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幼皇后は秘密の特訓!
苦い記憶
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シトーレン第三王女アルムは、つい先日澪峯国皇帝・汪天狼に嫁いで来たばかりの14歳の少女だ。
17歳で成人のシトーレンから12歳前後で成人になる澪峯に来たため、彼女はいきなり成人の立ち振る舞いを求められるようになった。
もちろん、アルムは王女だから、その辺の令嬢よりもずっと教養もあるし、礼儀作法だってきちんとしている。
とはいえ、それは祖国シトーレンでの話。
所変われば文化も変わる。澪峯の常識はまだまだ勉強したりないくらいだ。
そんなアルムは澪峯風の名の亜琉を与えられ、日々立派な皇后たらんと精進していた。
と、いうのも、澪峯に嫁いで来て初めてあった宴で、ギリギリセーフと言えるか言えないかというくらいの失敗をしでかしてしまったのである。入内の儀から始まり、立后の儀をこなしてからの歓迎の宴で、一昼夜に及ぶものだったとはいえ、国の顔であるアルムにとっては思い出したくもない苦い記憶だ。
澪峯の宴では、これでもかというほど酒が振舞われ、地位が上であればあるほどたくさん煽ることになる。
アルムは社交界デビューは終えていたが、本格的には参加していなかった。そもそもシトーレンではそこまで女性相手に酒は振舞われない。慣れない環境でほとんど初めてとも言える酒精の強い米酒の大量摂取。招かれる悲劇は想像に難くない。
幸いにして亜琉は酒に強かったようで、酔いつぶれるというような無様は晒すことなく王女の面目は保たれた。
それではどこで失敗をしでかしたかというと、これは会場を辞してすぐの話になる。
国の重鎮や他の妃はいないとはいえ、世話役の女官に囲まれている場で、亜琉皇后はあろうことか乙女のティーポットを開放してしまったのだ! 決して弱みを見せないように、慎重に慎重に歩みを進めていたにも関わらず、ついに意志の力ではどうにもならない量に達してしまい、気づいたときには溢れた秘水で足がぬれていた。あ、と思った時にはもう遅く、水流はいっそう勢いを増す。会ったばかりの女官に見守られながら、亜琉は控えの間に大きな水溜りを作ってしまった。
皇后どころか淑女、いや年頃の娘としてありえない失態にアルムは耐えきれず大粒の涙を零した。国に帰りたいと連れてきていた女官に縋り付いた。
アルムの名誉のために弁明しておくと、宴での失敗は何も珍しいものではない。
宴を女性が中座できないのはシトーレンも同じだが、その長さや酒精の威力のために、澪峯の貴族女性は幼い頃から厳しい訓練を積むことになる。
そんな訓練を積んできた澪峯の令嬢の最高峰ばかりが集まる後宮でも、年に数度は失敗しかけた者を目撃できる程度の威力なのだ。それに、初めて参加する宴ではどの姫も大なり小なり失敗している。
皇后という最も酒精を取り込む地位にあって、異国の育ちながら控え室まで耐えきった亜琉皇后は、その実他の妃たちに一目置かれていた。
シトーレンから連れてきた女官・セーラがこの話をしたり、異国から嫁いできた歴代皇后(足に秘水をつたわせながら平然とした表情を貼り付けて涙目で退場した姫もいる!)の話をしたりして、どうにか気を持ち直した亜琉は、二度と失態は犯さないと、練習を始めることを決意した。
17歳で成人のシトーレンから12歳前後で成人になる澪峯に来たため、彼女はいきなり成人の立ち振る舞いを求められるようになった。
もちろん、アルムは王女だから、その辺の令嬢よりもずっと教養もあるし、礼儀作法だってきちんとしている。
とはいえ、それは祖国シトーレンでの話。
所変われば文化も変わる。澪峯の常識はまだまだ勉強したりないくらいだ。
そんなアルムは澪峯風の名の亜琉を与えられ、日々立派な皇后たらんと精進していた。
と、いうのも、澪峯に嫁いで来て初めてあった宴で、ギリギリセーフと言えるか言えないかというくらいの失敗をしでかしてしまったのである。入内の儀から始まり、立后の儀をこなしてからの歓迎の宴で、一昼夜に及ぶものだったとはいえ、国の顔であるアルムにとっては思い出したくもない苦い記憶だ。
澪峯の宴では、これでもかというほど酒が振舞われ、地位が上であればあるほどたくさん煽ることになる。
アルムは社交界デビューは終えていたが、本格的には参加していなかった。そもそもシトーレンではそこまで女性相手に酒は振舞われない。慣れない環境でほとんど初めてとも言える酒精の強い米酒の大量摂取。招かれる悲劇は想像に難くない。
幸いにして亜琉は酒に強かったようで、酔いつぶれるというような無様は晒すことなく王女の面目は保たれた。
それではどこで失敗をしでかしたかというと、これは会場を辞してすぐの話になる。
国の重鎮や他の妃はいないとはいえ、世話役の女官に囲まれている場で、亜琉皇后はあろうことか乙女のティーポットを開放してしまったのだ! 決して弱みを見せないように、慎重に慎重に歩みを進めていたにも関わらず、ついに意志の力ではどうにもならない量に達してしまい、気づいたときには溢れた秘水で足がぬれていた。あ、と思った時にはもう遅く、水流はいっそう勢いを増す。会ったばかりの女官に見守られながら、亜琉は控えの間に大きな水溜りを作ってしまった。
皇后どころか淑女、いや年頃の娘としてありえない失態にアルムは耐えきれず大粒の涙を零した。国に帰りたいと連れてきていた女官に縋り付いた。
アルムの名誉のために弁明しておくと、宴での失敗は何も珍しいものではない。
宴を女性が中座できないのはシトーレンも同じだが、その長さや酒精の威力のために、澪峯の貴族女性は幼い頃から厳しい訓練を積むことになる。
そんな訓練を積んできた澪峯の令嬢の最高峰ばかりが集まる後宮でも、年に数度は失敗しかけた者を目撃できる程度の威力なのだ。それに、初めて参加する宴ではどの姫も大なり小なり失敗している。
皇后という最も酒精を取り込む地位にあって、異国の育ちながら控え室まで耐えきった亜琉皇后は、その実他の妃たちに一目置かれていた。
シトーレンから連れてきた女官・セーラがこの話をしたり、異国から嫁いできた歴代皇后(足に秘水をつたわせながら平然とした表情を貼り付けて涙目で退場した姫もいる!)の話をしたりして、どうにか気を持ち直した亜琉は、二度と失態は犯さないと、練習を始めることを決意した。
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