808 / 826
八〇七
しおりを挟む
「ブモオオオオゥ!」
ミノタウロスが渾身の力で斧を振り下ろす。
城内で武器まで持たせるとは、ミノタウロスの制御に絶対の自信を持っているのか。
それとも考え無しか。
いや、モンスターをずっと制御しているのを見てきた。
こいつもおそらくは。
ドゴオオオッ!
バキバキバキメキ!
床が砕けた。
巨大な斧の刃が床にめり込んでいる。
兵士たちも宰相も喜びの表情を見せた。
ワアアアアア!
歓声が湧き上がる。
ウロコフネタマイトの姿は無い。
おそらく斧の下敷きだろう。
つまり、床の下だ。
「化け物め!思い知ったかッ!」
宰相が口走る。
ケンの顔には絶望の表情が張り付いている。
「そ……そんな!令子さん!」
令子さん?
いつの間にそんな仲に。
まあ、それはともかく。
鳴り止まない歓声の中、ケンが一人拳を振るわせる。
「よくも……よくも!」
ケンが怒りを爆発させた。
その時。
グググ……メキメキ……ガラガラ
ミノタウロスの斧が床から押し返される。
まだ誰も気が付いていない。
ミノタウロスだけがそれに気付いた。
ボコオ
床下からウロコフネタマイトが現れる。
片手で斧の刃を掴まえている。
兵士たちの歓声が、ピタリと止んだ。
こんなにピタッと止まる事なんてあるのか。
初めて見た。
「せっかく湧いていたのに、ご免なさいね」
ウロコフネタマイトはそう言うと、静かに『ふふふ』と笑う。
俺の背筋に冷たいモノが走る。
恐ろしい。
改めてそう思った。
敵じゃなくて本当に良かったと心から思う。
「ルロロロロロロロオオッ!」
ガンッ!ガンッ!ガンッ!
ドカドカドカドカ!
ミノタウロスが狂ったように斧を振った。
何度も何度もウロコフネタマイトを打つ。
微塵切りにでもするつもりか。
その切り方では跡形も残らないぞ。
だが。
「んもう、乱暴ねぇ。所詮、頭はただの牛なのかしら」
ウロコフネタマイトは歯牙にも掛けない。
全くの平然だった。
蚊が刺した程にも気にしていない。
俺は呆れた。
いくら何でもここまでノーダメージなのか。
どうやってダメージを与えれば良いのか。
俺にさえ思い付かない。
「な、ななななな何だとお!」
宰相が目を白黒させる。
心臓が止まるんじゃ無いのか。
俺は余計な心配をする。
兵士たちもあんなに湧き上がっていたのに、今はシーンと静まり返っていた。
「もう良いかしら?良いわよね」
ウロコフネタマイトはそう言って、床の穴から完全に出て来た。
ガラガラガラガラ
手で体を払う。
砂埃を気にしているのか。
「令子さん……!」
ケンの顔がパッと明るくなった。
ツカツカツカツカ
ウロコフネタマイトが躊躇無くミノタウロスに歩み寄る。
ぶうん!
ミノタウロスが自らの拳でウロコフネタマイトを潰しに掛かる。
しかし、それを簡単にかわしながらウロコフネタマイトはミノタウロスの腕へと飛び付く。
たん、たん、たん
軽々と腕から肩へ、そして頭へと登っていく。
ミノタウロスはそれを払おうと手でウロコフネタマイトを追う。
だが、全く捕まえられなかった。
「牛肉……よね?」
ウロコフネタマイトはそんな事を呟いて、頭の上で胸と腹から消化液を分泌した。
ダラダラと透明な粘液がウロコフネタマイトの体の前面から滲み出る。
装甲の隙間から垂れ流す超強力な消化液が、ミノタウロスの頭に掛かった。
じゅううううぅぅぅ
ミノタウロスの頭から白煙が上がる。
「ブモオオオオ!ブモオオオオゥ!」
ミノタウロスが悲鳴を上げる。
バンッ!バンッ!バシッ!
狂ったように自分の頭を叩く。
いや、頭上のウロコフネタマイトを叩いているのだ。
しかし、当然ながらウロコフネタマイトはビクともしていない。
ミノタウロスにしがみ付くようにして、体を押し付けていた。
じゅううううぅぅぅ
「ブモオオオオゥ!」
その光景に全員が凍り付く。
ケンでさえ立ち尽くしてその様子を見上げていた。
そりゃ、そうだよな。
この光景を見れば令子への印象も相当変わる。
勝負あったな。
ミノタウロスが渾身の力で斧を振り下ろす。
城内で武器まで持たせるとは、ミノタウロスの制御に絶対の自信を持っているのか。
それとも考え無しか。
いや、モンスターをずっと制御しているのを見てきた。
こいつもおそらくは。
ドゴオオオッ!
バキバキバキメキ!
床が砕けた。
巨大な斧の刃が床にめり込んでいる。
兵士たちも宰相も喜びの表情を見せた。
ワアアアアア!
