魔風恋風〜大正乙女人生譚

花野未季

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決められる私の未来

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 その週末のこと、女学校から帰宅した私を待っていたのは、取手のおじ様だった。

「文子さん、早速だが、結納と婚礼の日取りが決まったんでね」
 客間に入るなり、おじ様に言われ、私はびっくり仰天。

 母はにこにこしていて、とても嬉しそうに私の反応を窺っているようだ。

「結納と婚礼の日取り、ですか?」

「気が早いかもしれんが、合原様からのお申し入れでね。これで家の先行きも安心だ」

「うちのお商売はどうなるのでしょう?」

「ああ、いずれは畳む方向になるね。しかし、この家の商売だって立派なもんさね。淡路屋海運を買い取らせてもらう、っていうお申し出なんだ」

「お母様はそれでよろしいのですか?」

「ええ、それが最良だと思うのよ。お婿さんに来ていただくのも考えましたが、どこかの事業家からの援助なしでは、商売を続けるのは無理です。それならいっそのこと、合原家の下に入るのが一番いいと思って決めました」

 律子が言っていた “施し” とは、このことか。
 既に一文無しになっている我が家は、本家の援助で土地を売り、当面の運転資金を得ることが出来ていた。しかし、男手も無く商売に疎い女子供ばかりでは、当面はお婿さんが来てくれる見込みは無さそうだ。

「利晴様がご立派でいらして、ご結婚を含め、夢のようなお申し出ですよ」

「文子さん、勝手に話を進めてすまんが、お前たち姉妹の将来も見据えて考えると、こうなったわけだ」

 母とおじ様は、ほっとしたように顔を見合わせた。

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