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第三章 魔術の授業

ギルドマスター

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 マリアが男の扱いに困っているとギルドの職員の男性が近づいてきた。

「えっと、今日登録された方ですよね?ギルドマスターがお呼びです。この男についてはこちらで処理をしますので、放っておかれて結構です」

 そのままついて行くと、2階の部屋に通された。

「こちらです」

 部屋には立派な執務机があり、若い青年が座っていた。

「案内ありがとうね。通常業務に戻って良いよ」

 案内をした男性は一礼すると部屋から出ていった。

「もうわかっていると思うけど、僕がギルドマスターのレオナールだ。よろしくね。君たちのことは聞いているよ。普通の一冒険者として扱ってくれといわれているからこの喋り方で我慢してね」

 そこまで一息で言うと4人を見回した。

「さて、君たちを呼んだ理由だけど……ゴブリンの集落を潰したって本当?」
「ええ、まあ」
「それじゃあ訊くけど、どれくらい取り逃がした?数によっては緊急依頼を出さなければいけないからね」

 4人は顔を見合わせた。

「僕の方は逃げたやつはいないけど皆は?」
「こっちもだ」
「私の方もよ」
「少なくとも逃げたやつは見てないけど……」
「ということはいたとしても数匹か」

 アルフォードはレオナールに向き直ると言った。

「聞こえていたと思いますけど、いたとしても数匹です」
「その根拠は?」
「そこは急な崖の下だったんですけど、崖以外の三方位に一人ずつ待機して、崖の上から少し派手な魔術を撃ち込んだんです。本当はその後、残ったやつを殲滅していく予定だったんですけど……」
「それだけで片がついちゃったのよね」
「僕は火事になるってパニックになったけどね。あれは軽くトラウマだよ」
「……どんなのを使ったのかは聞かないけど、それだったら大丈夫そうだね。もう帰っても良いよ」

 レオナールは若干呆れた顔をした。

「最後にこれは助言。たかがゴブリンといえど新米が全滅させたんだからかなり目立っているはずだよ。絡まれるかもしれないから頑張ってね。本当はあの依頼、ある程度ゴブリンの数を減らしてくれれば良かったんだよ?」

 隅に討伐数何体以上って書いてあったでしょう?と言われてしまった。4人は次からは隅まで依頼書を読むことを心に誓った。
 まさか受け取った金額のせいですでに絡まれたとは言えず、別れの挨拶をすると部屋を後にした。

「明日は普通に授業かぁ」

 帰り道でアーティスがそんなことを言った。

「そんなこと言わないの。明後日またあるでしょう?」

 学園には魔術関連の授業の他に、計算や歴史などの一般教養の授業もある。今回授業内容変更に伴い、一日にその授業が集中して行われることになった。

「それはわかってるんだけどさ~」

 寮に帰り着くまで、アーティスは文句を言い続けた。

☆★☆★☆

第三章は一応これで終了です。間に2つほど閑話を挟んで新章になります。
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