見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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八二三

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「王さま少し借りるけど良いかしら?」

 ウロコフネタマイトはそう言うとツカツカと国王へ歩み寄る。

 良いかしら?なんて言っているが、そもそも誰が拒否権を持っているのやら。
国王本人がグロッキー状態なのに。

「王さま。私と一緒にお家に行きましょうね」

 国王がウロコフネタマイトを見上げる。
子供のようだ。

「よいしょ」

 ウロコフネタマイトは口ではそう言いながら、実に容易に国王を持ち上げた。

「待て!待ってくれ!」

 ケンが慌てふためく。

「気になるならアナタもいらっしゃい。ちゃんと返してあげるから」

 ウロコフネタマイトはそう言ってケンを招いた。
そんなにホイホイ連れて行って良いのか?

 俺は国王をウロコフネタマイトに任せて宰相を捕まえた。

「お前も来い」

 襟首をむんずと掴まえる。
まだ何も終わっていない。
子供たちを開放して、黒幕を明らかにするまで終わらない。

 ウロコフネタマイトに付いて城の外へ出る。
城門前にメタルシェルが堂々と横着けしてある。
そこにはネオジョルトの戦闘員が『車』とか言う例の乗り物で大挙して集結していた。

「ウロコフネタマイト様。子供たちは保護済みです。例の廃墟都市の子供たちも保護完了しました!」

 戦闘員の一人がウロコフネタマイトに報告する。
この声は宿屋のオヤジだな。

「そう。じゃあこの者たちを乗せたら拠点に戻って頂戴」

「了解しました!」

 ウロコフネタマイトはそう言うと自らメタルシェルに乗り込む。
俺はそれに続き、その後にケンが続いた。

「おい……いったいこれは」

 ケンが物珍しそうにキョロキョロと辺りを見回した。
俺は何も言うつもりは無い。
代わりにウロコフネタマイトが口を開いた。

「今から私たちのお家に招待するのよ。このおじ様には質問があるの。王さまは簡単な処置をしてからお城に還してあげましょうね」

 まるで子供に言うようにウロコフネタマイトは国王の頭を撫でた。
逆に何だか怖いな。

「国王陛下におかしな真似はしない……よね?」

 ケンが不安そうにウロコフネタマイトに念をおす。

「大丈夫よ。ただちょっとね」

 ウフフフとウロコフネタマイトが含み笑いをする。
何をする気だ。
封印もせずにどんな処置をして返すつもりなのか。

 ウロコフネタマイトが変身を解く。
俺もそれに倣って変身を解いた。

「君たちはいったい……」

 ケンが呟く。

「我々は秘密結社ネオジョルト」

「秘密結社ネオジョルト……何が目的なんだ?」

「ネオジョルトの目的は世界征服」

「せ、世界征服!?」

 俺の言葉にケンは驚いた。

「ほ、本気かい?」

「本気だ。出来ると思うからここまで真面目にやっている」

 ケンは額の汗を拭った。

「そんな事を本気で出来るとは……」

「魔王以外はそんな馬鹿げた事は言い出さないだろうと普通は思う。だがネオジョルトにはそれが可能な力がある。魔王の世界征服は勇者の出番だが、さて、お前はどうする?」

 俺はケンを見た。
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