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110ステビアとアンゼリカ前編
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★今回はステビア視点のお話です。
翌朝、エースはローズマリー様と連れ立って、エルフの里を出発していった。エースは白の魔術の必殺技『荷物圧縮』のお陰で、ほぼ手ぶら。ちゃんと必要なものを持っているのは分かっているのだが、この軽装備は見ていると、こっちが不安になってくる。
ローズマリー様は最後まで彼女らしかった。おそらく、お疲れも溜まっているだろうに、そんな素振りを全く見せないばかりか、森の中へと消えていくその最後まで凛とした佇まいは変わらなかった。これこそが王女の風格なのだろう。
里では、総出で二人を見送った。たまたま近くにいたエルフ族の男から聞いた話によると、エルフ族の存在理由の一つが世界樹の次期管理人と救世主のサポートだと言う。それだけあって、老若男女がわらわらと可愛らしい家から出てきて、独特の祈りのポーズをもって二人の旅の安全と世界樹の繁栄を願う姿が見られた。
それも今は解散し、広場は俺たち旅の仲間と数人のエルフだけという閑散とした状態。いなくなったのは二人だけなのに、どうしてこんなに空虚感が大きいのか。
「行ってしまわれたな」
マジョラム団長は、二人が消えた先を睨んだままだった。彼は前王の代わりに姫様の最期を見届けるつもりだったのだろうが、ミントさんから明かされた森の秘密により、出鼻をくじかれたようなもの。やはり、思うところはあるのだろう。
俺の場合は、張り切って旅についてきたところへ水を差されたというよりも、安堵感が大きい。何せ、アンゼリカさんはエースのこととなると脇目を振らずに、その力を尽くすところがある。エースは女性だが、それでも妬いてしまうのは俺の器の小ささか。だけど、あれ程までにアンゼリカさんから想われているのは、羨ましいのは仕方ない。
「行ってしまった」
アンゼリカさんがポツリと漏らす。ローズマリー様のお付きという名目は建前で、彼女はエースを守るためにこの旅へついてきたのは間違いない。マジョラム団長とは違った形で、少し傷ついた横顔をしている。
「これも世界樹の思し召し。古からの決まりごとなのです。アンゼリカさんは、ここまで姫様やエースに十分尽くされてきました」
「でも」
視線の向こうには、怪しげな黒い森。確かに、入ると足を取られて森そのものに吸い込まれて出られなくなってしまいそうな、そんな恐ろしさがある。ここは、もはやハーヴィー王国とは言えない場所。未開拓の地。何が待っているか分からない所へ、この世界の命運を託された二人が行ってしまった。
「アンゼリカ副団長。二人のことを信頼して、大人しく待つのも俺たちの仕事です」
アンゼリカさんは、弱々しく頷いた。そして俺は、これで彼女が納得してくれたものだと思い込んだのだった。
◇
「アンゼリカさんがいない?!」
それは、その日の昼前のことだった。俺は、マジョラム団長に拉致……ではなく、ありがたくも剣の稽古の相手として選ばれて、団長のプライドを傷つけない程度に打ち負かし、汗を流していた時だ。
その日の昼も、長の家で食事会が開かれるということで、間もなく準備ができるという声がかかったのだが、発覚したのはこの事実。村中探しても、彼女がいないというのだ。
「てっきり、彼女はあなたといつも一緒にいるものだと思っていたわ」
ミントさんの顔面は蒼白。きっと、俺と同じことに思い当たっているのだろう。
「アンゼリカさんにとって俺の存在は……今の状況の通りです」
そう答えるしかない。本当はいつでも相談してほしい。どんなことも一人で抱え込まないでほしい。あの氷柱のように鋭い剣さばきの向こうで、彼女はいつもその壊れやすいハートを守り続けている。クールな一匹狼はあくまで着ぐるみ。ひと度それを脱げば、ごく普通のか弱い女性だ。
けれど、彼女は名のある家、伯爵家のご令嬢。きっと幼少の頃から厳しく躾けられているのだろう。弱みなんて全く見せてくれない。毅然とした態度が痛々しく見えることもあるけれど、これまではずっと影で見守っているだけだった。
でも! さすがに今回は放ってはおけない。俺は、ミントさんと二人で広場の奥にある黒い森を見つめる。
アンゼリカさんは、きっと……
「あなた、どうするつもり? まさか」
「それはこちらの台詞です。まさか、見捨てるつもりですか?」
