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第32話 妹以上恋人未満
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帰宅部は既に下校済み。部活はまだ始まったばかり。ということで時間的に中途半端なのだろう。下校する生徒は俺と紗希だけだった。夕日が照らすなか、駅へ向かう。
「いつまで手を繋いでいるの?」
紗希が言った。
「家に帰るまでかな」と俺。
「恋人みたい」と紗希。ぎゅっと強く手を握り返してきた。
「だな」
じっと紗希の目を見る。紗希も俺の目を見る。しばし、無言の間。
「……仲直りしようよ。兄さん」
「そうだな」
「久しぶり……美味しかった。兄さんの……カフェラテ」
紗希がニコッと微笑む。
「そっか」
「……気持ちいいんだよね?」
「え、ええ!? そ、それはだな、あくまでも、開放感というか、その」
「大丈夫。知ってるから」
紗希の顔がうっすら桜色になった。
「兄さん……私の名前呼んでくれるでしょ?」
「そ、そうだっけ?」
「うん。そうなの。紗希、紗希って言いながらカフェラテ出してくれるんだよ。すっごい、気持ちよさそうな顔して……」
今度は俺の顔が赤くなった。
そうか。俺ってそこまで本気でバリスタ目指していたんだ。思い通りの抽出に歓喜していたなんて。たった一人にの客にも手を抜かない。客の名前を呼びながら抽出することでより美味しいカフェラテの出来上がりだ。カスタマーサービスの塊だ。
「私のこと考えてくれてるってことでしょ? 私にだけ、あんなに美味しいの出してくれるんでしょ?」
「えーと、まあ、……そうかな」
俺は紗希の眼を直視できなかった。これからも紗希だけのバリスタ……でいられるのだろうか。
「兄さんのカフェラテの味……知ってるの……今までも、これからも……私だけ? 教えて、エスプレッソマシンさん」
と言って、紗希が俺のマシンに喋りかける。
「お前の兄さん、それか?」
「冗談だってば」
俺は笑った。紗希も笑った。ふっと紗希の手が離れ、俺の手を握りなおしてきた。今度は指を交互にクロスさせて。
「知ってる? これ。恋人つなぎって言うんだ」
「知ってる」
「本当? 兄さん、そういう情報には疎いと思ってたな」
「一応、これでも高校生だぞ」
「そっか。忘れてた」
紗希が立ち止まった。手を繋いだまま、俺を上目遣いで見つめる。
「あのね。勘違いしないで欲しいんだ。私、兄さん好きだけど好きじゃないから」
「なんだそれ?」
「つーまーりー、兄さんとして最高に好きだってこと」
「わかってるよ。俺と紗希はカップルじゃない。兄妹だ。恋人つなぎするほど仲のよい兄妹だ。違うか?」
「そう。仲のよい兄妹だよ」
「俺も、妹として好きだぞ」
「私のどのへんが好き?」
紗希が口を指さしながら言った。
「お口?」
「あ、えーと、お、お口は……その……確かにチャームポイントだとは思うけれども……」
俺は返答に困った。
「私は、兄さんのカフェラテが美味しいから好きだな」
意地悪く紗希が言った。
「そうなのか?」
「うん。でも、美味しいのは、私のことを妹として大好きだからでしょ? 愛情があるからでしょ? だから、私のことを大好きな兄さんが、私は好き。妹としてね」
恋人つなぎした手がすーっと俺のマシンに移動した。
「ちょ、紗希!」
「うん? スイッチ入ってる?」
「し、仕方ないだろ? お、お前みたいな美少女JKと手を繋いでいるんだ。カ、カフェラテ一つや二つ、提供したくなるのはどうしようもないさっ!」
なんつったって、バリスタなんだからな、俺は!
「ふふ」
紗希が笑った。
「そっかー、私、美少女なんだ。私、兄さんのタイプ?」
「ふあ? な、何を一体……」
「それとも、誰が相手でもこんな風にスイッチオン?」
「そ、それは……紗希だからだ」
すまん、紗希。たぶん……誰でもだ。姫島さんが横にいても、萌夢ちゃんと手を繋いでいても、俺はスイッチ入ると思う。
「やた!」
無邪気に喜ぶ紗希。
「兄さん、彼女いないよね?」
「なんだ唐突に。もちろん、いない」
「私もカレとかいない。でも、そのうちカレとか作って……カフェラテ貰うようにしないといけないんだ」
「……だったな」
「でもね、高校生の間は……カフェラテはデリケートなんだって。いろいろ誤解を招くから。この前お母さんが言ってたの」
「なるほど」
前にも言ったか欧米では子どもにあまりコーヒーの類いは飲ませないみたいだからな。日本人みたいに幼少期よりカフェインたっぷり緑茶で育ってないものな。
「だから……もし、私にカレができても……カフェラテ出してくれる?」
「も、もちろん」
「よかった! ……それとね。兄さんに……その……彼女できたら……えっと」
紗希がふう、と大きく息を吸う。
「えっと、か、彼女さんと、……する?」
「は?」
なんだそれ。
「だから、彼女さんとえっちするかって聞いてるの」
「いや、まあ、それは、その……時と場合によるというか……。つーか、なんでそんなこと聞くんだ?」
「だって……その……カフェラテが……」
「カフェラテがどうした?」
「……薄くなっちゃう」
紗希が恥じらいながら言った。俺は思わず吹きだした。
「ハッハッハ! なんだよ、それ!」
「笑わないでよっ!」
「だって、薄くなるって……。あのなあ、俺、高校生だぞ。それくらいでボイラーのパワーが落ちるわけないだろ?」
高校生に体力を見くびってはいけない。彼女とセックスしても妹にエスプレッソマシンでカフェラテ抽出する体力くらいあうらさ。ま、仮に俺に彼女が出来たとしても、毎日セックスするわけないし。
「わかんないよ? 最近のJK進んでいるから……すんごいプレイで兄さんから全部搾り取るかも」
「どんなプレイだよ!」
「それに、もしかしたらサキュバスかもしれないじゃん?」
「……ま、まあ、その確率はゼロではないな」
「そのときは……彼女にもカフェラテ飲ませてあげて。でも、その場合でも……一発目は私にちょうだい。1日の内で最初に出すカフェラテをサキュバス用語で『一番搾り』って言うんだ」
「ほ、ほう」
「一番搾りは頂戴ね? だって、妹だもん! それくらい、わがまま言っていいよね?」
ぴょん、と紗希が俺の前に飛び出て、くねっと身体をよじってポーズをとる。
「ということで、帰ったら一番搾り頂戴!」
「おう……って、おい、さっき大量に飲んだじゃないか!」
「あ、あれは昨日までのぶん! 今日の分はまだ飲んでないっ!」
「マジかよ!?」
♡ ♡ ♡
そんなわけで。その日も風呂上がりに紗希はミルクたっぷりカフェラテを俺から頂いた。2杯も。
「いつまで手を繋いでいるの?」
紗希が言った。
「家に帰るまでかな」と俺。
「恋人みたい」と紗希。ぎゅっと強く手を握り返してきた。
「だな」
じっと紗希の目を見る。紗希も俺の目を見る。しばし、無言の間。
「……仲直りしようよ。兄さん」
「そうだな」
「久しぶり……美味しかった。兄さんの……カフェラテ」
紗希がニコッと微笑む。
「そっか」
「……気持ちいいんだよね?」
「え、ええ!? そ、それはだな、あくまでも、開放感というか、その」
「大丈夫。知ってるから」
紗希の顔がうっすら桜色になった。
「兄さん……私の名前呼んでくれるでしょ?」
「そ、そうだっけ?」
「うん。そうなの。紗希、紗希って言いながらカフェラテ出してくれるんだよ。すっごい、気持ちよさそうな顔して……」
今度は俺の顔が赤くなった。
そうか。俺ってそこまで本気でバリスタ目指していたんだ。思い通りの抽出に歓喜していたなんて。たった一人にの客にも手を抜かない。客の名前を呼びながら抽出することでより美味しいカフェラテの出来上がりだ。カスタマーサービスの塊だ。
「私のこと考えてくれてるってことでしょ? 私にだけ、あんなに美味しいの出してくれるんでしょ?」
「えーと、まあ、……そうかな」
俺は紗希の眼を直視できなかった。これからも紗希だけのバリスタ……でいられるのだろうか。
「兄さんのカフェラテの味……知ってるの……今までも、これからも……私だけ? 教えて、エスプレッソマシンさん」
と言って、紗希が俺のマシンに喋りかける。
「お前の兄さん、それか?」
「冗談だってば」
俺は笑った。紗希も笑った。ふっと紗希の手が離れ、俺の手を握りなおしてきた。今度は指を交互にクロスさせて。
「知ってる? これ。恋人つなぎって言うんだ」
「知ってる」
「本当? 兄さん、そういう情報には疎いと思ってたな」
「一応、これでも高校生だぞ」
「そっか。忘れてた」
紗希が立ち止まった。手を繋いだまま、俺を上目遣いで見つめる。
「あのね。勘違いしないで欲しいんだ。私、兄さん好きだけど好きじゃないから」
「なんだそれ?」
「つーまーりー、兄さんとして最高に好きだってこと」
「わかってるよ。俺と紗希はカップルじゃない。兄妹だ。恋人つなぎするほど仲のよい兄妹だ。違うか?」
「そう。仲のよい兄妹だよ」
「俺も、妹として好きだぞ」
「私のどのへんが好き?」
紗希が口を指さしながら言った。
「お口?」
「あ、えーと、お、お口は……その……確かにチャームポイントだとは思うけれども……」
俺は返答に困った。
「私は、兄さんのカフェラテが美味しいから好きだな」
意地悪く紗希が言った。
「そうなのか?」
「うん。でも、美味しいのは、私のことを妹として大好きだからでしょ? 愛情があるからでしょ? だから、私のことを大好きな兄さんが、私は好き。妹としてね」
恋人つなぎした手がすーっと俺のマシンに移動した。
「ちょ、紗希!」
「うん? スイッチ入ってる?」
「し、仕方ないだろ? お、お前みたいな美少女JKと手を繋いでいるんだ。カ、カフェラテ一つや二つ、提供したくなるのはどうしようもないさっ!」
なんつったって、バリスタなんだからな、俺は!
「ふふ」
紗希が笑った。
「そっかー、私、美少女なんだ。私、兄さんのタイプ?」
「ふあ? な、何を一体……」
「それとも、誰が相手でもこんな風にスイッチオン?」
「そ、それは……紗希だからだ」
すまん、紗希。たぶん……誰でもだ。姫島さんが横にいても、萌夢ちゃんと手を繋いでいても、俺はスイッチ入ると思う。
「やた!」
無邪気に喜ぶ紗希。
「兄さん、彼女いないよね?」
「なんだ唐突に。もちろん、いない」
「私もカレとかいない。でも、そのうちカレとか作って……カフェラテ貰うようにしないといけないんだ」
「……だったな」
「でもね、高校生の間は……カフェラテはデリケートなんだって。いろいろ誤解を招くから。この前お母さんが言ってたの」
「なるほど」
前にも言ったか欧米では子どもにあまりコーヒーの類いは飲ませないみたいだからな。日本人みたいに幼少期よりカフェインたっぷり緑茶で育ってないものな。
「だから……もし、私にカレができても……カフェラテ出してくれる?」
「も、もちろん」
「よかった! ……それとね。兄さんに……その……彼女できたら……えっと」
紗希がふう、と大きく息を吸う。
「えっと、か、彼女さんと、……する?」
「は?」
なんだそれ。
「だから、彼女さんとえっちするかって聞いてるの」
「いや、まあ、それは、その……時と場合によるというか……。つーか、なんでそんなこと聞くんだ?」
「だって……その……カフェラテが……」
「カフェラテがどうした?」
「……薄くなっちゃう」
紗希が恥じらいながら言った。俺は思わず吹きだした。
「ハッハッハ! なんだよ、それ!」
「笑わないでよっ!」
「だって、薄くなるって……。あのなあ、俺、高校生だぞ。それくらいでボイラーのパワーが落ちるわけないだろ?」
高校生に体力を見くびってはいけない。彼女とセックスしても妹にエスプレッソマシンでカフェラテ抽出する体力くらいあうらさ。ま、仮に俺に彼女が出来たとしても、毎日セックスするわけないし。
「わかんないよ? 最近のJK進んでいるから……すんごいプレイで兄さんから全部搾り取るかも」
「どんなプレイだよ!」
「それに、もしかしたらサキュバスかもしれないじゃん?」
「……ま、まあ、その確率はゼロではないな」
「そのときは……彼女にもカフェラテ飲ませてあげて。でも、その場合でも……一発目は私にちょうだい。1日の内で最初に出すカフェラテをサキュバス用語で『一番搾り』って言うんだ」
「ほ、ほう」
「一番搾りは頂戴ね? だって、妹だもん! それくらい、わがまま言っていいよね?」
ぴょん、と紗希が俺の前に飛び出て、くねっと身体をよじってポーズをとる。
「ということで、帰ったら一番搾り頂戴!」
「おう……って、おい、さっき大量に飲んだじゃないか!」
「あ、あれは昨日までのぶん! 今日の分はまだ飲んでないっ!」
「マジかよ!?」
♡ ♡ ♡
そんなわけで。その日も風呂上がりに紗希はミルクたっぷりカフェラテを俺から頂いた。2杯も。
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