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本編

最終話 来季に向けて

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「さて、では今季の幹部会を始めるぜ」

ヤーゴが残りの四人を前に宣言する。
ビビ子は幹部と言う立場では無く、食客の立場だったが参加を申し出た。
流石にヤーゴは反対したが、牛嶋らの別に構わないと言う鶴の一言で参加が認められた。

ビビ子もダメ元での参加申請だったのだが言ってみるものである。
基本的にこの人達はノーとは言わない。
やはり妙な組織だ。

「前季は結構忙しかったが、まあそれなりに実入りも大きかったので収益は二百パーセント以上の増収だ。本業とは違うが化け物討伐関連の収益が大きい。いや、大き過ぎる」

ヤーゴは壁に貼り出したグラフを示した。
こんな物まで用意して実に仕事が細かい。

「他に煙草の生産も好調だ。何と言っても水源確保に伴う効率性の増加が大きい。収穫量も増加の見通しだ」

唯桜はこの手の話にはあまり興味が無い。
あくびを噛み殺しながら座っていた。

「で、例の酒を密造する件だが、こっちはもう少し掛かりそうだ。中々酒造と言うのは難しいようだね。低品質の物しか今の所は作れていない」

唯桜が初めて意見する。

「それを優先しろよ。俺はそれを待ってんだよ」

単純に自分が飲みたいだけだろうと、四人は内心突っ込んだ。

煙草の密造に、酒の密造。
やはり悪の組織としてやる事はやっていると言う所か。
ビビ子は頷いた。

ヤーゴの強い反対により、せめてメモをとる様な事は禁止すべきだと言う訳で、筆記用具の持ち込みは禁止された。
ビビ子はなるべく暗記に努めていた。

「今季も化け物討伐の募集は多いが……」

ヤーゴはまた書類を取り出した。

「これまでの実績を知った各自治体や、依頼主から個別に討伐依頼が来始めている。こう言うのは報酬の旨味が凄いのでなるべく請けたいと思ってるんだが……」

ヤーゴが両手をテーブルに突いた。

「これはお三方の意見を聞いてからじゃないと、流石に決められねえからなあ」

すぐさま唯桜が口を開く。

「反対」

ヤーゴが、えっと声を上げた。
議論も無しなの?  と唯桜を見る。

「唯桜さあん。もう少し前向きに……」
「嫌だね。面倒な仕事ばっかりよこしやがって。もう少し俺達個人に旨味のある話を取ってこいよ」

唯桜はそっぽを向いた。
相変わらず子供っぽい。

「化け物討伐はやった方が良いと思います。何より人々の為です。困っている人が大勢待っている筈です」

ビビ子が意見した。

「客人は黙ってろよ。これはあくまで幹部会だ。俺はやらねえ」

唯桜の意思は固かった。
無理も無い。怪我だってまだ完治していないのだ。

「ビビ子ちゃんは本当に真面目な子ねえ。ふふ」

美紅が妖しい笑みを浮かべてビビ子を見る。
ビビ子は何故か照れた。
褒めてねえんじゃねえか?  と唯桜は思ったが放っておく。

「もしやるなら私も全力でお手伝いします!」

ビビ子が更に声のトーンを上げる。
なんでこんなに働きたいのか、唯桜には理解が出来ない。

「とにかく俺はパスだ。やるならおめえらでやれ」

唯桜はそう言ったきり腕組みをした。
ヤーゴは困ってしまった。
こうなると唯桜は他人の意見を完全にシャットアウトする構えだからだ。

「と、とにかく一応そんな感じの方針で今季も行こうと考えてる」

ヤーゴは何とかまとめた。
もう少し資金に余裕も欲しい所である。
今は何故か大人しいロッゴ率いるネグラムと、黒いカラスにも警戒は続けなければならない。

戦力的には心配なかったが、数的優位は向こうにある。
展開次第では苦戦は必至だ。

ヤーゴは数的不利を埋める為にも、資金とコネの両方を獲得出来る討伐依頼はどうしても受けておきたかった。

まあ、今はこの話は置いておこう。
ヤーゴはそう判断した。

そろそろ初夏を終え、夏本番を迎える季節だった。
ヤーゴは窓から外を見た。
快晴である。
太陽が強い陽射しを放っていた。

この組織を何としても拡大しなくては。
ヤーゴの思いはあの太陽の様に更に熱く燃え上がっていた。
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