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第九章 夏季休業

影の行動

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 2日後、7人は街道を歩いていた。服装も極々普通の旅装だがどこか周囲から浮いていた。

「何が違うのかの?」

 さっきから変に視線を集めて首を傾げる。

「……見た目?」

 明らかに冒険者の男4人に冒険者か一般人か不明な青年、どこからどう見ても非戦闘要員の老人となぜか肩にアルラウネの変異種らしき魔物を乗せた子ども。これが後者が馬車に乗っていたら良いが、一緒に歩いているとなる話は変わる。なにせ商人でもない限りこの人数なら護衛は2、3人で十分であり、それなりのランクの冒険者2人に護衛を依頼をするお金で十分馬車が借りられるのだから。
 しかし誰もそのことに気づかない。
そもそも馬車ではなく徒歩で移動しているのは誰も馭者ができないからであり、最初から選択肢にはない。いや、正確にはダスケルができるのだが、彼がやると馬車の内部がおそろしく揺れ、酔う者が続出するのだ。

「でもそんなの変えようがないしなぁ」
「……全員が歩いているからじゃないか?普通マリアちゃんぐらいの歳の子やラリーさんぐらいの歳の人は馬車に乗るか馬に乗るかしているし……」
「次の街で調達するか」
「えっ?大丈夫だよ」

 マリアはサウリの提案を笑顔で一蹴する。

「えっ?」
「『出でよ、わが友よ《召喚サモン》』」

 人目も気にせずユニコーンを人数分の7頭召喚する。さっきとはまた違う意味で注目を浴びる。

「……ユニコーン。マリアちゃん、いったいいつ出会ったんだ?」
「えっと、冒険者になって少しした頃。サウリさんに会ったのよりも前」
「……マリアちゃんだしな」
「……マリアちゃんだからな」
「……マリアちゃんだもんな」
「……マリアちゃんだしなぁ」

 苦笑いしながら呟く冒険者組4人。

「……皆失礼じゃありません?」

 納得が行かず頬を膨らませる。

「……マリア、アキラメル。イマサラ」
「……ベルまでそんなこと言うの」
「ウン。モウテオクレ。アキラメタホウガイイ」
「……少しはフォローしてくれても良いじゃない」
「……ヘヤニオイテカレタウラミ、ワタシマダユルシテナイ」
「うっ」

 レリオンとアルフォードはそれを微笑ましそうに見ていた。

「随分と仲が良いの」
「そうだな。それにしても……少し姿を見ないうちにだいぶ話し方が流暢になったな」

 部屋に放置されて(あるいは熟睡していたともいう)置いてきぼりをくらったベルは最近では自力で窓から外に出る術を見につけていた。ドアからではなく窓から出入りしているのは単純に部屋のドアが外に開くタイプであり、自力では開けられない為だ。
 そして1人で勝手に学園内をウロチョロしていた。廊下なども飾り物が点在している為、ベルのサイズでは意外と隠れられるものが多く、人が来るたびに隠れてやり過ごしていた。今まで誰かに見つかったことはない。マリアが部屋に戻った時には既に部屋にいるのでマリアすらもそのことを知らない。
 なお、隠れて様々な学年、クラスの授業もかなり聞いており、知識だけはいつの間にか豊富になっていた。最近では文字をマスターすることが目標になっている。
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