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始まりの章・再起してから奮起するまで

3.罪は暴かれ、刑は執行された

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 事態は1年後に豹変した。
 つかの間の幸せをミカエラが享受している間にも、エドワナだけは兄の心を取り戻すべく動いていたのだ。


 最初から双子の妹エドワナだけは、豹変した兄を信じられずに彼女を拒み続けていた。

「お兄様と私が愛し合っていたのよ!こんなお兄様しらない。お前が何かしたんだ!!」
「何をしているんだエドワナ!ミカエラをいじめるのはやめろ!!」
「どうしてお兄様が止めるのよ!そんな嫌いなものを見る目で私を見ないでー!!」

 エドワナは彼女に会えばお茶や壷の水をかけ、家から追い出そうと何度もした。
 時には使用人をけしかけて、バルコニーから落とそうとしたり、庭の散策に行こうとするミカエラの頭に鈍器を落とそうとしたりもした。
 ついにヴァーチェスの堪忍袋の緒が切れて、エドワナは屋敷から追い出され、別邸に追いやられてしまったのだ。


 エドワナはそれでも諦めず、専門の魔法士協会へ調査依頼を密かに何度も行っていた。

 その結果、専門家の密かな調査が行われて、ミカエラは結婚目前の半月前に拘束された。
 検査を直接体に受けた結果、100年ぶりの魅了の魔法を使う魔女ということが発覚した。
 
 ミカエラは貴族を誑かした詐欺罪と国を脅かす魔法を使った罪により、処刑台送りとなってしまったのだ。



「こんなの違う、私は魔法なんて知らなかった!私は魅了の魔法なんて知らなかった!お母さま、ヴァーチェス様、助けてー!!」

 彼女の必死な主張は誰も聞かず、皆が掌を返したように彼女を蔑み、罵倒した。

「だまされた。無垢な少女の振りをして、魔女め。」
「だまされた。可愛らしい顔で男を誑かした悪魔の使いめ!」
「次の犠牲者がでないように、殺せ、殺せ、殺せ!!」


 危険な存在として、死刑はあっという間に日取りが決まった。

 彼女は再びどん底に落ちたのだ。
 愛くるしい顔は尋問と魔力調査で再び痩せこけ、見るも無残になっていった。

 皮肉にも処刑の日は幸せな結婚式になる日だった。

 彼女の死を悲しむ人はいない。
 皆が魔女の死を好奇心を持った目で見ている。
 上等な観客席には、ミカエラの父と正妻が笑いながら観に来ていた。

 彼女の被害者であり、夫となるはずだったヴァーチェスとその関係者たちの姿はない。

「私はどうすれば良かったの?ただ死にたくなかっただけなのに…」
 
 それが彼女の最期の言葉で、頭から布袋をかけられて死刑は執行された。
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