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2.実践訓練で事件
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みんなが魔法にも慣れて、武器にも慣れた頃、二手に分かれて冒険することが許された。1つのグループに2人の騎士がつくようだ。
分かれ方はもちろん。
翔(男1名)と星奈他19の女子と、
私(女1名)と魁斗他19の男子である。
「紅一点ですな」
「あまり嬉しくないのはなぜだろう」
「…もう少し均等に分かれられませんか?」
女騎士さんは男子に声をかけている。
「そうなると思いました。」
男騎士さん諦めたように感想を言う。
「レイファ様、大丈夫です。俺がみんなを守ります!」
「いえ、勇者様…流石にまた貴方だけではですね…」
「レイファ、一度様子を見よう。我々はすぐ近くに待機しています。何かあったら必ず大きな声で叫んでください。すぐに駆けつけます。」
「ちょっとシルバ…どうみてもアンバランスでしょう?」
「土壇場で力を見せてくれるかもしれない。まあ…期待はしていないが。」
期待されてるようには見えないが一応、これでやってみるようだ。
レイファさんとシルバさんは数人の騎士とともに待機。私を筆頭にしたグループにはゼラさんという女の騎士さんと、トーラルさんという男の騎士さんがつくことになった。
ゼラさんの説明を聞くとこの森には団体で行動するゴブリンとウルフ、単体のスライムがいるという。あまり奥に入るとストレンジボアというでかいやつが出てくるみたいなので、奥には行き過ぎないようにするとなった。
二手に分かれるとき、珍しくセイナが話しかけてきたがロクなことじゃなかった。
「そちらのお荷物ばかりのメンバーのリーダーなんて大変そうね。フウカさん。」
お荷物ってなんだよ!と数人が声に出しはしないが青筋を立てる。
私も言い返しはしない。嫌味を言うくらい彼女は余裕があるのだろう。
念のために、セイナさんの声に反応した数人にあたりの警戒を怠るなと指示を飛ばす。
「あら、貴方もお荷物の1人ですものね。精々こんなところで死なないようにね。」
そう言い残して去った彼女。
フラグ立てていくヒロインだなぁ。
空気が悪くなってしまったので念のために定期連絡。
「はーい、ビッチ出現により空気が悪くなりましたがまだ私らレベル1だからスライムであろうとなんであろうと気を抜かずにがんばろー。…あ、さっき警戒してって怒鳴ったように指示飛ばしてごめんよー。あーいうのは相手にしたら終わりだから無視が一番!おーけー?」
「ビッチってわろた」
「そーだな、あれに反応して後ろから…なんてな。」
「脱レベル1!」
今日の目的は脱レベル1。一応、騎士の2人は手を出したりはしてこない。危ないときは助けてくれるそうだが、基本見守るだけらしい。その2人だが、私の定期連絡を聞いて、ビッチ出現後の2人の緊迫した空気も少し和らいだようだ。
「隊長ー!スライムが出現したであります!」
「じゃ見つけたソータ君レッツゴー」
「え?!いきなり?!」
「相手はスライムだぞー?気を抜かず、冷静に狙ってファイアボールだっ!」
「火属性は森では使用禁止だ。バカ隊長」
「俺の属性風だっつーの!ウィンド!…た、倒せた!お!レベル上がった!」
「やった後に気をぬくなーVRゲームの基本だぞっ」
「ゲームじゃなくて現実だっ」
「そーでした。一本取られたにゃ」
「「「「「あははは」」」」」
さて他のみんなのやる気がみなぎってきたようですな。
「ソータが脱レベル1を早々にクリアしてしまった!ソータは次に魔物見つけたら私に譲れえいっ」
「そこは近くにいるやつでいいからなー。魔物探しに夢中になるのはいいが、離れてはぐれないようになー。はぐれて奥に行ったなんて探しに行けないからなー」
「どっちが隊長かわからん!」
「フウカちゃまだ!」
「俺は副隊長だ!」
わちゃわちゃしながら楽しく魔物狩りをしていく。順調にスライムを狩ったり、ウルフが現れた時は全員で危なげなところはフォローしあったり、怪我をしたら最初に支給されたポーションを使ってすぐに治して行ったりした。
ゴブリンにはみんなで苦戦した。相手はたかがゴブリンされどゴブリンだ。道具を使ってくるし、人型なのだ。鳴き声も人の声に聞こえなくもない。少し抵抗はあったが全員が一体ずつ倒す経験を終えた。
全員がスライム、ウルフ、ゴブリンの魔物との戦闘を経験し終わり、レベルがキリのいい10にまで到達したので、とりあえず集合場所に戻ることになった。
「そちらは無事に戻りましたか…」
戻ってみると女の子10人ほど泣いていた。彼女らは転けながら逃げて帰ってきたという。
「他の人達は?勇者は?」
すぐにゼラさんとトーラルさんが合流し情報を交換し始めた。
「レベル5に上がって、調子付いたのかレベル1の子がまだいたのに、その子を置いて奥に入っていってしまったと。途中でゴブリンに遭遇…レベルが少ない子たちに任せてまた奥に…私は彼女たちを守りながらここまで引きました。一応彼らにはライオスをつけていますが応援を向かわせたほうがいいかと。」
連携なってないぞ~勇者くん。
はぁ、全く…
戻ってきた私たちはすぐに泣きやまない同級生達に声をかけつつポーションの使い方を教えながら治療を施していく。
所持していたポーションがなくなった人はすぐに騎士に残りの数を聞いて全員に連絡していく。
「残りのポーション15だってよ」
「今ある子たちのは足りるよね。」
「嗚呼、戻ってきた奴らのは少し足りねぇ。」
「ここで人数がかけるのは良くない、捜索隊は出るって?」
「その件で俺とフウカが呼ばれてっからきてくれ。」
「わかった」
目の前の子には近くの騎士に声をかけて任せることにした。
「呼ばれてきました。フウカです」
「同じくカイトです。」
「嗚呼、2人きたね。君達には捜索隊が出て手薄になったここの周囲の警戒を頼みたい。魔物が現れたら君達の判断で討伐隊を編成してほしい。」
周囲の警戒とな。まあ、捜索隊に混ざれとか言われても困るからそれは当たり前の判断だ。ここなら国にも近い、走れば国にいる騎士に助けてもらうことも可能だろう。
「レイファ様とシルバ様は捜索隊に混ざり離れるという認識でいいでしょうか。」
「嗚呼、ボアの群れに遭遇してないことも言い切れない。ボアの群れは騎士2人では厳しいものがあるからね。残り11人を無事に連れ帰ってみせるよ。それまで耐えきってもらいたい。こちらも出来る限り急ごう。な、レイファ」
「……本来ならどちらか1人が残るべきなのですが、急を要します。勇者を失うわけにも行きません。」
「カイトはいける?」
「ヨユーだ。」
「というわけなんで任せてください。ここにいる子たちは守り抜きます。」
「男子集合!」
「「「「おう!!どした!!」」」」
「モテない男たち今こそ男を見せる時だ!」
「「「「おお?」」」」
「迷子捜索隊が編成されて騎士が出っぱらう!ここにいる女子…フウカ以外!まだレベル5以下だ!魔物が付近に現れたらすぐに知らせろ!周囲の警戒を怠るな!」
「オイ!私が女子じゃない的な発言が聞こえたんだけど!」
「「「「ゲーマニアっ子はシャラップ」」」」
「なんだとー!」
「とにかく!安全第一!全員警戒の配置につけ!ウルフかゴブリンが現れたらすぐに報告!!」
「「「「ラジャ!!」」」」
そう言って私以外の女子が目に入る位置で森を警戒し始める。
「もー!」
「フウカは迷子が向かった方向頼む。」
「はーい」
「お前も気抜くなよー」
「はいはーい」
「……」
「ゼラとトーラルの報告が楽しみだ。」
「ふふ、楽しかったですよ?」
「探しながら報告したいぐらいだ。」
捜索隊が出た後、魔物はチラチラやってくる。
スライム単体が現れた時、近くの女子に声をかける。
この子はえっとー…
「エリさん、エリさん。ちょっとおいで」
「ぇ?…ひゃっ。魔物…」
