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45一筋縄ではいかなかった
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「お忙しいところすみません」
「いいのよ。なかなか時間がとれなかったのは、アタクシ側の都合だし」
それもそうか。ついつい下手に出てしまうのは日本人の性である。
さてさて、ついにアルカネットさんへの勉強会が始まりましたよ! アルカネットさんは魔術師団の団長兼主席なので、取り巻きとか護衛をづらづらと連れてくるのかと思いきや、お一人で現れた。場所はアルカネットさんが住んでいる研究塔のお庭。私が一人で向かおうとすると、さりげなくラムズイヤーさんが付き添ってくれて、一緒にここまで来てしまった。
そうそう。ラムズイヤーさんって、クレソンさんの王子時代からの側近みたいなんだよね。道理でこれまでも私のことを気にかけてくれていたわけだ。今日もきっと、クレソンさんから指示されて仕方なく私のお守りをしているのだろう。振り回してごめんなさい。
てことで、早速結界魔術の伝授をします。ここは、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という名言を信じて、まずはお手本を見せましょう。
「アルカネットさん。まずは白の色のイメージを頭の中で強く思い描いて、手に魔力をギュギュッと集中させます。そして、こんな感じてパーンっと放ちます。はい、完成です」
「あなた、教えるのを下手ってよく言われるでしょう?」
え、そんなに下手でした? 元々人に物を教える機会なんてこれまでなかったので、ノウハウなんて持っていないのだ。
「ともかく、白の魔術を使えるようにならなければ結界はできませんので、まずは白い光を出せるように練習しましょう!」
確かミントさんが、白の魔術は、全ての色の魔術を同じ出力で出した時に実現するのだと話していたと思う。私は完全に無意識なので、各色のことなんて何も気にしていないのだけれどね。
これを説明すると、アルカネットさんはさすが主席だけあって、全色の魔術が使えるとのことだった。ならば、後は練習あるのみ!
◇
「これ、意外と難しいわね」
アルカネットさんは、長い髪をポニーテールに結び、首筋の汗を白いハンカチで拭った。
あれから三時間。アルカネットさんはずっと白魔術の練習に取り組んでいる。でも、一向に白っぽい光を出すことはできない。火の赤が強すぎたり、水の青が強かったりと、どうしてもどれかの色に偏ってしまうのだ。
「エース、あなたは息をするようにできるのに、どうしてアタクシにはできないのかしら?」
そんなこと尋ねられましても。反対に、私は白の魔術しか使えないから、全色の魔術を単体でも使えるアルカネットさんのことは羨ましい。
「あなたはどれぐらい特訓して出せるようになったの? コツは何もないの?」
アルカネットさんも疲れが出てきたらしく、いつもの気取ったような雰囲気は消えて、必死さだけが残っている。
「私は、初めから白い光が出せましたので、特に練習はしていません。だからコツも分からなくて……すみません」
私が肩をすくめると、アルカネットさんは少し笑ってみせた。
「特別な練習法があるんじゃないかと疑って悪かったわね。だってあなたは、こちら側の人間ではないでしょう?」
そんなことを思われていたのか。私はアルカネットさんに教えると決めた以上、ちゃんと覚えてもらいたいと思っている。むしろ、白の魔術がベテラン魔術師でもなかなか使えないという事実に驚いて、こんなはずではなかったと戸惑っているぐらいだ。でも、思い返せばあのミントさんですら使えない魔術なのだもの。アルカネットさんが使えなくてもおかしくないのかな?
「アルカネットさん、私は真剣に結界を伝授したいと思っています。あなたが覚えてくだされば、私の身の危険も変わってきますしね」
きっと貴族達も、本当の結界の使い手はアルカネットさんだと思い込んで、私の表舞台での結界使いとしての役割はおしまいになるはずだ。だから、人身御供みたいで悪いけれど、がんばって覚えてほしいというのが本音。それを話すと、アルカネットさんは思案顔になった。
「そううまくいくかしらね? あなた、あちこちでいろんなことしてるみたいじゃない?」
確かに。西部の街でダンジョンに結界かける時なんて、数え切れない程のギャラリーがいたような気がする。もしかして、もう手遅れ?
「大丈夫よ。これからはアタクシがトリカブート様の下、結界を使って国を豊かにしてみせるわ! と言いたいところだけれど、なかなかできないわねぇ」
ついに、アルカネットさんの手からは何の光も出なくなってしまった。所謂魔力切れというものかもしれない。どこかぐったりしているアルカネットさんを見ていたら、私はずっと気になっていたことを思い出してしまった。
「あの、アルカネットさん。アルカネットさんはなぜ、宰相の側近なんてしてるんですか? そんなことしなくても、十分な地位と、魔術という名の力がおありだと思います」
「いえ、一つ足りていないものがあったの。でも彼の側にいると、私は満たされるわ」
「それはいったい……」
「愛よ。愛と承認。彼は私が私であることを認めてくれている唯一の人。ちょっと昔話をしましょうか」
アルカネットさんは庭にあるテーブルセットに腰をかけると、いつの間にか置かれてあった湯気を立てるお茶を口に含んだ。
「私は元々魔術が大好きでね。でも戦闘するのは好きじゃない。だって、面倒くさいでしょう? だけど研究は好き。知らないことを解き明かす瞬間、たまらなく体が震えて、感動をするのよ」
私は静かに聞き入った。少し離れたところにいるラムズイヤーさんも、こちらに耳を傾けている。
「なのに、この歓喜を分かろうとする人は少ない。大抵が役に立たないお遊びだと言うのよね。けれど、トリカブート様は違った。私の一見遊びに見える魔術研究には様々な可能性が秘められているとおっしゃってくださったの。私はあの瞬間、世界が急に明るくなったように感じたわ」
「それで、魔術関連の相棒として、宰相と手を組むようになったんですね」
「相棒……良い言葉ね。本当にそうであれば良かったのだけれど、そんなポジションに立てる人間はこの世に存在しないわ。私はただ付き従うだけ。私を唯一肯定してくれる人を恋しく想い、全てを捧げるの。そこまでしても、私はあの姫には敵わないけどね」
「マリ姫様のことですか?」
アルカネットさんは微かに頷く。
「トリカブート様が変わられたのは、ご息女が亡くなられた時だったわ。すぐに彼の目にはマリ姫様しか映らなくなってしまった。彼女を亡くなったご自身の娘だと思いこんで、辛い時を乗り越えようとなさっていたのね。でもそれは一時的なものではなかった。私はそれが悲しくて、悲しくて。それで、私は女になることにしたのよ」
そんな経緯があったなんて、全く想像していなかった。改めてアルカネットさんを見る。骨格こそ男性のそれだが、今のアルカネットさんの纏う雰囲気は恋する乙女だ。
「私が女になって、あんな生娘にはできないような誘惑をすればいいなんて……本当に浅はかだったわ。なんであんなことを考えたのでしょうね。今となっては馬鹿らしくもあるのだけれど、存外このスタイル、この生き方も面白いからずっとこのままなのよ」
「お美しいと思います」
気づいたら、私は素直にアルカネットさんにそう言っていた。アルカネットさんは少し驚いた顔をしている。
「ありがとう。あなたも、私を肯定してくれるのね。トリカブート様も、私の姿がどうなろうと以前と変わらず接してくださる。彼はこの世で一番信頼がおける人だわ。そして、愛すべき馬鹿なのよ」
馬鹿? アルカネットさんにしては意外な言葉だ。
「だって、そうでしょ? 自分の娘ぐらいの少女に恋してるのよ。彼は、彼女をずっと手元に置いておきたいの。ましてや、世界樹へ送り出すなんてもってのほか。そのためには、まずハーヴィー王国の世界樹信仰の源となっている王家を潰さなければならない。そして、自らが王になり、ずっと城という籠の中にあの少女を囲って暮らしたいのね」
「何なんですか、それ……まるでマリ姫様が人形扱いですし、それでは世界樹が死に、世界が滅びます」
