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雪と電話と平成と
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うちの電話は廊下にある。一月ともなれば、家の中でも指がかじかむものだ。震える指を黒電話の丸い穴に差し入れて、ゆっくりとダイヤルを回す。右端まできて手を離すと、シャッと大きな音を立てながら勢いよく文字盤が元の位置に戻っていく。俺は小さく舌打ちをした。
うちは六人家族だ。じーちゃん、ばーちゃん、おかん、おとん、ねーちゃん、そして俺。他の家族には気づかれないように、こっそりと電話したいのに、この黒電話というポンコツは人の気も知らないでしっかりとその存在を主張するものだから、ほら。ばーちゃんが襖を開けて顔を出してきたよ。
「大志、どこに電話するん?」
「どこでもえぇやろ?」
桜雪の家に電話するのは、これが初めてではない。俺たちは所謂幼馴染だった。桜雪が隣の県に引っ越したのは二年前の春。彼女はお受験としていうものをして、けっこう有名な中高一貫校に入った。女子校だ。この辺りから通学するにはちょっと遠いので、教育熱心な桜雪のママはすぐに引っ越しを決めてしまった。
そうして俺と桜雪は、離れ離れになってしまった。
あんなに近くにいたのに。
幼い頃から兄弟みたいにして育った。毎日小学校までの長い道のりを歩いて通学したし、帰ってきたら俺んちのちゃぶ台で宿題をした。神社の木に登って蝉取りをした時は、神主さんに叱られるのも一緒だった。そうだ、風呂にだって入ったこともある。
ある日、近所で遊んでいてお互い泥んこになった時、桜雪が「ママに怒られる」と言って泣いた。そしたら、うちのおかんが「じゃ、うちで綺麗にしていったらえぇわ」と俺と桜雪を風呂場に連行したのだ。
湯船に浸かる桜雪は、とても綺麗だった。おとんがいつも言ってる女の色気とは、きっとこれのことだと思った。いつもは服に隠れて見えないところの肌は、水に入るとより一層白く光る。温かなお湯に和んで、顔を赤らめる桜雪は、とにかく可愛かった。思わず手を伸ばして、そのほっぺを摘む。すごく柔らかかった。
後日、「また一緒に入ろうな!」と言ったら「たーくんのエッチ!」と叫んで、それから二、三日は口をきいてくれなかったっけ。桜雪はいつも俺のことを大志と呼ぶのに、ふとした時に幼稚園の頃みたいに戻ってしまうのだ。
そんなこんなもありながら、俺は着実に桜雪のことが好きになっていった。学校の誰かに桜雪が取られたらどうしようって心配していたけれど、俺達は家が隣同士だ。この二軒の間には誰も入り込めない。と思っていたのに。
六桁のダイヤルを回し終えると、呼出音に切り替わる。それが途切れたのは五コール目だった。
「はい、川本です」
電話の向こうから聞こえてきたのは、大変聞き覚えのある男の声。桜雪のにーちゃんだった。最悪。
「あの、佐々木です。すみませんが桜雪さん、いますか?」
「性懲りもなくかけてきたんか。お前にうちの桜雪はやらんからな!」
――ガチャン
電話は切れた。門前払いだった。深いため息が出る。
でも、電話が切れる直前に、桜雪が怒っているような声が一瞬聞こえたので、とりあえずそれで良しとする。
◇
桜雪からの電話がかかってきたのは、翌日の夜だった。おかんがずっと廊下で喋っている声がしていたので、誰と話しているのかと思えばこれだ。さっさと取り次いでくれればいいものを。
「大志、しっかりやりな」
おかんは、俺の肩を軽く叩いて受話器を寄越す。おかんは、俺が桜雪に伝えたい用件を知っているのだ。悔しいことに。
「あ、桜雪?」
「大志くん? 昨日はまたお兄ちゃんがごめんね」
「ううん、いいよ。いつものことやし」
電話の向こうの桜雪がクスクス笑う。なんだかんだで、桜雪は兄貴が大好きなのだ。本当は、○んたまもげろとか、頭ハゲろとか暴言を吐きたいところだけれど、桜雪の手前そんなことを言って機嫌を損ねたくは無い。
何しろ今夜は一ヶ月ぶりの電話で、俺は桜雪にお願いしたいことがあるのだから。
「あ、あの、桜雪」
「なあに?」
「次の日曜、空いてる?」
「うん、たぶん。でもママに聞かないと」
だよな。桜雪ん家は、ママが最大権力を持っているのだ。俺の前に立ち塞がる壁はいくつもある。
「俺、遠征でそっちに行くんだ。そっちの中学と交流試合することになってさ」
「あ、バスケの試合?」
「うん。市立体育館、朝十時。出てこられへん?」
「うーん、行けるかなぁ」
幸い、塾の予定は入っていなかったようだ。でも、きっと桜雪のママは「女の子は身体を冷やしちゃいけないとか」いろいろ難癖をつけて、きっと桜雪を家から出さないんだ。
「何とか、ならへん? 俺は」
会いたいって言いたいけれど、そんな女々しいことをこちらから言えるわけもなく。
「俺、今回レギュラーになったんだ」
「すごい! たーくん、がんばったんだね!」
ほら。桜雪はテンションが上がると呼び方が昔に戻る。俺は、暗い廊下で自分の頬が持ち上がり、一向に下がる気配が無いのを自覚した。
「桜雪が応援に来てくれたら、すっげぇ頑張れると思う」
桜雪は何と返事しようか迷っているようだった。
「絶対、とは言えないよ? でも私、大志くんに会いたい。あ、ごめん! お兄ちゃん帰ってきた。じゃ、またね!」
電話からは、ツーツーという機械音が耳元で響いていた。声を交わしたのはほんの一、二分だ。それでもすっごくすっごく幸せだった。
俺は電話台の下で、左手の拳を強く握りしめる。その腕には、昨年の夏、こちらへ遊びに来た桜雪から貰ったリストバンドがあった。俺のイニシャルT・Sと刺繍されている。一番の宝物。
桜雪、俺も会いたい。
居間に戻って炬燵に入る。みかんの皮を剥きながら桜雪のことばかり考えていたら、周りの音が全く耳に届いてこなかった。だから、おとんが見ているテレビの天気予報がとんでもないことを言っているのにも気づかなかったのだ。
◇
嘘だろ。雪? まじで?
試合当日の朝、温暖で有名なこの地域で雪がちらついていた。よーく見ても、それは霙ではなく、雪。空からはらはらと舞い降りると、足元のアスファルトに吸い込まれていく。でも車の上や道路沿いの植え込みの上に降り立ったそれらは消えずに残っている。ほとんど体験したことがない寒さに身震いした。
いつもなら、ガキみたいに舞い上がっていたと思う。でも今日は、試合に行くんだぞ。試合の日は晴天が一番って相場が決まってんだよ。ま、バスケは屋内なんだけどな。
朝も六時半から中学の校門前に集合すると、バスケ部全員がバスに乗り込む。中で先生からいろいろ説教臭い話があって、それを聞き流しながら外の景色がどんどん白くなっていくのを眺めていた。
◇
間もなく十時だ。こんなに緊張する試合は初めてだ。誰にも気づかれないように、観客席をくまなく見渡す。
桜雪は、いない。
いや、俺が見つけられなかっただけだ。こういう時の桜雪は、何かと理由をつけて、ママや兄貴の監視の目をかわし、うまくやっているにちがいない。昔から、けっこう要領良いところあったもんな。
もしくは、ちょっと遅れて来るのかもしれない。いつ桜雪がやってきてもいいように、俺は張り切っていいところ見せてやらないとな。ジャージを脱ぐと全身がブルリと震えた。
仲間と目配せしてコートの中に入る。体育館内の白い照明がいつも以上に眩しい。円陣を組む。よーし、今日は特に気合い入れて行くぞ!
俺は、事前に先生から支持されていたマークすべき相手チームの男達の顔を確認する。悪いが今日は勝たせてもらうからな。持ち場のあたりへ移動して、臨戦態勢に入る。
笛が鳴った。ジャンパーが舞ったボール目指して床を蹴る。
◇
「大志、行くぞー」
「もうちょっと嬉しそうな顔しろよ」
「あ、うん」
試合は、勝った。俺が打ったシュートも、何本も入った。絶好調すぎて、チームメイトからは「お前、ほんとに大志だよな?」って言われたぐらい。
でも、最後まで桜雪の姿は見あたらなかった。
片付けと着換えと挨拶と。いろいろ終わって体育館から出てきたら、辺り一面が銀世界。全てのものに等しく白い薄布団がかけられている。綺麗、だとは思う。
「今日は、今年一番の寒波が来てるんだってな」
友達の一人が、厚い雲で覆われた白い空を仰いで言った。
そうだ。これじゃ、桜雪だって試合見に来たくても無理だったかもしれないな。日頃雪に慣れていないこの土地では、電車とかも止まっているかもしれないし。
その時だ。
「おーい、全員集合!」
引率のバスケ部顧問である先生が大声をあげる。すぐに皆が集まった。
「今からバスに乗って、中で弁当食べながら帰る予定だったが、変更になった」
「なんでー?」
「何かあったんですか?」
「お腹空きましたー」
先生は、険しい顔をして皆を見回す。
「帰り道に通る予定だった山沿いの国道で、路線バスが雪で横転したらしい。怪我人もたくさん出たらしくて、救急車とパトカーがたくさん向かっていった。そういうこともあって、道路も封鎖されているんだ」
急に悪い予感が込みあげてくる。
また、雪が降り始めた。
鼻先に着陸したひとかたまりの雪はトゲトゲで、悪魔に見えた。
「だから今日は、ここで弁当食ってから電車で帰るぞ。少し遠回りになるが、ちゃんと先生についてくるように!」
「はい!」
たくさんの人が歩いて汚くなった灰色の雪の上を踏みしめる。ダウンジャケットの襟元の隙間から、また雪がひとひら滑り込んだ。その冷たさに、一層心が凍りつく。
弁当はあまり食べられなかった。いつも大食らいの俺があまり食べないものだから、先生から風邪かと心配されてしまった。そんなんじゃない。
たぶん、大丈夫だと思うんだ。きっと桜雪はママの包囲網をくぐり抜けることができなくて、今頃エアコンの暖房がきいたぬくぬくの家で、ホットミルクとか飲みながら勉強をしてるんだ。そうだ。桜雪は事故なんかに巻き込まれていない。桜雪は、元気なはず、だ。
早く、家に帰りたい。
桜雪に電話したい。
電車に乗ったら、隣に座った奴が耳にイヤホンをつけた。カセットテープをセットして、ご機嫌である。大音量で聞いているのか、音漏れが酷かった。ロック系のようだ。俺は今、そんな気分じゃない。ポケットに手を突っ込んで、目を閉じた。
◇
ほぼ、トンボ帰りだった。
俺の悪い予感というのは、昔からよく当たるのだ。
帰宅したら、オカンが血相を変えて俺の肩を乱暴に揺すった。
「あんた、桜雪ちゃん事故にあって入院したらしいで!」
雪はやみ始めたらしい。スノボー好きのおとんがいる関係で、うちの車はスキー場にでも行けるようなスタッドレスタイヤ。おかんはすぐに俺を後部座席に放り込むと、封鎖が解除された細い国道を通って桜雪の地元へ向かった。
病室のドアを開けたら、その瞬間に突き刺さる視線。物理的に痛かった。
「あなた、うちの桜雪に……! 桜雪には、ちゃんとした人とお付き合いして幸せになってもらうんですからね!」
俺が桜雪のママにも嫌われているのは、薄々知っていた。でも、ここまで面と向かって罵られたのは初めてだ。
俺は、なけなしのプライドで表情を変えないようにする。
確かに俺は、あまりちゃんとしていないかもしれない。テストだって平均点ぐらいしか取れないし、運動はけっこうできるけど、歌は音痴だし。行儀もあまり良くないのだって知ってる。でもな、桜雪の素顔を一番長く見てきたのは俺だと思うんだ。
桜雪のママとパパは共働きだ。本当に小さい頃から桜雪は、毎日夜になるまで俺の家にいた。夕食をうちで食べて帰ることなんて、いつものことで。初めは兄弟みたいだなと思ってた。本当の家族みたいだって。だけど、桜雪はある時から少し俺と距離をおくようになる。俺も、不用意に桜雪に触れることはしなくなる。たぶん、お互いに意識し始めたんだと、思う。
俺達は離れ離れになった。お互いにお互いの知らないことがいっぱい増えた。でも電話の声、久しぶりに会った時の笑顔は、全部ずっと変わらないもの。俺だけのものだ。
「ママ」
目の前のベッドの布団が持ち上がる。桜雪が起き上がったのだ。俺は、はっと息を呑む。桜雪は、また綺麗になっていた。顔のラインがすっとシャープになり、その大きな瞳は吸い込まれてしまいそう。
と同時に、彼女はたいそう怒っていた。
「ママは黙っといて。バスケの試合見に行きたかったんは私なん。別にたーくんは、絶対来てって言うたわけちゃうんやから。雪だって、誰のせいでもないんやで? 事故も、たーくんは全然関係ない」
「でも!」
「ママはちゃんと謝って。たーくんはちゃんとしてるもん!」
桜雪と桜雪ママが睨み合う。俺とおかんは顔を見合わせた。桜雪、ちょっと見ないうちに、すごく強くなっていた。
「そこまでにしなさい。他所様の前で喧嘩なんかするな。みっともない」
二人に割って入ったのは、桜雪のパパだ。インテリな雰囲気の人。いつもは穏やかな人なのに、珍しく声を荒らげていた。
「桜雪にとって、大志くんは特別なんだ。ずっと桜雪が寂しがってたの、お前も知ってるだろう」
桜雪ママが眉間に皺を寄せる。図星なので、うまく言い返せなくて困っているのだろう。
「大志くんは、僕たちの知らないところでずっと桜雪を守ってくれていた。それも長い間。僕たちが仕事に夢中になっている時、桜雪がひとりぼっちにならないようにって。それを完全に無視していいのだろうか」
桜雪パパがここまで理解してくれてるとは思ってなかった。おかんを見ると、ちょっと泣きそうになっていた。たぶんおかんにとって桜雪は、末娘みたいなものだったんだろうな。桜雪が引っ越して、あまり連絡も来なくなってショックを受けていたのは、おかんも同じなのだ。
病室内は静まり返っている。俺は本題を切り出した。
「桜雪、大丈夫?」
本当は桜雪の手を握りに行きたい。でも行けない。桜雪のベッドから、さらに三歩離れたところから、彼女の方をじっと見つめる。
「うん。身体を強く打ったから、念の為検査をしてもらっていたの。ママが大袈裟なものだから入院までしちゃったけれど、遅くとも明日には退院できると思うよ」
「良かった」
思わず脱力してしまって、その場に座り込む。
「大志くん」
桜雪がこちらに手を伸ばしていた。
「大志くん、こっち来て」
桜雪のママはつんっとしたままだったけれど、パパの方は大きく頷いてくれた。俺は桜雪のベッドの横に移動する。
「今日は、どうだった?」
「勝ったよ」
「良かったね。見たかったな」
「見られたかったな」
桜雪が、やっと笑った。
「また電話くれる?」
「うん、するよ。また桜雪のにーちゃんに取り次いでもらえないかもしれないけど」
そう言えば、今日はにーちゃん来てないみたいだな。桜雪の兄貴はけっこう歳が離れていて、もう大学生なのだ。
「ねぇ、大志くん。お願いがあるんだけど」
「何?」
「お兄ちゃんとバスケで勝負してくれない? 1on1。お兄ちゃんもさすがにバスケで負けたら大志くんとのこと認めてくれると思うの」
ま、にーちゃんから認められても、桜雪ママというラスボスは残ってるけどな。
「いいよ。そういや、桜雪のにーちゃんってバスケ経験あるんだっけ?」
「うん。地元の社会人チームに入ってて、今は十四連勝中らしいよ」
ん? ちょっと待てよ?
そうだ。俺が初めて「バスケってかっけーな!」と思ったのは、桜雪の兄貴が近所のコートでスリーポイントを決めてるのを見た時だった。てことは――。
「桜雪、これ、本気?」
道理で隣に立つ桜雪ママがニコニコしているわけだ。社会人と渡り合ってて、しかもかなりのベテランとか、勝ち目無くない? たぶん、俺はまだ成長期の途中だから、体格だって負けている。
「私、ちゃんと大志くんを応援するから!」
「あ、当たり前だ」
「ちゃんと勝ったら、ご褒美あげるからね!」
「お、おう」
ご褒美って、何だろうな。
キス? デート? それとも、もっといいこと?
俺、春には十五歳。思春期真っ只中なんだよ。
「大志、あんた、顔がだらしないよ」
おかんのツッコミで我に返った俺が、この勝負、本当に無謀であることを知るのは週明けの部活。桜雪のにーちゃんは、俺が思っていた以上にバスケでは有名な地元人だったのだ。
◇
結局俺が、にーちゃんに勝つことができたのはそれから四年後のこと。俺は大学生になり、ようやく晴れて桜雪の彼氏になることができた。
時は流れる。
世の中はデジタル化が進み、連絡手段もポケベル、ピッチ、ケータイ、さらにはスマホへと進化を遂げ、俺は誰かを介することなく桜雪と喋りたい放題になった。こんなことなら、電話のために桜雪のにーちゃんと勝負することなかったんじゃ、とも思うけど、今は俺の良い兄貴分でもあるので、終わりよければ全て良しということにしておこう。
いやいやいやいや、まだ終わってないぞ。最近、桜雪が俺の目の前でおもむろに結婚情報誌などを広げて読むことがある。それってつまり、そういうことなのか?
うん、分かってる。俺は諦めないぞ。
次はラスボス戦。今度はどんな勝負をすれば、認めてもらえるのだろうか。とりあえず、気合一つで挑んでみるか。
〈おまけ1〉
作者:結局、桜雪ちゃんからのご褒美って何だったの?
大志:うちの近所にある昔ながらの喫茶店で、メロンソーダとチョコレートパフェ。
二人:(暫し沈黙)
作者:ま、そんな時もあるよ。(大志の肩を叩いて慰める)
〈おまけ2〉
大志:(桜雪ママに向かって)娘さんをください!
桜雪パパ:普通、父親に向かって言うものじゃ。
大志:(赤面)
一同:(無言)
桜雪パパ:ほら、お前もいつまでも子供みたいに拗ねるな。
桜雪ママ:私だって、分かってるのよ。そう、あの雪の日。あの時ね、桜雪はすっかり本物の女の子になっているんだって気づいちゃったし、きっと大志くんと結ばれることになるんだろうなって、ちゃんと分かってしまったから……
桜雪:ママ……泣かないで。
桜雪ママ:大志くん、桜雪をよろしくね。
大志:はい! 必ず二人で幸せになります。
桜雪兄:おい、大志。やっぱり俺ともう一回勝負だ!
大志:(何だと? 攻略済みの中ボスが復活するとか聞いてない!)
うちは六人家族だ。じーちゃん、ばーちゃん、おかん、おとん、ねーちゃん、そして俺。他の家族には気づかれないように、こっそりと電話したいのに、この黒電話というポンコツは人の気も知らないでしっかりとその存在を主張するものだから、ほら。ばーちゃんが襖を開けて顔を出してきたよ。
「大志、どこに電話するん?」
「どこでもえぇやろ?」
桜雪の家に電話するのは、これが初めてではない。俺たちは所謂幼馴染だった。桜雪が隣の県に引っ越したのは二年前の春。彼女はお受験としていうものをして、けっこう有名な中高一貫校に入った。女子校だ。この辺りから通学するにはちょっと遠いので、教育熱心な桜雪のママはすぐに引っ越しを決めてしまった。
そうして俺と桜雪は、離れ離れになってしまった。
あんなに近くにいたのに。
幼い頃から兄弟みたいにして育った。毎日小学校までの長い道のりを歩いて通学したし、帰ってきたら俺んちのちゃぶ台で宿題をした。神社の木に登って蝉取りをした時は、神主さんに叱られるのも一緒だった。そうだ、風呂にだって入ったこともある。
ある日、近所で遊んでいてお互い泥んこになった時、桜雪が「ママに怒られる」と言って泣いた。そしたら、うちのおかんが「じゃ、うちで綺麗にしていったらえぇわ」と俺と桜雪を風呂場に連行したのだ。
湯船に浸かる桜雪は、とても綺麗だった。おとんがいつも言ってる女の色気とは、きっとこれのことだと思った。いつもは服に隠れて見えないところの肌は、水に入るとより一層白く光る。温かなお湯に和んで、顔を赤らめる桜雪は、とにかく可愛かった。思わず手を伸ばして、そのほっぺを摘む。すごく柔らかかった。
後日、「また一緒に入ろうな!」と言ったら「たーくんのエッチ!」と叫んで、それから二、三日は口をきいてくれなかったっけ。桜雪はいつも俺のことを大志と呼ぶのに、ふとした時に幼稚園の頃みたいに戻ってしまうのだ。
そんなこんなもありながら、俺は着実に桜雪のことが好きになっていった。学校の誰かに桜雪が取られたらどうしようって心配していたけれど、俺達は家が隣同士だ。この二軒の間には誰も入り込めない。と思っていたのに。
六桁のダイヤルを回し終えると、呼出音に切り替わる。それが途切れたのは五コール目だった。
「はい、川本です」
電話の向こうから聞こえてきたのは、大変聞き覚えのある男の声。桜雪のにーちゃんだった。最悪。
「あの、佐々木です。すみませんが桜雪さん、いますか?」
「性懲りもなくかけてきたんか。お前にうちの桜雪はやらんからな!」
――ガチャン
電話は切れた。門前払いだった。深いため息が出る。
でも、電話が切れる直前に、桜雪が怒っているような声が一瞬聞こえたので、とりあえずそれで良しとする。
◇
桜雪からの電話がかかってきたのは、翌日の夜だった。おかんがずっと廊下で喋っている声がしていたので、誰と話しているのかと思えばこれだ。さっさと取り次いでくれればいいものを。
「大志、しっかりやりな」
おかんは、俺の肩を軽く叩いて受話器を寄越す。おかんは、俺が桜雪に伝えたい用件を知っているのだ。悔しいことに。
「あ、桜雪?」
「大志くん? 昨日はまたお兄ちゃんがごめんね」
「ううん、いいよ。いつものことやし」
電話の向こうの桜雪がクスクス笑う。なんだかんだで、桜雪は兄貴が大好きなのだ。本当は、○んたまもげろとか、頭ハゲろとか暴言を吐きたいところだけれど、桜雪の手前そんなことを言って機嫌を損ねたくは無い。
何しろ今夜は一ヶ月ぶりの電話で、俺は桜雪にお願いしたいことがあるのだから。
「あ、あの、桜雪」
「なあに?」
「次の日曜、空いてる?」
「うん、たぶん。でもママに聞かないと」
だよな。桜雪ん家は、ママが最大権力を持っているのだ。俺の前に立ち塞がる壁はいくつもある。
「俺、遠征でそっちに行くんだ。そっちの中学と交流試合することになってさ」
「あ、バスケの試合?」
「うん。市立体育館、朝十時。出てこられへん?」
「うーん、行けるかなぁ」
幸い、塾の予定は入っていなかったようだ。でも、きっと桜雪のママは「女の子は身体を冷やしちゃいけないとか」いろいろ難癖をつけて、きっと桜雪を家から出さないんだ。
「何とか、ならへん? 俺は」
会いたいって言いたいけれど、そんな女々しいことをこちらから言えるわけもなく。
「俺、今回レギュラーになったんだ」
「すごい! たーくん、がんばったんだね!」
ほら。桜雪はテンションが上がると呼び方が昔に戻る。俺は、暗い廊下で自分の頬が持ち上がり、一向に下がる気配が無いのを自覚した。
「桜雪が応援に来てくれたら、すっげぇ頑張れると思う」
桜雪は何と返事しようか迷っているようだった。
「絶対、とは言えないよ? でも私、大志くんに会いたい。あ、ごめん! お兄ちゃん帰ってきた。じゃ、またね!」
電話からは、ツーツーという機械音が耳元で響いていた。声を交わしたのはほんの一、二分だ。それでもすっごくすっごく幸せだった。
俺は電話台の下で、左手の拳を強く握りしめる。その腕には、昨年の夏、こちらへ遊びに来た桜雪から貰ったリストバンドがあった。俺のイニシャルT・Sと刺繍されている。一番の宝物。
桜雪、俺も会いたい。
居間に戻って炬燵に入る。みかんの皮を剥きながら桜雪のことばかり考えていたら、周りの音が全く耳に届いてこなかった。だから、おとんが見ているテレビの天気予報がとんでもないことを言っているのにも気づかなかったのだ。
◇
嘘だろ。雪? まじで?
試合当日の朝、温暖で有名なこの地域で雪がちらついていた。よーく見ても、それは霙ではなく、雪。空からはらはらと舞い降りると、足元のアスファルトに吸い込まれていく。でも車の上や道路沿いの植え込みの上に降り立ったそれらは消えずに残っている。ほとんど体験したことがない寒さに身震いした。
いつもなら、ガキみたいに舞い上がっていたと思う。でも今日は、試合に行くんだぞ。試合の日は晴天が一番って相場が決まってんだよ。ま、バスケは屋内なんだけどな。
朝も六時半から中学の校門前に集合すると、バスケ部全員がバスに乗り込む。中で先生からいろいろ説教臭い話があって、それを聞き流しながら外の景色がどんどん白くなっていくのを眺めていた。
◇
間もなく十時だ。こんなに緊張する試合は初めてだ。誰にも気づかれないように、観客席をくまなく見渡す。
桜雪は、いない。
いや、俺が見つけられなかっただけだ。こういう時の桜雪は、何かと理由をつけて、ママや兄貴の監視の目をかわし、うまくやっているにちがいない。昔から、けっこう要領良いところあったもんな。
もしくは、ちょっと遅れて来るのかもしれない。いつ桜雪がやってきてもいいように、俺は張り切っていいところ見せてやらないとな。ジャージを脱ぐと全身がブルリと震えた。
仲間と目配せしてコートの中に入る。体育館内の白い照明がいつも以上に眩しい。円陣を組む。よーし、今日は特に気合い入れて行くぞ!
俺は、事前に先生から支持されていたマークすべき相手チームの男達の顔を確認する。悪いが今日は勝たせてもらうからな。持ち場のあたりへ移動して、臨戦態勢に入る。
笛が鳴った。ジャンパーが舞ったボール目指して床を蹴る。
◇
「大志、行くぞー」
「もうちょっと嬉しそうな顔しろよ」
「あ、うん」
試合は、勝った。俺が打ったシュートも、何本も入った。絶好調すぎて、チームメイトからは「お前、ほんとに大志だよな?」って言われたぐらい。
でも、最後まで桜雪の姿は見あたらなかった。
片付けと着換えと挨拶と。いろいろ終わって体育館から出てきたら、辺り一面が銀世界。全てのものに等しく白い薄布団がかけられている。綺麗、だとは思う。
「今日は、今年一番の寒波が来てるんだってな」
友達の一人が、厚い雲で覆われた白い空を仰いで言った。
そうだ。これじゃ、桜雪だって試合見に来たくても無理だったかもしれないな。日頃雪に慣れていないこの土地では、電車とかも止まっているかもしれないし。
その時だ。
「おーい、全員集合!」
引率のバスケ部顧問である先生が大声をあげる。すぐに皆が集まった。
「今からバスに乗って、中で弁当食べながら帰る予定だったが、変更になった」
「なんでー?」
「何かあったんですか?」
「お腹空きましたー」
先生は、険しい顔をして皆を見回す。
「帰り道に通る予定だった山沿いの国道で、路線バスが雪で横転したらしい。怪我人もたくさん出たらしくて、救急車とパトカーがたくさん向かっていった。そういうこともあって、道路も封鎖されているんだ」
急に悪い予感が込みあげてくる。
また、雪が降り始めた。
鼻先に着陸したひとかたまりの雪はトゲトゲで、悪魔に見えた。
「だから今日は、ここで弁当食ってから電車で帰るぞ。少し遠回りになるが、ちゃんと先生についてくるように!」
「はい!」
たくさんの人が歩いて汚くなった灰色の雪の上を踏みしめる。ダウンジャケットの襟元の隙間から、また雪がひとひら滑り込んだ。その冷たさに、一層心が凍りつく。
弁当はあまり食べられなかった。いつも大食らいの俺があまり食べないものだから、先生から風邪かと心配されてしまった。そんなんじゃない。
たぶん、大丈夫だと思うんだ。きっと桜雪はママの包囲網をくぐり抜けることができなくて、今頃エアコンの暖房がきいたぬくぬくの家で、ホットミルクとか飲みながら勉強をしてるんだ。そうだ。桜雪は事故なんかに巻き込まれていない。桜雪は、元気なはず、だ。
早く、家に帰りたい。
桜雪に電話したい。
電車に乗ったら、隣に座った奴が耳にイヤホンをつけた。カセットテープをセットして、ご機嫌である。大音量で聞いているのか、音漏れが酷かった。ロック系のようだ。俺は今、そんな気分じゃない。ポケットに手を突っ込んで、目を閉じた。
◇
ほぼ、トンボ帰りだった。
俺の悪い予感というのは、昔からよく当たるのだ。
帰宅したら、オカンが血相を変えて俺の肩を乱暴に揺すった。
「あんた、桜雪ちゃん事故にあって入院したらしいで!」
雪はやみ始めたらしい。スノボー好きのおとんがいる関係で、うちの車はスキー場にでも行けるようなスタッドレスタイヤ。おかんはすぐに俺を後部座席に放り込むと、封鎖が解除された細い国道を通って桜雪の地元へ向かった。
病室のドアを開けたら、その瞬間に突き刺さる視線。物理的に痛かった。
「あなた、うちの桜雪に……! 桜雪には、ちゃんとした人とお付き合いして幸せになってもらうんですからね!」
俺が桜雪のママにも嫌われているのは、薄々知っていた。でも、ここまで面と向かって罵られたのは初めてだ。
俺は、なけなしのプライドで表情を変えないようにする。
確かに俺は、あまりちゃんとしていないかもしれない。テストだって平均点ぐらいしか取れないし、運動はけっこうできるけど、歌は音痴だし。行儀もあまり良くないのだって知ってる。でもな、桜雪の素顔を一番長く見てきたのは俺だと思うんだ。
桜雪のママとパパは共働きだ。本当に小さい頃から桜雪は、毎日夜になるまで俺の家にいた。夕食をうちで食べて帰ることなんて、いつものことで。初めは兄弟みたいだなと思ってた。本当の家族みたいだって。だけど、桜雪はある時から少し俺と距離をおくようになる。俺も、不用意に桜雪に触れることはしなくなる。たぶん、お互いに意識し始めたんだと、思う。
俺達は離れ離れになった。お互いにお互いの知らないことがいっぱい増えた。でも電話の声、久しぶりに会った時の笑顔は、全部ずっと変わらないもの。俺だけのものだ。
「ママ」
目の前のベッドの布団が持ち上がる。桜雪が起き上がったのだ。俺は、はっと息を呑む。桜雪は、また綺麗になっていた。顔のラインがすっとシャープになり、その大きな瞳は吸い込まれてしまいそう。
と同時に、彼女はたいそう怒っていた。
「ママは黙っといて。バスケの試合見に行きたかったんは私なん。別にたーくんは、絶対来てって言うたわけちゃうんやから。雪だって、誰のせいでもないんやで? 事故も、たーくんは全然関係ない」
「でも!」
「ママはちゃんと謝って。たーくんはちゃんとしてるもん!」
桜雪と桜雪ママが睨み合う。俺とおかんは顔を見合わせた。桜雪、ちょっと見ないうちに、すごく強くなっていた。
「そこまでにしなさい。他所様の前で喧嘩なんかするな。みっともない」
二人に割って入ったのは、桜雪のパパだ。インテリな雰囲気の人。いつもは穏やかな人なのに、珍しく声を荒らげていた。
「桜雪にとって、大志くんは特別なんだ。ずっと桜雪が寂しがってたの、お前も知ってるだろう」
桜雪ママが眉間に皺を寄せる。図星なので、うまく言い返せなくて困っているのだろう。
「大志くんは、僕たちの知らないところでずっと桜雪を守ってくれていた。それも長い間。僕たちが仕事に夢中になっている時、桜雪がひとりぼっちにならないようにって。それを完全に無視していいのだろうか」
桜雪パパがここまで理解してくれてるとは思ってなかった。おかんを見ると、ちょっと泣きそうになっていた。たぶんおかんにとって桜雪は、末娘みたいなものだったんだろうな。桜雪が引っ越して、あまり連絡も来なくなってショックを受けていたのは、おかんも同じなのだ。
病室内は静まり返っている。俺は本題を切り出した。
「桜雪、大丈夫?」
本当は桜雪の手を握りに行きたい。でも行けない。桜雪のベッドから、さらに三歩離れたところから、彼女の方をじっと見つめる。
「うん。身体を強く打ったから、念の為検査をしてもらっていたの。ママが大袈裟なものだから入院までしちゃったけれど、遅くとも明日には退院できると思うよ」
「良かった」
思わず脱力してしまって、その場に座り込む。
「大志くん」
桜雪がこちらに手を伸ばしていた。
「大志くん、こっち来て」
桜雪のママはつんっとしたままだったけれど、パパの方は大きく頷いてくれた。俺は桜雪のベッドの横に移動する。
「今日は、どうだった?」
「勝ったよ」
「良かったね。見たかったな」
「見られたかったな」
桜雪が、やっと笑った。
「また電話くれる?」
「うん、するよ。また桜雪のにーちゃんに取り次いでもらえないかもしれないけど」
そう言えば、今日はにーちゃん来てないみたいだな。桜雪の兄貴はけっこう歳が離れていて、もう大学生なのだ。
「ねぇ、大志くん。お願いがあるんだけど」
「何?」
「お兄ちゃんとバスケで勝負してくれない? 1on1。お兄ちゃんもさすがにバスケで負けたら大志くんとのこと認めてくれると思うの」
ま、にーちゃんから認められても、桜雪ママというラスボスは残ってるけどな。
「いいよ。そういや、桜雪のにーちゃんってバスケ経験あるんだっけ?」
「うん。地元の社会人チームに入ってて、今は十四連勝中らしいよ」
ん? ちょっと待てよ?
そうだ。俺が初めて「バスケってかっけーな!」と思ったのは、桜雪の兄貴が近所のコートでスリーポイントを決めてるのを見た時だった。てことは――。
「桜雪、これ、本気?」
道理で隣に立つ桜雪ママがニコニコしているわけだ。社会人と渡り合ってて、しかもかなりのベテランとか、勝ち目無くない? たぶん、俺はまだ成長期の途中だから、体格だって負けている。
「私、ちゃんと大志くんを応援するから!」
「あ、当たり前だ」
「ちゃんと勝ったら、ご褒美あげるからね!」
「お、おう」
ご褒美って、何だろうな。
キス? デート? それとも、もっといいこと?
俺、春には十五歳。思春期真っ只中なんだよ。
「大志、あんた、顔がだらしないよ」
おかんのツッコミで我に返った俺が、この勝負、本当に無謀であることを知るのは週明けの部活。桜雪のにーちゃんは、俺が思っていた以上にバスケでは有名な地元人だったのだ。
◇
結局俺が、にーちゃんに勝つことができたのはそれから四年後のこと。俺は大学生になり、ようやく晴れて桜雪の彼氏になることができた。
時は流れる。
世の中はデジタル化が進み、連絡手段もポケベル、ピッチ、ケータイ、さらにはスマホへと進化を遂げ、俺は誰かを介することなく桜雪と喋りたい放題になった。こんなことなら、電話のために桜雪のにーちゃんと勝負することなかったんじゃ、とも思うけど、今は俺の良い兄貴分でもあるので、終わりよければ全て良しということにしておこう。
いやいやいやいや、まだ終わってないぞ。最近、桜雪が俺の目の前でおもむろに結婚情報誌などを広げて読むことがある。それってつまり、そういうことなのか?
うん、分かってる。俺は諦めないぞ。
次はラスボス戦。今度はどんな勝負をすれば、認めてもらえるのだろうか。とりあえず、気合一つで挑んでみるか。
〈おまけ1〉
作者:結局、桜雪ちゃんからのご褒美って何だったの?
大志:うちの近所にある昔ながらの喫茶店で、メロンソーダとチョコレートパフェ。
二人:(暫し沈黙)
作者:ま、そんな時もあるよ。(大志の肩を叩いて慰める)
〈おまけ2〉
大志:(桜雪ママに向かって)娘さんをください!
桜雪パパ:普通、父親に向かって言うものじゃ。
大志:(赤面)
一同:(無言)
桜雪パパ:ほら、お前もいつまでも子供みたいに拗ねるな。
桜雪ママ:私だって、分かってるのよ。そう、あの雪の日。あの時ね、桜雪はすっかり本物の女の子になっているんだって気づいちゃったし、きっと大志くんと結ばれることになるんだろうなって、ちゃんと分かってしまったから……
桜雪:ママ……泣かないで。
桜雪ママ:大志くん、桜雪をよろしくね。
大志:はい! 必ず二人で幸せになります。
桜雪兄:おい、大志。やっぱり俺ともう一回勝負だ!
大志:(何だと? 攻略済みの中ボスが復活するとか聞いてない!)
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昭和世代には懐かしく思えるお話でした。
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私も同じく昭和生まれの世代なので、小学生の頃は黒電話から友達の家に電話をしていました。中学生になってからは、家で電話すると内容が家族に筒抜けになるのが嫌で、祖父母からもらったクレカを使い、公衆電話から他所のお宅へかけてみたり。作者自身も何かと懐かしい気持ちになりながら書いた作品です。
お楽しみいただけて良かったです★