「大丈夫、大丈夫。エリさんは確か魔法使いだったかな?」
「う、うん…土…」
「ストーンを使って倒してみよ?」
「当たらないよぉ…」
「大丈夫!相手はまだ気づいてない。ほら、杖を構えて、杖の先をスライムに向けて…ほら一言。」
優しく杖と肩を支えて背中を落ち着かせながら応援。
「……す、ストーン!」
杖の先から岩の塊が出てきてスライムにあたりスライムは動かなくなった。
「…で、きた」
「ほらね!ほらステータス見てみて、上がってない?」
「…!上がってる!すごい!」
「またスライムが出たら呼ぶね。もう少し練習しながらね。」
「うん。」
そんな感じでたまたま近くにいたエリさんに声をかけたり、違う子に声をかけて練習がてらレベルを上げるという経験をしてもらう。
「いいか!お前ら!盗める技術は見て奪え!女子に優しさをアピールだ!」
「「「「イエッサー」」」」
「お前らは真面目にやりなさい!」
「「「「イエスマム!!」」」」
所々で笑い声が聞こえる。
「……不本意ながらウケてるぞー。良かったなぁお前らー」
「「「「ひゃふー!」」」」
元気になった女の子たちは私達も警戒を手伝うのと戦闘の仕方を教えて欲しいと声を各々かけているようだ。
にしてもなかなか帰ってこない。少し気配察知を広げてみる。
おや、結構近くまで帰ってきて…
ん?様子がおかしい。1人だけ早く前を走っている。その人物の顔が見えた。
「全員警戒態勢!!!」
私の声に緊迫した空気が広がった。
その人物は勇者くんで、彼は片腕を抑えつつ逃げていた。
私の顔が見えてすぐに逃げろと大声を上げる。
その勇者くんの後ろから大きな魔物の反応。かすかに離れた場所からシルバさんの声。
「全員逃げることを考えろ!城まで走れ!!そいつはボアの群れのボスだ!!」
なんちゅーものを引きつけてきてんだ!この馬鹿たれ!!
勇者の後ろにとてつもなくでかく見えるボアが迫る。地鳴りで足を縺れさせて、こける勇者。自ら死の覚悟をして目をつぶったのがわかった。
死の覚悟をこんなところでするのかお前。
こんなのが勇者とかありえない。お前のどこが勇者だ。クラスメイト全員を危険にさらして…何様のつもりだ!!
ブモオオオオ!!!
こんなところで殺させない。絶対に!
私は目の前の勇者に駆けつけ、装備をつかんで背負う。
「カイト!!受け取れ!!」
「くっ!!フウカ避けろ!!」
勇者を投げ飛ばし、私はすぐ目の前に迫る激おこのボアと面と向かったあとすぐに風魔法の風を纏う!
「ウィンドエンチャント!!」
素早さを強化させつつ、風を足に纏わせるように魔力を変動させ、でかいボアの背中を台にして飛び越える。
踏み台にされたということがわかって、ボアの怒りは私に向かう。
私はそのままこの魔物が来た方向に走る。
入れ違いで、シルバさんに声かけ。
「このまま引きつけます!みんなを先に国へ!!」
「フウカ!待つんだ!!」
返答を聞かずにそのまま走り抜けた。
******************
どれくらい走ったかはわからないだが体力の限界が近かった。これ以上走ったら帰れなくなる。後ろのやつはまだ元気そうに私を追ってきている。
「はぁ…はぁ」
流石に疲れた。
「…はー」
スピードを緩めてゆっくりと止まりまだ向かってきているそれに向かってお試しスキルをしてみる。
王の威圧
それを受けたボアは急ブレーキをかけたように止まった。
息が荒くなってきている。興奮してではない、青ざめてだ。一種の呼吸困難のようだ。
私は威圧を納めて一言告げる。
「群れに帰れ。私も今いたい場所に帰る。」
即座に私の前から消えるボア。
国から結構離れてしまっている。走って歩いて走って歩いてを繰り返して帰り、途中ゴブリンに遭遇しても威圧は使わずに、怪我を負いながらなんとか凌ぎ、全身傷だらけでふらふらと国の入り口が見えるところまで帰ってきた。
国の入り口に騎士団が見えた。シルバさんが何か叫んで、こっちに来るのが見えた。
帰ってこれたという安心感で、体から力が抜けてその場にダイブ。地面に激突する前に誰かが滑り込んできた。人の温もりを感じ余計に意識が遠のいた。
分かれ方はもちろん。
翔(男1名)と星奈他19の女子と、
私(女1名)と魁斗他19の男子である。
「紅一点ですな」
「あまり嬉しくないのはなぜだろう」
「…もう少し均等に分かれられませんか?」
女騎士さんは男子に声をかけている。
「そうなると思いました。」
男騎士さん諦めたように感想を言う。
「レイファ様、大丈夫です。俺がみんなを守ります!」
「いえ、勇者様…流石にまた貴方だけではですね…」
「レイファ、一度様子を見よう。我々はすぐ近くに待機しています。何かあったら必ず大きな声で叫んでください。すぐに駆けつけます。」
「ちょっとシルバ…どうみてもアンバランスでしょう?」
「土壇場で力を見せてくれるかもしれない。まあ…期待はしていないが。」
期待されてるようには見えないが一応、これでやってみるようだ。
レイファさんとシルバさんは数人の騎士とともに待機。私を筆頭にしたグループにはゼラさんという女の騎士さんと、トーラルさんという男の騎士さんがつくことになった。
ゼラさんの説明を聞くとこの森には団体で行動するゴブリンとウルフ、単体のスライムがいるという。あまり奥に入るとストレンジボアというでかいやつが出てくるみたいなので、奥には行き過ぎないようにするとなった。
二手に分かれるとき、珍しくセイナが話しかけてきたがロクなことじゃなかった。
「そちらのお荷物ばかりのメンバーのリーダーなんて大変そうね。フウカさん。」
お荷物ってなんだよ!と数人が声に出しはしないが青筋を立てる。
私も言い返しはしない。嫌味を言うくらい彼女は余裕があるのだろう。
念のために、セイナさんの声に反応した数人にあたりの警戒を怠るなと指示を飛ばす。
「あら、貴方もお荷物の1人ですものね。精々こんなところで死なないようにね。」
そう言い残して去った彼女。
フラグ立てていくヒロインだなぁ。
空気が悪くなってしまったので念のために定期連絡。
「はーい、ビッチ出現により空気が悪くなりましたがまだ私らレベル1だからスライムであろうとなんであろうと気を抜かずにがんばろー。…あ、さっき警戒してって怒鳴ったように指示飛ばしてごめんよー。あーいうのは相手にしたら終わりだから無視が一番!おーけー?」
「ビッチってわろた」
「そーだな、あれに反応して後ろから…なんてな。」
「脱レベル1!」
今日の目的は脱レベル1。一応、騎士の2人は手を出したりはしてこない。危ないときは助けてくれるそうだが、基本見守るだけらしい。その2人だが、私の定期連絡を聞いて、ビッチ出現後の2人の緊迫した空気も少し和らいだようだ。
「隊長ー!スライムが出現したであります!」
「じゃ見つけたソータ君レッツゴー」
「え?!いきなり?!」
「相手はスライムだぞー?気を抜かず、冷静に狙ってファイアボールだっ!」
「火属性は森では使用禁止だ。バカ隊長」
「俺の属性風だっつーの!ウィンド!…た、倒せた!お!レベル上がった!」
「やった後に気をぬくなーVRゲームの基本だぞっ」
「ゲームじゃなくて現実だっ」
「そーでした。一本取られたにゃ」
「「「「「あははは」」」」」
さて他のみんなのやる気がみなぎってきたようですな。
「ソータが脱レベル1を早々にクリアしてしまった!ソータは次に魔物見つけたら私に譲れえいっ」
「そこは近くにいるやつでいいからなー。魔物探しに夢中になるのはいいが、離れてはぐれないようになー。はぐれて奥に行ったなんて探しに行けないからなー」
「どっちが隊長かわからん!」
「フウカちゃまだ!」
「俺は副隊長だ!」
わちゃわちゃしながら楽しく魔物狩りをしていく。順調にスライムを狩ったり、ウルフが現れた時は全員で危なげなところはフォローしあったり、怪我をしたら最初に支給されたポーションを使ってすぐに治して行ったりした。
