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逃げられない
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コートニーは二の句を告げずにいた。
「…はっ…」
距離をとろうにも動けない。
(吸血鬼…、魔物と言ったかこいつ…イかれ野郎か?…なら、なんで私の傷は治った?)
とろける理性を必死にかき集めて、思考をまとめる
「ふふ、焦る顔もできるんだ。面白いねぇ…。これで良いよ。今、言ったことは忘れて、眠れ。」
ささやくようにブライアンが言えば、その言葉は彼女の頭の中で最優先事項として染みわたっていく。
記憶が書き換わり、情報が消えていく。
(くそっ…)
本能で抵抗していたが、彼女はブライアンの腕の中で強制的に眠りについた。
苦悶の顔からしばらくして、静かな寝顔になったコートニーの頬に、ブライアンはキスを落とした。
「可愛いってこういう感情を言うのかな。眠るってどんなだろう。」
彼の冷たい頬にコートニーの熱い頬を当てれば、彼女はみじろぎした。
「この熱が消えるのは惜しいなぁ。でも、この子がほしい。初めて会った時から気になって、町での雄姿に惚れ惚れして、さっきだもんなぁ。無理だよ、こんなの。好きになっちゃう。」
腕の中でもがく彼女を抱きしめて、彼は初めての恋に浮かれていた。
「暗示は効く。命令はちょっと怪しい…か。じわじわ暗示して堕としていくしかないかなぁ。」
ブライアンはコートニーの耳もとにささやいた。
「僕を好きになって…僕だけをみて…」
風に誘われそうなその声は、小さく響いた。
コートニーはブライアンの膝の上で目を覚ました。
「何で…?」
ふわふわの髪が彼女の顔を包むように下ろされて、緑の瞳が彼女を見つめている。
「起きた?」
彼の膝から落とされる。受け身も取れずに、急な浮遊感の後、彼女は固い屋上の床におちた。
「痛い…。」
痛む頭を押さえて彼女が起き上がれば、様子を伺う生意気そうな目が馬鹿にしたようにコートニーをみつめていた。
「覚えていないの?僕を助けて逃げた時に眠りの粉を間違えて吸って寝ちゃったんだよ。間抜けなんだから。」
「覚えておりますよ。護衛として情けないところをお見せしたようで。」
その返答に満足そうな寂しそうな顔のブライアンは、にっこり笑った。
「ここまで逃げたことは評価してあげる。でも寝ちゃったあんたを介抱した僕に感謝してよね?」
「ありがとうございます。」
どこか釈然としないまま、コートニーはお礼を口にした。なぜか納得いかない。
(頭にもやがかかる、寝起きだから…?)
ぼんやりとする頭を振ってコートニーは、いつ眠りについたのか思い出そうとした。だが、屋上についたところで記憶が途絶えている。
「そんなことよりさぁ、その制服を見るにあんた同じ学校なんでしょ?どこの科?」
「…一般科です。」
飛びつくようにブライアンに肩に手を置かれ、質問を受ける。
コートニーは咄嗟に嘘をつくか悩んで素直に答えた。
さっそく内緒にしようと言う誓いは敗れた。
「え、何で?特進科じゃないの?」
「色々ありまして、便利なんですよ。一般科。」
「特進科なら貴族科の隣の棟だと思ったのに、一般科じゃかなり遠いじゃん。」
つまらなそうに言うブライアンにコートニーは首を傾げた。
「今日みたいなことは滅多に起きないと思いますし、何かあれば駆けつけますから不安がらなくてなくて大丈夫ですよ。」
「違くて、あぁ、もう!!」
面倒なところまで記憶消しちゃった!!と物騒なことを言うブライアンに何を言っているのかと彼女は首を傾げ、先ほどのことは記憶のもやに消されてしまった。
彼女の首には二つ、噛み跡が残ったままだった。
「…はっ…」
距離をとろうにも動けない。
(吸血鬼…、魔物と言ったかこいつ…イかれ野郎か?…なら、なんで私の傷は治った?)
とろける理性を必死にかき集めて、思考をまとめる
「ふふ、焦る顔もできるんだ。面白いねぇ…。これで良いよ。今、言ったことは忘れて、眠れ。」
ささやくようにブライアンが言えば、その言葉は彼女の頭の中で最優先事項として染みわたっていく。
記憶が書き換わり、情報が消えていく。
(くそっ…)
本能で抵抗していたが、彼女はブライアンの腕の中で強制的に眠りについた。
苦悶の顔からしばらくして、静かな寝顔になったコートニーの頬に、ブライアンはキスを落とした。
「可愛いってこういう感情を言うのかな。眠るってどんなだろう。」
彼の冷たい頬にコートニーの熱い頬を当てれば、彼女はみじろぎした。
「この熱が消えるのは惜しいなぁ。でも、この子がほしい。初めて会った時から気になって、町での雄姿に惚れ惚れして、さっきだもんなぁ。無理だよ、こんなの。好きになっちゃう。」
腕の中でもがく彼女を抱きしめて、彼は初めての恋に浮かれていた。
「暗示は効く。命令はちょっと怪しい…か。じわじわ暗示して堕としていくしかないかなぁ。」
ブライアンはコートニーの耳もとにささやいた。
「僕を好きになって…僕だけをみて…」
風に誘われそうなその声は、小さく響いた。
コートニーはブライアンの膝の上で目を覚ました。
「何で…?」
ふわふわの髪が彼女の顔を包むように下ろされて、緑の瞳が彼女を見つめている。
「起きた?」
彼の膝から落とされる。受け身も取れずに、急な浮遊感の後、彼女は固い屋上の床におちた。
「痛い…。」
痛む頭を押さえて彼女が起き上がれば、様子を伺う生意気そうな目が馬鹿にしたようにコートニーをみつめていた。
「覚えていないの?僕を助けて逃げた時に眠りの粉を間違えて吸って寝ちゃったんだよ。間抜けなんだから。」
「覚えておりますよ。護衛として情けないところをお見せしたようで。」
その返答に満足そうな寂しそうな顔のブライアンは、にっこり笑った。
「ここまで逃げたことは評価してあげる。でも寝ちゃったあんたを介抱した僕に感謝してよね?」
「ありがとうございます。」
どこか釈然としないまま、コートニーはお礼を口にした。なぜか納得いかない。
(頭にもやがかかる、寝起きだから…?)
ぼんやりとする頭を振ってコートニーは、いつ眠りについたのか思い出そうとした。だが、屋上についたところで記憶が途絶えている。
「そんなことよりさぁ、その制服を見るにあんた同じ学校なんでしょ?どこの科?」
「…一般科です。」
飛びつくようにブライアンに肩に手を置かれ、質問を受ける。
コートニーは咄嗟に嘘をつくか悩んで素直に答えた。
さっそく内緒にしようと言う誓いは敗れた。
「え、何で?特進科じゃないの?」
「色々ありまして、便利なんですよ。一般科。」
「特進科なら貴族科の隣の棟だと思ったのに、一般科じゃかなり遠いじゃん。」
つまらなそうに言うブライアンにコートニーは首を傾げた。
「今日みたいなことは滅多に起きないと思いますし、何かあれば駆けつけますから不安がらなくてなくて大丈夫ですよ。」
「違くて、あぁ、もう!!」
面倒なところまで記憶消しちゃった!!と物騒なことを言うブライアンに何を言っているのかと彼女は首を傾げ、先ほどのことは記憶のもやに消されてしまった。
彼女の首には二つ、噛み跡が残ったままだった。
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