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第53話 エピローグ〜再現できないカフェラテ・パズル〜
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いつもより早い電車で学校に行こうという紗希の提案に従い、俺と紗希は早めに家を出た。電車は空いていた。
紗希は電車の中でもずーっと俺の手を握っていた。この時間であれば俺たち以外に同じ学校の生徒はいない。遠方の名門私立に通う高校生が俺と紗希を見てニヤニヤしたり、ひそひそ話をしたりはしていたが。「彼氏かな?」「釣り合ってなくね?」「彼女の方は美人なのに」「騙されてる?」等々声が聞こえる。悪かったな、イケメンでなくて。
ベンチシートの隣にいる紗希を見る。無邪気にめくれたスカート。上の白いとこまで見えている太ももの肌は肌理が細かく、吸い込まれそうだ。くりっとした小さな膝頭と、そこから伸びるすらりとしたふくらはぎ。最近はハイソックスでなくわざと短めにした靴下の生徒が多いが、真面目な紗希は規定通り、紺のハイソックスをちゃんと伸ばしている。ハイソックス先端のゴムで少しだけ押し込まれたふくらはぎが個人的にはツボだ。触りたくなる。
「また脚見てるの?」
紗希が笑いながら言った。
「きれいな脚だから仕方ないじゃないか」
「紗希の脚、綺麗?」
「ああ」
「そっか。自慢にしていい?」紗希が脚をパタパタする。
「いいよ」と俺。
「ね。兄さん。私って自慢の彼女?
「ああ。自慢の彼女だ」
「でも、自慢しちゃ駄目だよ! 学校では……本当の兄妹、ってことになってるんだから」
「わかってる」
相思相愛だった俺たちは付き合うことにした。だがその事実は公表できない。紗希が言ったとおり俺と紗希は学校では実の兄妹という設定だ。付き合えるはずがない。
「あのね、兄さん。雪のことだけど」
姫島雪。紗希の親友で俺の後輩。俺のことを好きでいてくれる。
「告白されたらどうする?」
「告白? 姫島さんが? しないだろ。だって俺と萌夢ちゃんが付き合っていると信じているんだぜ?」
「そんなのわかんないじゃん。私だって、兄さんがあの腹黒サキュバスと付き合っていると思っていたのに、告白したよ?」
「それはそうだが……」
紗希が俺を見つめる。紗希としては後味が悪いみたいだ。姫島さんの思いを知っておきながら、俺と隠れて付き合うのは。
「そうだな。告白されるかもしれないな」
「そうだよ。されるかもだよ?」
「そのときは断るよ。でないと紗希にも姫島さんにも悪いだろ?」
「……だよね」
紗希が俺にもたれかかった。
「なんか安心しちゃった。……私、ずるいかなあ。悪い子かなあ」
俺の肩に頭を乗せたまま紗希が呟いた。
「そんなことないさ。高校生の恋愛なんてそんなもんだろ」
「そうなの?」
「ああ」
「ふーん……もしかして、兄さん……恋愛経験豊富だったりする?」
んなわけねー。
「まさか。そう思っただけさ」
すまん紗希。俺にそんな経験は無い。すべて疑似経験、すなわちラブコメから得た知識だ。
ガタン。
電車が駅に着いた。電車から降りた高校生は俺と紗希だけだった。それでも警戒するに越したことはない。俺はそっと紗希の手を離した。
階段を降り、自動改札を抜け、通りに出た。駅前のスタバはもう開いていた。高校生の姿は見えない。
「ね、時間あるしスタバ寄ろうよ」
俺は頷く。紗希はいつものアイスカフェラテ、俺は期間限定のやたらデコーレーションされた甘そうな冷たいやつにした。
俺、本当はコーヒー苦手だ。あの日あの時――紗希がサキュバスとカミングアウトしたあの日は、格好つけて注文したのだ。あのころは紗希の前で格好つけてた。
「あ、あの席空いてる」
