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七四〇
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「管理人、じいちゃん寄越してくれ」
「了解しました」
俺が呆然としている間にも、オオムカデンダルは管理人と話している。
賢者サルバスを呼んでいる。
だが、今はそれどころでは無い。
どうするんだ、これ。
未だ炎は収まらない。
見た事も無い異様な光景に、俺はただ炎を見続けるしか無かった。
管理人が作った光のフェンスはまだ存在し続けて、炎の拡散を留めている。
もしもこれが無くなったらどうなってしまうのか。
熱もカットすると言っていたが、フェンスの外側はかなりの温度になっている。
これが無かったら……
俺は想像してゾッとした。
「令……ウロコフネタマイトはどうした」
オオムカデンダルが令子と言いかけて訂正する。
「うふふ、居るわよ」
当たり前だが無事だったか。
「周囲に人影は?」
「この辺りには無いわ。もっと東にキャラバンらしき反応があるけど、三キロって所ね。問題ないでしょ」
オオムカデンダルの質問に令子は淡々と答えた。
そんな事よりもヴァルキリーはどうなった。
「心配しなくても、ほら。ちゃあんと捕まえてあるわよ」
ちゃんとと言われても、ウロコフネタマイトの声しか聞こえない。
そこにヴァルキリーは居るのか。
そうこうしているうちに、賢者サルバスが到着した。
ボードにしがみ付いている。
「ひゃあ、まったく年寄りに無茶させおって……しかし、魔法で飛ぶのと遜色ないのぅ。これは」
管理人辺りに半ば強制的に送り出されたのだろう。
しかしボヤくか感心するかどっちかにすれば良いのに。
俺は内心そんな事を思った。
「じいちゃん、この前話したアレを使った。手筈通りに頼むよ」
「見ておったわい。まったくド偉いモン作りおって……」
サルバスも見ていたのだろう。
あの好奇心の為なら死んでも良いと言いそうなサルバスが、明らかにやり過ぎだと気後れしている。
この武器はそれほどの物なのだ。
俺でさえ判る。
これは危険だ。
「さてと……ピューリファイ!」
サルバスが浄化の魔法『ピューリファイ』を唱えた。
浄化。
いったい何を浄化しているのか。
「毒さ」
毒だと?
「この爆発には毒が含まれている。爆発も恐ろしいが、その後の毒がより恐ろしいのさ。お前やフィエステリアームの毒とはまた違うタイプの毒だが、場合によってはこっちの方が恐ろしい」
オオムカデンダルの説明に俺は呆気にとられた。
あれだけの爆炎魔法レベルの爆発を起こしておきながら、本命は毒だと言うのか。
「そうだ。何世代にも渡って作用し続ける最悪の毒だ」
何世代にも渡ってだと。
そんな呪いのような毒など冗談じゃない。
コイツ、そんな物を良くも嬉々として使ったな。
俺はオオムカデンダルに恐怖を感じた。
「じゃあ、お前にプニーフタールが倒せたのか?」
オオムカデンダルが俺に対して、突然真面目に尋ねた。
俺は口ごもる。
判っている。
無理だ。
俺どころか、誰にも、例えオオムカデンダルであっても、アレ無しでは倒せるアテも無かった。
逆に言えば、アレがあるからオオムカデンダルはプニーフタールを倒せるだろうと見ていたのだろう。
しかし、これでは。
俺は燃えさかる炎の渦をじっと見つめた。
「了解しました」
俺が呆然としている間にも、オオムカデンダルは管理人と話している。
賢者サルバスを呼んでいる。
だが、今はそれどころでは無い。
どうするんだ、これ。
未だ炎は収まらない。
見た事も無い異様な光景に、俺はただ炎を見続けるしか無かった。
管理人が作った光のフェンスはまだ存在し続けて、炎の拡散を留めている。
もしもこれが無くなったらどうなってしまうのか。
熱もカットすると言っていたが、フェンスの外側はかなりの温度になっている。
これが無かったら……
俺は想像してゾッとした。
「令……ウロコフネタマイトはどうした」
オオムカデンダルが令子と言いかけて訂正する。
「うふふ、居るわよ」
当たり前だが無事だったか。
「周囲に人影は?」
「この辺りには無いわ。もっと東にキャラバンらしき反応があるけど、三キロって所ね。問題ないでしょ」
オオムカデンダルの質問に令子は淡々と答えた。
そんな事よりもヴァルキリーはどうなった。
「心配しなくても、ほら。ちゃあんと捕まえてあるわよ」
ちゃんとと言われても、ウロコフネタマイトの声しか聞こえない。
そこにヴァルキリーは居るのか。
そうこうしているうちに、賢者サルバスが到着した。
ボードにしがみ付いている。
「ひゃあ、まったく年寄りに無茶させおって……しかし、魔法で飛ぶのと遜色ないのぅ。これは」
管理人辺りに半ば強制的に送り出されたのだろう。
しかしボヤくか感心するかどっちかにすれば良いのに。
俺は内心そんな事を思った。
「じいちゃん、この前話したアレを使った。手筈通りに頼むよ」
「見ておったわい。まったくド偉いモン作りおって……」
サルバスも見ていたのだろう。
あの好奇心の為なら死んでも良いと言いそうなサルバスが、明らかにやり過ぎだと気後れしている。
この武器はそれほどの物なのだ。
俺でさえ判る。
これは危険だ。
「さてと……ピューリファイ!」
サルバスが浄化の魔法『ピューリファイ』を唱えた。
浄化。
いったい何を浄化しているのか。
「毒さ」
毒だと?
「この爆発には毒が含まれている。爆発も恐ろしいが、その後の毒がより恐ろしいのさ。お前やフィエステリアームの毒とはまた違うタイプの毒だが、場合によってはこっちの方が恐ろしい」
オオムカデンダルの説明に俺は呆気にとられた。
あれだけの爆炎魔法レベルの爆発を起こしておきながら、本命は毒だと言うのか。
「そうだ。何世代にも渡って作用し続ける最悪の毒だ」
何世代にも渡ってだと。
そんな呪いのような毒など冗談じゃない。
コイツ、そんな物を良くも嬉々として使ったな。
俺はオオムカデンダルに恐怖を感じた。
「じゃあ、お前にプニーフタールが倒せたのか?」
オオムカデンダルが俺に対して、突然真面目に尋ねた。
俺は口ごもる。
判っている。
無理だ。
俺どころか、誰にも、例えオオムカデンダルであっても、アレ無しでは倒せるアテも無かった。
逆に言えば、アレがあるからオオムカデンダルはプニーフタールを倒せるだろうと見ていたのだろう。
しかし、これでは。
俺は燃えさかる炎の渦をじっと見つめた。
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