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助力
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私たちは、しばし見つめ合う。
不意に、公威さんが人差し指を自分の唇に当てて頷いた。彼は落ちたタバコを踏み、無言で屋根の下まで歩いて来る。
両手を私たちに向けて伸ばし、公威さんは言った。
「気をつけて降りて」
どうやら、私たちがここから降りるのを手伝ってくださるみたいだ。
廊下の屋根から彼の指先まで三尺くらいか。千代が立ち上がり、飛び降りる。
公威さんは抱え込むようにして、千代が降りるのを助けてくれた。
「さ、あなたも」
公威さんに言われ、私も思い切って彼の腕めがけて飛んだ。
しかし、勢いがつきすぎたのか、公威さんの「わっ」という声もろともに、私たちは地面に倒れ込んでしまう。
「いてて」
私の下敷きになった公威さんは、呻くように言って笑った。
「すみません! 大丈夫ですか?」
とび跳ねるように立って、彼から離れる。
「大丈夫。そんなことより、何故こんなお転婆をなさっているんですか?」
公威さんも起き上がり、洋服をはたきつつ尋ねてきた。
「私、やっぱり利晴様のお嫁さんにはなれません。実家に帰らせていただきます」
誤魔化している暇はない。
「やはりそうですか」
公威さんはあっさりと、それ以上何も聞かずに、私たちの背中を押すようにして門から外に出た。
「草履を履いて。急ぎましょう」
私と千代は大きく頷く。
「少し行った所に俥屋があります。そこから先は人力車で帰れますから」
私たちは、人っ子ひとり歩いていない静かな通りを、小走りで駆けて行く。
途中、彼はチラッと後ろを振り返った。私もつられて振り返る。
合原家の提灯の灯だけが目に入ってきた。
「大丈夫みたいだ」
俥屋さんの門は、もちろん閉まっていたが、公威さんは遠慮なくドンドンと叩いた。
「へいへい、お待ちを」
奥から声がして、白髪頭の車夫さんが通用口から顔をのぞかせた。
不意に、公威さんが人差し指を自分の唇に当てて頷いた。彼は落ちたタバコを踏み、無言で屋根の下まで歩いて来る。
両手を私たちに向けて伸ばし、公威さんは言った。
「気をつけて降りて」
どうやら、私たちがここから降りるのを手伝ってくださるみたいだ。
廊下の屋根から彼の指先まで三尺くらいか。千代が立ち上がり、飛び降りる。
公威さんは抱え込むようにして、千代が降りるのを助けてくれた。
「さ、あなたも」
公威さんに言われ、私も思い切って彼の腕めがけて飛んだ。
しかし、勢いがつきすぎたのか、公威さんの「わっ」という声もろともに、私たちは地面に倒れ込んでしまう。
「いてて」
私の下敷きになった公威さんは、呻くように言って笑った。
「すみません! 大丈夫ですか?」
とび跳ねるように立って、彼から離れる。
「大丈夫。そんなことより、何故こんなお転婆をなさっているんですか?」
公威さんも起き上がり、洋服をはたきつつ尋ねてきた。
「私、やっぱり利晴様のお嫁さんにはなれません。実家に帰らせていただきます」
誤魔化している暇はない。
「やはりそうですか」
公威さんはあっさりと、それ以上何も聞かずに、私たちの背中を押すようにして門から外に出た。
「草履を履いて。急ぎましょう」
私と千代は大きく頷く。
「少し行った所に俥屋があります。そこから先は人力車で帰れますから」
私たちは、人っ子ひとり歩いていない静かな通りを、小走りで駆けて行く。
途中、彼はチラッと後ろを振り返った。私もつられて振り返る。
合原家の提灯の灯だけが目に入ってきた。
「大丈夫みたいだ」
俥屋さんの門は、もちろん閉まっていたが、公威さんは遠慮なくドンドンと叩いた。
「へいへい、お待ちを」
奥から声がして、白髪頭の車夫さんが通用口から顔をのぞかせた。
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