あの日と同じテラスの席が空いていた。俺たちはそこに座った。
「はー。あれから一ヶ月か」
紗希が遠い目をしていった。
「ん? まだ、一ヶ月経ってないだろ?」
「もうすぐ一ヶ月、って意味」
「そっか」
紗希が俺を見る。俺も紗希を見る。目が合った。
「デートって、こんな感じなのかな」
紗希がつぶやいた。
「どうだろ」と俺。
「買い物行って、カフェ行って、映画見て。あと何するのかなあ」と紗希。
「公園を散歩とか、じゃないか?」
「ゲーセンで遊んだり。プリクラ撮るっていうのもいいかもね。それって楽しいのかなあ」
「好きな人と一緒なら楽しいさ」
「そっか」
紗希がストローでちゅーっと勢いよくカフェラテを飲んだ。
——紗希。去年から俺の妹になった美少女。サキュバスで、俺のカフェラテなしでは生きられない悲しい存在。そして今日からは俺の彼女。
早朝のスターバックスのテラス席で、俺と紗希は他愛のない会話を楽しんだ。
朝の時間は進むのが早い。気がつけばスタバにも道路にも、本校生徒。
いつものフレンズを見つけた紗希が道路に向かって手を振る。
「友達来たから、行くね」
「ああ」
紗希はスタバを出て行った。青木が来るにはまだ早い。おまけに俺の激甘ドリンクは半分以上残っている。
ゆっくり飲むとするか。
「せんぱーい、何飲んでるんですかあ?」
気がつくと俺の背後に萌夢ちゃんがいた。手には紗希と同じくアイスカフェラテを持っている。サキュバスはカフェラテが好きだからな。
「よいしょっと」
数秒前まで紗希が座っていたと場所に萌夢ちゃんが座った。
「私見ちゃいました。朝から妹さんとスタバでいちゃいちゃですか? 萌夢、悲しくなっちゃう」
ストローでカフェラテを吸い上げながら萌夢ちゃんが言った。
「なんか用かな?」
「昨日のこと、先輩に謝ろうと思って待ってました」
「え?」
萌夢ちゃんが立ち上がり、ペコッと頭を下げた。
「ごめんなさい」
声は小さかったが、その仕草は店内の注目を集めた。俺は慌てて立ち上がり、萌夢ちゃんの両肩を抱いて「わかったから、座ろう」と言った。萌夢ちゃんは小さくうなずくき、座った。
「萌夢、反省してます」
さっきまでの元気は消え失せ、しょんぼりとした声だ。
「……フェロモン使ったことか?」
周囲に聞こえないように小声で俺は言った。
「はい。自分でもどうしてあんなに強引だったのかなって、後悔しています。排卵日だったから大胆だったのかな?」
「げほ!」
危うく激甘ドリンクを吹き出すところだった。
「どうかしましたか、先輩?」
「い、いや、何でもない」
くそ、なんでサキュバスってこうも直球なんだよ。なんだよ、排卵日って。それって受精可能、つまり危険日ってことか? 危険日には大胆になるのか萌夢ちゃん? 子孫繁栄の原理に忠実すぎるだろ!?
……いかん、生々しすぎる。童貞高校生には刺激が強すぎる。つか、スタバでやっていい会話内容じゃないだろ、これ。
「妹さんには昨日の時点で謝ったんですけど、先輩には会えなかったから」
俺を担架で運んだ時点で謝罪したってことか。紗希は何も言ってなかったな。言いたくなかったんだろう。
「なんて言って謝ったんだ?」
「どうしても先輩のカフェラテ飲みたかったんです、ごめんなさいって」
そのままだな。ど真ん中ストレート。
「そんなに……その……俺というか、俺の、って……美味いのか?」
「それは……」
萌夢ちゃんがじっと俺を見つめた。
「んー……」
何かを言いかけて、やめた。そして小さく笑ったのち、視線を俺の股間に移した。
「うん、そうなんです。とーっても、濃ゆくて、旨みがあって、美味しいんですもの! 先輩のカフェラテ! 先輩のに比べたらスタバのカフェラテは泥水以下です!」
スタバでなんてこと言うんだよ、萌夢ちゃん。
「わかった。わかったから、もう少し場所をわきまえて発言してくれないか?」
