見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

文字の大きさ
上 下
734 / 826

七三三

しおりを挟む
 ごりっごりっぼりぼり

 プニーフタールはインプを咀嚼する。
骨が砕ける音がする。
今まで聞いた中で一番後味の悪い音だ。

 オオムカデンダルは黙ってその様子を見ていた。
オニヤンマイザーがその横へと静かに降り立つ。

「これはプニーフタールじゃないのか?」

「ああ。そのようだが……」

 オニヤンマイザーの問い掛けに、オオムカデンダルが振り向きもせずに答える。

「何を食っている?」

「インプだ」

「インプ?何故?」

「判らん」

 オオムカデンダルは素っ気なく言った。
確かに判らない。
前は助けたのに、何故今回は食ったのか。
それよりも、ミーアを助ける手掛かりが失われたのは痛い。
いったいどうすれば。

「判ってるのは一つだけ。この性悪女神がロクでもない事を考えていて、その為にインプが食われたって事だけだ」

 その通りだ。
結局この状況から判る事は、ヴァルキリーが全て仕組んでいたのだろうと言う事だけだ。

「何を企んでいる」

 オニヤンマイザーがヴァルキリーを問い詰めた。

「私のやる事は決まっている。神の先兵となって共に終末を戦う英霊を集める事。そして神への反逆者には天罰を下す事」

 徹底しているな。
そこだけは全くブレない。 
少しも尊敬できないが。

「そりゃ結構なんだが、インプは仲間じゃないのか?」

 オオムカデンダルがアゴに手をやる。

「仲間?目的が同じだっただけよ」

 つまり、プニーフタールの復活か。
だが、だったら何故食われたのか。

「そんな事は決まっているわ。プニーフタール復活の切り札だからよ」

 なんだと。

「彼はね、タレント持ちなのよ。ただ自分が生け贄になるのは嫌だから人間のタレント持ちをさがしていたけど。私はちゃんと判っていたわ」

 俺は呆れていた。
サタンの片割れなのだからどんな力を持っていても不思議では無いが、まさかタレント持ちだったとは。
自らが生け贄になるのを恐れて人間を拐っていただと。 

「サタンでも生け贄になるのは怖かったのか」

 オオムカデンダルが納得したように言った。
感心している場合か。

「サタンはまだ本来の力を取り戻せていない。だからその為にインプを使ってプニーフタール復活を画策していたようね。もっともこれでサタンの復活はまた遠退いたけど」

 話が大き過ぎてピンとこないが、サタン復活とプニーフタール復活は同時進行だったって事なのか。
この場合はどっちを脅威と見なせば良いのか。
いや、どっちもか。
まてよ、両者は相容れるのか。

 少しも考えがまとまらない。 

「レオ。考え過ぎるなよ。禿げるぞ」

 禿げるかよ。
俺はまだフサフサだ。

 オオムカデンダルは俺の反論は無視して続ける。

「どっちでも良いんだよ。どうせ両方排除しなければならなかったんだ。片方自滅したならラッキーじゃないか。相手の思い通りにさせないってのが、自分の利益になるんだ。覚えておけ」

 なるほど。
それは確かにその通りだ。

「そんな訳だから、アンタの思い通りにはいかないぜ」

「果たしてそうかしら?」

「そうなんだよ。なんせ、今から俺たちがお前の邪魔をするんだからな」

 オオムカデンダルはそう言って肩をぐるぐると回した。

「プニーフタール復活に必要な魔力は十分に足りたわ。インプには礼を言わなければならないわね」

 ヴァルキリーはそう言うと、走ってその場から離れた。

「ヴオォォォオオオオ!」

 プニーフタールの声が辺りを揺るがす。

 ばきっ!ばききっ!
ばきばきばきばき!
ばきいぃーん!

 まるで皿が割れるかの如く、空間が音を発てて割れた。
プニーフタールが覗く穴が、大きく開いた。

「お出ましか。思った展開とはちょいと違うが、第二ラウンドだ」

 オオムカデンダルが独りごちた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境の最強魔導師   ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~

日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。 アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。 その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。

序盤で殺される悪役貴族に転生した俺、前世のスキルが残っているため、勇者よりも強くなってしまう〜主人公がキレてるけど気にしません

そらら
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ 大人気ゲーム「剣と魔法のファンタジー」の悪役貴族に転生した俺。 貴族という血統でありながら、何も努力しない怠惰な公爵家の令息。 序盤で王国から追放されてしまうざまぁ対象。 だがどうやら前世でプレイしていたスキルが引き継がれているようで、最強な件。 そんで王国の為に暗躍してたら、主人公がキレて来たんだが? 「お前なんかにヒロインは渡さないぞ!?」 「俺は別に構わないぞ? 王国の為に暗躍中だ」 「ふざけんな! 原作をぶっ壊しやがって、殺してやる」 「すまないが、俺には勝てないぞ?」 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル総合週間ランキング40位入り。1300スター、3800フォロワーを達成!

