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第九章 夏季休業

問題

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「……いや、それは無理だ」

 少し言い辛そうにアルフォードが口を挟む。

「えっ?なんで?」
「いや、なんでって、ここ魔術が使えないぞ」
「えっ?嘘」

 慌てて確認するためにアイテムボックスから適当なものを取り出そうとする。

「えっ?あれ?なんで?」

 魔力が減る感覚はあるにも拘わらず、使用できない事実に目を白黒させる。

「やられたな。この牢、魔術封じの魔法陣がどこかに刻んである。それを壊さないと魔術は使用できない」
「え~、そんなものどこにあるの?」
「それを今から探すんだ。なにせ魔力を放出した端から吸い取られる。魔術封じ自体は簡単な上に偽装までされているようだし、この分だとかなり時間がかかるぞ」
「え~」

 魔術が使うこともできなければ普通に魔法陣を見ることもできないマリアにできることは応援ぐらいしかなかった。アルフォードも頼れるのは自分の目だけだった。

「……ちょっと時間をくれ。頑張って探す」
「うん」

 通常だったら無理難題でも時間があれば見つけられると言い切れるあたり、なかなかにおかしかった。
 アルフォードは素早く周囲を見回す。

(床は石が剥き出し。ってことは消えるリスクが高いから床は除外。壁も……床の付近、目の高さから腰のあたりも手をつく可能性があるから除外。作業のし易さも考慮すると天井の線は薄い、か)

 アルフォードが魔力の消費で痛む頭と格闘しながらも、直径が小指の長さほどもない魔法陣を発見したのはそれから10分後のことだった。

◇◆◇

「ここで大人しくしてろ!」

 ベルは地下の一室にあった檻の中に投げ込むように入れられた。ガチャンという無機質な鍵の閉まる音が響く。
 そのまま兵士は足早に部屋を出ていき、ご丁寧にドアにも鍵をかけていった。

「イッタ~」

 服の襟を掴むように運ばれたことで、ベルは軽く首を痛めていた。檻に放り込まれた際に擦り傷も少々。自他共に認める最弱の呼び名は伊達ではない。

(もっと運び方考えて欲しい)

 心の中で文句を言いつつもベルに困った様子はない。

「……ヨカッタ。コレナラ」

 檻に付いている南京錠を確認するとホッと息を吐く。

「『かぎヨ、なんじハ、われノいくてヲ、はばむものニあらず、《かいじょうオープン》』」

 《森林再生》ほど練習していない呪文はたどたどしい。魔術自体は発動し、鈍い音と共に錠が外れる。だが錠自体が強い力で捩じ切られたかのように変形していた。

(要練習)

 結果オーライだと妥協はしない。練習が足りないと気持ちを新たにする。ベルはどこまでも努力家だった。

☆★☆★☆

近況ボードの方にお知らせを追加したのでご覧ください。
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