隣の高校生が席を立った。隣だけではない。店内の高校生がばたばた席を立っている。俺は時計を見た。そろそろ時間である。
「出よう、萌夢ちゃん。遅刻するぞ」
「はい」
店を出て学校までの道を二人並んで歩く。
「先輩、手を繋いでもいいですか? 萌夢、今でも一応先輩の彼女設定ですよね?」
そういえばそうだ。その件については紗希と協議していなかったな。考えないと。
「えっとだな、実は……その……」
「妹さんと付き合っているんでしょ?」
「え?」
俺、思わず立ち止まる。
「なんで知ってるんだ?」
「……はあ」
萌夢ちゃん、軽くため息。
「そーゆーとこですよ、先輩。ほんと、引っかかりやすいんだから。そんなんだから、萌夢にフェロモンアタックされちゃうんですよ?」
しまった。トラップだ。
「えっと、あのだな、俺と紗希は学校では実の兄妹ってことになっていてだな……その……」
「わかってるよ、先輩。萌夢、先輩に協力してあげる。ね?」
萌夢ちゃんが手を繋いできた。それも、例の「恋人つなぎ」だ。確かに萌夢ちゃんと「恋人」設定の方が都合がいい。
だが、次の瞬間意外な言葉が萌夢ちゃんの口から発せられた。
「今日までだから。萌夢と先輩が恋人なの」
「え?」
「萌夢ね、雪ちゃんに言ったんです。本当は先輩と付き合ってないって。あれは罰ゲームだったって」
「罰ゲーム?」
「はい。先輩が私のパンツ見た罰として、しばらくの間恋人ごっこやらせてた、って雪ちゃんに言いました」
「ファッ!? なななな何言ってるんだ!? お、俺がいつパパパパンツ見たんだ!? 」
激しい衝撃が俺を襲った。どうしてバレてるんだ?
「先輩、私が気がついてないとでも思ってましたか?」
「い、いや、そ、それは、その……」
「本読むふりして、いっつも萌夢のスカートの中見てたでしょ、先輩?」
「ち、違う、断じて違う!」
「嘘だもーん。萌夢、知ってるもーん。萌夢がわざと脚開いたら、先輩の視線、ぐぐーって下がったもん!」
「それは本を読んでいるからだ! 日本語は上から下に文字が書かれており上方から下方へ視線移動するのは……」
「でも、勃起はしないよね?」
まるで悪魔のごとく悪戯じみた笑顔で萌夢ちゃんが言った。
「ボボボボボッキ!? しょ、証拠はあるのかよっ!?」
「動画見ます? 先輩の視線移動と勃起過程動画。萌夢、iPadで録画してるんだあ」
「……な!」
そうだったのか。萌夢ちゃんが時々iPadを持ち上げていたのは俺を録画するためだったとは。iPadを持ち上げたときにやたら脚を組み替えたり開いたりしていたのは、わざとだったのか。
背中をつーっと冷たい汗が流れた。こんなことが姫島さんにバレたら……。紗希にバレたら……。
ていうか、もしネットにでもアップされて全校生徒にバレたら……俺の高校生活、終わりじゃないのか? 下手すると人生終わらないか?
「認めます? 先輩。認めないならこの動画……」
「み、認める! 認めます、萌夢ちゃん! パンツ見てました!」
「もう、先輩声が大きいですう。みんなに聞こえちゃいますよ? 場所をわきまえてくださーい」
「く……!」
「そんな、地獄に落ちたかのような顔しないでください、先輩。雪ちゃんにはもう少しソフトに言いましたから」
「ソフト?」
「はい。偶然見られたって言ったの。それならいいでしょ? 本読むふりして毎日パンツと胸の谷間凝視していたなんて、決して言ってませんからね?」
胸を見ていたこともバレているのか……。
「そ、それはどうも……ありがとう」
「でもね、萌夢は嬉しかったんですよ。先輩が萌夢をえっちな目で見ていて」
「え?」
「だって、萌夢の身体に欲情してたってことですよ? それって、最終的には萌夢と……えっちしたい、ってことでしょ?」
だから直球過ぎるんだよ、サキュバスは!
