パンドラの予知

プロローグ

　神は、人間の最初の女性であるパンドラを地上に送り込んだ際に、彼女に箱を渡し「絶対に開けてはならない｣と、お命じになりました。
　ところが、パンドラは好奇心から箱を開けてしまいます。
　すると、待ってましたと言わんばかりに、中に入っていた不幸や災いが飛び出して、逃げて行ってしまったのです。
　慌てたパンドラがすぐに蓋をしたので、箱の下のほうに隠れていた『希望エルピス』だけが残りました。


　ーーーー
　有名なお話だけど、 “パンドラの箱” って、神様が人間に与えた試練だと思うの。
「絶対に開けてはならない」って言われたら、誰でも開けたくなるでしょう？

　えっ？ ひねくれすぎ？ そうかなあ。
　だって、神様は人間を作った時、『好奇心』ってものを与えたわけでしょ。
　「絶対に開けてはならない」なんて言われたら、我々人間は逆に、「絶対に開けてしまう」ものよ。

　パンドラが開けるってわかってて、神様はわざとそんなことを仰ったのよ、きっと。
　狙い通りというべきか、この世にはありとあらゆる不幸が撒き散らされちゃった。

　ところで、最後に残った『希望エルピス』の本当の意味、知ってる？
『希望エルピス』って『予知』っていう意味があるのよ。

　なんで急にこんな話してるの、って？
　それはね。
　私はパンドラの箱を持っているの。伝説のパンドラの箱。
　嘘じゃないわ。見て。今、私が持っているこの箱の中には、奥に『希望』が潜んでいるの。

　この箱、持ち主が代わる度にカタカタ揺れるのよ。揺れたら、開けて覗かなければならないの。
　そしたら、中から “誰か” 、ううん、“何か” が覗き返してくる。それは決して外に出ようとしないの。代わりに、その背後から何かがこっそり抜け出てくるの、多分。

　私？ もちろん開けたわ。
　そうねえ、何が出て来たと思う？
　今から私の話を聞いたら、何が出て来たか、わかるはずよ。