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胸騒ぎ②
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「劇場で、知らない男性から『美人審査に出ませんか』って、声を掛けられたの。もちろんお断りしたんだけど、『映画に出ることができますよ、いかがですか?』って」
「美人審査ですって?」
母も私もびっくりだ。千代が「まあ! 素敵!」と興奮したような声を上げる。
律子が声を掛けられたこと自体は、そんなに不思議ではないような気もするが、映画出演のお誘いって普通にあるものなのだろうか?
「興味ないです、って答えてその場は終わったけど、その時思ったの。いろんなお仕事があるから、女優さんみたいに映画の製作に携わる女の人も、そりゃ沢山いるだろうなって。そういうお仕事をしている人って、家庭の運営どころじゃないわよねって」
「特殊なお仕事ですものね」
「私は、大学に行って新聞記者になりたいなんて、なんとなく今は思ってるけど、本当になれるのかなあって心配になるの」
「りっちゃんらしくもない、弱気になってるの?」
私がからかうように言うと、律子が顔を赤くして返事した。
「まあね。だって、映画を観てると思うわよ。思い通りの人生を送るなんて、私には無理だなって。特別な選ばれし人よね」
「何の映画を観たの?」
「『鉄の爪』っていう洋画。弁士の人が素晴らしく上手くて、もうすっかりのめり込んでしまったの!」
「どんな映画?」
「復讐に巻き込まれた令嬢と、彼女の危機を救う青年のお話よ。あんなにすごい人生を見ちゃったら……」
律子がホゥとため息をついて見せた。
婆やと母は、そんな律子の姿を微笑ましく眺めている。
「りっちゃんはまだまだ子供なのよ。映画の世界にうっとりしちゃって、ストーリィと自分の現実とが、ごちゃ混ぜになってるわね」
母は安心したように言った。
しかし、律子の『美人審査騒動』は、そこで終わらなかったのである。
「美人審査ですって?」
母も私もびっくりだ。千代が「まあ! 素敵!」と興奮したような声を上げる。
律子が声を掛けられたこと自体は、そんなに不思議ではないような気もするが、映画出演のお誘いって普通にあるものなのだろうか?
「興味ないです、って答えてその場は終わったけど、その時思ったの。いろんなお仕事があるから、女優さんみたいに映画の製作に携わる女の人も、そりゃ沢山いるだろうなって。そういうお仕事をしている人って、家庭の運営どころじゃないわよねって」
「特殊なお仕事ですものね」
「私は、大学に行って新聞記者になりたいなんて、なんとなく今は思ってるけど、本当になれるのかなあって心配になるの」
「りっちゃんらしくもない、弱気になってるの?」
私がからかうように言うと、律子が顔を赤くして返事した。
「まあね。だって、映画を観てると思うわよ。思い通りの人生を送るなんて、私には無理だなって。特別な選ばれし人よね」
「何の映画を観たの?」
「『鉄の爪』っていう洋画。弁士の人が素晴らしく上手くて、もうすっかりのめり込んでしまったの!」
「どんな映画?」
「復讐に巻き込まれた令嬢と、彼女の危機を救う青年のお話よ。あんなにすごい人生を見ちゃったら……」
律子がホゥとため息をついて見せた。
婆やと母は、そんな律子の姿を微笑ましく眺めている。
「りっちゃんはまだまだ子供なのよ。映画の世界にうっとりしちゃって、ストーリィと自分の現実とが、ごちゃ混ぜになってるわね」
母は安心したように言った。
しかし、律子の『美人審査騒動』は、そこで終わらなかったのである。
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