「り、理論的にはそうなると言えなくもないが……」
「萌夢のパンツ見て勃起したでしょ?」
「いや、まあ……はい」
「つまり……萌夢にもチャンスがあるってことですよね?」
「……チャンス? なんのチャンスだ」
「体から始まる恋もあるっていうでしょ、先輩?」
萌夢ちゃんが俺から手を離した。校門はすぐそこだ。
「萌夢は、先輩となら……いいって思ってる。いつか、先輩誘惑してみせる。萌夢の本気、みせてあげるね!」
「そ、それは……やめてくれないかな……」
腐っても俺は男子高校生。お盛んな年頃なんだ。萌夢ちゃんが本気で迫ってきたら……自信ない。
「私たち、高校生だよね?」
「……もちろん」
萌夢ちゃんが嬉しそうに微笑んだ。
「よかった。その言葉が聞きたかったんです」
「どういうことだ?」
「高校生なんて、くっついては別れて、別れてはくっついて、じゃないですか?」
「そうだが」
「学校行事やイベントでカップル誕生。でも早ければ数週間後には破局。それが高校生ですよね?」
「そう……かもな」
玄関に到着。
「楽しみですね、先輩! もうすぐ夏休み! 夏休みと言えば夏合宿! イベントだよね? おまけに二学期は文化祭、つまり学校行事もあるんだよ? 萌夢、絶対、先輩とカップルになるから! 妹さんから奪ってみせる! もちろん、カフェラテも、奪っちゃう! 覚悟しててね、先輩!」
それだけ言って萌夢ちゃんは1年生の下駄箱へと走って行った。
「あ、動画の件ですけど」
途中で萌夢ちゃんが振り返った。
「あれ、嘘ですから、安心してください」
「へ?」
「……そーゆーとこですよ、先輩。ほんと、引っかかりやすいんだから!」
クスクスと萌夢ちゃんが笑った。
「じゃ、部活でね、先輩!」
萌夢ちゃんは去った。俺は玄関の隅っこで座り込んでしまった。どっと疲れが出たようだ。
「貴樹さん? 貴樹さんですよね? 大丈夫ですか?」
話しかけてきたのは姫島さんだった。
「ああ、大丈夫だよ。ちょっと立ちくらみしただけだからさ」
「そうですか……。あ、あの、立てますか?」
顔を赤くしながら、姫島さんが俺に手を差しのばした。
「大丈夫。ほら、立てるよ」
「よかった。昨日部活の時に保健室に担ぎ込まれたって萌夢ちゃんに聞いたから心配だったんです」
「昨日ね、うん……。大したことないよ」
大したことあったけどな。
「そういえば……罰ゲームのことも、聞きました」
「あ、あれね。その……いや、あれは見たというか、見えたというか……」
「萌夢ちゃん、ひどいと思いました」
説明《いいわけ》しかけた俺の言葉を姫島さんがさえぎった。
「へ?」
「萌夢ちゃん、昔から、隙だらけなんです。高校生なってからも、電車の中で無防備に脚広げてるから、おじさんとかじろじろ見るんです。自分がだらしないから先輩に見られただけなのに、罰ゲームだなんて、ひどいです!」
そのとき予鈴が鳴った。あと5分で教室に行かないと遅刻扱いだ。
「じゃ、また放課後、部活で」
「はい」
姫島さんは駆け足で階段を上っていった。俺も自分の教室へ向かった。
青木はすでに教室にいて、俺の姿を見るなり「見てたぞ御影! 貴様、今日もまた巨乳ちゃんとラブラブだったな?」「さらに図書館の姫となんかしてたろ!?」「もう許さん。代わりに紗希さんを俺にください」等々意味不明なことをまくし立てた。
今日も無意味で退屈な授業のオンパレードだ。美術が2時間連続であるのが救いだが、部活まであと6時間以上ある。
そう。6時間経てば部活。かつてはパンツ見放題だった俺のパラダイス。バレた以上萌夢ちゃんのパンツを見ることはできないから、読書に集中だ。部誌の原稿も書かないとダメだ。姫島さんにも何か書いて貰おう。そうすれば書評のページ数が減らせるな。