「その通り。トリカブート様程のお方がそれを分からないわけではないはず。でも、自分のしたいことをなさっているということは、それ相応の覚悟がおありなのでしょう」
「自分の独りよがりな愛のせいで世界を滅ぼす罪を背負う覚悟のことですか? そんなもの、覚悟なんて呼びません! 単なる非道です!」
アルカネットさんは、大きく頷く。
「本当にその通りなのよ。彼は私にも聞く耳はもたない。それなのに、私はあんな馬鹿な人を愛しているの。同性にも関わらずね」
「アルカネットさん……」
あまりに苦しそうなお顔なものだから、私の言葉は続かない。こんな立派な大人で、美人で、役職もあって、実力があっても足りないものがある。そして、それは一生手に入らないかもしれない。考えると、私まで辛くなってきた。
「私、ここまで結界の練習をがんばるのには理由が二つあるわ。一つは、トリカブート様のご指示は私にとって絶対だから。非道であろうと、彼のためならば何でもする。もう一つは、何かの時に彼を守る方法を一つでも多く知りたいからよ」
なんだか、アルカネットさんが敵だとかどうでもよくなってきてしまった。どうしても応援したくなってしまう、そんな魅力があるのだ。
「アルカネットさん。これは魔術の基本中の基本だと思うんですけど、結界も思いの強さに比例して強くなります。アルカネットさんの信念は、きっと力強い結界を形作ると私は信じています」
「ありがとう。結界の使い手があなたでよかったわ」
私とアルカネットさんは握手を交わした。
「あなたも、死なせたくない人になりそうね。なかなかいい子じゃないの」
「私、好きな人がいるので間に合ってます」
ここでラムズイヤーさんが咳払いをする。何か変なこと言ったかな?
「アルカネットさん、今日はここまでにしましょう? 明日からは毎日少しでもいいので、宰相のことを考えながら白の光を出せるように練習してみてください」
「ありがとう。そうしてみるわ」
「いいのよ。なかなか時間がとれなかったのは、アタクシ側の都合だし」
それもそうか。ついつい下手に出てしまうのは日本人の性である。
さてさて、ついにアルカネットさんへの勉強会が始まりましたよ! アルカネットさんは魔術師団の団長兼主席なので、取り巻きとか護衛をづらづらと連れてくるのかと思いきや、お一人で現れた。場所はアルカネットさんが住んでいる研究塔のお庭。私が一人で向かおうとすると、さりげなくラムズイヤーさんが付き添ってくれて、一緒にここまで来てしまった。
そうそう。ラムズイヤーさんって、クレソンさんの王子時代からの側近みたいなんだよね。道理でこれまでも私のことを気にかけてくれていたわけだ。今日もきっと、クレソンさんから指示されて仕方なく私のお守りをしているのだろう。振り回してごめんなさい。
てことで、早速結界魔術の伝授をします。ここは、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という名言を信じて、まずはお手本を見せましょう。
「アルカネットさん。まずは白の色のイメージを頭の中で強く思い描いて、手に魔力をギュギュッと集中させます。そして、こんな感じてパーンっと放ちます。はい、完成です」
「あなた、教えるのを下手ってよく言われるでしょう?」
え、そんなに下手でした? 元々人に物を教える機会なんてこれまでなかったので、ノウハウなんて持っていないのだ。
「ともかく、白の魔術を使えるようにならなければ結界はできませんので、まずは白い光を出せるように練習しましょう!」
確かミントさんが、白の魔術は、全ての色の魔術を同じ出力で出した時に実現するのだと話していたと思う。私は完全に無意識なので、各色のことなんて何も気にしていないのだけれどね。
これを説明すると、アルカネットさんはさすが主席だけあって、全色の魔術が使えるとのことだった。ならば、後は練習あるのみ!
◇
「これ、意外と難しいわね」
アルカネットさんは、長い髪をポニーテールに結び、首筋の汗を白いハンカチで拭った。
あれから三時間。アルカネットさんはずっと白魔術の練習に取り組んでいる。でも、一向に白っぽい光を出すことはできない。火の赤が強すぎたり、水の青が強かったりと、どうしてもどれかの色に偏ってしまうのだ。
「エース、あなたは息をするようにできるのに、どうしてアタクシにはできないのかしら?」
そんなこと尋ねられましても。反対に、私は白の魔術しか使えないから、全色の魔術を単体でも使えるアルカネットさんのことは羨ましい。
「あなたはどれぐらい特訓して出せるようになったの? コツは何もないの?」
アルカネットさんも疲れが出てきたらしく、いつもの気取ったような雰囲気は消えて、必死さだけが残っている。
「私は、初めから白い光が出せましたので、特に練習はしていません。だからコツも分からなくて……すみません」
私が肩をすくめると、アルカネットさんは少し笑ってみせた。
「特別な練習法があるんじゃないかと疑って悪かったわね。だってあなたは、こちら側の人間ではないでしょう?」
そんなことを思われていたのか。私はアルカネットさんに教えると決めた以上、ちゃんと覚えてもらいたいと思っている。むしろ、白の魔術がベテラン魔術師でもなかなか使えないという事実に驚いて、こんなはずではなかったと戸惑っているぐらいだ。でも、思い返せばあのミントさんですら使えない魔術なのだもの。アルカネットさんが使えなくてもおかしくないのかな?
「アルカネットさん、私は真剣に結界を伝授したいと思っています。あなたが覚えてくだされば、私の身の危険も変わってきますしね」
きっと貴族達も、本当の結界の使い手はアルカネットさんだと思い込んで、私の表舞台での結界使いとしての役割はおしまいになるはずだ。だから、人身御供みたいで悪いけれど、がんばって覚えてほしいというのが本音。それを話すと、アルカネットさんは思案顔になった。
「そううまくいくかしらね? あなた、あちこちでいろんなことしてるみたいじゃない?」
確かに。西部の街でダンジョンに結界かける時なんて、数え切れない程のギャラリーがいたような気がする。もしかして、もう手遅れ?
「大丈夫よ。これからはアタクシがトリカブート様の下、結界を使って国を豊かにしてみせるわ! と言いたいところだけれど、なかなかできないわねぇ」
ついに、アルカネットさんの手からは何の光も出なくなってしまった。所謂魔力切れというものかもしれない。どこかぐったりしているアルカネットさんを見ていたら、私はずっと気になっていたことを思い出してしまった。
「あの、アルカネットさん。アルカネットさんはなぜ、宰相の側近なんてしてるんですか? そんなことしなくても、十分な地位と、魔術という名の力がおありだと思います」
「いえ、一つ足りていないものがあったの。でも彼の側にいると、私は満たされるわ」
「それはいったい……」
「愛よ。愛と承認。彼は私が私であることを認めてくれている唯一の人。ちょっと昔話をしましょうか」
アルカネットさんは庭にあるテーブルセットに腰をかけると、いつの間にか置かれてあった湯気を立てるお茶を口に含んだ。
「私は元々魔術が大好きでね。でも戦闘するのは好きじゃない。だって、面倒くさいでしょう? だけど研究は好き。知らないことを解き明かす瞬間、たまらなく体が震えて、感動をするのよ」
私は静かに聞き入った。少し離れたところにいるラムズイヤーさんも、こちらに耳を傾けている。
「なのに、この歓喜を分かろうとする人は少ない。大抵が役に立たないお遊びだと言うのよね。けれど、トリカブート様は違った。私の一見遊びに見える魔術研究には様々な可能性が秘められているとおっしゃってくださったの。私はあの瞬間、世界が急に明るくなったように感じたわ」
「それで、魔術関連の相棒として、宰相と手を組むようになったんですね」
「相棒……良い言葉ね。本当にそうであれば良かったのだけれど、そんなポジションに立てる人間はこの世に存在しないわ。私はただ付き従うだけ。私を唯一肯定してくれる人を恋しく想い、全てを捧げるの。そこまでしても、私はあの姫には敵わないけどね」
「マリ姫様のことですか?」
アルカネットさんは微かに頷く。
「トリカブート様が変わられたのは、ご息女が亡くなられた時だったわ。すぐに彼の目にはマリ姫様しか映らなくなってしまった。彼女を亡くなったご自身の娘だと思いこんで、辛い時を乗り越えようとなさっていたのね。でもそれは一時的なものではなかった。私はそれが悲しくて、悲しくて。それで、私は女になることにしたのよ」
そんな経緯があったなんて、全く想像していなかった。改めてアルカネットさんを見る。骨格こそ男性のそれだが、今のアルカネットさんの纏う雰囲気は恋する乙女だ。
「私が女になって、あんな生娘にはできないような誘惑をすればいいなんて……本当に浅はかだったわ。なんであんなことを考えたのでしょうね。今となっては馬鹿らしくもあるのだけれど、存外このスタイル、この生き方も面白いからずっとこのままなのよ」
「お美しいと思います」
気づいたら、私は素直にアルカネットさんにそう言っていた。アルカネットさんは少し驚いた顔をしている。
「ありがとう。あなたも、私を肯定してくれるのね。トリカブート様も、私の姿がどうなろうと以前と変わらず接してくださる。彼はこの世で一番信頼がおける人だわ。そして、愛すべき馬鹿なのよ」
馬鹿? アルカネットさんにしては意外な言葉だ。
「だって、そうでしょ? 自分の娘ぐらいの少女に恋してるのよ。彼は、彼女をずっと手元に置いておきたいの。ましてや、世界樹へ送り出すなんてもってのほか。そのためには、まずハーヴィー王国の世界樹信仰の源となっている王家を潰さなければならない。そして、自らが王になり、ずっと城という籠の中にあの少女を囲って暮らしたいのね」
「何なんですか、それ……まるでマリ姫様が人形扱いですし、それでは世界樹が死に、世界が滅びます」
「その通り。トリカブート様程のお方がそれを分からないわけではないはず。でも、自分のしたいことをなさっているということは、それ相応の覚悟がおありなのでしょう」
「自分の独りよがりな愛のせいで世界を滅ぼす罪を背負う覚悟のことですか? そんなもの、覚悟なんて呼びません! 単なる非道です!」
アルカネットさんは、大きく頷く。
「本当にその通りなのよ。彼は私にも聞く耳はもたない。それなのに、私はあんな馬鹿な人を愛しているの。同性にも関わらずね」
「アルカネットさん……」
あまりに苦しそうなお顔なものだから、私の言葉は続かない。こんな立派な大人で、美人で、役職もあって、実力があっても足りないものがある。そして、それは一生手に入らないかもしれない。考えると、私まで辛くなってきた。
「私、ここまで結界の練習をがんばるのには理由が二つあるわ。一つは、トリカブート様のご指示は私にとって絶対だから。非道であろうと、彼のためならば何でもする。もう一つは、何かの時に彼を守る方法を一つでも多く知りたいからよ」
なんだか、アルカネットさんが敵だとかどうでもよくなってきてしまった。どうしても応援したくなってしまう、そんな魅力があるのだ。
「アルカネットさん。これは魔術の基本中の基本だと思うんですけど、結界も思いの強さに比例して強くなります。アルカネットさんの信念は、きっと力強い結界を形作ると私は信じています」
「ありがとう。結界の使い手があなたでよかったわ」
私とアルカネットさんは握手を交わした。
「あなたも、死なせたくない人になりそうね。なかなかいい子じゃないの」
「私、好きな人がいるので間に合ってます」
ここでラムズイヤーさんが咳払いをする。何か変なこと言ったかな?
「アルカネットさん、今日はここまでにしましょう? 明日からは毎日少しでもいいので、宰相のことを考えながら白の光を出せるように練習してみてください」
「ありがとう。そうしてみるわ」
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