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崖っぷち妃の極限絶奏!

前哨戦

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 月酔の宴当日、後宮は朝から上へ下への大忙し。

 もちろん翠蘭も衣装や小物の最終確認に余念はない。

 皇后や貴妃ら高位の妃方の衣装に変更がないか調査させ、色味が被らないようにする。
 同系統の色を着ていいのは直接庇護を受けている妃だけなのだ。うっかり被ってしまえば喧嘩を売ってると受け取られかねない。

 この後も後宮で平穏に生きていきたいなら、最低限やっておかなければならない処世術だ。

 下準備は万端。
 しっかり膀胱を空っぽにしてから薄緑の衣に身を包み、翠蘭は宴に挑んだ。


 宴は主催である皇后陛下の挨拶から始まり、皇帝陛下のお言葉を頂戴したあと、妃たちが上の階級から順に挨拶をしていく。

 この挨拶というのがくせもので、陛下と主催の皇后あるいは貴妃、それから挨拶に来た妃の3名で揃ってなみなみと米酒の注がれた盃を煽るのだ。

 そもそも澪峯の宴というものには米酒がつきもので、最中にもたくさん振舞われる。酒精アルコールをたくさん摂取すれば酔いもまわるし尿意も高まる。
 だというのに、秘水おしっこの解放を目的とした中座は許されない。

 翠蘭のような演目に参加する妃ならば、それを理由に退席し片付けの時に一緒に片付け・・・てくることは、暗黙に見逃される。
 そうでなければ翠蘭はこれまでの宴を乗り越えられなかっただろう。

 一般妃とは比べ物にならないほどの米酒を飲まれる上に一度も中座されない皇后ならびに貴妃方には畏敬の念が尽きない。
 とくにまだ年若いうえに外国から嫁いできた皇后陛下はどのような対策をしていらっしゃるのか、密かに中・下級妃の間で噂になるほどだ。


 100人をゆうに越える妃たちの挨拶が終わると、いよいよ芸事の演目が始まる。
 この頃から料理や酒の提供が始まり、周囲の妃と歓談しながら演目を楽しむことになる。

 というのは表向きで、実際には情報交換と名を変えた敵情視察だ。

 とはいえ、そこまで殺伐としたものでもない。
 なにせそろそろ不浄場トイレが恋しくなる頃合いなのだ。
 わざわざ事を荒立てる余裕がある者なんて、早々に参加する演目を終え、すっきりしてきたものだけだ。
 他は喧嘩を売っている余裕なんてない。外国とつくにから嫁いできた新人など、すでに顔色が青白くなり、落ち着かない様子の者までいる。

 翠蘭も先に参加する演目である「藤の仙女の舞」の準備のために中座したときには、下腹部がずっしり重くなっていた。
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