そう言えば姫島さん、どんな小説書いているんだろう。今度見せて貰おう。ライトノベル作家になりたいと言ってたな。紗希によれば姫島さんはネットに小説をアップしているらしい。凄いな。それって、誰でも読めるのだろうか? こんど紗希にアドレス教えて貰おう。
なんて、気軽に考えていたのだが、この時俺は知らなかった。
姫島さんの小説を読んだことで一騒動起こることを。夏合宿で萌夢ちゃんから猛烈アタックされることを。
が、その話をするためには、局部の具体的描写、または性行為、または性風俗などの表現を直接的、あるいは過剰に描写する必要があり、未成年に不適切といえよう。
どうしても続きが知りたい人は夜想の国ノクターンズに住むノベルという夢の精に聞いてくれ。
ということで、俺の話はここで終わりだ。
おしまい。
紗希は電車の中でもずーっと俺の手を握っていた。この時間であれば俺たち以外に同じ学校の生徒はいない。遠方の名門私立に通う高校生が俺と紗希を見てニヤニヤしたり、ひそひそ話をしたりはしていたが。「彼氏かな?」「釣り合ってなくね?」「彼女の方は美人なのに」「騙されてる?」等々声が聞こえる。悪かったな、イケメンでなくて。
ベンチシートの隣にいる紗希を見る。無邪気にめくれたスカート。上の白いとこまで見えている太ももの肌は肌理が細かく、吸い込まれそうだ。くりっとした小さな膝頭と、そこから伸びるすらりとしたふくらはぎ。最近はハイソックスでなくわざと短めにした靴下の生徒が多いが、真面目な紗希は規定通り、紺のハイソックスをちゃんと伸ばしている。ハイソックス先端のゴムで少しだけ押し込まれたふくらはぎが個人的にはツボだ。触りたくなる。
「また脚見てるの?」
紗希が笑いながら言った。
「きれいな脚だから仕方ないじゃないか」
「紗希の脚、綺麗?」
「ああ」
「そっか。自慢にしていい?」紗希が脚をパタパタする。
「いいよ」と俺。
「ね。兄さん。私って自慢の彼女?
「ああ。自慢の彼女だ」
「でも、自慢しちゃ駄目だよ! 学校では……本当の兄妹、ってことになってるんだから」
「わかってる」
相思相愛だった俺たちは付き合うことにした。だがその事実は公表できない。紗希が言ったとおり俺と紗希は学校では実の兄妹という設定だ。付き合えるはずがない。
「あのね、兄さん。雪のことだけど」
姫島雪。紗希の親友で俺の後輩。俺のことを好きでいてくれる。
「告白されたらどうする?」
「告白? 姫島さんが? しないだろ。だって俺と萌夢ちゃんが付き合っていると信じているんだぜ?」
「そんなのわかんないじゃん。私だって、兄さんがあの腹黒サキュバスと付き合っていると思っていたのに、告白したよ?」
「それはそうだが……」
紗希が俺を見つめる。紗希としては後味が悪いみたいだ。姫島さんの思いを知っておきながら、俺と隠れて付き合うのは。
「そうだな。告白されるかもしれないな」
「そうだよ。されるかもだよ?」
「そのときは断るよ。でないと紗希にも姫島さんにも悪いだろ?」
「……だよね」
紗希が俺にもたれかかった。
「なんか安心しちゃった。……私、ずるいかなあ。悪い子かなあ」
俺の肩に頭を乗せたまま紗希が呟いた。
「そんなことないさ。高校生の恋愛なんてそんなもんだろ」
「そうなの?」
「ああ」
「ふーん……もしかして、兄さん……恋愛経験豊富だったりする?」
んなわけねー。
「まさか。そう思っただけさ」
すまん紗希。俺にそんな経験は無い。すべて疑似経験、すなわちラブコメから得た知識だ。
ガタン。
電車が駅に着いた。電車から降りた高校生は俺と紗希だけだった。それでも警戒するに越したことはない。俺はそっと紗希の手を離した。
階段を降り、自動改札を抜け、通りに出た。駅前のスタバはもう開いていた。高校生の姿は見えない。
「ね、時間あるしスタバ寄ろうよ」
俺は頷く。紗希はいつものアイスカフェラテ、俺は期間限定のやたらデコーレーションされた甘そうな冷たいやつにした。