ゴブリンにはみんなで苦戦した。相手はたかがゴブリンされどゴブリンだ。道具を使ってくるし、人型なのだ。鳴き声も人の声に聞こえなくもない。少し抵抗はあったが全員が一体ずつ倒す経験を終えた。
全員がスライム、ウルフ、ゴブリンの魔物との戦闘を経験し終わり、レベルがキリのいい10にまで到達したので、とりあえず集合場所に戻ることになった。
「そちらは無事に戻りましたか…」
戻ってみると女の子10人ほど泣いていた。彼女らは転けながら逃げて帰ってきたという。
「他の人達は?勇者は?」
すぐにゼラさんとトーラルさんが合流し情報を交換し始めた。
「レベル5に上がって、調子付いたのかレベル1の子がまだいたのに、その子を置いて奥に入っていってしまったと。途中でゴブリンに遭遇…レベルが少ない子たちに任せてまた奥に…私は彼女たちを守りながらここまで引きました。一応彼らにはライオスをつけていますが応援を向かわせたほうがいいかと。」
連携なってないぞ~勇者くん。
はぁ、全く…
戻ってきた私たちはすぐに泣きやまない同級生達に声をかけつつポーションの使い方を教えながら治療を施していく。
所持していたポーションがなくなった人はすぐに騎士に残りの数を聞いて全員に連絡していく。
「残りのポーション15だってよ」
「今ある子たちのは足りるよね。」
「嗚呼、戻ってきた奴らのは少し足りねぇ。」
「ここで人数がかけるのは良くない、捜索隊は出るって?」
「その件で俺とフウカが呼ばれてっからきてくれ。」
「わかった」
目の前の子には近くの騎士に声をかけて任せることにした。
「呼ばれてきました。フウカです」
「同じくカイトです。」
「嗚呼、2人きたね。君達には捜索隊が出て手薄になったここの周囲の警戒を頼みたい。魔物が現れたら君達の判断で討伐隊を編成してほしい。」
周囲の警戒とな。まあ、捜索隊に混ざれとか言われても困るからそれは当たり前の判断だ。ここなら国にも近い、走れば国にいる騎士に助けてもらうことも可能だろう。
「レイファ様とシルバ様は捜索隊に混ざり離れるという認識でいいでしょうか。」
「嗚呼、ボアの群れに遭遇してないことも言い切れない。ボアの群れは騎士2人では厳しいものがあるからね。残り11人を無事に連れ帰ってみせるよ。それまで耐えきってもらいたい。こちらも出来る限り急ごう。な、レイファ」
「……本来ならどちらか1人が残るべきなのですが、急を要します。勇者を失うわけにも行きません。」
「カイトはいける?」
「ヨユーだ。」
「というわけなんで任せてください。ここにいる子たちは守り抜きます。」
「男子集合!」
「「「「おう!!どした!!」」」」
「モテない男たち今こそ男を見せる時だ!」
「「「「おお?」」」」
「迷子捜索隊が編成されて騎士が出っぱらう!ここにいる女子…フウカ以外!まだレベル5以下だ!魔物が付近に現れたらすぐに知らせろ!周囲の警戒を怠るな!」
「オイ!私が女子じゃない的な発言が聞こえたんだけど!」
「「「「ゲーマニアっ子はシャラップ」」」」
「なんだとー!」
「とにかく!安全第一!全員警戒の配置につけ!ウルフかゴブリンが現れたらすぐに報告!!」
「「「「ラジャ!!」」」」
そう言って私以外の女子が目に入る位置で森を警戒し始める。
「もー!」
「フウカは迷子が向かった方向頼む。」
「はーい」
「お前も気抜くなよー」
「はいはーい」
「……」
「ゼラとトーラルの報告が楽しみだ。」
「ふふ、楽しかったですよ?」
「探しながら報告したいぐらいだ。」
捜索隊が出た後、魔物はチラチラやってくる。
スライム単体が現れた時、近くの女子に声をかける。
この子はえっとー…
「エリさん、エリさん。ちょっとおいで」
「ぇ?…ひゃっ。魔物…」
「大丈夫、大丈夫。エリさんは確か魔法使いだったかな?」
「う、うん…土…」
「ストーンを使って倒してみよ?」
「当たらないよぉ…」
「大丈夫!相手はまだ気づいてない。ほら、杖を構えて、杖の先をスライムに向けて…ほら一言。」
