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第15話 昇天
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ネットで見たことがある。サキュバスはフェロモンを出せるのだ。カフェラテの前後には自然とフェロモンが分泌されるという。
フェロモン。それは有機化合物。多くの場合、匂いによる刺激として放出される。サキュバス・フェロモンはエスプレッソに香りをプラス。コーヒーの香りを一層引き立たせる。コーヒーのカフェインとの相乗作用で大人な雰囲気を演出、ラブいムードを盛り上げるという。あと、エスプレッソマシンのとある部分も盛り上がるそうだ。盛大に。その作用原理は謎らしい。あれよ、音楽聴かせて果物栽培したら美味しくなるとかそういうのと一緒の感じ。
そうか。紗希……入浴後のカフェラテのためにフェロモンを出したってわけだ。香りのプレゼントってわけだ。ムーディーじゃないか。
……いや、「ムーディー」じゃねぇ! いろいろヤバいだろ、俺のマシン! 爆発つーか暴発寸前だ! どーにかしろ、俺! このままじゃ……出るぞ! 風呂場がミルクまみれになるぞ! 臭いぞ! 咲江さんと紗希が「美味しいよう」と言ってミルク舐めまくるぞ!
ウギャッ! 咲江さんと紗希がサキュバス・スマイルで飛び散った飛沫ミルクをペロペロしてるシーンを想像したらよけいマシンが膨張してしまった! まずい、このままではマジで暴発してしまう! フェロモンを洗い流さねば。どうすれば……どうすればいいんだ?
「そ、そうだ! 親父の鼻うがい!」
俺は洗面台の棚から花粉症持ち親父愛用「鼻うがいセット」を取り出した。キャップを開け、ノズルを鼻に突っ込み、鼻うがいした。心地よいメンソールの液体が鼻腔に流れ込んできた。うん。爽快。これなら花粉も洗い流されそうだ。
「……効かねーっ!」
数回鼻うがいしたが、全く意味がない。なんとなく予想はしていたが、脳に到達したフェロモンに花粉症用鼻うがいは、全く意味が無いようだ。
「だ、駄目だ……」
膨張は収まる気配がない。脈が異常に早い。ドッドッドッ、なんてもんじゃない。ズダダダッだ。スラッシュメタルのツーバスドラムだ。
洗面台の三面鏡に映る自分の顔を見て俺は驚いた。目が真っ赤だ。今にも目から出血しそうだ。こめかみには静脈がはっきり浮き出ている。さらに両方の鼻腔からは……鼻血。
「……!?」
興奮の高まりからの高血圧と頻脈そして出血だ。これは……ヤバいのではないか? わりと生命の危機なのでは?
「ぐはうっ!」
俺のエスプレッソマシンがさらに膨張、ズボンに突き当たる。襲ってくる激痛。俺はその場に倒れてしまった。ああ、なんで俺、ズボンにエスプレッソマシンなんか収納したんだろ。
「貴樹君、どうしたの? 床が濡れてた? 滑っちゃった?」
心配した咲江さんが脱衣場にやって来た。俺を一目見るなり「ひゃう!」とかわいい悲鳴を上げた。その悲鳴、ちょっとエロいです、義母さん。あと、なんでミニスカなんですか。パンツ見えました。
あうっ。マシンが……イタリアンでラテンなマシンが……はち切れそうだ!
「ちょ、どうしたの貴樹君……!」
「はっ、はっ、な、なんでもないです……っは、はううううっ!」
なんでもなくない。なぜか鼻血を出しながらマシンを押さえ、血走った目で荒い呼吸をしつつうずくまっているのだ。
咲江さんが俺のマシンを見て驚愕の表情になる。
「ちょ、貴樹君、すごい膨張してるっ! ズボンがパンパンよっ!」
「こ、これは、あの、痛たたたあぁ!」
義母さん、それ、なんつーか、プレイです、なんて余裕はなかった。熱で破裂しそうなエスプレッソマシン。とにかく、マシンの爆発をおさえたい。そうだ、穴に入れればいい。穴の中で爆発させれば、ミルクは穴の中でしか飛び散らない。
どこかに穴はないか? 穴……穴……。
あ! あった! 咲江さん! 咲江さん、穴ありますよね? 鼻の穴とか耳の穴とか、いろいろ。その穴のうち大きめの所に、マシン、突っ込ませてください!
