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第11話 俺のアレは濃ゆい
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「私、わがまま言ってるかなあ? 自分勝手?」
「いや、わがままじゃないぞ、うん」
「もし嫌だったら、ちゃんと言ってね。我慢するからさ」
「い、嫌なものか!」
罪悪感。そんなものは既に消えていた。さっきまでの俺は賢者だったのだ。
通常の3倍出した俺。きっと通常の3倍賢者だったのだろう。ガンダルフ——ロード・オブ・ザ・リングに出てくるあの大賢者、彼が俺に憑依していたに違いない。
だが、ガンダルフは去った。今の俺は灰色のガンダルフでなく、ただの男子高校生。頭の固い賢者でなく、とある部分が固い高校2年生だ。どちらかと言えば愚者といえよう。紗希のおねだりを拒否するはずなどないのだ。
「かわいい妹のお願いだ、きょ、協力するさっ!」
「……いいの? 1日2回カフェラテとか、大変じゃない?」
「はっはっは。かわいい妹のお願いだ。それくらい、なんともないっ!」
ギンギンに整備したエスプレッソマシンで、どぴゅっ! と抽出しよう。俺のエスプレッソは濃ゆいぞ! さらに、熱々のスチーマーで溢れんばかりのミルク! 最高のカフェラテをごっくんさせるさ!
「ありがと、兄さん! 大好き! ちゅっ!」
がばっ。歓喜した紗希がいきなり頭を下げ、俺のマシンにキスしてきた。そう、カップにミルクスチームを提供するあの先端部分。スタバでお姉さんが最後にウエスで丁寧にミルクの雫を拭き上げている、あの部分。そこに紗希はキスしてきたのだ。
「さ、紗希!? ちょ、おま、何を!?」
ビクン。ほんの少し、ミルクが垂れた。
「あ、動いた! おもしろーい!」
紗希が笑う。まだスイッチは入っているんだ。動きもするさ。
「じゃ、また……夜、お願いね。兄さん」
紗希がマシンに向かって話しかけた。
「ああ……」
「濃ゆいの、お願いします」
そっと紗希がマシンを撫でる。マシン、律動。
「また動いた。ふふ」
紗希が笑う。
「それじゃ、図書館に行くね」
いつの間に用意していたのだろう。紗希はカバンを持ち、部屋を出て、階段を駆け下りていった。しばらくして「いってきまーす」と声がして紗希は出て行った。
「ふう……」
深く長く息を吐く。俺はベッドに横になった。頭が混乱している。
いろんなことがありすぎた。俺は反芻する。紗希の口。反応。髪の毛の手触り。声。舌。そして、手。
最高だった。控えめに言って、最高だ。頑張ってカフェラテ出した甲斐があった。エスプレッソマシンも頑張った。パワフルに、たくましく、抽出してくれた。きっと今晩も濃ゆいのを出してくれるだろう。
開けっぱなしの扉らの向こうを見る。紗希の部屋の扉が目に入った。「さきのへや♡」と書かれた手作り表札がかけてある。
今日の夜、もう一杯カフェラテ、だそうだ。おそらく明日も明後日も、カフェラテなだろう。あの可愛いお口で、ミルクたっぷりで濃ゆくて、熱々のカフェラテをごっくんするのだ。きっとお掃除もしてくれるに違いない。
「……本当に、ティッシュいらなくなったな」
まあ、多少はマシンの仕上げ拭きに必要かもしれないがな。
それはとにかく。
紗希……。絶品だった。凄かった。いい飲みっぷりだった。ものすごい吸引力だった。変わらない吸引力。ダイソンかよ、紗希。一生忘れられないだろう。バリスタにとって、そしてエスプレッソマシンにとって、あんなに夢中でごっくんされるのは本望といえる。
カフェラテ。普通の女の子も好きなんだろうか? スタバで甘い季節のドリンクを注文しているあのJKたちも、あんな吸引力でカフェラテなのだろうか?
