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政略結婚しましたが、大恋愛になりました・完

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その後のフォールロックのお話

 唯一残ったアシュティンの連れてきた侍女はカイラと一緒にアシュティンの世話を焼き、結婚してからは乳母としてアシュティンの子供の面倒を見るようになりました。
 彼女は昔、アシュティンが貧民街でボランティアしていた時に、彼女に召使いとして拾われてからその高い忠誠心を持って侍女頭補佐まで上り詰めた人物でした。

 カイラは、最初はアシュティンが安定するまでの数ヶ月の侍女と言う約束でフォールロックにきていましたが、最後まで国に帰らずにアシュティンを支え、励ます存在となりました。

 フォールロックで侍女になった者たちは、赤毛の侍女は喧嘩相手から婚約相手になった相手と結婚。
 ポニーテールの侍女とダブルお団子の侍女は、本来の護衛職に復帰。生涯、アシュティンの護衛を務めました。
 アシュティンはこの時に、フォールロックの侍女侍従たちが護衛職を兼ねていたことを知りました。

 ギレルモは国が安定して再び貴族復活が始まる中で宰相に就任。王と喧嘩できる楽しい仲のまま長く国の統治に貢献しました。

 側近たちもそれぞれ正式な役職名をもらいながらも、変わらずに王のそばにいたようです。

 謎多き王のハトコにして、護衛騎士の名を遺したクラウス・ガルシアは生涯独身でしたが、常に傍らにはカイラがおり、結婚こそしませんでしたが仲の良い二人でした。

 戦争手前のフォールロック内にあった裏組織は全て解体されましたが、その後で何でも屋をしていた「原色」という商会は、後に正式な服飾商会、医師団、異国交流団に変わり、長く国を支える中枢機関になりました。都市伝説で影の護衛団だったと言う伝説も残っています。

 長い歴史の途中で隣国のザックアダン皇国が公国へ規模が下がり、最後はエイブラム国とフォールロック国に吸収されました。
しかし、特に大きな戦争もなく、静かな国の最後だったと言われています。

 デュワイン皇子に関しては、処刑された説と無人開拓地へ終身刑になった説がでていますが、最期が記された文献は残りませんでした。



 アシュティン・カシー・エイブラムとジャンカルロ・フォールロックの結婚はフォールロック国の歴史においてとても有名なおしどり夫婦となりました。

 戦争一歩手前の両国を繋ぐべく行われた政略結婚は、再び戦争の火種となるか和平のまま終わるのか、国民の誰もが心配しておりましたが、そんな国民たちとの心配を安心させるように2つの国は次第に仲良く安定していったのです。

 2人の政略結婚から3年目に双子の王子が生まれ、王と王妃はとても仲が良く、最初の王子たちが生まれた後も二人で市井にボランティアに出たり、遠出する姿をみかけました。
 その後も4人の子供に恵まれ、合計6人の王子と姫がフォールロック国に誕生しました。

 おしどり夫婦として有名な2人は、生涯お互いだけを愛し合い仲睦まじいままでした。その仲は、後に緑と青で合わせて紺碧の奇跡という恋のおまじないも誕生するほどでした。

 一部の地域では、ゲームの神として亡きジャンカルロ王を祀る地域もありましたが、真実は残りませんでした。








アシュティン視点

 のどかなテラスで、16歳になって数か月経ったアシュティンは、2年前の結婚してすぐのことを思い出していた。
 テーブルでは、いれたての紅茶が湯気をあげている。

ホームシックにかかった半年。彼との深夜のゲーム会。恋愛についての昼間の恋の座談会。舞踏会場を貸し切ったドレス選び。ゼニスブルー、ライムイエロー、シェルピンクたちの正体。クラウスとカイラの来訪。デュワイン皇子とザックアダン皇国の交流会。
そして、自身の2回目の盛大な成人式。

 戦争手前の元敵国に嫁ぐ環境から、今日まではとても長く、短い2年だった。
 七つの妃宮は未だに、アシュティンただ一人。おそらくこの先も彼女だけが主だろう。

(恋とは不思議なものね。何か特別なことがあって両想いになると思ってた。でも、相手と時間を重ねて、好意をもらって意識して、両想いになることもあるのだわ。緩やかな恋もあるのね。)

 まどろみながらそんなことを考えていると、書類を持った王がやってきた。

「何を考えているんだ?」
「あなたのことを考えていました。」

 彼の茶色い髪が日に透けて金色に輝いている姿をアシュティンは見つめた。
 ギレルモが書類を王から受けとり、侍女たちと一緒に室内へ戻っていく。
 嫁いできた時に比べると、随分と侍女侍従たち皆が仲良くおしゃべりしながらいなくなった。
 誰もそばにいなくなったことを確認したジャンカルロは、アシュティンの向かいに座り、そっと頬に口づけしてきた。それに口づけで彼女も返していく。

「君はいつも可愛いことを言う…。」
「ジェイ、くすぐったいわ。」


 アシュティンは離れていく顔を両手で捕まえて、まだ2人の顔がぶつかりそうな距離で微笑むように幸せを報告を口にした。

「アーティー?」
「ねぇ、聞いてジェイ。…私たちの元に、2人も赤ちゃんがきてくれるそうよ。」
「アーティー!!」

 机越しにアシュティンを抱きしめたジャンカルロは、お茶やお菓子がひっくり返ることも気にせず飛び上がった。
 様子を見ていた侍女たちが走って、彼らの元に戻ってくるのが見える。
 ライムイエローに至っては、般若顔で医療道具を持っていた。クラウスとカイラも困ったようにこちらに来ている。
 どうやら室内に戻っていった者たちが全員アシュティンを心配してやってくるようだ。


(嫁いだ日に初夜を断られた時は、この先どうなるかと思っていたけれど今はとても幸せ。)

「アーティー、アーティー!ありがとう!!」
「ジェイったら、目が回ってしまうわ。」

 抱きつかれた後、お姫様抱っこをされてテラスをグルグルと回るアシュティンは、目まぐるしく変わる風景を見ながら声を上げて笑った。

(私はジャンカルロに今も恋をしている。でも愛してもいる。この先もこの人と一緒にありたい。)

「アシュティン愛している!!」
「私も愛しております!」

 回転が終わった後、アシュティンをそっと抱えたまま改めてキスをしたジャンカルロの幸せな顔を見つめながら、彼女も深い幸せを感じていた。


(お父様、お母様、政略結婚したけれど、大恋愛できました。)








【政略結婚しましたが、恋とはどんなものかしら・完】


ブックマーク下さった方、しおりを下った方、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
時間がかかってしまいましたが、これでこのお話は完結です。
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