歓声が湧き上がる。
ウロコフネタマイトの姿は無い。
おそらく斧の下敷きだろう。
つまり、床の下だ。
「化け物め!思い知ったかッ!」
宰相が口走る。
ケンの顔には絶望の表情が張り付いている。
「そ……そんな!令子さん!」
令子さん?
いつの間にそんな仲に。
まあ、それはともかく。
鳴り止まない歓声の中、ケンが一人拳を振るわせる。
「よくも……よくも!」
ケンが怒りを爆発させた。
その時。
グググ……メキメキ……ガラガラ
ミノタウロスの斧が床から押し返される。
まだ誰も気が付いていない。
ミノタウロスだけがそれに気付いた。
ボコオ
床下からウロコフネタマイトが現れる。
片手で斧の刃を掴まえている。
兵士たちの歓声が、ピタリと止んだ。
こんなにピタッと止まる事なんてあるのか。
初めて見た。
「せっかく湧いていたのに、ご免なさいね」
ウロコフネタマイトはそう言うと、静かに『ふふふ』と笑う。
俺の背筋に冷たいモノが走る。
恐ろしい。
改めてそう思った。
敵じゃなくて本当に良かったと心から思う。
「ルロロロロロロロオオッ!」
ガンッ!ガンッ!ガンッ!
ドカドカドカドカ!
ミノタウロスが狂ったように斧を振った。
何度も何度もウロコフネタマイトを打つ。
微塵切りにでもするつもりか。
その切り方では跡形も残らないぞ。
だが。
「んもう、乱暴ねぇ。所詮、頭はただの牛なのかしら」
ウロコフネタマイトは歯牙にも掛けない。
全くの平然だった。
蚊が刺した程にも気にしていない。
俺は呆れた。
いくら何でもここまでノーダメージなのか。
どうやってダメージを与えれば良いのか。
俺にさえ思い付かない。
「な、ななななな何だとお!」
宰相が目を白黒させる。
心臓が止まるんじゃ無いのか。
俺は余計な心配をする。
兵士たちもあんなに湧き上がっていたのに、今はシーンと静まり返っていた。
「もう良いかしら?良いわよね」
ウロコフネタマイトはそう言って、床の穴から完全に出て来た。
ガラガラガラガラ
手で体を払う。
砂埃を気にしているのか。
「令子さん……!」
ケンの顔がパッと明るくなった。
ツカツカツカツカ
ウロコフネタマイトが躊躇無くミノタウロスに歩み寄る。
ぶうん!
ミノタウロスが自らの拳でウロコフネタマイトを潰しに掛かる。
しかし、それを簡単にかわしながらウロコフネタマイトはミノタウロスの腕へと飛び付く。
たん、たん、たん
軽々と腕から肩へ、そして頭へと登っていく。
ミノタウロスはそれを払おうと手でウロコフネタマイトを追う。
だが、全く捕まえられなかった。
「牛肉……よね?」
ウロコフネタマイトはそんな事を呟いて、頭の上で胸と腹から消化液を分泌した。
ダラダラと透明な粘液がウロコフネタマイトの体の前面から滲み出る。
装甲の隙間から垂れ流す超強力な消化液が、ミノタウロスの頭に掛かった。
じゅううううぅぅぅ
ミノタウロスの頭から白煙が上がる。
「ブモオオオオ!ブモオオオオゥ!」
ミノタウロスが悲鳴を上げる。
バンッ!バンッ!バシッ!
狂ったように自分の頭を叩く。
いや、頭上のウロコフネタマイトを叩いているのだ。
しかし、当然ながらウロコフネタマイトはビクともしていない。
ミノタウロスにしがみ付くようにして、体を押し付けていた。
じゅううううぅぅぅ
「ブモオオオオゥ!」
その光景に全員が凍り付く。
ケンでさえ立ち尽くしてその様子を見上げていた。
そりゃ、そうだよな。
この光景を見れば令子への印象も相当変わる。
勝負あったな。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね? 魔道具師として自立を目指します!
椿蛍
ファンタジー
【1章】
転生し、目覚めたら、旦那様から離縁されていた。
――そんなことってある?
私が転生したのは、落ちこぼれ魔道具師のサーラ。
彼女は結婚式当日、何者かの罠によって、氷の中に閉じ込められてしまった。
時を止めて眠ること十年。
彼女の魂は消滅し、肉体だけが残っていた。
「どうやって生活していくつもりかな?」
「ご心配なく。手に職を持ち、自立します」
「落ちこぼれの君が手に職? 無理だよ、無理! 現実を見つめたほうがいいよ?」
――後悔するのは、旦那様たちですよ?
【2章】
「もう一度、君を妃に迎えたい」
今まで私が魔道具師として働くのに反対で、散々嫌がらせをしてからの再プロポーズ。
再プロポーズ前にやるのは、信頼関係の再構築、まずは浮気の謝罪からでは……?
――まさか、うまくいくなんて、思ってませんよね?
【3章】
『サーラちゃん、婚約おめでとう!』
私がリアムの婚約者!?
リアムの妃の座を狙う四大公爵家の令嬢が現れ、突然の略奪宣言!
ライバル認定された私。
妃候補ふたたび――十年前と同じような状況になったけれど、犯人はもう一度現れるの?
リアムを貶めるための公爵の罠が、ヴィフレア王国の危機を招いて――
【その他】
※12月25日から3章スタート。初日2話、1日1話更新です。
※イラストは作成者様より、お借りして使用しております。
千技の魔剣士 器用貧乏と蔑まれた少年はスキルを千個覚えて無双する
大豆茶
ファンタジー
とある男爵家にて、神童と呼ばれる少年がいた。
少年の名はユーリ・グランマード。
剣の強さを信条とするグランマード家において、ユーリは常人なら十年はかかる【剣術】のスキルレベルを、わずか三ヶ月、しかも若干六歳という若さで『レベル3』まで上げてみせた。
先に修練を始めていた兄をあっという間に超え、父ミゲルから大きな期待を寄せられるが、ある日に転機が訪れる。
生まれ持つ【加護】を明らかにする儀式を受けたユーリが持っていたのは、【器用貧乏】という、極めて珍しい加護だった。
その効果は、スキルの習得・成長に大幅なプラス補正がかかるというもの。
しかし、その代わりにスキルレベルの最大値が『レベル3』になってしまうというデメリットがあった。
ユーリの加護の正体を知ったミゲルは、大きな期待から一転、失望する。何故ならば、ユーリの剣は既に成長限界を向かえていたことが判明したからだ。
有力な騎士を排出することで地位を保ってきたグランマード家において、ユーリの加護は無価値だった。
【剣術】スキルレベル3というのは、剣を生業とする者にとっては、せいぜい平均値がいいところ。王都の騎士団に入るための最低条件すら満たしていない。
そんなユーリを疎んだミゲルは、ユーリが妾の子だったこともあり、軟禁生活の後に家から追放する。
ふらふらの状態で追放されたユーリは、食料を求めて森の中へ入る。
そこで出会ったのは、自らを魔女と名乗る妙齢の女性だった。
魔女に命を救われたユーリは、彼女の『実験』の手伝いをすることを決断する。
その内容が、想像を絶するものだとは知らずに――
おおぅ、神よ……ここからってマジですか?
夢限
ファンタジー
俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。
人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。
そんな俺は、突如病に倒れ死亡。
次に気が付いたときそこには神様がいた。
どうやら、異世界転生ができるらしい。
よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。
……なんて、思っていた時が、ありました。
なんで、奴隷スタートなんだよ。
最底辺過ぎる。
そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。
それは、新たな俺には名前がない。
そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。
それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。
まぁ、いろいろやってみようと思う。
これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。
序盤で殺される悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう〜主人公がキレてるけど気にしません
そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
大人気ゲーム「剣と魔法のファンタジー」の悪役貴族に転生した俺。
貴族という血統でありながら、何も努力しない怠惰な公爵家の令息。
序盤で王国から追放されてしまうざまぁ対象。
だがどうやら前世でプレイしていたスキルが引き継がれているようで、最強な件。
そんで王国の為に暗躍してたら、主人公がキレて来たんだが?
「お前なんかにヒロインは渡さないぞ!?」
「俺は別に構わないぞ? 王国の為に暗躍中だ」
「ふざけんな! 原作をぶっ壊しやがって、殺してやる」
「すまないが、俺には勝てないぞ?」
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル総合週間ランキング40位入り。1300スター、3800フォロワーを達成!
荒野で途方に暮れていたらドラゴンが嫁になりました
ゲンタ
ファンタジー
転生したら、荒れ地にポツンと1人で座っていました。食べ物、飲み物まったくなし、このまま荒野で死ぬしかないと、途方に暮れていたら、ドラゴンが助けてくれました。ドラゴンありがとう。人族からエルフや獣人たちを助けていくうちに、何だかだんだん強くなっていきます。神様……俺に何をさせたいの?
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎
って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!
何故こうなった…
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
そして死亡する原因には不可解な点が…
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
Dマシンドール 迷宮王の遺産を受け継ぐ少女
草乃葉オウル
ファンタジー
世界中にダンジョンと呼ばれる異空間が現れてから三十年。人類はダンジョンの脅威に立ち向かうため、脳波による遠隔操作が可能な人型異空間探査機『ダンジョン・マシンドール』を開発した。これにより生身では危険かつ非効率的だったダンジョンの探査は劇的に進み、社会はダンジョンから得られる未知の物質と技術によってさらなる発展を遂げていた。
そんな中、ダンジョンともマシンとも無関係な日々を送っていた高校生・萌葱蒔苗《もえぎまきな》は、突然存在すら知らなかった祖父の葬儀に呼ばれ、1機のマシンを相続することになる。しかも、その祖父はマシンドール開発の第一人者にして『迷宮王』と呼ばれる現代の偉人だった。
なぜ両親は祖父の存在を教えてくれなかったのか、なぜ祖父は会ったこともない自分にマシンを遺したのか……それはわからない。でも、マシンを得たならやるべきことは1つ。ダンジョンに挑み、モンスターを倒し、手に入れた素材でマシンをカスタム! そして最強の自分専用機を造り上げる! それが人を、世界を救うことに繋がっていくことを、蒔苗はまだ知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる