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欲しいもの

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 にっこり笑ったブライアンからコートニーは距離をとろうとした。だが足が動かない。
 笑顔の悪魔?が牙を光らせて近づいてくる。

「本当はさぁ、血を吸いたいんだよ。でも、治すだけで我慢してあげたの。優しいでしょ?」

 だから、逃げないで

 脳内で彼の声が響いて、自然とコートニーの足は彼の方に向かう。

(ふざけるな!!)

 コートニーは渾身の力で抗った。
 首から血が少し血が噴き出す。足は止まった。
 荒い息をしてブライアンを見つめる。意図が解らず、睨むこともできない。

「…私に何をした。」
「驚いた。僕の能力に抵抗できる人間がいるなんて、お前すごいね。」

 何とか後ずさって、ブライアンから距離をとろうとする。
 その間に、天使のような可愛い顔がコートニーの顔の前に来ていた。
 そのまま、ふに、っと唇が柔らかく当たる。

「あれぇ、女の子なのに唇が固いし、カサカサしているね。うーん、まぁ血は舐めれたか。」
「はぁ…、何がしたいんだ…。」

 ぺろりと口を舐められて、顔はまだ息が当たる距離で宝石のような緑の瞳が彼女をみている。
 ファーストキスだったことを彼女は脳から押しやって、何とか手を動かす。
 両手でブライアンの体を押せば、あっさりと離れてくれた。

「お前、無防備すぎだよ。」
「男が好きなのでは無かったのか?」
「ちょっと違う。男の方が都合がいいの。」

 ブライアンが手を振れば体が軽くなり、コートニーは口を拭いた。
 今までケアすらしたことない口は、プルプルになっていた。
 
「女の子だとそのまま一生一緒になる可能性があるでしょ?でも男なら、遊びで終わり。」
「最低だな。」
「そう、僕は…僕たちは最低で良いの。さっきだって何とかなるはずだった。」

 苦笑いをして後ろに腕をくんだブライアンは、ふわふわした金髪を揺らして横を向く。
 表情が読めない彼の顔を、コートニーは逃すまいと見つめる。

「あの伯爵家のお嬢さんには幻覚を見て貰って、あの家からお金を貰う予定だったのに…予定が狂っちゃった。」
「なんだって…?」

(それは詐欺行為から逆にあのお嬢さんを私は助けて、ブライアンに嫌がらせをしたことになるのでは…?なら、なぜ…あんな?)

 せこい計画を知ったコートニーは、複雑な気分でどう回答するか悩む。

「私は余計なことをしたわけだ。キスや噛みついたのはその嫌がらせか?」
「違う違う、感動したんだよ!僕ね、あんな風に助けてもらったの、初めてだったの。」
「はぁ…?」

 何を言っているのか解らない彼女は、後ずさって彼から距離をとる。
 どくどくと、首から血が零れる。

 冷たい手が、それをすくってなめとった。

 またブライアンがすぐ背後にいる。今度は抱きしめられている。
 後ろから抱きしめられて、下がれない。血が手でこすり取られていく。

「血の味は普通だね。健康な味だ。」
「何を言っている。」

 細い体の少年なのに…。
 抵抗できると本能は告げるが、理性がとろけてできないと判断してしまう。
 コートニーは混乱していた。

「あぁ、本当はね、すぐに血を吸いたい。連れていきたい。」
「護衛としてなら、ついていく契約だろう。」
「ダメだよ。足りなくなっちゃったの。」
 
 何とか言葉をつなげて次の逃げる機会を探す。ない。

「僕ねぇ。吸血鬼なんだ。魔物なの。」


 討伐すべき人類の敵。
 それに彼女は気に入られて、捕まってしまっていた。
  
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