上飲ませると出ていく事に支障をきたすかもしれないので全部を傾けるのをやめる。その残った水を目の前で飲水に混ぜて、今にも起き上がれそうな王様に別れを言う。
「残りは飲み水の中に…執事さんが帰ってきたら飲ませてもらってください。…私は夜に発ちます。見送りは結構です。すばらしい世界に呼んでくださりありがとうございました。息子さんが大きくなるまで頑張って王として生きてください。」
空間の魔法を使って外に出て、外に出る。夜になるまでレベル上げと行こうかな。
城に戻ると慌ただしく騎士団が動いていたので気配を消して荷物を回収。
カイトの気配を探しつつすでに外に出ていたのでそこに向かった。
私に気づいてないのでわっと驚かして合流。
ドッキリは成功した。
「それで?俺が納得するようなステータスなんだろうな?」
「えー?別に来なくてもいーよ?1人で魔族に会いにいくから」
「……敵側種族なのはわかった。で?」
「ん。もー見ていーよ。」
鑑定を使って見事に石化。
「な、なんだそれ!!」
「さーなんだろねー。私もびっくりだよ。魔王がこんなに近くにいたのに誰も気づきもしない。で?どーする?ついてくる?」
「国王は俺たちをこんな面白いところに呼んでくれた張本人だ。何かしてやりたいが…残ったとしても何もできないだろ?」
「嗚呼、国王なら復活済みだよ。魔力回復用のお水私がとってきて飲ませたから。」
「は?」
「ま、私も感謝してるからね。ほら、悩みのタネが消えたカイトくんや、君はソロで行くのかい?私はそろそろ行くよ。捜索隊が出る前に離れたいからね~」
「オイ!どうやって手に入れたんだよ!」
「ひみつー」
可笑しく笑いながら、旅路の道の先へと目を向けて歩く。国の外には何が待ち受けていて、これからどんな楽しいことが起きるのか予想がつかない。でもそれが楽しみで仕方ない。カイトという仲間もいることだし、自分は魔王という存在になっていた。直ぐに飽きるようなことは起きないだろう。自分の力を全て把握したわけでないだろうし、どこまで強くなれるかもまだ限界すら決まってない。さあ、どこまで行けるか楽しみだな~
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