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幼皇后は宴で限界!
いつもより長い宴
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澪峯国皇帝・汪天狼が正妃、亜琉ことアルムは、隣国シトーレンより友誼を結ぶために嫁いできた若干15歳の皇后だ。
シトーレンの成人年齢は17歳だが、澪峯では12歳前後。侍女を連れてきているとはいえ、国を離れるだけでなく、いきなり成人と扱われる心労はいかばかりか。
なにより、澪峯とシトーレンは隣国と言えど文化がかなり違う。成人年齢ひとつ取ってもそうだし、貴族女性が求められるものが違うのだから、アルムの生活は一変した。
中でもアルムが苦手とするのは、年に5回後宮の妃たちが参加しなければならない月酔の宴だった。ただの妃ならば年に2度の参加で済むけれど、アルムは全ての回に参加しなければいけない。それも、一度は主催として陛下の隣に並んで。
後宮で開かれる大規模な宴の主催は、皇后とそれに次ぐ四貴妃が持ち回る。侍女に指示を出し全体を統括するのは妃だから、開催日である満月が近付くと目に見えて忙しくなる。特に皇后が主催する回は末端の妃まで全員参加する盛大なものだから、陛下の訪れを拒むほどぐったりと疲れきってしまうのだ。
ただアルムが月酔の宴を厭うのは準備のせいではない。宴で出される大量の酒が、アルムの敵だ。
シトーレンにいた頃は、貴婦人同士の交流といえば小さなサロンに参加していたくらい。酒が振舞われる大人の世界は澪峯に来てからが初めてだ。
もちろん、飲んだことがないわけではないが、シトーレンは果実酒が好まれるのに対して、澪峯の酒は米酒。慣れない酒精は酔いが回りやすい。
とはいえアルムは酒には強い。だから、酔いよりも問題なのは、酒精の利尿効果だ。これには毎回困らされていて、席を辞すのが位の高い順じゃなかったら危うく皆の前で無様を晒していたかもしれない。
高貴な女性が宴を不浄で中座するのがみっともないのはシトーレンでも澪峯でも同じこと。年齢など関係ないし、成人していれば兆しすら悟らせないのが当然である。
ましてアルムは15歳。澪峯なら成人して数年経ち、公の宴に慣れていてしかるべき年齢なのだ。失態は当然許されない。
今宵の月酔の宴は皇后たるアルムが主催だ。四貴妃が主催の時より参加人数も多ければ演目の時間も多い。
妃たちが順に挨拶に訪れては盃を交わしていく。アルムと陛下のもつ盃には並々と極上の米酒が注がれる。同じものを妃にも注いでやり、3人で同時に煽るのだ。これを全員繰り返す。
全員参加の妃たちは百人を越えるため、いかに1杯が少ないといえど結構な量を飲む羽目になるのだ。しかも下位の妃にとっては数少ない陛下へ直接アピールできる機会だから、いちいち一人一人の挨拶が長い。消費された時間分下腹部を圧迫する。
全員の盃を受け終えた頃にはずっしりと下腹部が重かったが、このくらいなら慣れたもので重い正装に隠れた足だけピタリと閉じて、にっこり平静を装っていた。
ただ、いつもより溜まるのが早いのは確かなのだ。アルムは小さく眉根を寄せてこっそり下腹部に手を当てた。不安しかないが、やるしかないのだ。澪峯で一番高貴な女性なのだから。
シトーレンの成人年齢は17歳だが、澪峯では12歳前後。侍女を連れてきているとはいえ、国を離れるだけでなく、いきなり成人と扱われる心労はいかばかりか。
なにより、澪峯とシトーレンは隣国と言えど文化がかなり違う。成人年齢ひとつ取ってもそうだし、貴族女性が求められるものが違うのだから、アルムの生活は一変した。
中でもアルムが苦手とするのは、年に5回後宮の妃たちが参加しなければならない月酔の宴だった。ただの妃ならば年に2度の参加で済むけれど、アルムは全ての回に参加しなければいけない。それも、一度は主催として陛下の隣に並んで。
後宮で開かれる大規模な宴の主催は、皇后とそれに次ぐ四貴妃が持ち回る。侍女に指示を出し全体を統括するのは妃だから、開催日である満月が近付くと目に見えて忙しくなる。特に皇后が主催する回は末端の妃まで全員参加する盛大なものだから、陛下の訪れを拒むほどぐったりと疲れきってしまうのだ。
ただアルムが月酔の宴を厭うのは準備のせいではない。宴で出される大量の酒が、アルムの敵だ。
シトーレンにいた頃は、貴婦人同士の交流といえば小さなサロンに参加していたくらい。酒が振舞われる大人の世界は澪峯に来てからが初めてだ。
もちろん、飲んだことがないわけではないが、シトーレンは果実酒が好まれるのに対して、澪峯の酒は米酒。慣れない酒精は酔いが回りやすい。
とはいえアルムは酒には強い。だから、酔いよりも問題なのは、酒精の利尿効果だ。これには毎回困らされていて、席を辞すのが位の高い順じゃなかったら危うく皆の前で無様を晒していたかもしれない。
高貴な女性が宴を不浄で中座するのがみっともないのはシトーレンでも澪峯でも同じこと。年齢など関係ないし、成人していれば兆しすら悟らせないのが当然である。
ましてアルムは15歳。澪峯なら成人して数年経ち、公の宴に慣れていてしかるべき年齢なのだ。失態は当然許されない。
今宵の月酔の宴は皇后たるアルムが主催だ。四貴妃が主催の時より参加人数も多ければ演目の時間も多い。
妃たちが順に挨拶に訪れては盃を交わしていく。アルムと陛下のもつ盃には並々と極上の米酒が注がれる。同じものを妃にも注いでやり、3人で同時に煽るのだ。これを全員繰り返す。
全員参加の妃たちは百人を越えるため、いかに1杯が少ないといえど結構な量を飲む羽目になるのだ。しかも下位の妃にとっては数少ない陛下へ直接アピールできる機会だから、いちいち一人一人の挨拶が長い。消費された時間分下腹部を圧迫する。
全員の盃を受け終えた頃にはずっしりと下腹部が重かったが、このくらいなら慣れたもので重い正装に隠れた足だけピタリと閉じて、にっこり平静を装っていた。
ただ、いつもより溜まるのが早いのは確かなのだ。アルムは小さく眉根を寄せてこっそり下腹部に手を当てた。不安しかないが、やるしかないのだ。澪峯で一番高貴な女性なのだから。
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