382 / 464
第九章 夏季休業
国王の帰還と……
しおりを挟む
マリアたちと別れた国王たちは、残っていた者たちもあっさりと無力化するとエリーザに後のことは体よく押し付け、大量の怪我人を連れて城に戻った。
「……この者たちは?」
仕事を放って姿を消した国王の帰りを今か今かと待ち構えていたリンリーは見覚えのない重傷者の山に怒りを忘れ、呆れることしかできなかった。
「んっ?ああ、この者たちは治療を施して地下牢に放り込んでおいてくれ。侍医が抜けてヒイヒイ言っているあいつらの良い練習になるだろう」
質問に答えているようで答えていないずれた返答にリンリーは溜息を吐く。
「誤魔化さないでください。この者たちはどこのどなたたちなのです?」
「……」
「お答えください」
リンリーの追及に国王は冷や汗をかいた。そして助けを求めるように宰相の方を見たが──。
「……こちらを見て、どうしたのです?」
笑顔で躱されてしまった。
結局国王が涙目になりながら、今回の顛末について吐くまでリンリーの追及は終わらなかった。
「……いったい……いったい何をなさっているのです!?」
話を一通り聞き終わると、リンリーはどこからか取り出した木製のお盆で全力で国王に殴りかかった。
「っ!?何をする!?」
咄嗟に上半身を捻ることでそれを回避した国王はリンリーを睨みつけた。
「……何を?ご自身の行動を振り返ってかそれは仰ってもらえます?」
鈍く銀色に輝くお盆を再度振りかぶるリンリー。いつの間にかお盆の材質が変わっている。
「……流石にそれはやめてください」
その腕を宰相が掴んで止める。
それを見て国王は助かったとホッと息を吐いた。
「……金属製は洒落になりませんから、やるんでしたらこちらでお願いします」
にこやかな笑顔で身長の半分ほどもある巨大ハリセンを手渡す。
「仮にも国王の名を冠する者に怪我をさせるわけにはいきませんからね」
「……っ!?エルマンっ!?」
自分を売る気かと国王は愕然とした表情を浮かべる。
「……最近の貴方の行動は少々目にあまりますからね。少しは反省してください」
その言葉が告げられるのとほぼ同時にハリセンが振り下ろされる。
スパーンっ!
「痛っ!?……くない?」
派手な音ほど痛みがないことに首を傾げる。
「……怪我をさせるわけにはいかないと言ったでしょう?あっ、それは差し上げますので」
「あら、良いんですか?」
「他に使い道がない物ですので……有効活用してやってください」
「……そういうことでしたらありがたく使わせていただきます」
しばらく国王はハリセンで頭を叩かれる日々を送る羽目になりそうだった。
「……この者たちは?」
仕事を放って姿を消した国王の帰りを今か今かと待ち構えていたリンリーは見覚えのない重傷者の山に怒りを忘れ、呆れることしかできなかった。
「んっ?ああ、この者たちは治療を施して地下牢に放り込んでおいてくれ。侍医が抜けてヒイヒイ言っているあいつらの良い練習になるだろう」
質問に答えているようで答えていないずれた返答にリンリーは溜息を吐く。
「誤魔化さないでください。この者たちはどこのどなたたちなのです?」
「……」
「お答えください」
リンリーの追及に国王は冷や汗をかいた。そして助けを求めるように宰相の方を見たが──。
「……こちらを見て、どうしたのです?」
笑顔で躱されてしまった。
結局国王が涙目になりながら、今回の顛末について吐くまでリンリーの追及は終わらなかった。
「……いったい……いったい何をなさっているのです!?」
話を一通り聞き終わると、リンリーはどこからか取り出した木製のお盆で全力で国王に殴りかかった。
「っ!?何をする!?」
咄嗟に上半身を捻ることでそれを回避した国王はリンリーを睨みつけた。
「……何を?ご自身の行動を振り返ってかそれは仰ってもらえます?」
鈍く銀色に輝くお盆を再度振りかぶるリンリー。いつの間にかお盆の材質が変わっている。
「……流石にそれはやめてください」
その腕を宰相が掴んで止める。
それを見て国王は助かったとホッと息を吐いた。
「……金属製は洒落になりませんから、やるんでしたらこちらでお願いします」
にこやかな笑顔で身長の半分ほどもある巨大ハリセンを手渡す。
「仮にも国王の名を冠する者に怪我をさせるわけにはいきませんからね」
「……っ!?エルマンっ!?」
自分を売る気かと国王は愕然とした表情を浮かべる。
「……最近の貴方の行動は少々目にあまりますからね。少しは反省してください」
その言葉が告げられるのとほぼ同時にハリセンが振り下ろされる。
スパーンっ!
「痛っ!?……くない?」
派手な音ほど痛みがないことに首を傾げる。
「……怪我をさせるわけにはいかないと言ったでしょう?あっ、それは差し上げますので」
「あら、良いんですか?」
「他に使い道がない物ですので……有効活用してやってください」
「……そういうことでしたらありがたく使わせていただきます」
しばらく国王はハリセンで頭を叩かれる日々を送る羽目になりそうだった。
0
お気に入りに追加
857
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます
兎屋亀吉
恋愛
ヨナーク伯爵家の令嬢アリシアは幼い頃に顔に大怪我を負ってから、霊を視認し使役する能力を身に着けていた。顔の傷によって政略結婚の駒としては使えなくなってしまったアリシアは当然のように冷遇されたが、アリシアを守る守護霊の力によって生活はどんどん豊かになっていった。しかしそんなある日、アリシアの父アビゲイルが亡くなる。次に伯爵家当主となったのはアリシアの妹ミーシャのところに婿入りしていたケインという男。ミーシャとケインはアリシアのことを邪魔に思っており、アリシアは着の身着のままの状態で伯爵家から放り出されてしまう。そこからヨナーク伯爵家の没落が始まった。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる