25 / 61
25・歴史の味
しおりを挟む
本来は勤務時間中の今、こんなご飯休憩をとることなんて許されない。でも空腹に勝てなかった。期待感と共に、弁当の蓋をそっと外してみる。
「わぁ!」
俵型の小さなおにぎりが敷き詰められていて、その隣には梅干とお漬物。シャキシャキレタスの上にナポリタン、ハンバーグ、エビフライが乗っていて、タルタルソースも付属についている。筑前煮とアジの南蛮漬けがその隣に続き、弁当箱の端の方にはパイナップルとチェリーが並んでいた。私が好きな高野豆腐まで入っているし、なかなかに盛りだくさんのお弁当だ。
オカズやご飯を順々に口へ運んでいく。まだ箱に詰められたばかりなのか、どれもまだ温かい。
「……美味しい」
弁当を含め外食はどうしても濃口のものが多い。その方が美味しく感じられたり、日持ちしたりするのかもしれないけれど、既にアラサーに突入した私はこのように素材の旨みを活かした品の良い薄口の方が美味しく感じられるのだ。
小百合の味付けも優しさのある細やかなものだけれど、さすがはプロ。この弁当の味はどれも繊細だ。まさかこんなレベルのものをこのタイミングで食べられるだなんて思ってもみなかったので、驚いてしまった。
高野豆腐を口に放り込むと、しゅわっとだし汁が口内を覆い尽くす。安っぽい人工的な風味はしない。ザ・和のテイストが日本舞踊のごとく粋な舞を舞っている。
無我夢中で箸を進めていると、あっという間に食べ終わってしまった。正直ちょっと、食べすぎたかもしれない。お腹がはち切れんばかりにいっぱいだ。
「ご馳走様でした」
手をきっちり合わせてから箱を閉じると、ふと視界の端に影が差した。顔をあげると、先ほどの店のご主人が立っているではないか。
「お口に合わなかったかな? 何度か声かけたんだけど、返事がなかったもんで」
「あ……すみません……美味しくてつい、夢中になっていました」
先程のお腹の音と言い、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。ご主人は豪快に笑っている。
いけない、いけない。すっかり本来の目的を忘れるところだった。実は私、弁当の値引き交渉に来たのだ。
現状、一食九百三十円。ちょっと高すぎるから買い叩こうと思っていたけれど、こんな美味しいのを食べさせれたらついつい納得してしまう。きっと、かなり手の込んだ調理がなされているかにちがいない。正直、スタッフ弁当にするにはもったいないぐらいだ。だからと言って、今から別のところを新規開拓して交渉するのももったいない気がする。せっかく出会ったこの味とさよならするなんて寂しすぎるだろう。
だけど、経費も抑えたい。
私は、背筋を伸ばして立ち上がった。
「早速本題に入らせていただきます。実は今日、お願いしていたお弁当の価格の交渉のために伺いました。でも、このお値段設定の意味が分かってしまって……」
勢いだけで切り出したものの、どうやって交渉すればいいのか考えがまとまらない。言葉が途切れてしまった。
「もっと、このお味を広められたらいいのにな」
「そんなに気に入ってくれたのかい。このお店はね……」
御主人によると、このお店は今年で創業七十一年になる老舗で、彼自体はその三代目。現代は娘さんが四代目になるべく修行中らしい。そういえば先程から厨房内で一際忙しそうにしている女性がいる。その隣にいる若い娘さんは五代目候補かもしれない。
初代は美味しくて日持ちがするお弁当を目指し、二代目は品の良い優しさのあるお味の弁当を目指した。そして三代目の御主人はこれまで和食一辺倒だったお品書きを大改革。まざまなジャンルに手を広げて、総合的にこのお店伝統の『味』や『品』を表現し、移り変わる時代の流れや人々の好みに寄り添えるような『お弁当』を超えた『お料理』を目指しているそうだ。
七十一年の間には倒産の危機は何度も訪れたし、先代との方針の違いで勘当されそうになったり、他店との競走の中で心が折れそうになって、料理人自体を辞めようかと考えたこともあるとのこと。信頼していた同僚が突然辞めたばかりか、周りのスタッフを引き抜いて新たな店を立ち上げたということもあったとか。そんな厳しい環境の中で守り続けてきた信念や、料理に対する拘りの強さという『伝統』が、私が口にしたお弁当の中のお料理の数々に染み込んでいる。口の中に広がったのは単なる味ではない。店の歴史という奥深さ、そして突然現れた私のような者にまでお料理をふるまってくれる御主人の懐の深さがすっと身体に染み渡り、この乾ききった心を潤して満たしてくれたのだ。
梅蜜機械は創業三十周年を迎える。この店が到達した域に至るまでは、まだまだ時間がかかるかもしれないが、それでも三十年だ。つまり、私が生まれる前からこの会社は存在していたということ。これって、凄いことじゃないだろうか。
その時、私の中で大きな爆発が起こった。まるで宇宙に新たな星が誕生したかのように、真っ暗な闇の中で強い七色の光と粉塵が吹き上がり、渦を巻いてあらゆる可能性や全ての理の神秘を引き寄せるかのような神聖な『始まり』。
あ、これだ。
そうだ、これがいい。
社内デザイナーの私だからできること。
これしかない!
