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妾と隠し子
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襖が開いて利晴様が、
「少し、文子さんと二人だけでお話ししたいのですが」
そう言うので、母はにこやかに返事した。
「ええ、どうぞ。私どもは先に披露宴の間に行かせていただきますね」
三人が部屋から出て行くのを待って、利晴様が控えの間に入って来た。彼は畳に正座する。私も、彼の正面に座った。
「何か、内緒のお話でもあるのですか?」
私はわざと、とぼけてみた。
「お綺麗だ。文子さんは本当にお綺麗だ」
虚をつかれ、びっくりした私は何も言えなくなってしまう。
「あなたを女学校の講堂で初めて見た時、自分の理想とする女性はこの世に存在するのだなあ、と驚きました」
そこまで褒められると、むしろ私は恥ずかしさからか嫌な気分になってしまう。天邪鬼と言われそうだけども。
「そのあとの正式なお見合いで、シュークリームを食べるあなたを見て、益々好きになりました。飾り気のないお人柄、全てが理想です」
「利晴様、急にどうされたのですか?」
「あなたを妻に迎えるに当たって、僕の過去の所業をお話しせねば、と悩みました」
胸がどきどきする。
「僕には妾と息子がいます」
ああ、やはり……。
「あなたのような人に出会えるとわかっていたら、彼女になんぞ手は出さなかったと思います」
「白瀬ミツさんですね」
利晴様は目を伏せて頷いた。
「彼女から聞いて驚きました。まさか、昨日ホテルにまで押しかけてくるとは思わなかった。事情を聞くと、どうしてもあなたを一目見たかったからということでした」
「利晴様は今後、どうされるおつもりですか?」
「あなたが許してくれるなら、今まで通り彼女達親子の面倒は見るつもりなのですが」
「ええっ?」
「少し、文子さんと二人だけでお話ししたいのですが」
そう言うので、母はにこやかに返事した。
「ええ、どうぞ。私どもは先に披露宴の間に行かせていただきますね」
三人が部屋から出て行くのを待って、利晴様が控えの間に入って来た。彼は畳に正座する。私も、彼の正面に座った。
「何か、内緒のお話でもあるのですか?」
私はわざと、とぼけてみた。
「お綺麗だ。文子さんは本当にお綺麗だ」
虚をつかれ、びっくりした私は何も言えなくなってしまう。
「あなたを女学校の講堂で初めて見た時、自分の理想とする女性はこの世に存在するのだなあ、と驚きました」
そこまで褒められると、むしろ私は恥ずかしさからか嫌な気分になってしまう。天邪鬼と言われそうだけども。
「そのあとの正式なお見合いで、シュークリームを食べるあなたを見て、益々好きになりました。飾り気のないお人柄、全てが理想です」
「利晴様、急にどうされたのですか?」
「あなたを妻に迎えるに当たって、僕の過去の所業をお話しせねば、と悩みました」
胸がどきどきする。
「僕には妾と息子がいます」
ああ、やはり……。
「あなたのような人に出会えるとわかっていたら、彼女になんぞ手は出さなかったと思います」
「白瀬ミツさんですね」
利晴様は目を伏せて頷いた。
「彼女から聞いて驚きました。まさか、昨日ホテルにまで押しかけてくるとは思わなかった。事情を聞くと、どうしてもあなたを一目見たかったからということでした」
「利晴様は今後、どうされるおつもりですか?」
「あなたが許してくれるなら、今まで通り彼女達親子の面倒は見るつもりなのですが」
「ええっ?」
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