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書生さん

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 おば様は立ち上がり、外に向かって「ちょっと。誰かいる?」と女中さんを呼んだ。やがて現れた女中さんに、「今西さんを呼んでちょうだい」と伝える。

 しばらくして女中さんに連れられ現れたのは、いかにも “書生さん” といった姿の若い男性だった。
 おば様は、優しい目で男性を見ながら自慢げに言った。

「うちでお預かりしてる学生さん、今西さんとおっしゃるの。三高を出て帝大で勉強されてる方よ。いずれは京都の帝大に戻られる予定なんだけど、とても優秀で素敵な方だから、うちに来られるお客様みんなにご紹介してるんですよ」

 男性は恥ずかしそうに、もぞもぞ手を動かしたり、頭を掻いたりしている。

「今西さん、私どもの親戚筋に当たる淡路家のヤエさんと文子さんよ」

「どうも、今西太郎です」
 今西さんは、恥ずかしそうに私と母に向かってぺこりと頭を下げた。

「今西さん、文子さんって、本当にお綺麗なお嬢さんでしょ? あ! そうそう。ヤエさん、また律子さんも是非、うちに連れてきて頂戴な」

 おば様は意味ありげに母を見て、お茶をすすった。
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