離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね? 魔道具師として自立を目指します!

椿蛍
ファンタジー
【1章】 転生し、目覚めたら、旦那様から離縁されていた。   ――そんなことってある? 私が転生したのは、落ちこぼれ魔道具師のサーラ。 彼女は結婚式当日、何者かの罠によって、氷の中に閉じ込められてしまった。 時を止めて眠ること十年。 彼女の魂は消滅し、肉体だけが残っていた。 「どうやって生活していくつもりかな?」 「ご心配なく。手に職を持ち、自立します」 「落ちこぼれの君が手に職? 無理だよ、無理! 現実を見つめたほうがいいよ?」 ――後悔するのは、旦那様たちですよ? 【2章】 「もう一度、君を妃に迎えたい」 今まで私が魔道具師として働くのに反対で、散々嫌がらせをしてからの再プロポーズ。 再プロポーズ前にやるのは、信頼関係の再構築、まずは浮気の謝罪からでは……?  ――まさか、うまくいくなんて、思ってませんよね? 【3章】 『サーラちゃん、婚約おめでとう!』 私がリアムの婚約者!? リアムの妃の座を狙う四大公爵家の令嬢が現れ、突然の略奪宣言! ライバル認定された私。 妃候補ふたたび――十年前と同じような状況になったけれど、犯人はもう一度現れるの? リアムを貶めるための公爵の罠が、ヴィフレア王国の危機を招いて―― 【その他】 ※12月25日から3章スタート。初日2話、1日1話更新です。 ※イラストは作成者様より、お借りして使用しております。

千技の魔剣士 器用貧乏と蔑まれた少年はスキルを千個覚えて無双する

大豆茶
ファンタジー
とある男爵家にて、神童と呼ばれる少年がいた。 少年の名はユーリ・グランマード。 剣の強さを信条とするグランマード家において、ユーリは常人なら十年はかかる【剣術】のスキルレベルを、わずか三ヶ月、しかも若干六歳という若さで『レベル3』まで上げてみせた。 先に修練を始めていた兄をあっという間に超え、父ミゲルから大きな期待を寄せられるが、ある日に転機が訪れる。 生まれ持つ【加護】を明らかにする儀式を受けたユーリが持っていたのは、【器用貧乏】という、極めて珍しい加護だった。 その効果は、スキルの習得・成長に大幅なプラス補正がかかるというもの。 しかし、その代わりにスキルレベルの最大値が『レベル3』になってしまうというデメリットがあった。 ユーリの加護の正体を知ったミゲルは、大きな期待から一転、失望する。何故ならば、ユーリの剣は既に成長限界を向かえていたことが判明したからだ。 有力な騎士を排出することで地位を保ってきたグランマード家において、ユーリの加護は無価値だった。 【剣術】スキルレベル3というのは、剣を生業とする者にとっては、せいぜい平均値がいいところ。王都の騎士団に入るための最低条件すら満たしていない。 そんなユーリを疎んだミゲルは、ユーリが妾の子だったこともあり、軟禁生活の後に家から追放する。 ふらふらの状態で追放されたユーリは、食料を求めて森の中へ入る。 そこで出会ったのは、自らを魔女と名乗る妙齢の女性だった。 魔女に命を救われたユーリは、彼女の『実験』の手伝いをすることを決断する。 その内容が、想像を絶するものだとは知らずに――

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

Dマシンドール 迷宮王の遺産を受け継ぐ少女

草乃葉オウル
ファンタジー
世界中にダンジョンと呼ばれる異空間が現れてから三十年。人類はダンジョンの脅威に立ち向かうため、脳波による遠隔操作が可能な人型異空間探査機『ダンジョン・マシンドール』を開発した。これにより生身では危険かつ非効率的だったダンジョンの探査は劇的に進み、社会はダンジョンから得られる未知の物質と技術によってさらなる発展を遂げていた。 そんな中、ダンジョンともマシンとも無関係な日々を送っていた高校生・萌葱蒔苗《もえぎまきな》は、突然存在すら知らなかった祖父の葬儀に呼ばれ、1機のマシンを相続することになる。しかも、その祖父はマシンドール開発の第一人者にして『迷宮王』と呼ばれる現代の偉人だった。 なぜ両親は祖父の存在を教えてくれなかったのか、なぜ祖父は会ったこともない自分にマシンを遺したのか……それはわからない。でも、マシンを得たならやるべきことは1つ。ダンジョンに挑み、モンスターを倒し、手に入れた素材でマシンをカスタム! そして最強の自分専用機を造り上げる! それが人を、世界を救うことに繋がっていくことを、蒔苗はまだ知らない。

処理中です...