「紀川さん、大丈夫? 弁当に変なものは入っていないはずなんだけど」
「あ、はい、大丈夫です。とて素敵なお話を伺うことができたお陰で、ちょっと良いアイデアを思いついたんです!」
「私も、ぼーっとしてる君が正気に戻るまでに良いことを思いついたよ」
「何ですか?」
「弁当の価格の話だよ。うちは、質を落とすことはできない。ただ、量を調節することはできる。うちの弁当は量が多いのか、よく食べきれない人が多いと聞くんだ。特に梅蜜さんが今回やるような大きな行事ではスタッフさん達も忙しくて、ゆっくり食べていられないんたろうね。そこで相談なんだけど、オードブル形式にして、さらに全体量も少し減らすっていうのはどうかな?それだと、弁当に換算したら一食あたり百五十円分は値引きできるよ」
オードブル?! 言われてみれば、確かにその手は有効だ。結局会場は貸し切ることにしたので、スタッフ控え室に充てることができる広い会議室はたくさん余っている。オードブルを並べることはできるだろう。
元々弁当に関しては、私は高山課長と竹村係長から一任されている。一応会社にいる二人へ電話で最終確認してから、御主人に正式な返事を伝えよう。
そして、帰社したら竹村係長にこの産まれたばかりの私の使命……アイデアをぶつけてみよう!
「わぁ!」
俵型の小さなおにぎりが敷き詰められていて、その隣には梅干とお漬物。シャキシャキレタスの上にナポリタン、ハンバーグ、エビフライが乗っていて、タルタルソースも付属についている。筑前煮とアジの南蛮漬けがその隣に続き、弁当箱の端の方にはパイナップルとチェリーが並んでいた。私が好きな高野豆腐まで入っているし、なかなかに盛りだくさんのお弁当だ。
オカズやご飯を順々に口へ運んでいく。まだ箱に詰められたばかりなのか、どれもまだ温かい。
「……美味しい」
弁当を含め外食はどうしても濃口のものが多い。その方が美味しく感じられたり、日持ちしたりするのかもしれないけれど、既にアラサーに突入した私はこのように素材の旨みを活かした品の良い薄口の方が美味しく感じられるのだ。
小百合の味付けも優しさのある細やかなものだけれど、さすがはプロ。この弁当の味はどれも繊細だ。まさかこんなレベルのものをこのタイミングで食べられるだなんて思ってもみなかったので、驚いてしまった。
高野豆腐を口に放り込むと、しゅわっとだし汁が口内を覆い尽くす。安っぽい人工的な風味はしない。ザ・和のテイストが日本舞踊のごとく粋な舞を舞っている。
無我夢中で箸を進めていると、あっという間に食べ終わってしまった。正直ちょっと、食べすぎたかもしれない。お腹がはち切れんばかりにいっぱいだ。
「ご馳走様でした」
手をきっちり合わせてから箱を閉じると、ふと視界の端に影が差した。顔をあげると、先ほどの店のご主人が立っているではないか。
「お口に合わなかったかな? 何度か声かけたんだけど、返事がなかったもんで」
「あ……すみません……美味しくてつい、夢中になっていました」
先程のお腹の音と言い、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。ご主人は豪快に笑っている。
いけない、いけない。すっかり本来の目的を忘れるところだった。実は私、弁当の値引き交渉に来たのだ。
現状、一食九百三十円。ちょっと高すぎるから買い叩こうと思っていたけれど、こんな美味しいのを食べさせれたらついつい納得してしまう。きっと、かなり手の込んだ調理がなされているかにちがいない。正直、スタッフ弁当にするにはもったいないぐらいだ。だからと言って、今から別のところを新規開拓して交渉するのももったいない気がする。せっかく出会ったこの味とさよならするなんて寂しすぎるだろう。
だけど、経費も抑えたい。