俺、本当はコーヒー苦手だ。あの日あの時――紗希がサキュバスとカミングアウトしたあの日は、格好つけて注文したのだ。あのころは紗希の前で格好つけてた。
「あ、あの席空いてる」
あの日と同じテラスの席が空いていた。俺たちはそこに座った。
「はー。あれから一ヶ月か」
紗希が遠い目をしていった。
「ん? まだ、一ヶ月経ってないだろ?」
「もうすぐ一ヶ月、って意味」
「そっか」
紗希が俺を見る。俺も紗希を見る。目が合った。
「デートって、こんな感じなのかな」
紗希がつぶやいた。
「どうだろ」と俺。
「買い物行って、カフェ行って、映画見て。あと何するのかなあ」と紗希。
「公園を散歩とか、じゃないか?」
「ゲーセンで遊んだり。プリクラ撮るっていうのもいいかもね。それって楽しいのかなあ」
「好きな人と一緒なら楽しいさ」
「そっか」
紗希がストローでちゅーっと勢いよくカフェラテを飲んだ。
——紗希。去年から俺の妹になった美少女。サキュバスで、俺のカフェラテなしでは生きられない悲しい存在。そして今日からは俺の彼女。
早朝のスターバックスのテラス席で、俺と紗希は他愛のない会話を楽しんだ。
朝の時間は進むのが早い。気がつけばスタバにも道路にも、本校生徒。
いつものフレンズを見つけた紗希が道路に向かって手を振る。
「友達来たから、行くね」
「ああ」
紗希はスタバを出て行った。青木が来るにはまだ早い。おまけに俺の激甘ドリンクは半分以上残っている。
ゆっくり飲むとするか。
「せんぱーい、何飲んでるんですかあ?」
気がつくと俺の背後に萌夢ちゃんがいた。手には紗希と同じくアイスカフェラテを持っている。サキュバスはカフェラテが好きだからな。
「よいしょっと」
数秒前まで紗希が座っていたと場所に萌夢ちゃんが座った。
「私見ちゃいました。朝から妹さんとスタバでいちゃいちゃですか? 萌夢、悲しくなっちゃう」
ストローでカフェラテを吸い上げながら萌夢ちゃんが言った。
「なんか用かな?」
「昨日のこと、先輩に謝ろうと思って待ってました」
「え?」
萌夢ちゃんが立ち上がり、ペコッと頭を下げた。
「ごめんなさい」
声は小さかったが、その仕草は店内の注目を集めた。俺は慌てて立ち上がり、萌夢ちゃんの両肩を抱いて「わかったから、座ろう」と言った。萌夢ちゃんは小さくうなずくき、座った。
「萌夢、反省してます」
さっきまでの元気は消え失せ、しょんぼりとした声だ。
「……フェロモン使ったことか?」
周囲に聞こえないように小声で俺は言った。
「はい。自分でもどうしてあんなに強引だったのかなって、後悔しています。排卵日だったから大胆だったのかな?」
「げほ!」
危うく激甘ドリンクを吹き出すところだった。
「どうかしましたか、先輩?」
「い、いや、何でもない」
くそ、なんでサキュバスってこうも直球なんだよ。なんだよ、排卵日って。それって受精可能、つまり危険日ってことか? 危険日には大胆になるのか萌夢ちゃん? 子孫繁栄の原理に忠実すぎるだろ!?
……いかん、生々しすぎる。童貞高校生には刺激が強すぎる。つか、スタバでやっていい会話内容じゃないだろ、これ。
「妹さんには昨日の時点で謝ったんですけど、先輩には会えなかったから」
俺を担架で運んだ時点で謝罪したってことか。紗希は何も言ってなかったな。言いたくなかったんだろう。
「なんて言って謝ったんだ?」
「どうしても先輩のカフェラテ飲みたかったんです、ごめんなさいって」
そのままだな。ど真ん中ストレート。
「そんなに……その……俺というか、俺の、って……美味いのか?」
「それは……」
萌夢ちゃんがじっと俺を見つめた。
「んー……」
何かを言いかけて、やめた。そして小さく笑ったのち、視線を俺の股間に移した。
「うん、そうなんです。とーっても、濃ゆくて、旨みがあって、美味しいんですもの! 先輩のカフェラテ! 先輩のに比べたらスタバのカフェラテは泥水以下です!」
スタバでなんてこと言うんだよ、萌夢ちゃん。