ミントさんは口籠る。彼女もアンゼリカさんと深い親交があり、見捨てるなんて考えるわけがないのは分かってるけど。それでも、動こうとしないのは何故だ。それ程に、この森は危険なのだろうか。それでも俺は――。
俺が森へ足を向けようとすると、ミントさんが肩を掴んできた。
「行くならば、これを持っていきなさい」
差し出してきたのは緑の石のペンダント。
「私も、行きたい。でも、私は他の皆が馬鹿なことを考えないように監督なきゃいけないし、長の後継者としても、ここを離れることができないの」
「これは?」
「守りの石程の力はないかもしれない。でも、エルフ族に伝わる大切なお守りよ。この地ならば、力を遺憾なく発揮してくれるはず」
俺は少し考えた後、受け取ることにした。アンゼリカさんを見つけ出して助けるためには、手段や頼る人を選んでいる場合じゃない。
「ありがとう。俺は駄目でも、アンゼリカさんは必ずここへ戻してみせる」
「冗談言わないで。エースが悲しむことはしないでちょうだい」
この人も、たいがいエース党だな。確かに良い奴ではある。うちの家宝の剣を直してくれたし。でも、女としては断然アンゼリカさんが上だろう。
考えていることがバレたのか、ミントさんがニヤリとする。
「ま、何よりアンゼリカさんが泣くことがないように、できることはやりなさい」
「任せとけ」
「でも、油断はしないでね。エルフ族では、大きな罪を犯した場合、死刑にあたるものとして森への追放というものがあるの。私の言いたいことは分かるかしら?」
それ、もっと早く教えてくれよ。そうすればアンゼリカさんも迂闊に森へ単独乗り込むことはなかっただろうに。
俺は浅く頷くと、地面を蹴った。
必ず戻る。
二人で!
◇
一度森の中に入れば、すぐに方向感覚を失ってしまう。暗い森の中は太陽の方向すらはっきりとは分からない。空高くまで生い茂る木々と蔓植物が幾重にも傘を作っていて、光が届かなくなった地面はどこもジメジメと湿気を帯びている。妙なキノコや、得体のしれない魔物の気配も多かった。時折、何かの叫び声のような奇妙な音が遠くから聞こえてくるが、、姿は見えない。びっしりと生えた苔に足を取られて滑りそうになりながらも、気力の限り「こちらが前だ」思う方向へ直感を信じて突き進む。
どれぐらい時間が経ったのか分からない。かと言って、空腹感も無い。異次元に放り込まれて、実は同じところを行ったり来たりしているのではないかと錯覚してしまう程、あたりの景色は一向に変わることがなかった。
「アンゼリカさん」
と声に出すも、返事もなく。
俺は、次第に足が上がらなくなってきた。騎士になって依頼、遠征先であっても日々の鍛錬を欠かしたことがない俺が、ここまで体力を失っているのはどういうことだ。体が重い。
森が危険な理由は、魔物のせいだと思いこんでいた。きっと、王都の辺りにはいない珍しい特殊な魔物が独特の生態系を作っていて、森にとって異物である人間を根こそぎ殺しにくるのだろうと。
でも実際は違う。目に見えない何かに阻まれて、体力ばかりか生命力がガリガリと削られて行くのが分かる。その音すら聞こえてくるようだ。
そして俺は、ついに立ち止まってしまった。
人が全くいない暗黒の森のど真ん中で。
途端に、周囲の静けさが身に迫ってきて、自身の存在が掻き消されそうな恐怖に駆られてしまう。
「アンゼリカさん」
彼女の剣舞のような美しい戦い方が、幻影となって目の前に現れる。好きなのは、それだけではない。ふと見せる女らしい一面。令嬢としての上品な佇まい。そして友や部下などを思いやる心。休みの日にお忍びで下町に降りる際の町娘の格好もよく似合っている。
「アンゼリカさん」
俺は、男爵家の息子だ。普通に考えて、公爵家のご息女を望むなんて格の違いがありすぎて無理滑稽な話。それでも彼女に憧れる。初めは遠くから見ているだけだった。絵姿を手に入れて、それを枕の横に置いて寝たこともある。そんな遠い存在がやがて近くなり、言葉を交わせるようになり、ついには「ステビアさん」とあの鈴の鳴るような声で呼ばれるまでになった。
それでもう、十分じゃないか。と、世の人は言うかもしれない。もしくは、「悪いことは言わない、高望みはするな。これ以上踏み込んて傷つくのはお前だ」と忠告してくる人もいるだろう。
だが、これは若気の至りでも、突拍子もない思いつきでもなんでもなくて、俺は、彼女じゃないと駄目なのだと思う。これは、俺本人だからこそ、言えることだ。
「アンゼリカさん」
返事がほしい。自分の声が、虚しくも森の中に吸い込まれていくだけ。
だと思っていた。
それは、微かな、微かな、気配だった。
翌朝、エースはローズマリー様と連れ立って、エルフの里を出発していった。エースは白の魔術の必殺技『荷物圧縮』のお陰で、ほぼ手ぶら。ちゃんと必要なものを持っているのは分かっているのだが、この軽装備は見ていると、こっちが不安になってくる。
ローズマリー様は最後まで彼女らしかった。おそらく、お疲れも溜まっているだろうに、そんな素振りを全く見せないばかりか、森の中へと消えていくその最後まで凛とした佇まいは変わらなかった。これこそが王女の風格なのだろう。
里では、総出で二人を見送った。たまたま近くにいたエルフ族の男から聞いた話によると、エルフ族の存在理由の一つが世界樹の次期管理人と救世主のサポートだと言う。それだけあって、老若男女がわらわらと可愛らしい家から出てきて、独特の祈りのポーズをもって二人の旅の安全と世界樹の繁栄を願う姿が見られた。
それも今は解散し、広場は俺たち旅の仲間と数人のエルフだけという閑散とした状態。いなくなったのは二人だけなのに、どうしてこんなに空虚感が大きいのか。
「行ってしまわれたな」
マジョラム団長は、二人が消えた先を睨んだままだった。彼は前王の代わりに姫様の最期を見届けるつもりだったのだろうが、ミントさんから明かされた森の秘密により、出鼻をくじかれたようなもの。やはり、思うところはあるのだろう。
俺の場合は、張り切って旅についてきたところへ水を差されたというよりも、安堵感が大きい。何せ、アンゼリカさんはエースのこととなると脇目を振らずに、その力を尽くすところがある。エースは女性だが、それでも妬いてしまうのは俺の器の小ささか。だけど、あれ程までにアンゼリカさんから想われているのは、羨ましいのは仕方ない。
「行ってしまった」
アンゼリカさんがポツリと漏らす。ローズマリー様のお付きという名目は建前で、彼女はエースを守るためにこの旅へついてきたのは間違いない。マジョラム団長とは違った形で、少し傷ついた横顔をしている。
「これも世界樹の思し召し。古からの決まりごとなのです。アンゼリカさんは、ここまで姫様やエースに十分尽くされてきました」
「でも」
視線の向こうには、怪しげな黒い森。確かに、入ると足を取られて森そのものに吸い込まれて出られなくなってしまいそうな、そんな恐ろしさがある。ここは、もはやハーヴィー王国とは言えない場所。未開拓の地。何が待っているか分からない所へ、この世界の命運を託された二人が行ってしまった。
「アンゼリカ副団長。二人のことを信頼して、大人しく待つのも俺たちの仕事です」
アンゼリカさんは、弱々しく頷いた。そして俺は、これで彼女が納得してくれたものだと思い込んだのだった。
◇
「アンゼリカさんがいない?!」
それは、その日の昼前のことだった。俺は、マジョラム団長に拉致……ではなく、ありがたくも剣の稽古の相手として選ばれて、団長のプライドを傷つけない程度に打ち負かし、汗を流していた時だ。
その日の昼も、長の家で食事会が開かれるということで、間もなく準備ができるという声がかかったのだが、発覚したのはこの事実。村中探しても、彼女がいないというのだ。
「てっきり、彼女はあなたといつも一緒にいるものだと思っていたわ」
ミントさんの顔面は蒼白。きっと、俺と同じことに思い当たっているのだろう。
「アンゼリカさんにとって俺の存在は……今の状況の通りです」
そう答えるしかない。本当はいつでも相談してほしい。どんなことも一人で抱え込まないでほしい。あの氷柱のように鋭い剣さばきの向こうで、彼女はいつもその壊れやすいハートを守り続けている。クールな一匹狼はあくまで着ぐるみ。ひと度それを脱げば、ごく普通のか弱い女性だ。
けれど、彼女は名のある家、伯爵家のご令嬢。きっと幼少の頃から厳しく躾けられているのだろう。弱みなんて全く見せてくれない。毅然とした態度が痛々しく見えることもあるけれど、これまではずっと影で見守っているだけだった。
でも! さすがに今回は放ってはおけない。俺は、ミントさんと二人で広場の奥にある黒い森を見つめる。
アンゼリカさんは、きっと……
「あなた、どうするつもり? まさか」
「それはこちらの台詞です。まさか、見捨てるつもりですか?」
ミントさんは口籠る。彼女もアンゼリカさんと深い親交があり、見捨てるなんて考えるわけがないのは分かってるけど。それでも、動こうとしないのは何故だ。それ程に、この森は危険なのだろうか。それでも俺は――。
俺が森へ足を向けようとすると、ミントさんが肩を掴んできた。
「行くならば、これを持っていきなさい」
差し出してきたのは緑の石のペンダント。
「私も、行きたい。でも、私は他の皆が馬鹿なことを考えないように監督なきゃいけないし、長の後継者としても、ここを離れることができないの」
「これは?」
「守りの石程の力はないかもしれない。でも、エルフ族に伝わる大切なお守りよ。この地ならば、力を遺憾なく発揮してくれるはず」
俺は少し考えた後、受け取ることにした。アンゼリカさんを見つけ出して助けるためには、手段や頼る人を選んでいる場合じゃない。
「ありがとう。俺は駄目でも、アンゼリカさんは必ずここへ戻してみせる」
「冗談言わないで。エースが悲しむことはしないでちょうだい」
この人も、たいがいエース党だな。確かに良い奴ではある。うちの家宝の剣を直してくれたし。でも、女としては断然アンゼリカさんが上だろう。
考えていることがバレたのか、ミントさんがニヤリとする。
「ま、何よりアンゼリカさんが泣くことがないように、できることはやりなさい」
「任せとけ」
「でも、油断はしないでね。エルフ族では、大きな罪を犯した場合、死刑にあたるものとして森への追放というものがあるの。私の言いたいことは分かるかしら?」
それ、もっと早く教えてくれよ。そうすればアンゼリカさんも迂闊に森へ単独乗り込むことはなかっただろうに。
俺は浅く頷くと、地面を蹴った。
必ず戻る。
二人で!
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一度森の中に入れば、すぐに方向感覚を失ってしまう。暗い森の中は太陽の方向すらはっきりとは分からない。空高くまで生い茂る木々と蔓植物が幾重にも傘を作っていて、光が届かなくなった地面はどこもジメジメと湿気を帯びている。妙なキノコや、得体のしれない魔物の気配も多かった。時折、何かの叫び声のような奇妙な音が遠くから聞こえてくるが、、姿は見えない。びっしりと生えた苔に足を取られて滑りそうになりながらも、気力の限り「こちらが前だ」思う方向へ直感を信じて突き進む。
どれぐらい時間が経ったのか分からない。かと言って、空腹感も無い。異次元に放り込まれて、実は同じところを行ったり来たりしているのではないかと錯覚してしまう程、あたりの景色は一向に変わることがなかった。
「アンゼリカさん」
と声に出すも、返事もなく。
俺は、次第に足が上がらなくなってきた。騎士になって依頼、遠征先であっても日々の鍛錬を欠かしたことがない俺が、ここまで体力を失っているのはどういうことだ。体が重い。
森が危険な理由は、魔物のせいだと思いこんでいた。きっと、王都の辺りにはいない珍しい特殊な魔物が独特の生態系を作っていて、森にとって異物である人間を根こそぎ殺しにくるのだろうと。
でも実際は違う。目に見えない何かに阻まれて、体力ばかりか生命力がガリガリと削られて行くのが分かる。その音すら聞こえてくるようだ。
そして俺は、ついに立ち止まってしまった。
人が全くいない暗黒の森のど真ん中で。
途端に、周囲の静けさが身に迫ってきて、自身の存在が掻き消されそうな恐怖に駆られてしまう。
「アンゼリカさん」
彼女の剣舞のような美しい戦い方が、幻影となって目の前に現れる。好きなのは、それだけではない。ふと見せる女らしい一面。令嬢としての上品な佇まい。そして友や部下などを思いやる心。休みの日にお忍びで下町に降りる際の町娘の格好もよく似合っている。
「アンゼリカさん」
俺は、男爵家の息子だ。普通に考えて、公爵家のご息女を望むなんて格の違いがありすぎて無理滑稽な話。それでも彼女に憧れる。初めは遠くから見ているだけだった。絵姿を手に入れて、それを枕の横に置いて寝たこともある。そんな遠い存在がやがて近くなり、言葉を交わせるようになり、ついには「ステビアさん」とあの鈴の鳴るような声で呼ばれるまでになった。
それでもう、十分じゃないか。と、世の人は言うかもしれない。もしくは、「悪いことは言わない、高望みはするな。これ以上踏み込んて傷つくのはお前だ」と忠告してくる人もいるだろう。
だが、これは若気の至りでも、突拍子もない思いつきでもなんでもなくて、俺は、彼女じゃないと駄目なのだと思う。これは、俺本人だからこそ、言えることだ。
「アンゼリカさん」
返事がほしい。自分の声が、虚しくも森の中に吸い込まれていくだけ。
だと思っていた。
それは、微かな、微かな、気配だった。
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