カフェラテの残り香が部屋に充満していた。その残り香のなか、俺はもんもんとベッドのなかで無駄に過ごした。
「いや、わがままじゃないぞ、うん」
「もし嫌だったら、ちゃんと言ってね。我慢するからさ」
「い、嫌なものか!」
罪悪感。そんなものは既に消えていた。さっきまでの俺は賢者だったのだ。
通常の3倍出した俺。きっと通常の3倍賢者だったのだろう。ガンダルフ——ロード・オブ・ザ・リングに出てくるあの大賢者、彼が俺に憑依していたに違いない。
だが、ガンダルフは去った。今の俺は灰色のガンダルフでなく、ただの男子高校生。頭の固い賢者でなく、とある部分が固い高校2年生だ。どちらかと言えば愚者といえよう。紗希のおねだりを拒否するはずなどないのだ。
「かわいい妹のお願いだ、きょ、協力するさっ!」
「……いいの? 1日2回カフェラテとか、大変じゃない?」
「はっはっは。かわいい妹のお願いだ。それくらい、なんともないっ!」
ギンギンに整備したエスプレッソマシンで、どぴゅっ! と抽出しよう。俺のエスプレッソは濃ゆいぞ! さらに、熱々のスチーマーで溢れんばかりのミルク! 最高のカフェラテをごっくんさせるさ!
「ありがと、兄さん! 大好き! ちゅっ!」
がばっ。歓喜した紗希がいきなり頭を下げ、俺のマシンにキスしてきた。そう、カップにミルクスチームを提供するあの先端部分。スタバでお姉さんが最後にウエスで丁寧にミルクの雫を拭き上げている、あの部分。そこに紗希はキスしてきたのだ。
「さ、紗希!? ちょ、おま、何を!?」
ビクン。ほんの少し、ミルクが垂れた。
「あ、動いた! おもしろーい!」
紗希が笑う。まだスイッチは入っているんだ。動きもするさ。
「じゃ、また……夜、お願いね。兄さん」
紗希がマシンに向かって話しかけた。
「ああ……」
「濃ゆいの、お願いします」
そっと紗希がマシンを撫でる。マシン、律動。
「また動いた。ふふ」
紗希が笑う。
「それじゃ、図書館に行くね」
いつの間に用意していたのだろう。紗希はカバンを持ち、部屋を出て、階段を駆け下りていった。しばらくして「いってきまーす」と声がして紗希は出て行った。
「ふう……」
深く長く息を吐く。俺はベッドに横になった。頭が混乱している。
いろんなことがありすぎた。俺は反芻する。紗希の口。反応。髪の毛の手触り。声。舌。そして、手。
最高だった。控えめに言って、最高だ。頑張ってカフェラテ出した甲斐があった。エスプレッソマシンも頑張った。パワフルに、たくましく、抽出してくれた。きっと今晩も濃ゆいのを出してくれるだろう。
開けっぱなしの扉らの向こうを見る。紗希の部屋の扉が目に入った。「さきのへや♡」と書かれた手作り表札がかけてある。
今日の夜、もう一杯カフェラテ、だそうだ。おそらく明日も明後日も、カフェラテなだろう。あの可愛いお口で、ミルクたっぷりで濃ゆくて、熱々のカフェラテをごっくんするのだ。きっとお掃除もしてくれるに違いない。
「……本当に、ティッシュいらなくなったな」
まあ、多少はマシンの仕上げ拭きに必要かもしれないがな。
それはとにかく。
紗希……。絶品だった。凄かった。いい飲みっぷりだった。ものすごい吸引力だった。変わらない吸引力。ダイソンかよ、紗希。一生忘れられないだろう。バリスタにとって、そしてエスプレッソマシンにとって、あんなに夢中でごっくんされるのは本望といえる。
カフェラテ。普通の女の子も好きなんだろうか? スタバで甘い季節のドリンクを注文しているあのJKたちも、あんな吸引力でカフェラテなのだろうか?
カフェラテの残り香が部屋に充満していた。その残り香のなか、俺はもんもんとベッドのなかで無駄に過ごした。
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