見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七三〇

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 やはりヴァルキリー。
仲間になると言ってみたり、敵に戻ってみたり。
本当に女神かと疑いたくなるほどに節操が無い。

「どうだ。目的は達成できたかい?」

 オオムカデンダルが訪ねる。
余裕だな。
貫禄勝ちか。

「貴様ら。本当に何なのだ」

 ヴァルキリーが忌々しそうに言う。

「人間でも無い。モンスターでも無い。然りとてプニーフタールのような存在とも違う。何者なのだ」

 女神ヴァルキリーがオオムカデンダルに疑問を投げ掛けた。
いくら女神と言えども判る筈が無い。
異世界からきた世界征服を企む秘密結社。
科学なる不思議な学問を極め、この世の最上級魔導と互角以上に渡り合う改造人間。  

 この世界の枠に収まる限り、女神と言えども判る筈が無かった。

「俺たちは人間だよ。魔法とは誓う形で身体を極限まで強化した、ただの人間だ」

 オオムカデンダルがうそぶく。
『ただの』では無いだろうと思うが、それは今は良いだろう。

「人間が神を凌ぐ力を持とうと言うのか。この女神ヴァルキリーをも凌ごうと!」

「うるせー。抜かれたく無けりゃ、もっと努力しろよ。そう言う所だぞ、ヒエラルキーに胡座をかいて努力を怠るのが神様の悪い癖だ。反省しろ」

 オオムカデンダルがヴァルキリーに説教した。
父親みたいな事を言うな。 

「ふ、ふふ、ふふふははは!良いだろう。貴様の傲岸不遜なその態度。懲らしめてやる。天罰覿面!」

 ヴァルキリーが吼えた。
しかしながら、残念な事にヴァルキリーの力ではオオムカデンダルには勝てない。
俺にさえ勝てないのだ。
ましてや彼ら幹部に挑むなど、夢のまた夢だ。

「はっはっはっはっはっ!天罰返し!」

 オオムカデンダルは言うが早いか、ヴァルキリー目掛けて駆けだした。
気が早いな。

 三〇〇メートルの距離を、あっと言う間に詰め寄る。

 ビシイッ!

 突然に破裂音のような音が聞こえた。
オオムカデンダルはとっさに防御の姿勢で後ろへ押し戻される。

 ずざざざざざざざー

「なんだ。飛び入りかい?」

 オオムカデンダルが言う。
ヴァルキリーの傍に男が立っている。
今の攻撃はコイツの仕業か。

「ふふ。私も混ぜてもらおうかな」

 男が言った。
誰だ。
何だか見たことが有るような。

「わざわざお仕置きに混ざりたいとは、物好きめ。それとも変態趣味なのか?」

 オオムカデンダルが鼻で笑う。
とは言え、一撃でオオムカデンダルを退けるとは普通では無い。
コイツも神の手先なのか。

「はははは。神などと一緒にされるのはこの上ない侮辱だが、ここは褒められたのだ受け取っておこう」

 男が笑って俺を見た。
なぜ俺を見る。
この距離で、ガーディアンの中に居る、この俺の独り言が聞こえたとでも。

「聞こえたよ。私は君に用があるんだ。ずっと注目している」

 なんだと。
気味の悪い奴め。
何者だ。

「おい、レオ。ファンだってよ。やったな」

 オオムカデンダルが振り返って俺に言う。
冷やかすな。
どう見てもファンじゃないだろ。
男性、長髪、黒尽くめ。
こんな怪しいファンが居てまるか。

「で、その足は生え揃ったのか。確か……インプだったか?」

 オオムカデンダルが笑いながら言った。
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