優しく杖と肩を支えて背中を落ち着かせながら応援。
「……す、ストーン!」
杖の先から岩の塊が出てきてスライムにあたりスライムは動かなくなった。
「…で、きた」
「ほらね!ほらステータス見てみて、上がってない?」
「…!上がってる!すごい!」
「またスライムが出たら呼ぶね。もう少し練習しながらね。」
「うん。」
そんな感じでたまたま近くにいたエリさんに声をかけたり、違う子に声をかけて練習がてらレベルを上げるという経験をしてもらう。
「いいか!お前ら!盗める技術は見て奪え!女子に優しさをアピールだ!」
「「「「イエッサー」」」」
「お前らは真面目にやりなさい!」
「「「「イエスマム!!」」」」
所々で笑い声が聞こえる。
「……不本意ながらウケてるぞー。良かったなぁお前らー」
「「「「ひゃふー!」」」」
元気になった女の子たちは私達も警戒を手伝うのと戦闘の仕方を教えて欲しいと声を各々かけているようだ。
にしてもなかなか帰ってこない。少し気配察知を広げてみる。
おや、結構近くまで帰ってきて…
ん?様子がおかしい。1人だけ早く前を走っている。その人物の顔が見えた。
「全員警戒態勢!!!」
私の声に緊迫した空気が広がった。
その人物は勇者くんで、彼は片腕を抑えつつ逃げていた。
私の顔が見えてすぐに逃げろと大声を上げる。
その勇者くんの後ろから大きな魔物の反応。かすかに離れた場所からシルバさんの声。
「全員逃げることを考えろ!城まで走れ!!そいつはボアの群れのボスだ!!」
なんちゅーものを引きつけてきてんだ!この馬鹿たれ!!
勇者の後ろにとてつもなくでかく見えるボアが迫る。地鳴りで足を縺れさせて、こける勇者。自ら死の覚悟をして目をつぶったのがわかった。
死の覚悟をこんなところでするのかお前。
こんなのが勇者とかありえない。お前のどこが勇者だ。クラスメイト全員を危険にさらして…何様のつもりだ!!
ブモオオオオ!!!
こんなところで殺させない。絶対に!
私は目の前の勇者に駆けつけ、装備をつかんで背負う。
「カイト!!受け取れ!!」
「くっ!!フウカ避けろ!!」
勇者を投げ飛ばし、私はすぐ目の前に迫る激おこのボアと面と向かったあとすぐに風魔法の風を纏う!
「ウィンドエンチャント!!」
素早さを強化させつつ、風を足に纏わせるように魔力を変動させ、でかいボアの背中を台にして飛び越える。
踏み台にされたということがわかって、ボアの怒りは私に向かう。
私はそのままこの魔物が来た方向に走る。
入れ違いで、シルバさんに声かけ。
「このまま引きつけます!みんなを先に国へ!!」
「フウカ!待つんだ!!」
返答を聞かずにそのまま走り抜けた。
******************
どれくらい走ったかはわからないだが体力の限界が近かった。これ以上走ったら帰れなくなる。後ろのやつはまだ元気そうに私を追ってきている。
「はぁ…はぁ」
流石に疲れた。
「…はー」
スピードを緩めてゆっくりと止まりまだ向かってきているそれに向かってお試しスキルをしてみる。
王の威圧
それを受けたボアは急ブレーキをかけたように止まった。
息が荒くなってきている。興奮してではない、青ざめてだ。一種の呼吸困難のようだ。
私は威圧を納めて一言告げる。
「群れに帰れ。私も今いたい場所に帰る。」
即座に私の前から消えるボア。
国から結構離れてしまっている。走って歩いて走って歩いてを繰り返して帰り、途中ゴブリンに遭遇しても威圧は使わずに、怪我を負いながらなんとか凌ぎ、全身傷だらけでふらふらと国の入り口が見えるところまで帰ってきた。
国の入り口に騎士団が見えた。シルバさんが何か叫んで、こっちに来るのが見えた。
帰ってこれたという安心感で、体から力が抜けてその場にダイブ。地面に激突する前に誰かが滑り込んできた。人の温もりを感じ余計に意識が遠のいた。
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