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七二六
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ぶしゃああ!
オニヤンマイザーが噛みちぎったワイバーンの足から、鮮血が飛び散る。
ギシャアアアアアッ!
堪らずワイバーンが吼えた。
ドウッ!ドウッ!ドウッ!
怒り狂ったワイバーンが、オニヤンマイザーを何度も地面に叩き付ける。
「ぐっ!がっ!ぐはっ!」
今度はオニヤンマイザーが苦しげに声を発する。
離さないのか。
ワイバーンは、オニヤンマイザーを手放せば危険だと認識しているのか。
指を噛みちぎられても尚、オニヤンマイザーを離そうとしない。
「……良いだろう。我慢比べだ」
オニヤンマイザーはそう言うと、再びワイバーンに噛み付いた。
ギシャアアアアアッ!
ギシャアアアアアッ!
ワイバーンが吼える。
しかし、今度はオニヤンマイザーも止めない。
噛み付いては噛みちぎり、そしてまた噛み付く。
遂にはワイバーンの指が一本まるまるちぎられた。
ぼとっ
ワイバーンの指が、地面に落ちて転がった。
デカいな。
人間の胴体くらいある。
これを噛みちぎって切断したのか。
グアアアン!
これには我慢の限界を迎えたか。
ワイバーンは遂にオニヤンマイザーを手放した。
「ぐはっ、ぐっ……!」
オニヤンマイザーも地面を転がる。
「ふ、僕の勝ちだな」
オニヤンマイザーが苦しげに立ち上がる。
この期に及んでまだ強がるか。
この辺がただのインテリとは違う。
オオムカデンダルとは違うが、彼もまた闘争心の塊だった。
オオオオオンッ!
ワイバーンが一際高く咆吼する。
喉の奥が目映く光を放っている。
それが口から漏れ出ていた。
ブレスだ。
ボッ!ボッ!ボッ!
立て続けに三発、ワイバーンがフャイヤーボールを吐き出した。
「ノロマめ」
オニヤンマイザーはそれらを全て避けきった。
オニヤンマイザーは高速で飛ぶ事が可能なだけでは無い。
あの変則的な移動を可能にする四枚の羽、あれが脅威なのだ。
その動きはまさしくトンボそのものだ。
空中に停止するなんて朝飯前だし、バックも出来るのが鳥とは違う。
それを高速で繰り返しつつ、ピタッ、ピタッと停止出来る。
まさに自由自在だ。
空の王者ワイバーンであっても、オニヤンマイザーのあの動きは真似できない。
ひょっとしたら空の王者の異名は、今日オニヤンマイザーに委譲されるかもしれなかった。
イイィィンッ!
ギシャアアアアアッ!
他のワイバーンも両者の戦いを見守っていた。
参戦の隙を窺っている。
しかし、オニヤンマイザーのあの動きには付け入る隙が見当たらない。
信じられないが、他のワイバーンたちはあれを捉える自信が無いのではないか。
明らかに二の足を踏んでいた。
好戦的なワイバーンが様子を見るばかりで、一向に襲い掛かる素振りを見せない。
「仲間は助ける気が無いようだぞ」
オニヤンマイザーはそう言って上からワイバーンを見下ろした。
ワイバーンは下からオニヤンマイザーを見上げて威嚇する。
しかし、両者の立場は明らかだ。
強者が上、弱者は下だ。
この力関係が確実に戦況に現れる。
そして今のこの状態こそが、まさにそれだ。
「ちっ、もうちょっとやられてくれないと、俺が蜻蛉洲より弱いみたいじゃないか」
関係ない所でオオムカデンダルが小さくボヤいた。
オニヤンマイザーが噛みちぎったワイバーンの足から、鮮血が飛び散る。
ギシャアアアアアッ!
堪らずワイバーンが吼えた。
ドウッ!ドウッ!ドウッ!
怒り狂ったワイバーンが、オニヤンマイザーを何度も地面に叩き付ける。
「ぐっ!がっ!ぐはっ!」
今度はオニヤンマイザーが苦しげに声を発する。
離さないのか。
ワイバーンは、オニヤンマイザーを手放せば危険だと認識しているのか。
指を噛みちぎられても尚、オニヤンマイザーを離そうとしない。
「……良いだろう。我慢比べだ」
オニヤンマイザーはそう言うと、再びワイバーンに噛み付いた。
ギシャアアアアアッ!
ギシャアアアアアッ!
ワイバーンが吼える。
しかし、今度はオニヤンマイザーも止めない。
噛み付いては噛みちぎり、そしてまた噛み付く。
遂にはワイバーンの指が一本まるまるちぎられた。
ぼとっ
ワイバーンの指が、地面に落ちて転がった。
デカいな。
人間の胴体くらいある。
これを噛みちぎって切断したのか。
グアアアン!
これには我慢の限界を迎えたか。
ワイバーンは遂にオニヤンマイザーを手放した。
「ぐはっ、ぐっ……!」
オニヤンマイザーも地面を転がる。
「ふ、僕の勝ちだな」
オニヤンマイザーが苦しげに立ち上がる。
この期に及んでまだ強がるか。
この辺がただのインテリとは違う。
オオムカデンダルとは違うが、彼もまた闘争心の塊だった。
オオオオオンッ!
ワイバーンが一際高く咆吼する。
喉の奥が目映く光を放っている。
それが口から漏れ出ていた。
ブレスだ。
ボッ!ボッ!ボッ!
立て続けに三発、ワイバーンがフャイヤーボールを吐き出した。
「ノロマめ」
オニヤンマイザーはそれらを全て避けきった。
オニヤンマイザーは高速で飛ぶ事が可能なだけでは無い。
あの変則的な移動を可能にする四枚の羽、あれが脅威なのだ。
その動きはまさしくトンボそのものだ。
空中に停止するなんて朝飯前だし、バックも出来るのが鳥とは違う。
それを高速で繰り返しつつ、ピタッ、ピタッと停止出来る。
まさに自由自在だ。
空の王者ワイバーンであっても、オニヤンマイザーのあの動きは真似できない。
ひょっとしたら空の王者の異名は、今日オニヤンマイザーに委譲されるかもしれなかった。
イイィィンッ!
ギシャアアアアアッ!
他のワイバーンも両者の戦いを見守っていた。
参戦の隙を窺っている。
しかし、オニヤンマイザーのあの動きには付け入る隙が見当たらない。
信じられないが、他のワイバーンたちはあれを捉える自信が無いのではないか。
明らかに二の足を踏んでいた。
好戦的なワイバーンが様子を見るばかりで、一向に襲い掛かる素振りを見せない。
「仲間は助ける気が無いようだぞ」
オニヤンマイザーはそう言って上からワイバーンを見下ろした。
ワイバーンは下からオニヤンマイザーを見上げて威嚇する。
しかし、両者の立場は明らかだ。
強者が上、弱者は下だ。
この力関係が確実に戦況に現れる。
そして今のこの状態こそが、まさにそれだ。
「ちっ、もうちょっとやられてくれないと、俺が蜻蛉洲より弱いみたいじゃないか」
関係ない所でオオムカデンダルが小さくボヤいた。
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