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七八四
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「貴様がここの首魁か?」
俺は男に尋ねた。
「ワシはここを任されておるだけだ。ここまでされたからには責任追及から逃れられんだろうが、せめてここで火消ししておかんとクビが飛ぶのでな」
組織の全体図が思い浮かばない。
かなり大きいのだろうと言う事は予測出来る。
どう王国の中枢と結びついているのか。
下手な真似をすると、トカゲの尻尾切りにあってしまう。
そうなっては、もう黒幕を追うのは難しいだろう。
生け捕りにして吐かせるのが得策か。
「この後リッチでも出る予定だったんじゃないのか?貴様でリッチの穴が埋まるのか?」
俺は男を挑発する。
「トラップとは言え、モンスターと最低でも同格でなければ召喚は出来ん。と言えば判ってもらえるか?」
リッチと同格だと。
また大きく出たな。
そんな事は有り得ない。
有り得ないからリッチなのだ。
貴様がリッチと同格ならば、リッチは人間を辞める必要など無い。
「僕を差し置いて話を進めないでくれるかい?ここへ女の子が来ただろう。その子供たちはどこに居るんだ」
ケンが話に入って来た。
「さぁね。一口に子供と言ってもみんな同じ使い道では無いのだよ」
使い道だと。
言い方が気に入らない。
お前の所有物では無い。
「ふふん。僕たちを見くびって、ずいぶんおしゃべりが過ぎるじゃないか。お前には証人として法廷で話してもらうからな」
ケンが抜刀する。
やはりやる気なのか。
俺と替わるつもりは、さらさら無いらしい。
「残念だな。そこまでくたびれていなければ、もう少し勝負になっただろうが」
「そうかい!」
ケンがいきなり衝撃波突きを繰り出す。
ボッ!
しかし男はこれを難なくかわす。
繰り出す途中から回避のモーションに入っていた。
読まれている。
初見でかわすのは難しい。
つまり、これまでの戦いを見ていたのだ。
「そんな使い古された技ではワシはやれんぞ」
「使い古された技だと……!」
ケンが気色ばむ。
「それは剣士が最終的に会得する技だろう。何百年も前から何も変わっていない。カビの生えた技だ」
男が鼻で笑った。
「へえ。その最終的な技まで辿り着く者は少ないんだがね。それを良く見てきたみたいな言い方をするんだね」
「ああ、幾度となく見てきた。もう見飽きたよ」
見飽きただと。
ハッタリか。
「面白い事を言う。だったら見たことの無い技をお披露目しよう」
ケンの気配がふっと変わる。
リラックスした雰囲気でありながら、ピリピリと張り詰めた緊張感。
これは、集中力だ。
相当な集中力を今発揮している。
魔法も無しにここまで集中力を高められるのか。
その事に俺は驚いた。
「ふむ」
男は何事か判らないまでも、警戒して身構える。
「スピリットフュージョン!」
ケンが叫んで剣を薙ぎ払う。
ビュオアッ!
剣の軌跡が実体化した。
と、同時にそれが真っ直ぐ男に向かって飛んだ。
「!?」
男はとっさに横へ跳ぶ。
ぎゅあっ!
しかし剣の軌跡は途中で曲がると、男を狙ってその後を追う。
追尾している。
「なんだこれは……!」
男の声音がわずかに動揺を訴えた。
「ただの衝撃波じゃないんだぜ?食われな!」
あの軌跡の正体は何なんだ。
まるで、生きているように男の後を追い掛けている。
「生きていると言うのか……!」
男はそう言うと、急に立ち止まって剣の軌跡を待ち構えた。
迎え撃つ気だ。
「プロテクション」
男がプロテクションを唱える。
たちまちプロテクションが男の前に張られた。
魔法による防御壁だ。
これにケンのスピリットフュージョンがぶつかった。
俺は男に尋ねた。
「ワシはここを任されておるだけだ。ここまでされたからには責任追及から逃れられんだろうが、せめてここで火消ししておかんとクビが飛ぶのでな」
組織の全体図が思い浮かばない。
かなり大きいのだろうと言う事は予測出来る。
どう王国の中枢と結びついているのか。
下手な真似をすると、トカゲの尻尾切りにあってしまう。
そうなっては、もう黒幕を追うのは難しいだろう。
生け捕りにして吐かせるのが得策か。
「この後リッチでも出る予定だったんじゃないのか?貴様でリッチの穴が埋まるのか?」
俺は男を挑発する。
「トラップとは言え、モンスターと最低でも同格でなければ召喚は出来ん。と言えば判ってもらえるか?」
リッチと同格だと。
また大きく出たな。
そんな事は有り得ない。
有り得ないからリッチなのだ。
貴様がリッチと同格ならば、リッチは人間を辞める必要など無い。
「僕を差し置いて話を進めないでくれるかい?ここへ女の子が来ただろう。その子供たちはどこに居るんだ」
ケンが話に入って来た。
「さぁね。一口に子供と言ってもみんな同じ使い道では無いのだよ」
使い道だと。
言い方が気に入らない。
お前の所有物では無い。
「ふふん。僕たちを見くびって、ずいぶんおしゃべりが過ぎるじゃないか。お前には証人として法廷で話してもらうからな」
ケンが抜刀する。
やはりやる気なのか。
俺と替わるつもりは、さらさら無いらしい。
「残念だな。そこまでくたびれていなければ、もう少し勝負になっただろうが」
「そうかい!」
ケンがいきなり衝撃波突きを繰り出す。
ボッ!
しかし男はこれを難なくかわす。
繰り出す途中から回避のモーションに入っていた。
読まれている。
初見でかわすのは難しい。
つまり、これまでの戦いを見ていたのだ。
「そんな使い古された技ではワシはやれんぞ」
「使い古された技だと……!」
ケンが気色ばむ。
「それは剣士が最終的に会得する技だろう。何百年も前から何も変わっていない。カビの生えた技だ」
男が鼻で笑った。
「へえ。その最終的な技まで辿り着く者は少ないんだがね。それを良く見てきたみたいな言い方をするんだね」
「ああ、幾度となく見てきた。もう見飽きたよ」
見飽きただと。
ハッタリか。
「面白い事を言う。だったら見たことの無い技をお披露目しよう」
ケンの気配がふっと変わる。
リラックスした雰囲気でありながら、ピリピリと張り詰めた緊張感。
これは、集中力だ。
相当な集中力を今発揮している。
魔法も無しにここまで集中力を高められるのか。
その事に俺は驚いた。
「ふむ」
男は何事か判らないまでも、警戒して身構える。
「スピリットフュージョン!」
ケンが叫んで剣を薙ぎ払う。
ビュオアッ!
剣の軌跡が実体化した。
と、同時にそれが真っ直ぐ男に向かって飛んだ。
「!?」
男はとっさに横へ跳ぶ。
ぎゅあっ!
しかし剣の軌跡は途中で曲がると、男を狙ってその後を追う。
追尾している。
「なんだこれは……!」
男の声音がわずかに動揺を訴えた。
「ただの衝撃波じゃないんだぜ?食われな!」
あの軌跡の正体は何なんだ。
まるで、生きているように男の後を追い掛けている。
「生きていると言うのか……!」
男はそう言うと、急に立ち止まって剣の軌跡を待ち構えた。
迎え撃つ気だ。
「プロテクション」
男がプロテクションを唱える。
たちまちプロテクションが男の前に張られた。
魔法による防御壁だ。
これにケンのスピリットフュージョンがぶつかった。
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