私は、背筋を伸ばして立ち上がった。
「早速本題に入らせていただきます。実は今日、お願いしていたお弁当の価格の交渉のために伺いました。でも、このお値段設定の意味が分かってしまって……」
勢いだけで切り出したものの、どうやって交渉すればいいのか考えがまとまらない。言葉が途切れてしまった。
「もっと、このお味を広められたらいいのにな」
「そんなに気に入ってくれたのかい。このお店はね……」
御主人によると、このお店は今年で創業七十一年になる老舗で、彼自体はその三代目。現代は娘さんが四代目になるべく修行中らしい。そういえば先程から厨房内で一際忙しそうにしている女性がいる。その隣にいる若い娘さんは五代目候補かもしれない。
初代は美味しくて日持ちがするお弁当を目指し、二代目は品の良い優しさのあるお味の弁当を目指した。そして三代目の御主人はこれまで和食一辺倒だったお品書きを大改革。まざまなジャンルに手を広げて、総合的にこのお店伝統の『味』や『品』を表現し、移り変わる時代の流れや人々の好みに寄り添えるような『お弁当』を超えた『お料理』を目指しているそうだ。
七十一年の間には倒産の危機は何度も訪れたし、先代との方針の違いで勘当されそうになったり、他店との競走の中で心が折れそうになって、料理人自体を辞めようかと考えたこともあるとのこと。信頼していた同僚が突然辞めたばかりか、周りのスタッフを引き抜いて新たな店を立ち上げたということもあったとか。そんな厳しい環境の中で守り続けてきた信念や、料理に対する拘りの強さという『伝統』が、私が口にしたお弁当の中のお料理の数々に染み込んでいる。口の中に広がったのは単なる味ではない。店の歴史という奥深さ、そして突然現れた私のような者にまでお料理をふるまってくれる御主人の懐の深さがすっと身体に染み渡り、この乾ききった心を潤して満たしてくれたのだ。
梅蜜機械は創業三十周年を迎える。この店が到達した域に至るまでは、まだまだ時間がかかるかもしれないが、それでも三十年だ。つまり、私が生まれる前からこの会社は存在していたということ。これって、凄いことじゃないだろうか。
その時、私の中で大きな爆発が起こった。まるで宇宙に新たな星が誕生したかのように、真っ暗な闇の中で強い七色の光と粉塵が吹き上がり、渦を巻いてあらゆる可能性や全ての理の神秘を引き寄せるかのような神聖な『始まり』。
あ、これだ。
そうだ、これがいい。
社内デザイナーの私だからできること。
これしかない!
「紀川さん、大丈夫? 弁当に変なものは入っていないはずなんだけど」
「あ、はい、大丈夫です。とて素敵なお話を伺うことができたお陰で、ちょっと良いアイデアを思いついたんです!」
「私も、ぼーっとしてる君が正気に戻るまでに良いことを思いついたよ」
「何ですか?」
「弁当の価格の話だよ。うちは、質を落とすことはできない。ただ、量を調節することはできる。うちの弁当は量が多いのか、よく食べきれない人が多いと聞くんだ。特に梅蜜さんが今回やるような大きな行事ではスタッフさん達も忙しくて、ゆっくり食べていられないんたろうね。そこで相談なんだけど、オードブル形式にして、さらに全体量も少し減らすっていうのはどうかな?それだと、弁当に換算したら一食あたり百五十円分は値引きできるよ」
オードブル?! 言われてみれば、確かにその手は有効だ。結局会場は貸し切ることにしたので、スタッフ控え室に充てることができる広い会議室はたくさん余っている。オードブルを並べることはできるだろう。
元々弁当に関しては、私は高山課長と竹村係長から一任されている。一応会社にいる二人へ電話で最終確認してから、御主人に正式な返事を伝えよう。
そして、帰社したら竹村係長にこの産まれたばかりの私の使命……アイデアをぶつけてみよう!
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
化想操術師の日常
茶野森かのこ
キャラ文芸
たった一つの線で、世界が変わる。
化想操術師という仕事がある。
一般的には知られていないが、化想は誰にでも起きる可能性のある現象で、悲しみや苦しみが心に抱えきれなくなった時、人は無意識の内に化想と呼ばれるものを体の外に生み出してしまう。それは、空間や物や生き物と、その人の心を占めるものである為、様々だ。
化想操術師とは、頭の中に思い描いたものを、その指先を通して、現実に生み出す事が出来る力を持つ人達の事。本来なら無意識でしか出せない化想を、意識的に操る事が出来た。
クズミ化想社は、そんな化想に苦しむ人々に寄り添い、救う仕事をしている。
社長である九頭見志乃歩は、自身も化想を扱いながら、化想患者限定でカウンセラーをしている。
社員は自身を含めて四名。
九頭見野雪という少年は、化想を生み出す能力に長けていた。志乃歩の養子に入っている。
常に無表情であるが、それは感情を失わせるような過去があったからだ。それでも、志乃歩との出会いによって、その心はいつも誰かに寄り添おうとしている、優しい少年だ。
他に、志乃歩の秘書でもある黒兎、口は悪いが料理の腕前はピカイチの姫子、野雪が生み出した巨大な犬の化想のシロ。彼らは、山の中にある洋館で、賑やかに共同生活を送っていた。
その洋館に、新たな住人が加わった。
記憶を失った少女、たま子。化想が扱える彼女は、記憶が戻るまでの間、野雪達と共に過ごす事となった。
だが、記憶を失くしたたま子には、ある目的があった。
たま子はクズミ化想社の一人として、志乃歩や野雪と共に、化想を出してしまった人々の様々な思いに触れていく。
壊れた友情で海に閉じこもる少年、自分への後悔に復讐に走る女性、絵を描く度に化想を出してしまう少年。
化想操術の古い歴史を持つ、阿木之亥という家の人々、重ねた野雪の過去、初めて出来た好きなもの、焦がれた自由、犠牲にしても守らなきゃいけないもの。
野雪とたま子、化想を取り巻く彼らのお話です。
少年、その愛 〜愛する男に斬られるのもまた甘美か?〜
西浦夕緋
キャラ文芸
15歳の少年篤弘はある日、夏朗と名乗る17歳の少年と出会う。
彼は篤弘の初恋の少女が入信を望み続けた宗教団体・李凰国(りおうこく)の男だった。
亡くなった少女の想いを受け継ぎ篤弘は李凰国に入信するが、そこは想像を絶する世界である。
罪人の公開処刑、抗争する新興宗教団体に属する少女の殺害、
そして十数年前に親元から拉致され李凰国に迎え入れられた少年少女達の運命。
「愛する男に斬られるのもまた甘美か?」
李凰国に正義は存在しない。それでも彼は李凰国を愛した。
「おまえの愛の中に散りゆくことができるのを嬉しく思う。」
李凰国に生きる少年少女達の魂、信念、孤独、そして愛を描く。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
春風さんからの最後の手紙
平本りこ
キャラ文芸
初夏のある日、僕の人生に「春風さん」が現れた。
とある証券会社の新入社員だった僕は、成果が上がらずに打ちひしがれて、無様にも公園で泣いていた。春風さんはそんな僕を哀れんで、最初のお客様になってくれたのだ。
春風さんは僕を救ってくれた恩人だった。どこか父にも似た彼は、様々なことを教えてくれて、僕の人生は雪解けを迎えたかのようだった。
だけどあの日。いけないことだと分かっていながらも、営業成績のため、春風さんに嘘を吐いてしまった夜。春風さんとの関係は、無邪気なだけのものではなくなってしまう。
風のように突然現れて、一瞬で消えてしまった春風さん。
彼が僕に伝えたかったこととは……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン政治家・山下泉はコメントを控えたい
どっぐす
キャラ文芸
「コメントは控えさせていただきます」を言ってみたいがために政治家になった男・山下泉。
記者に追われ満を持してコメントを控えるも、事態は収拾がつかなくなっていく。
◆登場人物
・山下泉 若手イケメン政治家。コメントを控えるために政治家になった。
・佐藤亀男 山下の部活の後輩。無職だし暇でしょ?と山下に言われ第一秘書に任命される。
・女性記者 地元紙の若い記者。先頭に立って山下にコメントを求める。
百合系サキュバス達に一目惚れされた
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる