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4章

第33話 跳躍

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「パリィィィーンーー!」
図書館の天窓が大音を立てて砕け散る。
ノア「キャロルにー!!手をーーー、出すなーーーーーーあ!!!!!!」

回想>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
マークの精霊研究室

マーク「君は精霊に愛されているね」「やはり家系かな・・・・・・?」
ノア「・・・・・・」
マーク「クリューゼ家は古来より、王家に仕えてきた」
「公式の記録にはないけど、それも何か関係があるのかな?」
ノア「・・・・・・」
それについてノアは知らない。
マーク「何か相談あって来たのだろう?」「言ってごらん」
ノア「どうしても、上手く精霊たちを使えないんです・・・・・・」
マーク「ふ~む、一生徒として見れば、他の生徒と比較して十分高い能力を持っているように感じるが・・・・・・」
「それでは十分ではない、と感じているのだね?」
ノア「・・・・・・ええ、何というか、もっとできるはずなんです」
マーク「そうか・・・・・・、それは君の可能性の大きさを示している」「・・・・・・少し精霊に聞いてみようか」
ノア「そ、そんなことができるんですか!」
解決の糸口が掴めるかもしれないと興奮するノア。
マーク「精霊に人間のような感情はないが、気持ちぐらいはわかるものだよ」
ノア「お願いします!!」
マーク「どれ・・・・・・」
ノアの前に手をかざすマーク。

ノア「な、何か分かりましたか?」
少し考え込むマーク。
マーク「・・・・・・」「フ~ん、どうやら精霊は君に対して控え目になっているようだねぇ・・・・・・」
ノア「もっと強引に従えろ、ということですか?」
マーク「いや・・・・・・、精霊たちが君の真意を読みかねているという感じだ・・・・・・」
ノア「は、あ・・・・・・??」
マーク「そうだな・・・・・・命じ方がまわりくどいと言ったらいいかな・・・・・・」
ノア「・・・・・・」
困惑するノア。
マーク「例えば、君が精霊の力を借りて空を飛びたいとする」
「君なら精霊にどんな要望をする?」
ノア「・・・・・・まず、浮力が必要で、その後前に進むための推進力が必要です、なおかつバランスを崩さないようにしないといけない・・・・・・」
マーク「それだな・・・・・・」
ノア「は?」
マーク「もっとシンプルに要望したらいい」「空が飛びたいと」
ノア「・・・・・・しかしそれでは」
マーク「後のことは精霊がやってくれる」
ノア「・・・・・・」
錯乱してきたノア。精霊魔法は他の方法に比べて、複雑で高度な知識を必要とするもの。それと全く矛盾している気がする。

マーク「他人を信じられない人はどういう人だか知ってるかい?」
ノア「い、いえ・・・・・・」
俄かには回答できないノア。
マーク「あくまで私の意見にすぎないが、それは自分のことを信じられない人だ」「誰よりも自分自身を疑っている」
ノア「・・・・・・」
マーク「自分を過小評価するけど、それでは自尊心が保てないから他人を馬鹿にするんだ・・・・・・」
遠いどこかを見つめるように語るマーク。
ノア「先生・・・・・・」
しばらくすると、再びノア方を観て、頭にポンっと手を置く。
マーク「君には能力ちからがある」「それをもっと信じなさい」
ノア「ですが・・・・・・」
マーク「これは君に限った話じゃない」
「世界中、全ての人が存在意義を持っている」
「全ての人が役割を与えられその能力を持っている」
「全ての人が君が思うよりずっと価値ある存在なんだ」
「本当に悪い人というのは、世の中には『価値ある人間』と『そうじゃない人間』がいると”区別”する人間なんだよ」
ノア「・・・・・・」
「君が世界を信じる時、世界は君に手を差し伸べるだろう」
「君は十分よくやっているよ、ノア」
ノア「・・・・・・」
黙り込んでしまうノア。わかる気もするが、わからない気もする。
マーク「まあ、また何時でも来なさい」「今日はこの辺にしよう」
お礼を言って退出するノア。

回想終了<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
図書館本館連絡通路

魔法隔壁まほうかくへきの前に立つノア。
廊下の窓から図書館の天井付近を眺める。
ノア『あそこまで行ければ侵入できる!』『けど、高すぎる・・・・・・』
『今の俺では届かな・・・・・・』
ー「君には能力ちからがある」「それをもっと信じなさい」ー
マークの言葉を思い出すノア。
ノア『いや、できる・・・・・・』『俺にはできるはずだ・・・・・・』
大気中の風精ふうせいに呼びかけるノア。
ノア『俺はあそこまで行きたい!!』

「ピイピイ」
精霊が呼応する。ノアの足元に風が吹き始め、浮力が発生する。
窓から身をひるがえし、4階通路の屋上に飛び乗るノア。
ノア『ここから駆け上がる!!』
走り始める。加速する。ノアの足元に光が集まる。さらに加速する。
ノア「あああああーーーーーー!!!!」
図書館の壁面を垂直に駆け上がるノア。
ノア『絶対飛び越える・・・・・・』
やや加速が落ちる。
ノア『絶対にいける!!!!!』
強く念じ、再加速するノア。

図書館の天井に舞い上がるノア。風で髪がなびく。
ノア『やった!!』
見立て通り、天井には魔法隔壁は張られていない。
ノア『待ってろ!キャロル!!』
放物線状に落下し、そのまま天井ガラスに突っ込む。
突入するとキャロルが発見できる。血を流している。
ノア「キャロルにー!!手をーーー、出すなーーーーーーあ!!!!!!」

「ガチィィイィンーー!!」
ノアの剣と振り下ろしたミースの刃物が激しく衝突する。
ミース『ーーーーー!?!?』
着地の瞬間に曲芸的に身体をひねりミースの刃物を受けきるノア。
キャロル「・・・・・・ノアくん!!」
ミース「あらあら、ヒーロー登場ねぇ」
ノア「フンッ!」
剣を振り切り、ミースの刃物を払うノア。
少し跳ねて距離を取るミース。

ミース「いったいどうやって来たのかしら?」『隔壁は壊されていない・・・・・・』

ノア「迂回うかいしただけだ。」
ミース「迂回?4階部分にしか通路は接合されていないのに?」

ミースとの会話はどうでもいいとばかりにキャロルに歩みよるノア。
ノア「キャロル、大丈夫そうじゃ・・・・・・ないな・・・・・・」「来るのが遅くなってすまない」
そんなことないと首を振るキャロル。
ノア「こいつの相手はオレがする」「お前は安静にしていろ」
キャロル「ノアくん・・・・・・」
応援も呼んである。安心しろとささやくノア。

ノア「もっと早く先生が怪しいと気付くべきだった・・・・・・」
振り返って剣を構えるノア。切っ先は真っ直ぐミースに向ける。
ノア「お前はオレが倒す」「マーナとテルの恨み、晴らさせてもらうぞ!」
ミース「まあまあ~ずいぶん強気ねぇ・・・・・・」
ゆっくりと移動するミース。

ミース「でも、あなたは判断を間違えてるわぁ~」
「ここには先生たちを呼んで一緒に来るべきだった」
ノア「・・・・・・」
「わたしはカラミティ幹部ミース、あなたじゃ倒せない」
立ち止まり宣言するミース。
ノア「それはどうかな?」「やってみないと分からない」
最悪、時間が稼げればそれでいいと思うノア。
ミース「フフフフ、いいわ~~」「あなたも切り刻んであげる♪」

一瞬の間。
「シュッ」「シュッン」
二人が視界から消える。

「ガチィィィィイーーーーン!!!!」
2人が立っていた中間地点で激しく切り結ぶ。
火花が散り。衝撃波が飛ぶ。余波でキャロルの髪がなびく。
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