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事件①
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律子の女優勧誘騒動が落ち着いて、しばらく経って。
私は相変わらず、家事を手伝う以外は何もしない毎日である。
「花嫁修行中ということでよろしいんですよ。世間のお嬢さんは、皆さんそんなもんです」
私の焦りに近い感情を察してか、婆やはそう言って慰めてくれる。すると私は、(それもそうね。焦ることはない)と安心したりして。
「それよりも、公威様とのご結婚、どうされるおつもりですか?」
しかし、婆やにそう言われると、私は答えに困るのだ。
公威さんは、急かすどころか何も言ってこない。
『いつまでも待ちます』と彼は言ったけれど、それは私のほうから、『お嫁さんにしてください』と言ってくるのを待つ、ということだったのか。
「自由戀愛の難しさよねえ」
律子は知ったかぶりで言うけれど、お仲人さんがいるわけではない、お膳立てされたものではない結婚って、どう進んでいくのだろう。
「お姉様はそもそも、公威様のことを本気でお好きなの? 何か意思表示なり、態度に示すなり、したことある?」
「そう言われてみたら、ないわね」
「なら、公威様もどうしたらいいかわからないじゃない」
本当のことを言うと、私はまだ迷っている。
利晴さんによって付けられた心の傷は意外に深く、公威さんが素敵な方とわかっていても、あと一歩踏み出していけない。
(ましてや、お二人はご兄弟なのだし)
『ふしだらな戀愛』と、利晴さんに言われたことも尾を引いているような気がする。
公威さんからは定期的にお誘いがあるので、私はそれを楽しみに、変わり映えのしない毎日を送っている。
退屈だけど平和。
しかし、その状態が永遠に続くわけではない。
(“命短し戀せよ乙女” っていうし。いつかは、なんとかしなくちゃ。でも、いつかっていつ?)
決めることのできない、頼りない自分のふがいなさに苛立つ。
私は相変わらず、家事を手伝う以外は何もしない毎日である。
「花嫁修行中ということでよろしいんですよ。世間のお嬢さんは、皆さんそんなもんです」
私の焦りに近い感情を察してか、婆やはそう言って慰めてくれる。すると私は、(それもそうね。焦ることはない)と安心したりして。
「それよりも、公威様とのご結婚、どうされるおつもりですか?」
しかし、婆やにそう言われると、私は答えに困るのだ。
公威さんは、急かすどころか何も言ってこない。
『いつまでも待ちます』と彼は言ったけれど、それは私のほうから、『お嫁さんにしてください』と言ってくるのを待つ、ということだったのか。
「自由戀愛の難しさよねえ」
律子は知ったかぶりで言うけれど、お仲人さんがいるわけではない、お膳立てされたものではない結婚って、どう進んでいくのだろう。
「お姉様はそもそも、公威様のことを本気でお好きなの? 何か意思表示なり、態度に示すなり、したことある?」
「そう言われてみたら、ないわね」
「なら、公威様もどうしたらいいかわからないじゃない」
本当のことを言うと、私はまだ迷っている。
利晴さんによって付けられた心の傷は意外に深く、公威さんが素敵な方とわかっていても、あと一歩踏み出していけない。
(ましてや、お二人はご兄弟なのだし)
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公威さんからは定期的にお誘いがあるので、私はそれを楽しみに、変わり映えのしない毎日を送っている。
退屈だけど平和。
しかし、その状態が永遠に続くわけではない。
(“命短し戀せよ乙女” っていうし。いつかは、なんとかしなくちゃ。でも、いつかっていつ?)
決めることのできない、頼りない自分のふがいなさに苛立つ。
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