「わかった。わかったから、もう少し場所をわきまえて発言してくれないか?」
隣の高校生が席を立った。隣だけではない。店内の高校生がばたばた席を立っている。俺は時計を見た。そろそろ時間である。
「出よう、萌夢ちゃん。遅刻するぞ」
「はい」
店を出て学校までの道を二人並んで歩く。
「先輩、手を繋いでもいいですか? 萌夢、今でも一応先輩の彼女設定ですよね?」
そういえばそうだ。その件については紗希と協議していなかったな。考えないと。
「えっとだな、実は……その……」
「妹さんと付き合っているんでしょ?」
「え?」
俺、思わず立ち止まる。
「なんで知ってるんだ?」
「……はあ」
萌夢ちゃん、軽くため息。
「そーゆーとこですよ、先輩。ほんと、引っかかりやすいんだから。そんなんだから、萌夢にフェロモンアタックされちゃうんですよ?」
しまった。トラップだ。
「えっと、あのだな、俺と紗希は学校では実の兄妹ってことになっていてだな……その……」
「わかってるよ、先輩。萌夢、先輩に協力してあげる。ね?」
萌夢ちゃんが手を繋いできた。それも、例の「恋人つなぎ」だ。確かに萌夢ちゃんと「恋人」設定の方が都合がいい。
だが、次の瞬間意外な言葉が萌夢ちゃんの口から発せられた。
「今日までだから。萌夢と先輩が恋人なの」
「え?」
「萌夢ね、雪ちゃんに言ったんです。本当は先輩と付き合ってないって。あれは罰ゲームだったって」
「罰ゲーム?」
「はい。先輩が私のパンツ見た罰として、しばらくの間恋人ごっこやらせてた、って雪ちゃんに言いました」
「ファッ!? なななな何言ってるんだ!? お、俺がいつパパパパンツ見たんだ!? 」
激しい衝撃が俺を襲った。どうしてバレてるんだ?
「先輩、私が気がついてないとでも思ってましたか?」
「い、いや、そ、それは、その……」
「本読むふりして、いっつも萌夢のスカートの中見てたでしょ、先輩?」
「ち、違う、断じて違う!」
「嘘だもーん。萌夢、知ってるもーん。萌夢がわざと脚開いたら、先輩の視線、ぐぐーって下がったもん!」
「それは本を読んでいるからだ! 日本語は上から下に文字が書かれており上方から下方へ視線移動するのは……」
「でも、勃起はしないよね?」
まるで悪魔のごとく悪戯じみた笑顔で萌夢ちゃんが言った。
「ボボボボボッキ!? しょ、証拠はあるのかよっ!?」
「動画見ます? 先輩の視線移動と勃起過程動画。萌夢、iPadで録画してるんだあ」
「……な!」
そうだったのか。萌夢ちゃんが時々iPadを持ち上げていたのは俺を録画するためだったとは。iPadを持ち上げたときにやたら脚を組み替えたり開いたりしていたのは、わざとだったのか。
背中をつーっと冷たい汗が流れた。こんなことが姫島さんにバレたら……。紗希にバレたら……。
ていうか、もしネットにでもアップされて全校生徒にバレたら……俺の高校生活、終わりじゃないのか? 下手すると人生終わらないか?
「認めます? 先輩。認めないならこの動画……」
「み、認める! 認めます、萌夢ちゃん! パンツ見てました!」
「もう、先輩声が大きいですう。みんなに聞こえちゃいますよ? 場所をわきまえてくださーい」
「く……!」
「そんな、地獄に落ちたかのような顔しないでください、先輩。雪ちゃんにはもう少しソフトに言いましたから」
「ソフト?」
「はい。偶然見られたって言ったの。それならいいでしょ? 本読むふりして毎日パンツと胸の谷間凝視していたなんて、決して言ってませんからね?」
胸を見ていたこともバレているのか……。
「そ、それはどうも……ありがとう」
「でもね、萌夢は嬉しかったんですよ。先輩が萌夢をえっちな目で見ていて」
「え?」
「だって、萌夢の身体に欲情してたってことですよ? それって、最終的には萌夢と……えっちしたい、ってことでしょ?」
だから直球過ぎるんだよ、サキュバスは!
「り、理論的にはそうなると言えなくもないが……」
「萌夢のパンツ見て勃起したでしょ?」
「いや、まあ……はい」
「つまり……萌夢にもチャンスがあるってことですよね?」
「……チャンス? なんのチャンスだ」
「体から始まる恋もあるっていうでしょ、先輩?」
萌夢ちゃんが俺から手を離した。校門はすぐそこだ。
「萌夢は、先輩となら……いいって思ってる。いつか、先輩誘惑してみせる。萌夢の本気、みせてあげるね!」
「そ、それは……やめてくれないかな……」
腐っても俺は男子高校生。お盛んな年頃なんだ。萌夢ちゃんが本気で迫ってきたら……自信ない。
「私たち、高校生だよね?」
「……もちろん」
萌夢ちゃんが嬉しそうに微笑んだ。
「よかった。その言葉が聞きたかったんです」
「どういうことだ?」
「高校生なんて、くっついては別れて、別れてはくっついて、じゃないですか?」
「そうだが」
「学校行事やイベントでカップル誕生。でも早ければ数週間後には破局。それが高校生ですよね?」
「そう……かもな」
玄関に到着。
「楽しみですね、先輩! もうすぐ夏休み! 夏休みと言えば夏合宿! イベントだよね? おまけに二学期は文化祭、つまり学校行事もあるんだよ? 萌夢、絶対、先輩とカップルになるから! 妹さんから奪ってみせる! もちろん、カフェラテも、奪っちゃう! 覚悟しててね、先輩!」
それだけ言って萌夢ちゃんは1年生の下駄箱へと走って行った。
「あ、動画の件ですけど」
途中で萌夢ちゃんが振り返った。
「あれ、嘘ですから、安心してください」
「へ?」
「……そーゆーとこですよ、先輩。ほんと、引っかかりやすいんだから!」
クスクスと萌夢ちゃんが笑った。
「じゃ、部活でね、先輩!」
萌夢ちゃんは去った。俺は玄関の隅っこで座り込んでしまった。どっと疲れが出たようだ。
「貴樹さん? 貴樹さんですよね? 大丈夫ですか?」
話しかけてきたのは姫島さんだった。
「ああ、大丈夫だよ。ちょっと立ちくらみしただけだからさ」
「そうですか……。あ、あの、立てますか?」
顔を赤くしながら、姫島さんが俺に手を差しのばした。
「大丈夫。ほら、立てるよ」
「よかった。昨日部活の時に保健室に担ぎ込まれたって萌夢ちゃんに聞いたから心配だったんです」
「昨日ね、うん……。大したことないよ」
大したことあったけどな。
「そういえば……罰ゲームのことも、聞きました」
「あ、あれね。その……いや、あれは見たというか、見えたというか……」
「萌夢ちゃん、ひどいと思いました」
説明《いいわけ》しかけた俺の言葉を姫島さんがさえぎった。
「へ?」
「萌夢ちゃん、昔から、隙だらけなんです。高校生なってからも、電車の中で無防備に脚広げてるから、おじさんとかじろじろ見るんです。自分がだらしないから先輩に見られただけなのに、罰ゲームだなんて、ひどいです!」
そのとき予鈴が鳴った。あと5分で教室に行かないと遅刻扱いだ。
「じゃ、また放課後、部活で」
「はい」
姫島さんは駆け足で階段を上っていった。俺も自分の教室へ向かった。
青木はすでに教室にいて、俺の姿を見るなり「見てたぞ御影! 貴様、今日もまた巨乳ちゃんとラブラブだったな?」「さらに図書館の姫となんかしてたろ!?」「もう許さん。代わりに紗希さんを俺にください」等々意味不明なことをまくし立てた。
今日も無意味で退屈な授業のオンパレードだ。美術が2時間連続であるのが救いだが、部活まであと6時間以上ある。
そう。6時間経てば部活。かつてはパンツ見放題だった俺のパラダイス。バレた以上萌夢ちゃんのパンツを見ることはできないから、読書に集中だ。部誌の原稿も書かないとダメだ。姫島さんにも何か書いて貰おう。そうすれば書評のページ数が減らせるな。
そう言えば姫島さん、どんな小説書いているんだろう。今度見せて貰おう。ライトノベル作家になりたいと言ってたな。紗希によれば姫島さんはネットに小説をアップしているらしい。凄いな。それって、誰でも読めるのだろうか? こんど紗希にアドレス教えて貰おう。
なんて、気軽に考えていたのだが、この時俺は知らなかった。
姫島さんの小説を読んだことで一騒動起こることを。夏合宿で萌夢ちゃんから猛烈アタックされることを。
が、その話をするためには、局部の具体的描写、または性行為、または性風俗などの表現を直接的、あるいは過剰に描写する必要があり、未成年に不適切といえよう。
どうしても続きが知りたい人は夜想の国ノクターンズに住むノベルという夢の精に聞いてくれ。
ということで、俺の話はここで終わりだ。
おしまい。
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