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第七章 それぞれの過ごす日々

グランファルト子爵家の改革(3)

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 一方ギルゲルムたち3人は連れ立って執務室に向かって歩いていた。途中何事かと止めようとする使用人も何人かいることにはいたが、すべて無視して進む。

「お待ちください!ギルゲルム様、ガルティス様、アーノルド様!」

 執務室に着く頃には何人もの使用人を引き連れている図式になっていた。とは言っても3人と使用人たちに協力関係などないが。

「……これはいったい何事です?」

 執務室の扉の前に控えていた執事は身構えた。普段子息が3人も揃って執務室に来ることなどない。

「……ちょっと父上に用があってね。通してくれるかい?」

 ギルゲルムは温厚な笑みを浮かべていた。だが執事にはそれが何かの仮面のように思え、嫌な予感に襲われた。

「……それはできかねます」

 だからこそ拒否の意を表した。

「……それはなぜだい?」

 ギルゲルムも断られるとは思っていなかった。そのため僅かな時間だが思考が停止してしまった。

「……お三方揃ってこの中に入れることなど。どなたか代表してもらうわけには……」

 この提案をしても嫌な予感は去らなかった。

「そうしたいのは山々なんだが、今回父上への用は1人1人報告しなければならないことが違っていてね。何せそれぞれの専門のことだから」

 ギルゲルムは領地の政務全般。ガルティスは社交全般。アーノルドは領主軍全般。それぞれの専門分野が違っていた。

「……それでは仕方ありませんね」

 執事は渋々3人を通した。

コンコン

「誰だ!?」

 ノックをすればすぐに怒鳴り声が返ってきた。

「ギルゲルムです。ガルティスとアーノルドも一緒です。緊急に報告したいことがあるのですが」
「そんなもの後にしろ!」

 ギルゲルムは内心溜息を吐いた。

(……緊急の要件だと言っているのに、内容も聞かずにこれか)

 失望と憤り。他の2人も内容は違えど似たようなことを感じていた。

「……アーティスにも関わることなのですが」

 ギルゲルムはこれでダメなら強行突破しかないと思っていた。幸いと言ってはなんだが、末端貴族といっても過言ではないグランファルト子爵家には魔術師の、貴族の使用人など1人もいなかった。3人が本気を出せば力強くで通ることは容易い。

「なんだと!?すぐに入れ!」

 返ってきた言葉は歓喜に満ちていた。それすらも3人には更なる失望の材料にしかならなかった。3人の父親に対する評価はすでに零を通り越してマイナスに振り切れていた。
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