見知らぬ世界で秘密結社

小松菜

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七二七

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 なんて言い草だよ。
子供みたいなオオムカデンダルの言葉に俺は呆れた。

 キシャアアアアッ!

 遂に痺れを切らしたか。
ワイバーンの一匹が、空から猛然と急降下する。

「ふん。来たか」

 オニヤンマイザーはそれを軽くいなす。
二対一。
まだ一人でやるつもりか。

 ドォンッ!
ドォンッ!

 オニヤンマイザーとワイバーンの戦いに釘付けになっていた時、突然衝撃がガーディアンを襲った。

「なんだ!?」

 俺は慌てて、それが声に出た。
見上げると、こちらにもワイバーンが向かっている。
くそ、手持ち無沙汰にちょっかい掛けて来やがったか。

 俺はガーディアンを再び走らせた。

 ドォンッ!
ドォンッ!ドォンッ!

 続けざまに火柱が上がる。
その度に衝撃がガーディアンを揺らした。
フャイヤーボールと言っても人間が放つそれとは全く威力が異なる。
龍が自前で放つフャイヤーボールの方が何倍も強力だ。
そう考えると、人間の何と弱々しい事か。

「バトルアンカー!」

 俺はアンカーを撃ち出す。
錨が火を噴いて、鳥のように宙を飛んだ。
ワイバーン目掛けて一直線だ。

 ぎゅん

 ワイバーンがアンカーをかわす。

 ぎゅーん

 アンカーがそれを追いかけて起動を変えた。
ワイバーンはそれを見て射程外へと逃げ去る。

「射程を見ているのか」

 俺は忌々しくワイバーンを見上げる。
まだミサイルが残っていれば。
一斉発射とは言わないまでも、群れの中心に一発あれば巻き込めたかもしれない。

 ギュルギュルギュルギュル
ガシャーン!

 撃ち出したバトルアンカーを巻き取った。
一発ごとに巻きとらなければならない事も弱点だな。

 飛び道具が無ければ、空には手も足も出ない。
俺は空も飛べないし、空へはオニヤンマイザー一人に頼らなければならなかった。 

 何か無いか。
俺はガーディアンの能力を検索した。
だが、やはり飛び道具は撃ち尽くしており、空の敵を攻撃する手段は無かった。

「お待たせ致しました。レオさん、弾薬の補給お持ちしました」

 管理人が突然そう言った。
補給?

 見上げると何かがガーディアンの上を飛んでいる。
あれか。

 巨大なパンのような形をした何かが、ガーディアンの上へと静かに降りてくる。

 がきっ
がちゃん!

 ガーディアンにそれがくっ付いた。 

 ガコン
ガココン、ガコ、ガコ、ガコ、ガコ

 武装の残量を示すマークが、どんどんと増えていく。
そうか、ミサイルを補充してくれたのか。
ミサイル以外も、全ての重火器が全て全快した。
これなら。

 ギシャアアアアアッ!

 何かを察知したワイバーンが、標的を補給機に移した。
補給機が急いでガーディアンから離陸する。

 ドオンッ!
ドゴオォン!

 ファイヤーボールが補給機に直撃した。
攻撃が早すぎて逃げ切れない。

 ドゴオォン!
ドゴオォン!

 連続してファイヤーボールが補給機に命中する。

 ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン……

 明らかな異音を発てて、体勢を立て直そうとするも補給機は黒煙を上げながら傾いていった。
くそ、駄目か。

 どがっ!
どがががが、ドドオォン!

 あえなく補給機が墜落する。
地面をえぐった後、そのまま爆発して火を噴いた。

「やってくれるじゃないか。レオ、目にもの見せてやれ」

 オオムカデンダルの命令が下った。
俺はすぐさま照準をワイバーンたちに合わせた。
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