義母だろうが祖母だろうが幼女だろうが関係ない。穴さえあれば良い。穴があったら入れたい。俺の精神は崩壊寸前だった。
「……こ、これは紗希ちゃんの!」
咲江さんが床に落ちていた紗希のパンツを拾い上げた。
「あらやだ、こんなに大量のフェロモンが……! ま、まさか貴樹君、紗希のフェロモンを……!」
「うがーっ! どはーっ! 穴を入れさせろーっ! い、いや、違うんです……んぐーっ! うるせー、穴出せ! 指で広げろ! はやくマシンを突っ込ませろ! ……いや、違うんです、ごめんなさい……うがっ、どはっ、む、むむむむっつ!」
駄目だ。もう理性が持たない。風呂場で美人義母の穴にマシンを突っ込み、安全に爆発させるしかないのか? つか、ゴム製防護服なくて安全か? 危険日じゃないよね? あ、入力ミス。危険じゃないよね?
「紗希ちゃん! 紗希ちゃん、早く来て!」
咲江さんが二階に向かって叫ぶ。
「どうしたの、お母さん?」
あまりに切羽詰まった絶叫だったからだろう、紗希は階段を駆け下りてきた。
「時間がないのっ!」
「んひゃ!」
いきなり咲江さんが俺のマシンを素手で取り出した。冷たさに変な声を出す俺。
どるんっ! 俺の爆発寸前エスプレッソマシンが天に向かって屹立した。
「ちょっとお母さん、兄さんに何を……って、ええええ!? 何、これ!? 兄さんの、ここんなに大きかったっけ? もっとちっちゃかったよ!?」
非常事態にあれだが微妙に傷ついたぞ、紗希。
「説明してる時間がないの! とにかく……抜いてあげてっ!」
「抜く? 何を抜くの?」
「圧よ! 圧を抜かないと! カフェラテどころじゃないわ! はやく、閉鎖空間に押し込めて安全に爆発させないと!」
なんだ咲江さん、俺と同じこと言ってるじゃないか。
「閉鎖空間?」
「そう! 具体的には、お口!」
「……なんで?」
「だから、時間がないのっ!」
痺れを切らした咲江さんが俺のマシンを強く握った。思わず「うっ!」と声が出た。声だけではない。先っちょからミルクが漏れだした。イタリアンテクノロジーも限界だ。だめだ、もう暴発する。カウントダウンが始まった。
「いいわ、紗希ちゃんがやらないなら、私がするっ!」
咲江さんが大きく口を開けた。え? マジ?
「いくわよ、貴樹君! 私のお口で暴発させて! 大丈夫、ママを信じて!」
「だめーっ! 兄さんは紗希の兄さんなのっ!」
咲江さんの手から俺のマシンを奪い、紗希が言った。
「とにかく、お口に入れればいいんでしょ? 閉鎖空間で爆発させればいいんでしょ? いくよ、兄さん!」
かぽ。
「うは、すごひ……おっひいよぉ!」
エスプレッソマシンをお口に入れたら、そうなるわなあ。
お口の中でマシンの圧が高まる。ネジがはじける音、パイプがきしむ音。うぐぁ! なんか痺れるッ!
………………。
…………。
……ん?
見える。何か見えるぞ。……天使? そうだ、あれは天使だ。天使が見える。
手にはカルピスの瓶を持っている。
「カルピス大好き」
そうかい。じゃあ、飲むといいよ。
「あん、このカルピスの瓶、すっごく太くて……おっきいわ」
ああ、それはマグナムボトルといってね、シャンパンなんかでは普通なんだ。通常の2倍のサイズなんだ。カルピスにもあるのかもな。
「太いのね……お口に入らないわ」
大丈夫さ……って、カルピスをラッパ飲みするのかい? 濃ゆいぞ。カルピスは薄めて飲むもんだ。
「大丈夫、濃ゆいのが好きなんだ。カルピスがね、お口の中でどろーっとなって、喉の奥に絡みつくの……あん、喉の奥に塊が残ったよぉ……」
ああ、あれはカルピスの中にあるカゼインというたんぱく質と、唾液に含まれるムチンという成分が反応してできるのさ。大丈夫、無害だ。
「あふ……濃ゆいの大好き。口の中でねばーってなって……それを舌で舐め回すのよ。あふ……ああん、美味しいよお、もっとぉ、もっとぉ……」
おやおや、カルピス原液が口の周りから溢れているじゃないか。ネバネバがたっぷりお口についているじゃないか。ちゃんと拭き取れよ。
まったく、そんなにちゅぱちゅぱ音を立てるなんて、本当にカルピスラッパ飲みが好きなんだな。
「あん、美味しいわ……んぐ、んぐ……ぷは……こ、濃ゆくて、どろっどろで、新鮮だよぉ」
はっはっは。なんてったって工場直送だからな。
ん? 天使じゃない? 翼はあるけど黒いな。あ、悪魔かな? 悪魔がカルピス飲んでいるんだな?
「ちゅぱちゅぱ。あむあむ。ぺろぺろ」
こらこら、空っぽになったカルピスの瓶をそんなに舐め回しては駄目だよ。え? 裏の方まで舐めて……。貪欲だなあ。おいおい、そんなにバキュームまでして。もう出てこないぞ?
「さきっちょにまだ残っているんだもん……吸わせて」
そうか。じゃあ、先っちょまで綺麗にしてくれ。空き瓶はリサイクルに出そう。可能な限り綺麗にお掃除してくれよ、カルピス大好き悪魔ちゃん。それって地球に優しいからな。
いわゆる「持続可能な開発目標(SDGs)」なわけだ。始業式で校長先生が言ってたな。これからはなんでもSDGsだって。よくわからんが、俺も今日からSDGsだ。国連に協力しよう。
俺は今、人生最高に気持ちいい。俺は今、地球環境保全のために役立っているのだ。国連に協力しているのだ。よくわからんが。
とにかく、ゴー・トゥー・ヘブン。昇天。ああ、悪魔が帰って行く……。
………………。
…………。
……ちゅっ、ぽんっ。
シャンパンの栓を抜いたような音がした。何の音だろう。ともかく、その音で、俺は目を覚ました。目を開けると……見知らぬ天井。
ではなく、さっきの風呂場だった。隣には心配そうな顔の咲江さんと、恍惚とした表情でお口の周りをティッシュで拭いている紗希がいた。
「……間に合ったようね」
咲江さんが「ふう」とため息をついた。
フェロモン。それは有機化合物。多くの場合、匂いによる刺激として放出される。サキュバス・フェロモンはエスプレッソに香りをプラス。コーヒーの香りを一層引き立たせる。コーヒーのカフェインとの相乗作用で大人な雰囲気を演出、ラブいムードを盛り上げるという。あと、エスプレッソマシンのとある部分も盛り上がるそうだ。盛大に。その作用原理は謎らしい。あれよ、音楽聴かせて果物栽培したら美味しくなるとかそういうのと一緒の感じ。
そうか。紗希……入浴後のカフェラテのためにフェロモンを出したってわけだ。香りのプレゼントってわけだ。ムーディーじゃないか。
……いや、「ムーディー」じゃねぇ! いろいろヤバいだろ、俺のマシン! 爆発つーか暴発寸前だ! どーにかしろ、俺! このままじゃ……出るぞ! 風呂場がミルクまみれになるぞ! 臭いぞ! 咲江さんと紗希が「美味しいよう」と言ってミルク舐めまくるぞ!
ウギャッ! 咲江さんと紗希がサキュバス・スマイルで飛び散った飛沫ミルクをペロペロしてるシーンを想像したらよけいマシンが膨張してしまった! まずい、このままではマジで暴発してしまう! フェロモンを洗い流さねば。どうすれば……どうすればいいんだ?
「そ、そうだ! 親父の鼻うがい!」
俺は洗面台の棚から花粉症持ち親父愛用「鼻うがいセット」を取り出した。キャップを開け、ノズルを鼻に突っ込み、鼻うがいした。心地よいメンソールの液体が鼻腔に流れ込んできた。うん。爽快。これなら花粉も洗い流されそうだ。
「……効かねーっ!」
数回鼻うがいしたが、全く意味がない。なんとなく予想はしていたが、脳に到達したフェロモンに花粉症用鼻うがいは、全く意味が無いようだ。
「だ、駄目だ……」
膨張は収まる気配がない。脈が異常に早い。ドッドッドッ、なんてもんじゃない。ズダダダッだ。スラッシュメタルのツーバスドラムだ。
洗面台の三面鏡に映る自分の顔を見て俺は驚いた。目が真っ赤だ。今にも目から出血しそうだ。こめかみには静脈がはっきり浮き出ている。さらに両方の鼻腔からは……鼻血。
「……!?」
興奮の高まりからの高血圧と頻脈そして出血だ。これは……ヤバいのではないか? わりと生命の危機なのでは?
「ぐはうっ!」
俺のエスプレッソマシンがさらに膨張、ズボンに突き当たる。襲ってくる激痛。俺はその場に倒れてしまった。ああ、なんで俺、ズボンにエスプレッソマシンなんか収納したんだろ。
「貴樹君、どうしたの? 床が濡れてた? 滑っちゃった?」
心配した咲江さんが脱衣場にやって来た。俺を一目見るなり「ひゃう!」とかわいい悲鳴を上げた。その悲鳴、ちょっとエロいです、義母さん。あと、なんでミニスカなんですか。パンツ見えました。
あうっ。マシンが……イタリアンでラテンなマシンが……はち切れそうだ!
「ちょ、どうしたの貴樹君……!」
「はっ、はっ、な、なんでもないです……っは、はううううっ!」
なんでもなくない。なぜか鼻血を出しながらマシンを押さえ、血走った目で荒い呼吸をしつつうずくまっているのだ。
咲江さんが俺のマシンを見て驚愕の表情になる。
「ちょ、貴樹君、すごい膨張してるっ! ズボンがパンパンよっ!」
「こ、これは、あの、痛たたたあぁ!」
義母さん、それ、なんつーか、プレイです、なんて余裕はなかった。熱で破裂しそうなエスプレッソマシン。とにかく、マシンの爆発をおさえたい。そうだ、穴に入れればいい。穴の中で爆発させれば、ミルクは穴の中でしか飛び散らない。
どこかに穴はないか? 穴……穴……。
あ! あった! 咲江さん! 咲江さん、穴ありますよね? 鼻の穴とか耳の穴とか、いろいろ。その穴のうち大きめの所に、マシン、突っ込ませてください!
義母だろうが祖母だろうが幼女だろうが関係ない。穴さえあれば良い。穴があったら入れたい。俺の精神は崩壊寸前だった。
「……こ、これは紗希ちゃんの!」
咲江さんが床に落ちていた紗希のパンツを拾い上げた。
「あらやだ、こんなに大量のフェロモンが……! ま、まさか貴樹君、紗希のフェロモンを……!」
「うがーっ! どはーっ! 穴を入れさせろーっ! い、いや、違うんです……んぐーっ! うるせー、穴出せ! 指で広げろ! はやくマシンを突っ込ませろ! ……いや、違うんです、ごめんなさい……うがっ、どはっ、む、むむむむっつ!」
駄目だ。もう理性が持たない。風呂場で美人義母の穴にマシンを突っ込み、安全に爆発させるしかないのか? つか、ゴム製防護服なくて安全か? 危険日じゃないよね? あ、入力ミス。危険じゃないよね?
「紗希ちゃん! 紗希ちゃん、早く来て!」
咲江さんが二階に向かって叫ぶ。
「どうしたの、お母さん?」
あまりに切羽詰まった絶叫だったからだろう、紗希は階段を駆け下りてきた。
「時間がないのっ!」
「んひゃ!」
いきなり咲江さんが俺のマシンを素手で取り出した。冷たさに変な声を出す俺。
どるんっ! 俺の爆発寸前エスプレッソマシンが天に向かって屹立した。
「ちょっとお母さん、兄さんに何を……って、ええええ!? 何、これ!? 兄さんの、ここんなに大きかったっけ? もっとちっちゃかったよ!?」
非常事態にあれだが微妙に傷ついたぞ、紗希。
「説明してる時間がないの! とにかく……抜いてあげてっ!」
「抜く? 何を抜くの?」
「圧よ! 圧を抜かないと! カフェラテどころじゃないわ! はやく、閉鎖空間に押し込めて安全に爆発させないと!」
なんだ咲江さん、俺と同じこと言ってるじゃないか。
「閉鎖空間?」
「そう! 具体的には、お口!」
「……なんで?」
「だから、時間がないのっ!」
痺れを切らした咲江さんが俺のマシンを強く握った。思わず「うっ!」と声が出た。声だけではない。先っちょからミルクが漏れだした。イタリアンテクノロジーも限界だ。だめだ、もう暴発する。カウントダウンが始まった。
「いいわ、紗希ちゃんがやらないなら、私がするっ!」
咲江さんが大きく口を開けた。え? マジ?
「いくわよ、貴樹君! 私のお口で暴発させて! 大丈夫、ママを信じて!」
「だめーっ! 兄さんは紗希の兄さんなのっ!」
咲江さんの手から俺のマシンを奪い、紗希が言った。
「とにかく、お口に入れればいいんでしょ? 閉鎖空間で爆発させればいいんでしょ? いくよ、兄さん!」
かぽ。
「うは、すごひ……おっひいよぉ!」
エスプレッソマシンをお口に入れたら、そうなるわなあ。
お口の中でマシンの圧が高まる。ネジがはじける音、パイプがきしむ音。うぐぁ! なんか痺れるッ!
………………。
…………。
……ん?
見える。何か見えるぞ。……天使? そうだ、あれは天使だ。天使が見える。
手にはカルピスの瓶を持っている。
「カルピス大好き」
そうかい。じゃあ、飲むといいよ。
「あん、このカルピスの瓶、すっごく太くて……おっきいわ」
ああ、それはマグナムボトルといってね、シャンパンなんかでは普通なんだ。通常の2倍のサイズなんだ。カルピスにもあるのかもな。
「太いのね……お口に入らないわ」
大丈夫さ……って、カルピスをラッパ飲みするのかい? 濃ゆいぞ。カルピスは薄めて飲むもんだ。
「大丈夫、濃ゆいのが好きなんだ。カルピスがね、お口の中でどろーっとなって、喉の奥に絡みつくの……あん、喉の奥に塊が残ったよぉ……」
ああ、あれはカルピスの中にあるカゼインというたんぱく質と、唾液に含まれるムチンという成分が反応してできるのさ。大丈夫、無害だ。
「あふ……濃ゆいの大好き。口の中でねばーってなって……それを舌で舐め回すのよ。あふ……ああん、美味しいよお、もっとぉ、もっとぉ……」
おやおや、カルピス原液が口の周りから溢れているじゃないか。ネバネバがたっぷりお口についているじゃないか。ちゃんと拭き取れよ。
まったく、そんなにちゅぱちゅぱ音を立てるなんて、本当にカルピスラッパ飲みが好きなんだな。
「あん、美味しいわ……んぐ、んぐ……ぷは……こ、濃ゆくて、どろっどろで、新鮮だよぉ」
はっはっは。なんてったって工場直送だからな。
ん? 天使じゃない? 翼はあるけど黒いな。あ、悪魔かな? 悪魔がカルピス飲んでいるんだな?
「ちゅぱちゅぱ。あむあむ。ぺろぺろ」
こらこら、空っぽになったカルピスの瓶をそんなに舐め回しては駄目だよ。え? 裏の方まで舐めて……。貪欲だなあ。おいおい、そんなにバキュームまでして。もう出てこないぞ?
「さきっちょにまだ残っているんだもん……吸わせて」
そうか。じゃあ、先っちょまで綺麗にしてくれ。空き瓶はリサイクルに出そう。可能な限り綺麗にお掃除してくれよ、カルピス大好き悪魔ちゃん。それって地球に優しいからな。
いわゆる「持続可能な開発目標(SDGs)」なわけだ。始業式で校長先生が言ってたな。これからはなんでもSDGsだって。よくわからんが、俺も今日からSDGsだ。国連に協力しよう。
俺は今、人生最高に気持ちいい。俺は今、地球環境保全のために役立っているのだ。国連に協力しているのだ。よくわからんが。
とにかく、ゴー・トゥー・ヘブン。昇天。ああ、悪魔が帰って行く……。
………………。
…………。
……ちゅっ、ぽんっ。
シャンパンの栓を抜いたような音がした。何の音だろう。ともかく、その音で、俺は目を覚ました。目を開けると……見知らぬ天井。
ではなく、さっきの風呂場だった。隣には心配そうな顔の咲江さんと、恍惚とした表情でお口の周りをティッシュで拭いている紗希がいた。
「……間に合ったようね」
咲江さんが「ふう」とため息をついた。
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